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Future  作者: 浅咲夏茶
4th Chapter;Asmodian of mythology and Gods of mythology.
34/127

Target:Ren and Elisa +α Ⅱ/episode33

『―――神戸市中央区、現在の天気は雨です。今後の降水量ですが、兵庫県内の一部では、多いところで一時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降るでしょう。運転中のドライバーさんは、早め早めの帰宅を心がけましょう。何か有ってからでは遅いですから、早め早めの行動を心がけましょう』

 ハンドルを握る愁。視界は悪くなって行く一方だ。有料道路を使えばいいものの、愁にはそれ以上のプライドが有り、そしてチキンなところもあり、愁は自ら有料道路に乗ろうとはしなかった。

 しかし、県道を通っていてもやはり激しい雨は降り続く。突如として雷は近くに落ちた。火は上がらなかった。けれど、煙は上がった。

「……危険だ。早く帰ろう」

「分かってる。分かってるけど、雨の中じゃ無理だ。危険運転はしたくない」

「けど……」

「うっせえ、黙ってろ。……神戸の街が見えねえな。どんだけ激しい雨なんだよ。視界悪すぎだろ……」

「確かになあ」

 この山地を降りれば街中にでる。そうすれば、視界は悪くても、ゆっくりと走れるし、大きなカーブも減る。だから事故は起きにくくなるはずだ。けど、その確率は0ではない。


 ***


 やっと県道15号まで来た。ここは有馬街道。この後、国道428号を通って戻っていくらしい。しかしまあ、有馬温泉のある場所も、神戸大橋のある場所も、どちらも神戸市と言われると、「神戸って大都市なのか?」と思ってしまう。それでも、人口に関しては100万人以上いるのだ。政令指定都市でもあるし、大都市なんだろうけど。

「雨強くなってきてるような……」

「確かにな。これはどうしていくべきか……」

 ワイパーが左右に動く。けれど、前にいる車は分かるが、2つ、3つ前の車は微妙にわかるくらいで、本当に危険だ。愁も、こんなに強い雨の中運転するのは初めてらしく、愁の心の中も大変なことになっているのだろう。

 後ろの方を見てみる。ふと、エリザや恋、姉ちゃんの声が聞こえないので「寝たのか?」と思ったのだ。……それは大正解だった。エリザも恋も寝ていた。しかも、エリザの肩に恋の肩が乗っかっている。まるでそれは恋人の様に見えてくる。なにせ、恋の執事服姿とリンクさせると、恋が執事服着て、エリザがドレスでも着れば、普通に居そうなカップル(主従関係を持った関係だろう)に見える。

 そんな隣で、姉ちゃんは何かしていた。やっぱり姉ちゃんは黒縁の眼鏡をかけていた。そして、浴衣を着ていたときは見えなかったのだが、姉ちゃんは黒ニーソを履いていた。紳士からすれば、ゴクリと息を飲むような姿である。スマホを弄りながら、姉ちゃんは耳にヘッドホンを付けて作業をしていた。

「二人共寝ちゃったねえ。本当、可愛いよね、これだけ見てると」

「確かにな」

「あ、そうだ。これする?」

「ん? ……これは」

 それはそう、エロゲのソフトだった。確かに、エリザや恋には見せられない。なにせ、そのエロゲは純愛とかそういうたぐいではないのだ。それはそう、触手という際どいゾーンのエロゲだった。

「……姉ちゃんってこういう趣味?」

「いや、同人誌作るんだったらって貰ったエロゲの中にこれがあった。もしかして、凛ってこういうエロゲしない?」

「しない。僕は、触手なんて大っ嫌いだ。純愛以外はエロゲって認めねえ」

「凄いな」

「そうだろ。だから、触手ゲーはリリースだ」

「そっかー。じゃあ、これは?」

「……これって、近親相姦……」

「あ」

「リリースだ!」

「えー。じゃあ、これは?」

「これだよこれ。学園モノやっときたわ。……ん? 確認していい?」

「どうしたの?」

「これ、R18じゃないよね。だって、Cero:Dって書いてあるし」

「……マジでか」

「マジでだ」

「ごめん、凛。でも、それプレイしてみてよ。私したこと無いから」

「僕が実験台みたいじゃないか。……仕方ないなあ。これするわ。パソコンは?」

「無理。今作業中」

「スマホでやれ」

「じゃあ、いいよもう。ウィンドウ消さないでね?」

「分かってる」

 僕は姉ちゃんからヘッドホンとパソコンを受け取った。姉ちゃんのパソコンは、林檎のマークがある。そう、これは有名なあの会社のパソコンである。もちろん、デスクじゃなくてノートだ。OSも切り替えて使用できるようにしてある。

