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Future  作者: 浅咲夏茶
4th Chapter;Asmodian of mythology and Gods of mythology.
37/127

Target:Ren_part07/episode36

「こうしてお前の歯を磨いていると、お前が小学生に見えてくる」

「ゴホッ……。私がガキだって言いたいのか、お前は」

「頭悪いじゃん」

「り、凛よりは悪いかもしれないけど、一応、学年順位は50位以内なんだぞ?」

「学年全体345名中、学年順位50位ってのは良いほうだと思うが、学年一位の僕からすれば、そんなこと知ったこっちゃない」

「そういうこと言うな! ……私だって、私なりに頑張っているんだぞ」

「頑張ったね」

 僕は恋の頭を撫でる。撫でると、恋の顔には微笑みが浮かんでくる。やっぱり、こうしてみているとまるで恋が、本当の小学生ガキのように見えてくる。ああ、ちなみに僕はロリコンではない。「小学生は最高だぜ」なんて言わない。

「は、歯を磨けっ!」

「はいはい」

 もう一度撫でる。ツンデレというキャラクター性をぶち壊す、それが僕の今やっていることなんだろうけど、ツンデレキャラクターってラノベにおいては普通、メインヒロインであるべきなのだが、今まで恋はどちらかというと「メインヒロイン」という言葉の後ろに「(笑)」が付いていた。

 まあ、空気主人公よりは断然マシだと思うが。

「痛くない?」

「大丈夫」

 僕は力を強めたりはしなかった。そんなことしたら可哀想だ。人をいじったりするとき、僕は、顔や身体などに危害を加えたりはしない。そんなことして訴えられたら嫌だし。だから、言葉でいじっているのだ。それは恋でも。そして、僕にだっていい悪いくらいわかるし。

「歯ブラシ咥えさせるか」

 僕は有る方向へ、脳内を転換した。歯ブラシをくわえる恋。想像してみると、意外とイケるかもしれない。……歯ブラシに涎が付いていると考えると、それがダラア、と垂れてエロいようにも感じる。

 脳内妄想はさておき、僕は恋を連れて洗面所に向かった。口の中にたまったものを恋に吐かせた後、僕はタオルで口を拭いてあげた。そして、この場所を見て、思い出したことが一つあった。

 それは前に、いや本当に前の話だが、僕はまだ小学5年くらいだったか。その時に、僕は恋と一緒に風呂に入った。考えてみると、あれが恋と入る最後の風呂だった。

「恋と風呂入りたいな……なんて」

 やってしまった。

 思ったことを直ぐに口に出してしまうという僕の癖が、ここにも現れてきたか。最悪だ。また僕の評価が下がった。……風邪引いている奴が風呂なんて、それこそダメだと思うけど、それ以上に僕が恋と入るというのは、これまたダメなことだと思う。出てるとこは出てる年齢だ。

「……でも、ゆ、湯船には入らないけど、洗うとこは洗わないといけないし」

「洗うところって何処だよ?」

 わかっていた。けど、僕はあえて聞いた。恋はSじゃない。Mだからな。自分ではSって思っているようだが、本当の恋の体質はMだ。

「……い、言えるわけ無いでしょうが!」

 顔を真赤に染めていく。このままでは冷えピタの意味がなくなってしまう。が、恋もそれだけ恥ずかしがっているわけだ。それに、ようやくツンデレキャラとしての自覚的なものを取り戻したようで、ちゃんとしゃべり方もツンデレの良く使うしゃべり方になっている。

