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Future  作者: 浅咲夏茶
5th Chapter;Unpleasant memories of heroines.
54/127

Target:Rina,Shu and Ren./episode53

「か、会長……」

「ん?」

「本当に、大丈夫なんですか? ……せ、責任とかは」

「確かに昨日は俗にいう『危険日』だった。……つか、もうこの話やめよう?」

「そ、そうですね……」

「ボクも正直、こういうエロトークはあんまり好きじゃないんだ」

「人の恋愛話とかは?」

「大好物だ」

「なんなんすか……」

 そんなことを話しながら、会長とともに学校のすぐ近くの路地裏方向へ向かう。会長は『隠れお嬢様』と呼べき存在であり、金持ちである故、「狙われたくない」との一心から、隠れて登校しているのが伺えた。なにせ、路地裏の入り口に車を停めるのだ。凄い暗い所の近くに。

「それでは」

 咲希さんが手を振って会長を見送る。この光景だけ見ていれば、お嬢様の登校、とも思える。車も高級車だしな。……ただ、それでも会長は『お嬢様』というのを隠したいんだろう。……誰にだって隠したいことは有る。僕だって、エロゲやエロ本の隠し場所なんて教えたくもない。……が、それをすぐに教えてしまう輩が居るため、どうにも出来ない。輩の名は『R』から始まる女の12年来の幼馴染で、『こい』と名前に入っているのに『彼氏いない歴=年齢』の恋愛音痴のあいつだ。……あ、今答え言ってしまったな。

「さてと。行きますか」

「だね。……あ、そうだ」

「なんですか?」

「今日、弁当作ってないからコンビニ寄っていい?」

「悪くはないですけど……」

 それもそうか。今日は弁当作る暇もなかったもんな。起きたら隣に会長が裸で寝ていたし。弁当作っているなら、あの時間帯は起きているはずだ。

「……学食じゃ、ダメなんですか?」

「なにその『一位じゃダメなんですか』的な言い方」

「ちょっとそう言われると言い返しづらいです。色んな意味で」

「……そうか。すまないな」

「――あ。恋に弁当を作ってもらえば!」

「いや、時間的に無理じゃないの?」

「……ちっ。恋をこき使ってやろうと思ったのに」

「……幼馴染とはいえ、女の子なんだから大切に扱え」

「いや、『恋愛音痴の女の子』をどう大切に扱えと?」

「――恋愛……音痴か……」

「か、会長?」

「……何でもない。考え過ぎただけだ。じゃあ、コンビニ行くぞ」

「……分かりました」

 路地裏を進んでコンビニへ向かう。お嬢様がコンビニを利用する、なんて言うのはなんというか、凄い珍しい気がする。会長はファーストフード系をあんまり食ったことがないようだし。そういうことなら、喫茶店とかに行ったのは結構珍しいことなんだな。


 ***


「おい、凛」

 背中が震えた。振り向けば愁の姿がうつる。

「お前、会長にまで手を出したのか? ……俺なんて、恋ちゃんにこき使われ、エリザちゃんに変態扱いされ、本当に散々な一夜だったよ……。おかげで夜も眠れなかったわ。……なのにお前というやつは」

「嫉妬か?」

「違うわ! お前にばっかりいい女が食いつきすぎなんだよ!」

 愁が人差し指をさしてこちらにドヤ顔で決めてきた。

「――モテる人はヲタクでも会話の力が有ると思うけど、モテない人はね……」

「か、会長、それは……」

 酷い言い分だ。愁は相当傷ついただろう。……ごめんな。昨日の凛音の正体が実は僕だと分かったら、絶対に愁は怒るはずだ。激おこプンプン丸……いや、げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームと言うべきか。

「うう。で、凛。俺は昨日、凛音とかいう超絶美少女を見てしまったんだが」

「何処でだよ?」

「家で。ああ、可愛かったなあ」

 僕が思っていたことが話題になった。……凛音、か。別に、あんな格好したくてしたわけじゃない。僕はただ、女湯に入るために――いや、その言い方はマズイ。じゃあ、「恋にハメられた」。それで行こう。でも、まだ言わなくていいか。

「――勝手にお前の彼女にすんなよ?」

「な、なんでお前がそんなこと……」

「だって凛音は……はっ」

 気付かなかった。こんなことになるまで。僕の一生の不覚。なんてこった。愁を傷つけることを言わないように、ただただ隠そうとしただけなのに。裏目に出てしまった。……もう少し用心深ければよかったのかな。

