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Future  作者: 浅咲夏茶
4th Chapter;Asmodian of mythology and Gods of mythology.
49/127

Target:Ren,Rina and Hebe./episode48

 僕がヘーベーを家に連れて行く事になった。正直、会長にリリースしたい気持ちでいっぱいいっぱいだったのだが、それはこの際いいや。色んな悪魔と交友関係を持っているのは悪いことではないだろう。それこそ、コミュニケーション不足を補う意味では相当な意味を持つはずだ。

 というわけで、さっそくヘーベーに質問を投げてみる。

「ヘーベーは学生なのか?」

「学生、ではないです。働いても居ないですし、学校にも通っていません」

「青春の神妃のくせにか?」

「……それ、マイナス1点です」

「は?」

「青春ポイ●トについての話です」

 おや? 今、何処かのライトノベルで聞いた単語が出てきたが……。気のせいかな。よし、スルーが一番か。

「……お前も、ラノベやアニメに詳しいのか?」

「そこまで詳しいわけではないですけどね。……なんていうか、主人が良く読んでいる作品とかが、萌え系って言うんですかね? そういうのから、腐? みたいなやつまで、幅広いので、自然と知識がつくんです」

「主人、ってことは会長のことか?」

「凛さんは、主人の事を『会長』と呼ぶのですね」

「まあな。実年齢では、僕のほうが歳上なんだがな」

「その話、主人から聞いています。……凛さんは2ヶ月だけ産まれたのが早いんですよね?」

「ああ。……でも、正直『12月生まれ』って、クリスマスプレゼントと誕生日プレゼント一緒にされるから悲しくないか?」

「私は12月生まれじゃないから分かりませんけど、可哀想ですね」

「ああ。可哀想だろ」

 同情を求める。が、そうもいかないようで。でも確かに、あって数分の男に同情を求められたところで、「ああ、そうだね」と言えるのは、その相手を、そこまで良い相手と思っていないということだとも考えられる。要は、「キモい」だとか「関わりたくない」だとか、そういった感情が「関わりたい」「かっこいい」という感情よりも大きくなっているということだ。だから、いい相手と思えなくなるのである。

 ……が、逆の考えができないわけでもない。僕がエリザと12年離れて再会したように、そういった「前に何かがあった」のだとすれば、同情を求め、相手がそれにすぐ同情できないということは無いかもしれない。

「……結局、僕は可哀想な人間というわけか」

「何を言っているんですか」

「き、聞いていたのか!?」

 独り言が漏れているというのは、結構恥ずかしい。それがもし、独り言でなく内心であったのなら、更に恥ずかしい。顔が真っ赤になるくらいだ。

 それこそ、「あのアニメは最高」だとか、「●●は俺の嫁」だとか。そういう「内心で思った」ことを、もしも口から漏らしてしまったら、大変だ。

「……私は青春の神妃ですからね。学園ラブコメで起こる展開は脳内に入っているんです。ただ、凛さんは幼馴染がいるそうで……。最終的に、幼馴染を選ぶのか、その他を選ぶのか、結構気になるんですよね」

「何を言っているんだ、お前は」

「私、凛さんが思っていること、全部わかりますよ?」

「……は?」

「私、心が読めるんです」

 なんだそれ。……って、その能力神じゃね?

「神じゃないですよ? 当然、能力によって引き起こされるトラブルもあるのは事実です。特に人間関係のトラブルとか。でも、上手く使えば神能力です」

「読めるんだな」

「はい。基本私達悪魔は、主人の許可なしに様々な事ができませんからね。それこそ、悪魔は死んでいるので、ご飯を食べる必要も有りませんし」

「そうだったの?」

「はい。……なので、学校とか行くと食費が浮きます」

 意外とそれは便利かもな。……けど、学校の昼飯はたまに激旨ラーメンやらが提供されることも有るから、一概に「弁当至高」とも言えないのが現状だ。この高校は「予約制」じゃないので、事前に予約する必要もない。要するに、「飛び込み制」なのだ。だから、その日の気分で入ったりできる。それこそ、メニューは殆どが200~600円台なので、コスパも抜群だ。たまに、「スーパーセール」と題して、野球部やサッカー部等の部活動が大会でいい成績を出した時に、10%OFFとかをしてくれる。

 前に野球部が甲子園に出場した時には、80%OFF、特別に野球部員には1.5倍セールをやっていたこともあったっけなあ。……しかし、あの時の野球部員の笑顔ときたら、相当嬉しそうだったな。それこそ、牛丼を美味そうに食いやがって。……まあ、80%OFFっていうのも、相当な割引だ。