「だよな。ま、タオルで拭くくらいでいいよな。それは、お前でも出来るか」

「で、出来れば……」

「ん?」

「拭いて、欲しいな……」

「言葉が足りないな。僕はお前を今日、一生懸命世話してあげたんだから、言い方ってのが有るだろう。お前は、そんなことすらわからないのか?」

「……ど、どういう風に言えばいいのさ!」

「『り、凛お兄様。私のほ、火照ってしまった身体を、な、直して下さい』。はい、復唱」

「出来るかっ! そんなこと言わせんな、お前には妹がいるだろ!」

「リアル妹は無理」

「美来ちゃん、可哀想に……」

「あいつは腐女子だからな。僕は見てしまった以上、もうあいつとは無理だ」

「じゃあ、私がなんで妹みたいにしなきゃならないのさ」

「いや、どうせお前マゾヒストだし、僕がイジメてあげたら喜びそうだなって」

「わ、私はSだよ!」

「お前はMだ。……ほら、言えよ早く。『り、凛お兄様。私のほ、火照ってしまった身体を、な、直して下さい……』って。ほら、こちょこちょするぞ」

「か、風邪引いている私にちょっかいとは何事……あひゃひゃひゃ……!」

「ほらほら」

「やめっ、ひゃあっ! あひゃあひゃあひゃひゃ……わ、わひゃりまひひゃあ(分かりました)……ふくひょうひまひゅう(復唱します)……」

「その調子だ。上目遣いで頼むぞ」

「……練習させて」

「ああ、いいぞ」

 恋は、下を向いて、顔を真赤にして、僕の方を向いてトロンとした表情でこちらを見つめ、そして僕の顔に手を回してきた。

「り、凛お兄様。私のほ、火照ってしまった身体を、な、直して下さい……」

「うぐ……」

 ついつい、鼻血が出そうなほど僕も紅潮してしまった。可愛い。今の恋は本当に可愛い。僕の言ったことをすんなりと聞き入れて、それを実行に移してくれた。……今の言葉の破壊力は半端なものじゃない。相当な破壊力だ。

「ふ、拭いてよ?」

「ああ、拭くよ。拭くよ。でも、背中とお腹だけな。その他は自分で拭け」

「じゃあ、胸とかは私が拭くの?」

「いつもお前はそういうことに対して『破廉恥』とか言っているくせに、今だけはそういうこと言わないんだな。それも風邪の影響か?」

「違うと思うよ」

「そっか。んじゃ、身体拭くから服脱げ」

「い、いきなりだな、おい」

「いいだろ、12年来の仲なら!」

「こ、こらあっ!」

 幼馴染という言葉を有効に活かして、ここは恋をイジメてやろう。久しぶりだ。こうやって恋の服を脱がせるのは。それこそ、僕や愁、梨人のおかげで恋は柔道を覚えてしまったわけだ。いや、別に柔道が悪いわけじゃないんだ。僕が、愁が、梨人が悪い。……きっとこいつも嫌な思いしたんだと思う。今思い返せば、恋は頼れる年上の女性なんて、姉ちゃんくらいしか居ないのだ。その姉ちゃんだって、性的なことにもオープンな性格だし、僕は姉ちゃんにそういうことしなかったし。恋は追い込まれていたんだろう。

 今まで行ってきた僕の悪行が今、思い返されていく。

「病人にエロいことすんな!」

「いいだろ」

「せ、性欲魔神め……。私が何のために柔道をしていると思って……」

「いや、別にエロいことするわけじゃねえし。身体拭くだけだし」

「体温計の先端で胸をイジられたから簡単には信じないぞ」

「……ほ、本当にエロいことしない! 破廉恥なことしない!」

「約束だよ?」

「あ、ああ」

「エロいことしたら、去●してやる」

「や、やめろ。そういうこというな……。マジで鬱になる」

 男にとって、去●なんていう言葉は非常に聞きたくない嫌な言葉だ。自分のアレがなくなるのだ。そう、根こそぎ来られたりしてな。想像したくもないし、されたくもない。……本当に、されたら鬱になりそうだ。けど、恋からしてみれば、僕をそうしていないことから「まさか僕に好意を持っている」とも考えることが出来るか。……でも、暴力振られている時点で恋は何かしらの『嫌』な気分を僕に持っているのは間違いではないようだが。

「さすがツンデレやで」

「どうした?」

「いや。さて。拭くぞ。決心付いたか?」

「許可無く人のスカートを捲りまくり、今は人の服を捲り上げるのか」

「スカートを捲りまくったのは悪かった……。けど、あの頃の僕は、きっとお前を好きだったんだと思うよ。だって、あの頃のお前は可愛かったし」

「今の私はやっぱり魅力がないのか……」

「いや、料理作れんじゃん」

「それは凛もでしょ」

「力が強い」

「今は力強くないじゃんか」

「……エロい言葉いっぱい知っているけど、それを隠している」

「意味わからねえよ最後」

「でも、『●●って何?』とか聞いてこないじゃん。それこそ、去●って言葉だって知っていたし。エロ本だって預かってくれたし。だから、お前はそういうエロい単語には相当敏感なムッツリスケベなんだよね」