 ディスクを挿入し、僕は受け取ったヘッドホンを耳に付けてエロゲを始めた。

「お」

『――春、それは出会いの季節。

 夢を追いかけて入学したこの高校で、僕は2人の先輩に出会った。そして、今まで一緒に過ごして来た幼馴染2人も隣にいる。

 これは出会いの季節に訪れた、それはそれは不思議な物語――』

 絵柄といい、オープニングと言い、どう見てもクソゲー臭がぷんぷんする。

「さてと。プレイすっかな」

 13インチのパソコンは、意外と僕の膝の上に収まる大きさで、操作もしやすい。が、膝の上にパソコンを長時間置くと、赤ちゃんの素の作られる量が減るらしい。いや、それが死ぬんだったっけか。

 詳しいことはわからないけど、男にとってはあんまり良いことづくしじゃ無いらしい。ヤフーだったかのニュースで見た。


 エロゲーをやり始めた時、丁度赤信号で車を停めた愁は、僕に話をして来た。午前中、有馬温泉に行った時には曇っていたが、一応晴れていたので、標識などはちゃんと見えたらしい。けれど、今は晴れていない。だから、「GPSで今何処にいるのか探せ」と言うのだ。でもまあ、別にしてやらないこともない。大切な幼馴染の為である。ああ、別に今のはホモ発言ではない。友人としての意味で「大切な幼馴染」ということを言っただけだ。

「分かったよ。あ、姉ちゃんパソコン返すわ」

「早いな」

「早いね。でも受け取ってくれ」

「はいはい。じゃあ、私も作業に移るわ」

「じゃあ僕はスマホゲーを少々」

「電池減るよ?」

「いいよ、それくらい」

 僕はパソコンを返すことは約束したものの、直ぐに返しはしなかった。何故なら、直ぐ返してスマホを起動するにしても、それ相応の時間は掛かる。それまでに赤信号が青信号に変われば元も子もない。

 僕は、即座に自分のスマホを取り出して、パスコードを入力して、そしてマップアプリを起動し、現在位置を確認した。

「出た?」

「出た。で、僕の家の住所入力すればいい?」

「ああ。なんかもう、前方車両すら居ないからな。頼むから早くしてくれ」

 僕は自分の家の住所を検索窓に入力すると、そこに赤い画鋲のようなイラストのようなもの、僕はそれを『目印』というが、それを立てた。僕自身も、正確な名前は知らない。

「オッケーだ」

 今居る場所から自宅までの最短ルートが表示された。最近の携帯、いやスマホは本当に性能が高い。カーナビ陣は、どんどんと衰退していく一方である。なにせ、音声案内してくれるアプリも有るのだから、それを使えば良い話で。でも、日本はそういうのが実装されるのは遅い。なぜか知らないけれど、きっと大人の事情が有るんだろう。

 僕は、右手にスマホを持ちながら、信号が青に変わるのを待つ。

「よし、そのまま真っ直ぐに進んでいけばいい。要は、道なりだ」

「わかった。……あ、そうだ。それ、消さないでね?」

「無理。設定でそれできない」

「ないわ」

「うるせえな。一応道なりに進めばいいだろ。……けど、本当雨収まらねえな」

「だよなあ。看板も濡れ濡れだよ。全然見えねえぞ」

「嘘つけ」

「ごめん、嘘だけど。でも、本当それくらい見えないんだってば」

「確かになあ。お前、本当ハンドル握ってるのブルブル震えてるし」

「うるせえ。寒いんだよ」

「……ったく、上着貸してやろうか?」

「馬鹿か。お前、病み上がりのくせになんでそんなこと言えるんだよ」

「大切な幼馴染を守るってのも、元気な人間の使命だからな」

「お前、その言葉そっくり返してやる。病み上がりのバーカ」

「うっせーな。言葉選べよ」

「幼馴染なんだからいいだろ」

「はあ……」

 僕はスマホの照度を最低にして、暖房を付けた。照度を最低にしたのは、電池を節約するためである。なにせ、スマホはガラケーと比べると、どう考えても電池の持ちが悪すぎる。全然コスパが良くないのだ。


