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Future  作者: 浅咲夏茶
4th Chapter;Asmodian of mythology and Gods of mythology.
30/127

Target:Ren_part05/episode29

 夕方6時少し前。日曜も終わりを告げる。結局、今朝の3時に起きてここまで一睡もしていない僕。家に戻ると、ふとしたことでくらっときて眠くなってしまう。近くのソファすらベッドに見えた僕は、エリザのことをソファに寝かせた上で、自分の部屋に戻った。が、その途中でトイレから丁度出てきた恋に会った。そして、その恋からぎゅっと抱きつかれた。

「し、心配したんだぞ……ばーか」

 完全に正妻気取り。エリザとはまた少し違う。姉ちゃんや妹よりは胸は有るのだろうけど、恋はエリザより胸が小さい。日本人女性の胸の大きさはCからDくらいが平均だったと聞いたことが有る。そう考えて見れば、エリザは『化物』と言っても悪くないんじゃないだろうか。胸の大きさだけで考えた場合には。

「どうした?」

「凛。お前、昨日の夕方にどっか行くって言って、それから一切家に戻ってきていないだろ。し、心配したんだからな。お姉さんは『別に彼奴のことだし、じきに帰ってくるよ』とか言うし、会長さんは何故か私が起きた時、私の隣にいたし。その場の空気を読んで切り抜けたけど、あれやったの凛でしょ?」

「ああ。そうだ。悪かった」

「でもなんで会長さんなんて……」

「なんか、僕に生徒会の書類渡すの忘れたらしくて、僕にメールで渡すとか言ってたんだけど、容量が大きくなりすぎたらしくて。もう自分から渡す、って言い出したからさ。結果的に寒い夜に歩いて僕の家まで来てくれて、流石にもてなさないのも悪いだろうと思ったんだけど、会長寝ちゃって。んで、ソファに寝てるお前が居たから、お前も僕のベッドに」

「……じゃ、じゃあ今日も凛のベッドで寝ていい?」

「……は?」

 それは無理だろう。ただでさえ布団がないのだから、僕が恋と寝たらエリザの寝る場所がなくなる。僕、愁、梨人で前に寝たことはあるけれど、やっぱり男一人女二人、同じ部屋の下というのはやっぱり僕の理性が持たない気がする。

「だ、駄目だよね……」

 どうしてだろう。昨日今日、恋の姿を見ていないからなのかもしれないが、恋が負けヒロインのように見えてくる。完全に『サブヒロイン』になっている感じがする。エリザが『メインヒロイン』に見えるが、今はサブが物語の主軸の僕と関わっているわけだ。……そう見えるだけで、本当にそうなっていないことを僕は祈ろう。

「なあ、恋。確かにエリザは僕の家で生活している。そして、机とかも全部僕の部屋にあるよ。まるで、ここが兄妹の部屋のような感じもするけどね。……まあ、お前にはお前の部屋があるのだからそこで寝ればいいわけなのだが、やっぱり僕の部屋で寝たいのか?」