「『凛音は、僕の彼女』だとか?」

「違う。……正直言うと、あれは僕だ」

「僕? なんだ? あの凛音、という女の子はお前が女装した姿?」

「……そうだ」

 サタンと体が変わった、なんていう難しい話では聞いてくれないと思ったので、あえて僕は危険な方向へ話を向けた。『女装』。その言葉で愁は相当驚いていた。会長は、あんまり驚いた表情はなかった。

「じゃあ、お前は実は女の子……」

「僕はそんな設定じゃない!」

「さ、触って確かめるのは?」

「ダメだ! お前はホモか!」

「お、俺はノーマルラブだ! ……でも、女装している時の凛は可愛かったなあ。俺が女装したら、どんな姿になるんだろうな。笑える姿になるかな?」

「今、僕のこと『可愛い』って言ったよな?」

「ああ。なんか問題でもあったか?」

「大有りだ。てか、何で『男に可愛いと言われて僕は喜べる』と思っているんだ」

「女々しいから」

「心外だ」

「嘘つけ。何が心外だ。顔が女っぽいって姉さんに言われてるだろ」

「……」

 口ごもってしまう僕。疑う愁を振り切るため、僕は会長を連れてコンビニからダッシュで出て行った。すぐ近くに学校があるので追いつかれるかも知れなかったが、制服なのでお互い走りづらく、相当なスピードでない限り、それといったスピードは出せないであろう。つまり、先に優勢になったもん勝ち、と言えよう。


 ***


 朝のホームルーム後。やっぱりいつも通り恋に虐められてる愁と梨人。やはりこの光景を見ていると、「日常」という単語が頭をよぎる。

「なあ、恋。昨日の夜はどうだった?」

「――凛君。その言い方はマイナスだぞ」

「会長?」

「悪いな。ちょっと口出してしまって」

「何ですか、急に」

「いや、君が意味深長な発言を行ったからな」

「『昨日の夜』、って言葉ですよね……。わかりました。すいません」

「別に謝る必要はないぞ。正直、私も恋が愁と梨人をいじめている姿を見て、少々ながら笑みを浮かべられるんだよ。何故かわからないんだけれど」

「会長がサディストなだけでしょう。……ま、いいです。会長も愁を虐めてみたらどうですか? あんなにドドドドMな男は早々いませんし」

「じゃあ……」

 会長がすっと愁の方へ近づき、愁の腹部に自分の足を置いた。

「か、会長……」

「ねえ、凛君。この後、一体どうすれば?」

 会長が質問を投げかけてきたので、笑顔で答えてやった。

「……普通に虐めればいいんですよ。『おらおら』とか、『こんなんがいいの?』とか。恐らく、愁はそれだけでノックアウトでしょうね。変態だから」

「お、お前に変態とか言われたくな……」

「ちょっと会長どいてください」

 会長は僕の指示を聞くとすぐにどいてくれた。そして、僕は足を愁の手の上に置き、「ねえねえ今どんな気持ち?」と少しの笑みを浮かばせて聞いた。

「お、お前……」

「質問に答えろ」

「お、男に虐められるなんて……」

「なんか問題があるのか?」

「大有りだ! 俺が、いやお前も『ホモ』って間違えられるかもしれないだろう! それに、男に虐められるのと女に虐められるのじゃあ、痛みと会館で天地の差だよ! 女に虐められるときは、スカートの中を覗けるからさ」

 僕は、愁のエロい欲望を聞いてしまったので、恋にこんな話題を持ちかけた。

「愁はいっつもお前のパンツを見てるそうだぞ」

「へ、変態!」

 愁がパンツの色を言おうとしたが、努力むなしくその場で泡を吹く。

「今日は水いっ……ぐはっ。……あっ、ああ……」

「変態! 変態!」

「違う! 俺じゃない! ……マジで、死ぬ」

「……変態! 変態!」

 やばい。愁が泡を吹きそうだ。このままでは、死者が出てしまう。

「れ、恋、どけ!」

「ちょ、こら……ひゃあっ!」

 愁が苦しむ隣で、僕は恋を押し倒し、恋の愁への攻撃を強制的にやめさせた。人を死なせるなんて、そんなこと僕に出来ない。

「恋。やりすぎだ。確かに愁は変態だが、それはやりすぎだ」

「ご、ごめん……」

「後でパンチラでもして、愁を元気づけてやれ」

「……変態」

「お前は危害を加えた。加減を知れ」

「……ごめん」

「謝る相手は僕じゃない。愁だ。それに、今愁に謝ってもダメだ。正常になってからだ。まずは、愁の呼吸が有るか確認するぞ。あ、AEDとかはまだ大丈夫だ」

「いいの?」

 恋が聞いてくるが、僕はそれに答えるまでに時間を置いた。愁の呼吸を確認するためだ。

「呼吸は……あるな。じゃあ胸骨圧迫を30回、行う」

 愁の救命を急ぐ。……別に死んだ訳じゃないんだ。愁は、生きてる。生きてるんだ。それこそ、恋の体重はそこまで重いわけではないだろうし、泡を吹いているのも一時的だろう。ちゃんと呼吸もしている。