「トンネルだ……」

 それから少しして、ようやくトンネルに入った。でも、一番危険なのはトンネルだと思う。なにせ、暗いし、上へ煙は上がっていかないから、追突事故などが起こって煙なんかあがれば、処理は大変だ。

「さてと。ここを抜けてもまだ山の道は続くわけだが……」

「分かってる」

 それから無言が訪れた。空気が重い。ヘッドホンを付けてエロゲをしようとしたのだが、全然やる気が起きない。


 ***


 10分くらい経ったのだろうか。安全運転で来たため、やっと街中に入った。が、街中の被害は相当なもので、既に大きな水溜りもあった。これは僕の家もヤバそうな気配がする。早く帰らなければ。

 しかし、進もうにも、雨あしは更に強くなっていった。

「どうする?」

「早く帰りたいんだけど、仕方ないな」

「ああ、じゃあそう言うのなら、そういうことにしよう」

 渋滞してた訳じゃない。でも、普段と比べたら、車の動くスピードは速くない。みんな雨だから安全運転しているのだろう。幸い、こんな時間から暴走族が走っているわけもなく、全然うるさくない。


 ***


 家に帰ってきた。午後4時前。2階のに干されていた洗濯を取り入れに走ったが、家の玄関に着くまでに濡れてしまった。それに、ベランダに来ると、干していた服もそのベランダの床も濡れていた。屋根がないわけじゃなかったのだが、それでも濡れていた。おそらく、風が吹いたせいだろう。

 取り込んだものを洗濯カゴに入れ、僕はもう一度車に戻った。傘を持って。なにせ、寝ているエリザと恋が居るわけだし、流石に運んでおかないのもマズイ。

「エリザ、起きた?」

「うん。起きた」

「そか。じゃあ、傘使う?」

「いい。それより……」

「あ……」

 恋は咳をあげていた。わざとの咳ではなさそうだ。風邪でも引いたのだろうか。

「ゴホゴホ……」

「れ、恋?」

「ごめ……熱出したっぽい……」

「ダーリン、私こういうの得意じゃないから……」

「やっぱりそうなるよな……」

「ごめんね?」

「いいんだよ、別に。お前にはちゃんといい所あるし。それじゃ、先戻ってゲームでもしていてくれ。あ、エロゲーは無しな。……あと、姉ちゃん」

「は、はいっ!?」

「出ろ」

「……分かったよ」

 姉ちゃんは、パソコンをバッグにしまうと、猛スピードで家に戻っていった。その時のスピードは、人を超えた、まるでチーターのような速さだった。

「……恋。風邪移った?」

「かも……。ゴホゴホ。へ、変なとこ……ゴホ……触んなよ……?」

「んなことすっか。はあ。早く咳止め飲ませねえとな……」

「そ、そう……ゴホ……」

 僕は恋の背中に手を回す。まずは起こさなければ運べないし。幸い、風は吹いていないので、傘を置く場所はあったのだが、恋を運ぶためには玄関まで雨に叩かれる必要が有る。おんぶするにしても、僕が濡れる。……この際、お姫様抱っこでもしてやるか。

 流石はギャルゲー・エロゲー脳。これだから、二次元と三次元を混同してしまうのは嫌だ。スマホの中に入っているゲームの6割がギャルゲーという僕だが、それ相応の攻略スキルなんてものは持っていない。所詮、リアルの世界でゲームの世界の攻略スキルなんて使えないのだ。