「む、むっつりすけ……」

「そこがお前のいいところだろ」

「絶対私はムッツリスケベなんかじゃないからな!」

「じゃあ……お前のいい所無いじゃん」

「私、そういう事聞くと立ち直れないからね? 割りと本気で」

「じゃあ、僕と一緒にエロ本を見たりでもするか? ムッツリスケベかどうか確かめてやる。それじゃあ、早く拭かないとな。……つか、腹と背中しか僕は拭かないのだから、そこまで気にする必要はないと思うけどね」

「……本当、エッチな事すんなよ」

「はいはい。ほら、服捲くって」

「うう……」

 恋は照れながらも僕の言うことを聞いてくれた。僕の言うことを聞いてくれるっていうのは、結構有難い。聞いてくれないと、僕の折角の世話が無駄になる。歴史の話に変えるけど、僕が奉公してるのに恋から御恩が貰えないのはおかしい。

 棚から青い色の生地のタオルを取り出した。バスタオルではなく、ミニタオルでもなく、普通の無地のものだ。僕はそれを洗面器の蛇口から水をひねって濡らし、一絞りした上で、恋の身体を拭き始めた。

 恋は、ブラジャーを当然付けていたけど、恋は察したのか、ちゃんと取ってくれた。まあ、前の方に移動しないからしてくれたんだろう。

「冷たくない?」

「うん。でも、欲を言うなら暖かいほうが良かったかな」

「まあ、僕だってそれなりにお前に近づいているんだから、人肌の温かみがわかると思うんだけどなあ」

「そうかな。……でも、凛って凄いね、本当。家事もできるし、人をちゃんと叱れるし、ちょっと厳しかったり、ウザかったりするけど、反面優しさがちゃんとあるし。成績は優秀だし。ゲーム脳だし。エロ本もエロゲも持ってる変態だし。……完璧超人じゃん」

「そう言われると照れるなあ……。ま、有り難うな。そう言ってくれるのなんて、恋くらいだもん。なにせ、姉ちゃんも美来も、エリザも愁も、梨人も、そういうこと言ってくれないし。でも、それは自信持つわ」

「そっか。……じゃあ、一つ聞いていい?」

「ん?」

「二次元と三次元、どっちが好き?」

「……ひどい質問だな、おい」

「二次元が好きって言ったら、『キモヲタ』って呼んであげる。三次元が好きっていったら、『ド変態』って言ってあげる」

「それはなんだ? 僕がさっきまでお前にきつい言葉を言っていたから仕返しか?」

「そうだよ。仕返しだよ。やられたらやり返す……。倍返しだッ!」

「倍返しすんじゃないよ。……僕はどっちも好きだよ。二次元も三次元も。リアルで鬱になったら理想を求めればいいし、理想が現実で、それをつきつけられたら、現実に戻ればいい。難しい話じゃない。コロコロと変えればいいだけの話だ」

「コロコロ変えるって言い方、良くないと思うけどな」

「お前が思ってるようなクズじゃないぞ、僕は。恋愛とかは、しっかりと一人決めたら変えないって心のなかに決めてるし。だから、本当に愛さなけりゃ僕は付き合わないし、彼氏にもならない。……バカみたいだろうけど、僕はそういうところはちゃんとしようと思ってる」