「1、2、3……」

 前にネットで調べていたことが役立つ日が来るとは。ネットの情報を脳内に溜めておくことは悪いことではないのだ。いつか役に立つ。そう思った。

「8、9、10、11……」

「ゴホゴホ……」

「愁。大丈夫か?」

「大丈夫だ。……なんか、胸が痛いんだが……」

「14回くらい胸骨圧迫したからな」

「人工呼吸を恋にしてもらいたかったなあ」

「……お前なあ。見え見えだぞ、本心が」

「そうか?」

 寝ながらだったが、愁はちょっと笑っていた。愁はマゾヒストだが、結構優しい人間だ。確かに凛音の件では、キョドっていたのは事実である。けれど、そのキョドリも愁の一部だ。やはり、愁にはイジられキャラとして今後も笑いを届けてほしいものだ。

「んじゃ、もうすぐ1限始まるし、席ついてるか」

「そうだな」

 僕と愁が会話を交わす中、恋がそっと愁の傍に座った。

「お。恋、どうした?」

「……凛は黙ってろ」

 ギロっとこちらを睨む恋。

「えとまあ、なんだ。昨日は色々とあったけど」

「なんだ、急に改まって」

「謝ってんだよ!」

「なんで昨日のことから謝ってんだお前は」

「昨日は、わざとまずい飯食わせてごめんなさい」

「ああ、もうあの一件はいいよ。……なんでご飯にケチャップまではよかったのに、俺のところだけ胡椒を相当な量入れたんだよ……全く」

 想像しただけで吐き気がする。ケチャップに胡椒? そんなデンジャラスな組み合わせをするのは恋じゃなくてエリザの間違いじゃないのか?

「……あ、この事は痛み分けってことで、殴れ」

「は?」

「殴れ」

 女に殴れと言われてる状況……。僕なら殴らないだろうな。恐らく、頭を撫でてると思う。……さて、ギャルゲーエロゲーマーでマゾヒストの愁君。一体どうでるのか……。――なに実況っぽくしてんだ僕は。

「じゃあそうだなあ。……殴るわ」

「こ、こい!」

「えい」

 愁はそう言うと、本当に手で顔を叩いた。

「痛っ……」

 割とマジの力で叩いたようだ。あの恋が泣いてる。……どうせ、作り泣きだ。きっと、きっと嘘泣き……じゃない。何でだろ。なんで、恋がこんなに涙を?

 僕が考えている途中、とんとん、と後ろから会長が優しく叩いてきた。僕はすくっと立ち上がって、会長の口の方に耳を近づける。

「なあ、凛君。確かに、今のは恋が悪い。けれど、可愛そうだから『慰めて』やらないか? ……愁の言い分を一切聞かないわけじゃないけどさ、やっぱり泣いてる恋ちゃんは可哀想だろう? 幼馴染としてどうなんだ?」

「僕は、ああいう恋を見たことは有りません。恐らく、あいつが柔道始めた小3くらいから。昔はしょっちゅう泣いてたのに」

「……ってことは、泣いてるのには他の理由もあるというわけか」

「そうなりますね。……じゃあ会長、どうすれば?」

「――攻略、だな。昼飯に誘ってやれ。一応、購買でパンを2つ買って屋上へ向かえばいいさ。寒ければ、ボクが図書室でも生徒会室でも、開けれる所は頑張って交渉するから。……でも、後でボクに報酬をよこせよ?」

「その報酬って?」

「デートに決まってるだろう。……人の初めてを奪ったくせに」

「んなっ!」

「じゃあ、決まりだ」

 会長はすぐに笑顔になった。そして、僕の肩を叩いて、グッジョブ、とドヤ顔で右手親指を立てた表情を見せた。


 ***


 あの一件から数時間ほど経過した昼休み。やはり腰が痛い。なんとなく、昨日の夜……いや、今日の未明に何があったのかは想像がつく。……しかしまあ、あの会長の顔は本当にやばかった。赤らめて照れた女の顔は、二次元でも三次元でも至高と言える。しかも会長の場合『ボクっ娘』も兼ね備えているからな。ある意味の最強的な感じなのである。僕の萌え属性を全て兼ね備えてる的な意味で。

