Target:childhood friend and sister./episode30
午前4時。昨日の夕方、帰ってすぐにベッドに横たわってしまった僕だったが、10時間程度寝て、ようやく起きた。眠気が溜まっている時にふと眠りにつくと、最初は全然眠れない。が、起きてみるといつの間にか相当時間が立っていたりすることは、僕もよく経験する。
隣を見る。恋がスヤスヤと寝ていた。11月の下旬、部屋の空気は非常に冷たい。冷気が顔に当たると、布団の中の温もりが冷たさと化学反応的な何かを起こし、顔も布団に埋めたくなる。
埋めたくなる、ということで近くにあった恋の姿をじっと見てしまった。
「何を考えてるんだ僕は……」
これだから煩悩がある人間は困るわけだ。……しかし、恋の寝ている姿は久しぶりに見た気がする。すやすや、と眠っている姿は本当に可愛らしい。
「あ、そうだ。エリザって何処に居るんだろ?」
ふと暗い部屋に電気を灯そうと、LEDの蛍光灯を付ける。が、その強い光で恋が起きそうになった。けれど、僕の部屋にエリザの姿はなかった。
「何処行ったのかな?」
ふと思うが、どこにもエリザの姿がないのは、やっぱりソファで寝ているためだろうか。別にそれならそれでいいのだが、結構寒いので、風邪とか引かれたら嫌だし、僕の服でも掛けてあげようか。それとも、このベッドで恋と一緒に寝てもらおうか。
そう思った時、恋の吐息が聞こえてきた。別にそれまでも聞こえてきていないわけではなかったものの、恋に近づいたからか、非常に大きな吐息が聞こえてくる。その吐息を聞いていると、なんかエロい風に聞こえる。
「さてと。もう4時か……。恋は寝かせておこうか」
僕はそう独り言をポツリと言った後、眠気に襲われて二度寝に入った。金曜日から連続で眠っていられなかった時間だから、この時間に寝られるだけでも新鮮な気分だった。
***
「……え?」
「り、凛! 起きた?」
「ど、どうした……」
「凛、そのおでこになんか付いてるの気が付かなかった?」
「え?」
「は?」
触ってみる。この感触は、どう考えても冷えピタの感触だった。冷たい感触がなくて、全然分からなかった。普通気づくはずなのに、何故気づかなかったのだろうか。「けれど、熱なんか出したか、僕は?」
「出したよ! ……もしかして、記憶ない?」
「い、いつ頃の話?」
「昨日の夜8時くらいかな? なんか、私がリビングでテレビ見ていたら突然、嘔吐したあんたが下に降りてきて、ヤバイと思ったからこの部屋のシーツとかも全部変えたんだよ。……記憶、飛んでるの?」
「ごめん……」
「そっか……。ごめんね、私も途中で寝ちゃって」
「いや、お前看病する側の人間だろ? 寝ちゃっても別にいいだろ。つか、女が徹夜したら生理周期乱したりするんじゃないの?」
「可能性はあると思うけど、そんなこと言ったら24時●テレビとか27時●テレビとか、女子アナも女性芸能人も登場させれないんじゃないかな……?」
「それもそうか。じゃあ、別に徹夜しても大丈夫なんだな。……でも、無理するんじゃねえぞ。徹夜すると免疫力崩して、僕みたいに痛い目に遭うからな?」
「別に私は凛のような失敗はしないよ」
「それ、僕がバカだと言いたいんだろ?」
「せ、成績では凛の方が優秀だけど、家事とかどうせ出来ないんでしょ?」
「うーん……。家事は別に出来ないことはないけどなあ。ただ、今まで姉ちゃんが僕の代わりにやってくれていたから、僕が登場できなかっただけだよ。姉ちゃんが部活で居ない時とかは、妹と二人で飯作ったもんだ。今でもバイトの時は、お前が家に来なければ作るぞ」
「じゃあ、今度作ってよ」
「マジで?」
「マジで」
「……わかった。昼飯で作ろうか」
「あのね、その件なんだけど……」
「ん?」
「この後、すぐに旅行に行くんだよね……」
「恋が?」
「違う違う! なんか、愁が『免許取って運転に慣れたから旅行行こう』って言い出してさ。あいつ、『オフ会とかで一昨日昨日と行けなかったから、三連休の最後くらい楽しもうぜ』とか言ってて」
「へえ。ま、事故さえ起こさなければいいよ」
「それフラグ?」
「んなわけねえだろ。で、愁は何処に行こうとしているんだ?」
「有馬温泉」
「おい、それ神戸じゃねえか」