「そっか。でも、確かに凛みたいな男の人って、ギャル系の人から金奪われそうだよね。……でもさ、そうなってくると、いつ初夜を経験するの?」

「お前なあ……」

「だ、だってさ、そういう信念貫いたら、いつまでも初夜来ないじゃん……」

「女の子が初夜なんて言っちゃいけません!」

「さっきまで私のことを散々『ムッツリスケベ』とか言って馬鹿にしていたくせに」

「……悪かったな」

「そうだぞ。……もしかして、凛も照れちゃった?」

「悪いかよ!」

「可愛い。……本当、そういうところは女々しいなあ」

「なんで僕がこんなマゾヒストの前に屈しなければいけないのだ……」

「言っていただろ、私はSだって」

「身体はマゾなのに、力でSって誤魔化しているだけにしか見えないけどな」

「私の言い分が一切聞かれていないぞ?」

「そりゃあ、僕はSだからね。Mである恋の言い分など、そうそう聞くわけ無いじゃん」

「じゃあ、もしも私が『凛が好き』って言ったら、凛はどうする?」

 僕はピタリと手を止めて、タオルを恋の身体から離した。そして、僕は水を温水に変えた上で再度タオルを洗う。まるで今の恋の話を誤魔化すように。

「恋は、僕のことが好きなのか?」

「……好きだよ」

「……え?」

「ちなみに、私自身もまだ『ライク』なのか『ラブ』なのかハッキリしていないんだよ。……出来れば、12月12日、その日までに気持ちを凛に伝えたい」

「僕の誕生日、だからか?」

「そうだよ。18歳の誕生日。その内の12年を共に過ごした男の子へ、ちゃんとした気持ちを伝えないとね。……あ、そうだ」

「ん?」

「小さいころの約束、覚えてる?」

 出た。幼馴染特有の『小さいころの約束』系の話題。エロゲーやギャルゲーで、幼馴染キャラクターが登場すれば、必ずと言っていいほどこういうネタがくる。大体の場合は『実は小さいころにキスを済ませてました』とか、『小さいころに偽だけど、婚姻届書いてました』とか。そういう展開が多い。

 ただ、僕は小さな頃の記憶が飛んでいるので小4より前の事はわからない。正確には、小4の4月より前の記憶がないのだ。身体に違和感だとかもないから、事故とかでは無いのだろうけど。でも、それより前の記憶が無い。

「……約束って、なんだ?」

「じゃあ、いいや。私の部屋の何処かに、日記があるから、ちゃんと見てね」

「ちゃんと見ろってどういうことだ」

「さあね」

「いいから言えっ」

 急に僕はタオルで体を拭くことを再開した。冷たいタオル。お湯で濡らしたはずなのに、もう冷たくなっている。流石にそろそろ恋を上半身裸にしておくのも不味いか。さらに風邪を強くされても困るし。

 僕はささっと腹を拭いて恋の服を着せた。

「勝手に着せるな! ブラ付けてないぞ!」

「それがいい」

「変態っ!」

 無地の服は恋の胸を強調する。強い力で僕に襲いかかろうとするのだが、逆に自分自身の胸を揺らし、僕の煩悩を呼び覚ましているだけであり、これまた本末転倒だ。それに、今は恋のパワーは強くないから、僕だってちょっとのダメージは喰らうかもしれないけれど、それを抑えられる力を持っている。

「寒いだろ。御免な。自分の出てる部分とかは自分で拭いてくれ」

「じゃあ、自分の部屋戻っていい?」

「勝手にしろ」

「つれないなあ」

「うるせえ」

「じゃあ、またおんぶして」

「無理」

「酷いぞ、私はこんなに風邪引いて苦しんでいるっていうのに」

「知らねえよ。……で、薬は無いのか?」

「頓服薬でしょ?」

「そうだ」

「うーんとね、私の部屋にあるよ。……それと、私の部屋にミニ冷蔵庫があるから、それを使おう。しかしまあ、久しぶりに稼働するけどさ」

「凄いなお前。なんでそんな準備万端なのさ」

「いや、箪笥の中に入っていたからね。前に確認しておいて良かったよ。じゃあ、冷蔵庫の中から水を持ってきてね」

「はいはい。それじゃあ、おんぶは出来ないから先に戻れよ」

「ちっ」

「『ちっ』じゃない。舌打ちするんじゃないよ、全くもう」

 僕は冷蔵庫の方に行き、そこでペットボトルの中に入ったミネラルウォーターを持って部屋に戻った。2リットル入っているだろうか。結構重い。これは乾パンと合わせて、災害対策にも使えるくらいだ。なにせ、冷蔵庫の中にこれと同じものが他に3本程度有ったのだから。

「戻った……って、何見てんだお前」

「エッチな本」

「僕の所持物だぞ、それ……」

「それじゃあ、この所持物を全てエリザちゃんにお届けしてあげようよ」

「病人のくせに、そんなことすんじゃない。ほら、早く薬出して」

「はーい」

 恋は、自分の机の2段目の収納場所から薬の大量に入った透明の収納箱を取り出し、そこから風邪の頓服薬を取り出した。それと同時に、熱冷ましの頓服薬も。

「さてと。熱測るぞ」

「さっき測ったじゃん……」

「うるせえな。これから寝るんだぞ」

「り、凛も一緒に寝てくれるの?」

「まあな。エリザにはちゃんと断ってあるし」

「……そ、そんな。一緒に寝るとか、風邪移っちゃうよ?」

「マスクつけるから大丈夫。……それより、僕はもう回復したからコーヒー飲んで徹夜してもいいんだぞ」

「て、徹夜なんて……そんな」

「まあ、お前も僕の看病したときは徹夜しなかったらしいけどね。そのせいなんじゃないかな、お前が風邪引いたのって」

「あり得るかも。だって、私3時に寝たもん」

「じゃあ僕もそれまで起きてようかな。それこそもっと長起きして倍返しか」

「なんでも倍返しすればいいってもんじゃないだろ……」

「それに、もし明日も風邪治っていないのであれば、ちゃんと僕が基礎体温とか測ってやっからな。測り方知らないけど、教えてくれれば僕がやってやるから心配するな。朝飯もちゃんと作る。安心して寝てくれ」