「ちょっと熱測るぞ」

「体温計ねえだろ」

「うるせえな。手でいいんだっつの」

「そんなんで分かるわけな……んっ」

 熱い。パソコンの熱気と同じくらいか。いや、それ以上だろう。それくらいの熱がある。けど、40℃はいっていないだろう。

「……頓服薬のめ。んで寝ろ」

「さっき寝た」

「冷えピタ貼るか?」

「昨日は私がやったのに、今日は私がされるなん……ゴホ……てね」

「喋んなくてもいいぞ、無理してまで。つか、本当早く寝ろよ。それとも、僕が一緒に寝たほうがいいか? ……お前が昨日してくれたからさ」

「……出来ればお願いします……」

「なに敬語になってんの」

「うるせえ……ゴホゴホ……」

「はあ。早く行くぞ」

「え、ちょ……」

 さり気なく逆お姫様抱っこする。背中を上に、腹部を下にして。……これすると、余計に咳ごんできてしまうようだが、それも少しの辛抱だ。

「アホ……なんで逆にしてんだ……ゴホ、ゴホゴホ……」

「ごめん、僕の視界にお前の尻が見えるんだけど」

「死ね!」

「残念。……つか、暴れると余計に咳出るよ?」

「凛、お前絶対に許さな……ゴホ……ゴホゴホ」

「ほら、早く休まんと」

「やめ……ふあっ!? もご……」

 僕の服に恋の顔を密着させる。そして、少しして、それを離す。

「ゴホゴホ。ゴホゴホ……」

「ごめんな」

「馬鹿か。私は咳を出しているのに、なんでそういう時だけ……ゴホ……密着させてくるんだ。咳が出るぞ馬鹿」

「悪い悪い。……で、女って口に体温計入れるんでしょ?」

「それ基礎体温……ってこらあっ!」

「ん?」

「なに言わせてんだ!」

「基礎体温くらい、別にいいんじゃない?」

「……は、破廉恥だ。男から『基礎体温』なんて言葉が聞こえてくるんて」

「基礎体温って、あれでしょ? 生理周期見るために測るやつだっけ?」

「うるせえよ! ……ゴホゴホ。声張れねえ……ゴホ」

「はあ」

 僕は溜息をつくと、階段をダダダと駆け抜けていった。


 部屋にはいると、当然エリザが居た。「ゲームしてろ」と言ったのは僕だから、居るのは当然なんだけれど、流石にこれを見られたのはマズイ。

「ダーリン、やっぱり……」

「違う。誤解しないでくれ」

「だって、その持ち方、お姫様抱っこの逆じゃん……。ま、私出て行くね」

「なにその『空気読んでます』的な発言」

「いいだろ。ま、二人お幸せに。それじゃ、冷えピタ持ってくるね」

「頼む」

 エリザは、「子供」とかそういう言葉以外に興味がないようで。普通にリビングに向かっていった。冷蔵庫から冷えピタでも持ってくるんだろう。

 僕は、エリザが部屋から出た後、ベッドに恋を寝かせ、布団をかぶせた。そして、パソコン用の車のついた椅子に座って、恋の近くに移動し、もう一回恋の額を手で触った。

「本当、熱いな。……体温計使う?」

「使う」

 僕は、自分の机の引き出しから救急箱を取り出し、そこから体温計を取り出した。脇の下に挟んで使うタイプで、決して基礎体温を測るための、口に入れるタイプのものではない。

「ほらよ」

 恋に受け渡したのだが、恋はデレてしまったらしく、僕に「測れ」と命令してきた。

「……それってつまり……」

「え、えと……脇の下触っていいぞ……」

 なに? こいつ僕を誘惑しているのか……?

「い、『いい』って、そんな簡単に言えねえだろ……」

「いいんだよ。どうせ、熱出してりゃ風呂も入れないしさ、誰かに世話してもらわないといけないし。……家事出来るのは凛かお姉さんだけだけど、私的には凛にしてもらったほうが嬉しいかな……?」

「咳、やんだ?」

「ちょっと、良くなったと思う……けど……ゴホ」

「駄目じゃんか」

「あはは」

 恋は、少し笑みを浮かばせて、目を閉じた。けれど、寝たわけではなかった。なにせ、昼寝をすましたのだから流石に寝にくいか。

「ダーリン、冷えピタ来たよー」

「お」

 エリザが帰ってきた。エリザは今度はリビングには戻らず、僕の部屋で待機した。ヘッドホンを付け、再びゲームを始めたのだ。


 結局、今度は僕じゃなくて恋が風邪を引いてしまった。……僕は吐き気だけだったのだと思うけど、恋が元気になったらもう一度聞こう。


 ***


 ―――時刻は午後5時を過ぎていた。雨は一向に止む気配を見せなかった。

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