「もしかして、淡路とか大阪とか岡山広島とか思ってた?」
「あったり前だろ! 旅行なら、大阪とか東京とか札幌とかくらい言え!」
「……東京札幌は無理でしょ……」
「でも大阪くらい……」
「まず渋滞に巻き込まれたらどうするんだ」
「……あ」
「成績優秀のくせにバカだねえ」
「うっせ」
「はいはい。んじゃ、準備してね」
「わかった。けど、別にお前出てかなくてもいいぞ。また吐いたら悪いし」
「凛の下着姿なんか見たくないよ!」
「……男の僕からすると、下着姿くらい別にいいぞ。お前とかなら」
「『とか』ってのが気に喰わないけど……。うう。じゃあ、着替えればいいさ。私はゲームでもしてるよ」
「はいはい。……あ、やっぱり恋愛ゲーする?」
パソコン前の椅子に座った恋は、おもむろにマウスを操作して口を開く。
「凛の持ってるやつって殆どエロいゲームでしょ?」
「……エッチなゲームはしなきゃいいだろ。お前、18禁版じゃないやつを前にプレイしただろ? それをプレイすればいいだろ」
「それって何処に……ちょ……」
僕は既に着替えていたため、恋にその姿を見られた。恋は顔を真赤に染め上げ、照れていた。そして、ぷいっとパソコンの方を向き、ゲームを始めた。
しかし、恋がゲームのプレイを使用としている間、画面に『Now Loading...』と書かれている間に、僕の着替えは終わりを迎えた。恋の方をとんと叩いた時、「はえーよ」と恋はツッコミをくれた。
今日は結構寒そうだったので、一応箪笥からマフラーを持ち出し、バックの中に入れた。しかし、そんなことをしている間にも、恋はゲームを止めようとはしない。別に止めなくてもいいことはいいのだが、僕に「旅行行こうよ」と言ってきたのは恋だ。だから、少しくらいは働いてほしいものだ。
そんなことを考えていると、恋もパソコンをシャットダウンして動いてくれた。流石、ライトノベルだ。本当、ラノベの世界はご都合主義以外の言葉が当てはまらないような展開が多すぎる。この小説だってそう。全部ご都合主義そのものだ。
なんてことを考えていると、ピンポンとインターホンが鳴った。愁だろう。僕の部屋は恋の部屋と隣り合わせだから玄関側のほうが見えない。だから、声で聞き取るしかなかったのだが、その声はどうみても愁だった。
僕は恋を連れて階段を駆け下りていった。
「おっ。ゲロはいたんだってな」
「うっせえ」
「俺のほうが歳上だぞ。少しくらい、年上として敬いたまえ」
「どうせあと数週間で僕も18だっての」
「じゃあ、なんで車の免許取らないの?」
「まだいいよ。基本的に、僕は電車とかチャリで移動するから」
「徒歩移動は無しか」
「学校まで徒歩で行けと? 無理ではないけど、チャリのほうが楽だろ」
「それもそうだな。まあ、僕は車があるから」
「うぜえ」
「うっせえな。車の何が悪いんだっての。授業に遅れると思っても、僕は直ぐに車で移動するからな。心配がないのだ」
「渋滞に巻き込まれたら、絶対チャリのほうが早い気がするけどな」
「……それで論破したと?」
「思ってねえよ」
「そっか。じゃあ、今日は誰が行くんだ?」
僕の後ろから姉ちゃんが現れ、誰が行くのか説明してくれた。丁度、エリザもトイレから出てきて僕らと合流した。
「私、凛、恋ちゃん、エリザちゃん、愁君……辺りかな。梨人君はどうした?」
「梨人は、予定がつかないそうで」
「なんでだ?」
「彼奴、今学校で検定受けてるらしいです」
「何の検定だ?」
「英語検定2級って言ってた気がするけど。なんか、猛勉強してたらしいよ」
「なのに僕の部屋に来て、部屋荒らしてたりしたのかよ彼奴」
「今思うと、あれってただ単にストレス発散法だよな」
「確かに」
「んじゃ、行くか?」
「ああ、行こうか」
僕はそう言うと、皆を引き連れて車まで向かう。まるで主人公だ。……いや、僕はそんな影の薄い主人公じゃない気がするけどな。リン繋がりで『アッ●リーン』的なこと、されないと思うけど、もしされるような展開になったらどうしようかと思う。もし、真の主人公が変わるとすれば恋やエリザになると思う。
そんなことはどうでもいい。早く行かないと、帰ってきた時にはもうまた夜だ。有馬温泉ならば、早く行ってゆっくり浸かって、家に帰って夕飯食って宿題でもして寝ればいい。本当、それくらい一昨日昨日で疲れたのだ。だから、早く寝たいという気分もある。しかしながら、もうそれなりに、いや相当寝たので、あまり困らないだろう。取り敢えず、吐かなければいい。