 その日は自販機で昼飯用の飲料を購入していた奴が0人だったという噂を聞いたことがあるが……真相は分からない。

「……いやあ、そんなことがあったんですか!」

 バレてた。過去の話を自ら心のなかに抑えておこうと思っていたのに。忘れてしまったのだ。眼の前に居るヘーベーは心を読むことの出来る悪魔で有るということを。それを知ってしまった以上、ここからどう対策していくか……。いや、それより、対策もなにも、今思っていることは全てこの眼の前のあくまに聞かれているわけである。となれば、今対策を考えても駄目ということである。 

 超魔法を使用されている現在、対策法を考えることは、無意味というわけである。即ち、これを解く為にある人物を呼ぶ必要が有る。その人物は……。

「会長呼ぶか」

「私の魔法、今は使う必要ないですからね」

「そうだ。僕だって男だし、変な事考えたらどうする?」

「その顔で言われても、説得力無いと思うんですけどね……」

「それは僕が女顔だからって言いたいのか!?」

「女顔じゃないですか。正直、その声でその顔はあり得ないです。……提案ですが、いっそ坊主にしてみては如何いかがなものでしょうか?」

「嫌だよ、坊主なんて」

「それこそ、裏声を出せるなら女装したりとか……」

 その時、後ろから声が聞こえた。

「だよね! 女装絶対似合うよね!」

 僕の肩が叩かれると同時に恋の声がした。嫌な予感しかしなかった。

「ちいっす」

「お前今帰りか?」

「うん。……でもなんか、凄かったね。カッコ良かったなあ、と」

「僕がか?」

「そうだよ! ……なんつうか、凄いそこの女の子に夢中だったといいますか。それこそ、『ライトノベルの主人公』としての本来の姿というか……」

「主人公だよ?」

「メタ発言、やめるか」

「そうだぞ」

 僕が恋との会話のキャッチボールを交わす中、後ろのヘーベーが僕の制服を引っ張って僕を振りむかし、そして耳元で囁いたのだ。

「私の計測上、目の前の恋さんは、貴方に相当デレていますね」

「……そんな計測出来るのか?」

「まあ、私は青春の神妃です。その程度、簡単に計測できます」

「どんな風に計測しているんだ?」

「計測方法は、主に『デレ度』、『攻略完了度』、『性格』、『能力値』、『三大欲値』の合計5項目で審査します。ちなみに、今の恋さんを合わせると……」

 そういうと、僕にメールを送ってきた。アドレスは会長のメルアドだ。主人の携帯を使っているのか? それとも、主人の携帯を経由してメールを送っているのだろうか。

「これは主人のサブ携帯です」

「マジかよ」

 白ロムではないようだ。……さすが金持ち。まさかの「サブ」携帯なんて。本当に意外や意外だ。でも、金持ちならそれも普通なのかな。庶民である僕からしたら、金持ちの生活なんて、想像もつかないし。それはそれは優雅な生活をしているんだろうな。……でも、会長は僕だけにしか話していなかったっけか。『自分が金持ちだ』っていう事を。

「……主人も凛さんにデレているわけですか。困りましたね」

「いや、会長はデレているとか、え?」

「デレてると思いますけど。……いや、前に神戸大橋で言ったんです。『主人は絶対凛さんに好意を持ってる』って」

「タライの一件の後か?」

「そうだ。タライの一件の後だ。……何故凛さんがそれを?」

「なんか、聞こえていたんだよね。あの時、エリザを背中に乗せて映画館に行く途中だったんだが、その時に聞こえてきたんだよ。デビルマシンから」

 デビルマシンから、とは断定できなかった。それでも、考えられることはそれしか無いし、他には思い浮かばないものだから、そうした。

「……ねえ、凛」

「なんだ?」

「どうして、私に隠れてそこの子とお話をしているのかな? かな?」

「こ、怖いぞ恋……」

「いいんだよ? 私、これ持ってるから」

 そう言うと、恋は僕のエロ本を取り出した。しかも、表紙が相当エロいやつじゃん。……恐らく、恋は僕が何かやらかした時、自分に被害が及んだ場合に、それを打ち消そう、火消しようということで持っていたのだろう。