「あ、安心して寝てくれって、格好良いこと言っても、なんにも変わらないのに」

「そうか……。それじゃ、体温測って寝るぞ。くれぐれも、お漏らしはしないでくれよ。またシーツ変えるの面倒だろ」

「うるさい! 馬鹿! 死ね!」

「お前、羞恥心取り戻してきたか?」

「知らないよ! 馬鹿! ……つか、基礎体温とか絶対に測らせないからね」

「なんで?」

「察しろ馬鹿!」

「いや、僕男だから女の事なんて一切わからないし……。いや、マジで」

「じゃあ、何の日だと思うか言ってみろ」

「うーん。女特有の日だとすれば、あの日か?」

「そうだよ! だから察しろって言ったんだよ!」

「風邪なのにな……。ごめんな」

「いや、凛のせいじゃないし」

「それもそうだね。んじゃ、薬飲んで寝ろ。治らなかったら明日医者行くぞ」

「私一人でいってくるよ」

「馬鹿か。インフルエンザだとしたらどうする」

「それは……」

「僕も明日は休む。お前が明日も熱を下げていなければな。平日は姉ちゃんも大学に行く。家には誰も居ないんだ。だから、僕が世話をするよ」

「でも、単位とか取れなくなっちゃうじゃん……」

「心配ねえよ。僕は学年一位の成績をとっている。お前だって25位だったか取ったんだろ? 十分だろ。それに、出席日数に関しても、何か言われるような感じじゃないし」

「そうだったっけ。分かんないや。けど、留年だけは嫌だな」

「そりゃ僕もだけどさ」

「平気であと4ヶ月あるから、まだ3分の1残ってるんだよね、出席しなきゃいけない日が」

「あれ。4分の1じゃないのかな?」

「さあ?」

 まあ、本題はそこではないからさておき。留年だけは僕も恋も嫌だ。けど、一日くらい、一週間くらいどうにかなるはずだ。一週間というのは、インフルエンザで休まなきゃいけない日数なわけだが、本当は5日で薬は終わるらしいが、それでもあと2日様子見する必要があるようで。僕も前に一度だけインフルエンザを経験したことがあるが、軽度だったらしく、あまり重い事にはならなかった。が、今恋が陥っているのはそういう状況ではない。さっきより今は咳が出ていないが、これがもしもインフルエンザだとすると、これから世話する日が増える。

「さて。早く薬飲んで寝るぞ。なんど言わせるんだ」

「はいはい」

 僕は恋に薬を飲まし、そのまま寝かせた。別に催眠薬とかじゃないし、それを使ってやらしいことをするわけでもない。というかまず、僕が飲ませたのは咳止め、熱冷まし、風邪、の3つの頓服薬だ。恋は食欲もあまりないものの、腹は痛くないらしく、寝るのには苦労しなかった。


 ***


「寝たのか?」

 午後8時30分。恋が目を閉じてから30分。息はしている。死んでいるわけではないようだ。向かいのエリザの部屋、ないし僕の部屋の光はまだ付いている。大きな音が聞こえるわけでもなく、騒ぎ声が聞こえるわけでもない。

「ぐーぐー……」

 テレビは付いたまま。録画番組には多くのバラエティ番組と、映画。流石は1TBの外付けハードディスクだ。凄い容量だなあ、と改めて思わされる。

「寝たのか」

 僕はテレビを見ながら、恋と同じ布団の中に入って寝ようとした。が、寝れなかった。昨日寝て、今日起きるまでの一件、そしてすごく長く寝ていたからだろうか。夜8時ではまだ寝れなかった。風邪をひくと、無性に眠くなるが、これは風邪、僕の場合は嘔吐から回復したということだろう。


 隣ですやすやと眠る恋の顔と髪をそれぞれ1回ずつ撫でて、僕も眠りについた。

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