「なあ、恋。お前、今日弁当持ってきた?」

「寝坊した。……まさか、私から貰おうとした?」

「そうだ」

「ダメだぞ、私を当てにしちゃ。つか、会長の家に居たのなら、会長に作ってもらえよ。……こっちは久しぶりに寝坊して、涙が止まらなかったんだぞ」

「嘘つけ」

「え?」

「朝のことだろ?」

「……いや、マジで寝坊して眠気が覚めてなかっただけで……」

「焼きそばパンやるからちょっと屋上行くぞ」

「え、ちょ……」

 僕は恋を連れて屋上へと向かう。

 途中、愁や梨人とは会わなかった。美来とも会わなかった。が、唯一会ったのは会長だった。というのも、会長が屋上から降りてきたのだから。屋上に通づる道は、3階からじゃ一つしか無いし、そこからクラスや生徒会室までは一本道だ。だから、会わないと、ちょっとおかしいのだ。まあ、「何処かへ行った」と僕は解釈してしまうかもしれないと思うけど。


 ***


「まあ、焼きそばパンを食え」

「あ、ありがと」

「……寒いな」

「11月だもん」

「女子制服はミニスカだから相当寒いだろうな」

「男子制服は夏絶対暑いでしょ」

「まあな。でも冬は結構ポカポカだぞ」

「いいなあ……。って、ジュース系は買ってないの?」

「それは移動時間に買えば良い話だろ……って、あれは」

 自販機が置かれていた。まさか、会長が屋上行ってたのってこれが原因か?

『いえす』

『か、会長!?』

『君の悪魔ではないのだが、君のデビルマシンに潜入することが出来た』

『どうやって……』

戦友フレンド機能だ。フレンド同士でも悪魔同様の事ができる』

『はあ……』

『ということで、ボクは君の思っているえっちなことを全部聞き出せるようになったのである。なので、君は早く攻略してボクの元へ戻って来い!』

『何でですか……』

『弁当』

『え?』

『焼きそばパン、半分ボクの分にする約束は?』

『そんな約束結んでいないでしょう……』

『そうだったっけ。ボクはバカだなあ』

『……。で、自販機が何故屋上に?』

『津波とかで避難する時、屋上に皆逃げるから、その時のために』

『成程な』

『ちなみに、屋上の自販機以外のゴミ捨ては全部先生主導だけど、屋上だけは生徒会主導になった。ごめんね。ボクが生徒会室と図書室開けて欲しい、とお願い出したら、代わりにって言うことでそうなった』

『別にいいんじゃないですかね』

『そうか。んじゃあ、また』

 会長はそう言うと、『ノシ』とコメントをうって消えた。

「……自販機か。何か買う?」

「コーヒー飲みたいな」

「分かった。ブラックコーヒー買ってくる」

「ば、馬鹿か! 私がブラック無理なの知ってるくせに……」

「ブラック美味しいじゃんか」

「……い、胃を壊しちゃうっていうし」

「まあ、飲んでみろ。要は慣れだ。お前がMなのにSっていう感じを装っているから、愁があんなことになったんじゃんか。……でも、これ以上僕は恋を責め立てるような目はしないよ。じゃ、買ってくるわ、ブラック」

「だからブラックは……」

 止めようとする恋の思いなど露知らず。自販機の方向へ向かう。


 購入後、恋の居たところへ速やかに戻ると、恋はその場で焼きそばパンを食べていた。僕はコーヒーの缶を開けて、それを恋に渡した。

「無理だったら残せ。つか、無糖なんて無いじゃんか。微糖だが、どうだ?」

「……苦い」

「じゃあ、僕が飲むから缶ごとよこせ」

「そ、それじゃあ間接キス……」

「幼馴染同士だろ。昔は裸を見せ合った仲じゃんか」

「変態」

「うっせえ。……で、朝の件だけど」

「何さ?」

「あの涙は、お前の『心』が傷ついた時にしか流れない涙じゃないのか? 少なくとも、僕が最後にお前の涙を見たのは、今日の朝の件を除けば、小4くらいが最後だった。……なあ、なんで泣いたんだよ?」

「……痛かったから。自分が情けなくなったから。ただそれだけ」

「そうか。……まあ、気にすんな。前に、『幼馴染以上の関係にはなれない』って言っていたけど、大丈夫。安心しろ。お前の涙は無駄にしねえよ。つか、もっと心を強くしろよお前は」

「会長に言われたの結構響いてるんだけどね」

「実行しろ」

「難しい」

「はあ……。ま、パン早く食って戻るぞ」

「分かった。――じゃあ、さ」

「ん?」

「――ちょっと、くっついていいかな。寒いから」

「いいぞ」

 僕がそういった時、恋はちょこっと涙ぐんで僕の方に倒れてきた。

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