「……それで? これを出してでも、同じ事言えるの?」

「そ、それは脅迫だぞ……。う、訴えてやる!」

「ねえ、ひとつ言っていい?」

「な、なんだ」

「ここでさ、『キャー、この人痴漢!』って叫んだら、どうなるか分かる?」

 死ぬ。社会的に僕が死ぬ。……無罪なのに。そんな免罪被りたくもない。被ったら、本当に社会的に死ぬ。……正直、痴漢犯罪に関してはは男は勝ち目がない。……そういう時こそ、サタンの能力を使えばいいのか。空間を停止し時間を停めた上で、僕の身体を入れ替える。そして、心も入れ替える。

 僕が「解除」しない限り、サタンは僕に逆らわない。だから、サタンの能力を色々なところで有意義に使うことが出来る。

「……凛さん、意外と酷いこと考えますね」

「そうか?」

「でもまあ、無罪だからそれくらいの事はいいかもしれませんけど」

「そうだ。倍返しってもんだよ。倍返し」

「……幼馴染だから何でも許されると思ったら大間違いだと思いますけどね」

「いや、人のエロ本を提示されて、笑いのネタにされたら、そりゃあねえ?」

 後ろからまた近づいてくる影が出てきた。その正体は……。

「おい、ヘーベー。なんだ? トラブルでも起こしたか?」

「いや。凛さんが呼んだんです」

 会長だった。恋かと思ったが、その声は恋ではない。

「あのメルアド、お前のメルアドだよな?」

「……」

「サブのメルアドを使用しやがって……」

「しゅ、主人っ!?」

「殺すとか、そんな卑劣な事はしないさ。……で? 要件は?」

「私の『人の心を読む能力』を解除して欲しい、とのことです」

「……思春期の男の子からしたら、嫌な存在だろうしな。まあいい、解除だ。ということで、この話をナシにするか。なんか、凛が嫌がっているしな」

「出来ればナシで、お願いします」

「『出来れば』ということは……解除しなくてもいいのか?」

「そういうこと言ったら、あの秘密バラしますよ?」

「やってみろ。こっちには『マネー』があるからね」

「うぐっ……」

「いいぞ? やってみればいい」

 痴漢に続いて、今度は金の圧力とは……。それでも、恋も会長も、本当に僕をいじめようとしているわけではなく、あくまで『話の中の一部分』という意味だけのように聞こえた。金の圧力にしろ、痴漢冤罪にしろ、あくまでも『話の中の一部、僕をイジるための内容』という意味合いしか持っていない、そう感じた。

「会長、それ言ってよかったんですか?」

「あ……」

 後ろには恋が聞きたそうにしていた。少しうるうるしている瞳は、まるで恋の実年齢が17ではないように感じさせる、そんな瞳だった。一言で言おう。可愛い。普通に可愛い。……今まで散々僕に文句を言っていたくせに。

「どうした? そんなに私の方向を見て」

「会長を見ていたわけでは有りません」

「ということは、恋に見惚れていた……ふーふー!」

「こ、こら会長、騒ぐなっ! ……で、恋も照れるなっ!」

「て、照れてない! 照れてないもんっ!」

 なんか、いつもの恋とあからさまに違うのだが……。やっぱりデレたのかな。さっきヘーベーも言っていたし。あり得なくはないか。

「なあ、凛君。一つ、言っていいか?」

「何?」

「私、百合に目覚めそう……」

「やめてください。……でも、意外とイケるかもしれませんね」

「百合展開がか? ……まあ、私はノーマルだからな。アブノーマルなプレイはしない主義だし、恋人もノーマルでいい。変な事はされたくない」

「意外と会長ってそういうとこしっかりしてるんですね」

「アブノーマルな趣味にはハマっていないからな、私は」

「例えばどんな?」

「うーん。……拘束プレイとか」

「いきなりR18な内容ですね……」

 唐突だった。いきなり『拘束』なんて言い出すもんだから、もしコーラでも飲んでたら、僕は吹き出していたに違いないだろう。いや、それよりもなにも、「R18」という単語を聞いた瞬間に、恋が足音を立てて僕の方へ近づいてきたのだ。やっぱり恋はムッツリスケベ、というわけか。

「……ムッツリスケベ」

「んなっ! う、うるさい!」

「変態」

「わ、私は変態ではない……」

「エロゲしてるくせに」

「え、エロ本持ってるくせに生意気……」

「僕は男だからね。性欲がないわけではないのさ。……でも、君は女だろう? なぜエロゲをプレイする? 僕が渡したのは事実だが、『しない』という選択肢は無かったのかな? ……恋、正直に言えよ」