「さあ、有馬温泉に向けてスタートだ」
「おうよ」
なんか「ミッションスタート」的に聞こえる。それと関連付けての話だが、思えば、リトル●スターズの中のヒロインと、僕の名前って被るよね。……思えば、恋と凛って、絶対性別女って思われるはずだ。僕自身、顔が女のようだと姉ちゃんに散々言われている。そのため、裏声で「り、凛です……」なんて下向きで女装して言ったら、確実に男キャラを攻略していけるかもしれない。……する気はないがな。それしたら完全に僕がホモみたいな感じだし。
しかし、僕はノーマルだし、ノーム攻略に関しても、あれは女装もしていないし、『友情』で攻略しただけで、別にホモとか、そういう意味は無いはずだ。
渋滞に巻き込まれることもなく、僕ら一行は有馬温泉へ向けて車を走らせ、向かっていった。有馬温泉に付いたのは10時半過ぎだった。途中、自販機でジュースを買ったりしたので若干の時間は掛かったと思うけど。まあ、小道を順に順に進んでいき、カーナビの言うことは一切無視し、カーナビの声の女が可哀想になるくらいだった。なにせ、一切の高速道路を使わないという事をしたのだから。
普通、三宮から20分、僕の家からでも30分はあれば着くはずだろうけど、一般道「のみ」を経由し、高速道路、有料道路を一切使わないという行動に出たわけだ。本当、なんでそんなことしたのか理解できない。金なんて、有料道路に乗るくらいのはあるのだから、もっと使えばいいのに。
それこそ、便利なものを使いすぎるのもどうかと思うが、一切使わないのもどうかと思うという、よく起こりやすい論争のようなことになる。例えば、「携帯電話」か「スマートフォン」か、という論争や、「『千葉』と『埼玉』はどっちが上か」など。……下らない論争の中の一分になるのだ。後者に関しては、どう考えても便利とかそういう意味を失っているだろうけど。
***
有馬温泉は六甲山を超えた先にある。この温泉街が『神戸市』だと考えると、神戸市って本当、自然に富んでいるんだなあ、と改めて思わされる。市街地は殆ど南部に集中している。阪神淡路大震災では相当な被害を受けたものの、今は復興し、立てなおしている。もう19年。来年1月で20年だ。
そんなことを思いながら、ふと空を見上げる。黒い雲はなく、うろこ雲が空を白くする。綺麗な青空とうろこ雲は、まるで11月。寒いように思えたが、それは間違いで、結局マフラーは取り出さなかった。
部屋を取り、バッグを部屋においた後、当事者の愁が話を切り出した。
「さて、皆。温泉に浸かる前に、まずは昼飯いく?」
「昼飯……」
「ああ。それとも、先に風呂入るか?」
「先に風呂……そうするか」
勝手に、僕と愁で決めてしまっているようにみえるのだが、これは一体……。それにしても、僕と愁の取り決めたことに、姉ちゃんや恋はいいとして、エリザが従ってくれるのが以外だった。外国の人って戸惑ったり、あんまり聞いてくれなさそうなイメージなのだが、エリザは小さな頃に僕と接したためか、ちょっとばかし日本人の心が引き継がれたのだろう。
「さて。風呂は……別だな。んじゃ、皆後で集合な。あ、ちょっと恋、話があるから。んじゃ皆解散」
「はーい」
恋以外は皆風呂に向かう。愁は「またイチャつくのか」と置き台詞を捨てて男湯へ、姉ちゃんは「イチャラブすんな」と置き台詞を捨て、エリザは「ダーリンは私が貰う」と置き台詞を捨て。皆、様々な置き台詞を捨てて湯へ向かう。そして、僕は恋を部屋に連れて行った。そして、会長は何処に行ったか聞いた。
「会長さんは帰ったよ? 昨日の夜まで居たけど。……話ってそれだけ?」
「ああ。済まんな。……そうだ。確か、部屋にまんじゅうが……」
「お前ってやつは……」
おぼんに入っていた饅頭、ではなくモナカをぱくりと一口、僕は口に入れた。呆れ顔の恋は、僕をみて「先行くわ」と彼女もまた置き台詞を残し、湯へ向かっていった。
結局、部屋に残った僕は皆から遅れること3分程度で、男湯の暖簾をくぐって湯へ浸かりに向かった。
10月4日中に書くつもりでしたが、時間配分的な意味で無理でした。すいません。