 僕が少々キツメに言うと、会長が止めに入った。

「ちょっと凛君キツすぎじゃないか? ……でもまあ、ちょっとマイナスだよなあ。まさか恋がエロゲーをしているなんて、マイナスだよ」

「……酷いよ、凛」

 泣き顔。……やばい。弱っている恋がとてつもなく可愛すぎる。その一方で、会長は泣くことはなく、ただただ呆れた顔を見せていた。

「まあ、まずはヘーベーを戻すよ」

 先にヘーベーを戻す。僕が戻したわけではないけれど、戻す。

「……これまた、嫌な展開だな」

「会長、助けてくださいよ……」

「女子の立場から言わせてもらう。君は、ちょっときつく言い過ぎだ」

「そうですかね?」

「そうだ。確かに恋は格闘技が強い。相当強い。私なんかと比べたら、倍以上だ。10倍以上と言ってもいいね。SPをお願いしたいくらいだよ。……けどさ。皆が皆、力の強さと心の強さは比例しないんだぞ?」

 会長はさらっと名言じみたことを言った。「皆が皆、力の強さと心の強さは比例しない」。……名言だ。でも、それは的を当てている。

 皆が皆、力の強さと心の強さが比例していれば、卑劣な事件の起きる確率は減るはずだ。心が強ければ、力だってコントロール出来る。やるときはやるし、やらないときはやらない。けじめをきっちりつけられるわけだ。

 しかし、恋は比例していない方に入る。恋の力は相当強いけど、恋は意外とすぐ泣く女だ。でも、扱いにくいわけじゃない。一応、家事とかが得意だからか、心は温かい。心は『広い』。……けど、心が『強い』わけじゃない。

「悪かったな」

 僕が謝った時、会長の姿はなかった。どうせまた、後々メールが来るんだろうけど、来ないかもしれないので、明日挨拶に行くのは覚悟しておこう。

「いいよ、もう。会長さん言ってたじゃん。『心の強さと力の強さが比例しないことも有る』って。……あーあ。全くその通りだよね。あたしってほんとバカ……」

 最後の台詞はネタ? それとも、咄嗟に出てきた会話の中のただの一部?

 少し気になった。けど、もういい。ここでネタかどうかを気にしていては、それこそ「ネタか?」とか僕が言って、誤った捉え方をされたら嫌だし。

「……じゃあ、行くか?」

「帰ろう」

「……久しぶりだな、こうやって二人で帰るのって」

「いっつも私のことをバカにしたりしてさ。本当は、私は必要不可欠な存在なんじゃないかな、凛にとって。……早く幼馴染離れしたら?」

「ツンデレキャラだからなあ、お前は」

「なっ、つ、つまり逆の意味で捉えた訳じゃないだろうな!?」

「さあ?」

「……もういい、先行く!」

「待てよ」

「ちょ……」

 強い力で恋の手首を掴んだ。そして、僕の方に強引に引く。すぐに恋の体を支えこむようにして抱くと、恋は目を大きくして、びっくりしていた。

「こ、こらなにを……」

「お前、お菓子食べたくないか?」

「凛はあれだけ食べたのにまだ食べる気なのか……」

「違うわ。お前に『奢るよ』ってこった」

「……え?」

「ああもう、行くぞ」

「ちょ、ま……」

 僕は、恋を引き連れて歩道を走った。振り払おうとすれば、恋は一瞬で僕を振り払うことが出来る。けれど、恋は僕のことを振り払おうとはしなかった。


 ***


「ここって…」

 僕は、小学校時代よく来ていたスイーツ店を訪れた。洋菓子も和菓子も販売している、昔からある店だ。僕も恋も、この店の従業員とは顔見知りだ。そのため、それといった遠慮もなく、スイーツを購入したりしている。

「いらっしゃい。……おや、君は凛君、そして君は恋ちゃんじゃないか。いやあ、大きくなって。可愛くなって、かっこよくなって……。あれかい? 二人は恋人同士かい? ……微笑ましい限りだなあ」

「いや、僕と恋は恋人というわけでは……」

「周りから見れば、本当お似合いなんだけどなあ」

「いや、絶対カカア天下になると思うんですけど……」

「実際、カカア天下の方がいいなじゃないかね。昔からの付き合いなら、ちゃんということも聞いてくれるし、たまにはお互いに言い合っても、直ぐに仲直りできると思うけどなあ、私は。さて。何を食べに来たんだね?」

「そうだなあ……。恋、何がほしい?」

 恋に聞く。展示されているスイーツを、愛おしく見るその目は、まるで『スイーツ女子』である。……17でスイーツって言うのも、ちょっと……ね。

「り、凛が食べたいと思うものでいいけど……」

「いや、これは僕が奢っているんだし、遠慮する必要はないよ?」

「じゃあ……これ」

「……高くね?」

 指定された金額は1200円。なんて高いんだ。……しかもこれ、ショートケーキ4つセットのやつじゃん。僕の話、聞いていなかったのかな?

「いや、一人分でいいぞ。モンブランでもいい、ショートケーキでもいい。僕はもう腹が一杯で、これ以上食べたらまた腹壊して下痢や嘔吐になりそうだから、今日は食べない。……ほら、ケースから選べよ」

「……抹茶ケーキ食べようかな」

「抹茶でいい?」

「いいよ。……あ、これは」

 アイス。秋な(11月だから冬といっても過言ではない)のに、置かれていた。トゥエンティワンアイスクリームで見かけるような、ああいうタイプのアイスを作るために使うスプーンが、色とりどりのアイスの味の付けられたバニラのようなもののケースに付属していた。

「抹茶味有るみたいだけど、どうする?」

「いつもよりは温かいけどさ……」

 もうすぐ夜。日中の暖かさなんて、もう見え隠れする程でもない。それはもう隠れた。今は暖かくない。寒い。ただただ寒いの一点張りで十分だ。

「……じゃあ、アイスで行く?」

「やっぱり……和菓子で良くない?」

「ダイエットしたいの?」

「私は今現在、痩せてる方だよ?」

「……ちっ」

「舌打ちすんな! ……でもまあ、どら焼きでも買っていこうかな」

「なんでどら焼き?」

「なんか、前より餡の量が2倍になったってよ」

「マジかよ。……じゃあ、その分僕が食べていい?」

「奢り賃として食っていいよ」

「サンキュー、残念恋愛マスターさん」

「おっと。最近『不恋』とか言わなかったから抑えていたけど……ねえ?」

「……ごめん」

「いいよ。奢ってもらえるんだし。……じゃ、お願いします」

 どら焼きの会計を済ます。

 その間、店内をうろちょろした僕は、丁度新商品のジュースの入ったポットがあったので、それを操作して新商品のジュースを頂いた。

 ……意外と美味しかった。色的にオレンジジュースかと思ったが、意外と酸味が少なくて、結構甘かった。書かれていた髪を見る限り、砂糖を一切使用していないようなので、それは凄いと思った。


 ***


「凛。5分の1あげる」

「なぜに」

「エリザの弁当を20%食べたらしいじゃん」

「それ、宇城先生のしたことだけど……」

「いいのいいの。ま、そういうわけで、5分の1どうぞ」

 どら焼きを千切る。餡が飛び出してきた。2倍にしたのは嘘じゃなくて本当のようだ。しかしまあ、なんで2倍にしたんだろう。材料が多く入ったからだろうか。色々考えられるけどな、それ以外にも。

「おお、うめえっ!」

 食べた瞬間、口の中に餡の独特の味が広がる。いやあ、美味しい。久しぶりに食べたのだが、小さい時に食べたものと大差なく、今度また来ようと思うくらい美味しかった。いや、でも本当、小さい頃に食べた味って、大きくなってから違う味になって感じるのに、このどら焼きは、小さいころとは大差なくて、小さいころを思い出すような感情の変化も僕の心に見られた。

「寒いな」

「そうだね」

「もうちょいくっつくか」

「なんだそれ。ちょっと言い方キモいぞ」

「う、うっせえ。お前寒くないのかよ?」

「そ、それは……」

「やせ我慢するんじゃねえよ。本心を吐けよ」

「うう……」

「……ったく、もうちょい強引にすべきなのかな」

「ぬあっ!? ……へっ、変態っ!」

「寒いからちょっと密着しようとしたまでだ」

「ああもう、マジで恥ずかしいから早く帰るぞ!」

「そういうツンツンしてるところ、可愛いなあ」

「……っ!」

 むすっとして、恋は足早に歩き出した。一応僕も恋の歩幅に合わせようと努力をするものの、流石は格闘技が得意なことに定評のある恋だ。僕でも抑えられないほどの強さが僕を襲う。

「こら、待てっ!」

 恥ずかしくなったのか、恋は全速力で僕に自身のカバンを投げて家の方向へ走っていった。……はあ、恋というやつはこれだから……。




 ――腐れ縁の幼馴染に、少々手こずった夕方だった。

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