「12年間凛と居たのは私なんだよ! それをあんな泥棒猫に奪われてたまるか!」

「……要は嫉妬か」

「ち、違っ……」

「どうせ嫉妬なんだろ。本当は僕にエリザにしたこと全部しろなんて言いたいんだろ? ……まあ、するわけないけどな」

「やっぱり、凛はエリザちゃんのほうが好きなんだ」

「いや、別にそう言っては居ないだろ……?」

「エリザちゃんは胸も大きいし、凛に積極的に抱きつくし、いっつも笑顔だし。しかも髪の色も茶髪で、嫌われるところ一つもないじゃんか……」

「強いて言えば家事が苦手くらいだもんな」

「料理が苦手……か」

「おい、恋。どうかしたか?」

 恋は僕の方に抱きつく力を強くした。そして小さな声で、僕に届くか届かないかくらいのそんな距離で、僕に話を持ちかけてきた。

「私の作る料理って美味しい?」

「美味いぞ。考えてみれば、お前って結構主婦的な才能あるよな。料理とかさ」

「掃除もできるよ!」

「そっかー。じゃあ、朝に妹の部屋や姉ちゃんの部屋掃除した時に呼べばよかったな。エリザと僕だけだと、結構大変だったんだよなあ」

「エリザちゃんとやったんだ……」

「あ、ごめ……」

「いいよ。凛の部屋は掃除していないんでしょ?」

「そうだ。お前の予想通りだ」

「だからいい。ほら、付いて来い」

「え、ちょ……」

「何? 会長さん? エリザちゃん? 会長ならお姉さんの部屋」

「まさかそういう百合展開……」

「何を考えているんだ凛は。一発入れようか?」

「やめろ。お前のその言葉には、怯える以外の何もできなくなるからやめてくれ。本当、お前の威圧感は異常だ」

「……そうかな?」

「だからお前が負けヒロインに見えるんだよバーカ」

「……は?」

「いや、今のは何も言っていないから……」

「『負けヒロイン』って聞こえたんだけど、もし本当ならそれは聞き捨てならないぞ」

「う……」

「言ってない?」

「あ、ああ」

「じゃあいいや。その代わり……」

「ん?」

「今日の夜、一緒に寝てもらうから」

「ごめん、僕眠いからもう寝る」

「徹夜したの? ゲーマーのくせに、眠気に負けるとかださいな」

「酷いなお前。……ゲーマーでも眠気ってもんは有るんだよバーカ!」

「エロゲーマーは夜な夜なあんなシーンをみて、自家発電しているんでしょ?」

「じ、自家発電って、お前結構成長したな……。って、少しは恥じらいを持て!」

「恥じらいなんか、持てるものなの?」

「前はお前にも恥じらいってもんがあったのに……。なんでそんな風になってしまったんだ。昔のお前のほうが僕は好きだったのに……」

「え?」

「おっと、これはちょっと口が滑った……」

「す、滑ったとしてもそういうこと言ってくれるのは嬉しいかな……」

「おい、照れるんじゃない」

「う、うるさいな!」

 暴力女の照れ顔なんて、別に見たくもない。けど、恋には暴力だけでない強さが有る。それが料理の上手さとかなんだろう。だから、暴力だけしかしてこない女と、時々優しさというか、母性みたいなものが溢れ出る女では、後者のほうが絶対にいい。ゲーマーとして、少しくらいはストレスに耐える心構えはあるけれど、いつまでもそのストレスに耐えられるわけでもない。

 僕にだって、解決しづらいことは有る。例えば恋愛とかだろう。したことないけれど。でも、梨人に『お前、恋が好きなんだろ? ラブって意味で』と言われて以来、僕は初めてその事に考えさせられ、どうするべきか、悩んだこともあった。でも、今それを考えなおすと恋と僕って似合うのかな、と思ってしまう。

 それこそ、部屋が一緒だからっていうことでエリザには一切手を出していない僕だが、エリザから過激なアプローチがかかれば、本当に僕の脳内の色々なものが壊れて、手を出してしまうかもしれない。だから、ちょっと怖いのだ。それはエリザじゃなくても。恋でもそうだ。

 ちらり、と恋の方を見る。抱きついている恋はちょっとだけ、何時もの恋より可愛かった。けれど、心が揺らぐことはなかった。

「じゃあ、僕は寝るよ」

「え、ちょ……」

 僕はバタン、と部屋の戸を閉めると、ベッドの上にのっかり、そのまま身体を順に横たわらせていき、僕は布団をかぶって眠りについた。午後6時。外は暗くなった。部屋の中も涼しい。……いやむしろ『寒い』という言葉のほうが似合う。だから、布団がない部屋なんて考えられない。


 僕は、眠気がそこまでなかったけど、バタンキューという感じですぐに寝てしまった。そうだ。仕方なかったのだ。眠気に勝つことなんて、疲れている今、出来るかもしれないけど、これ以上したら、風邪ひきそうだし。それこそ、徹夜なんて免疫力壊しているだけだ。寝不足もそうだが、大体そういうことをして1週間くらいしたところで、した人が風邪を引くのだ。そういうことを知っている僕は、やっぱりそうなりたくないから、しっかりと寝る。

 徹夜明けのあの疲れって最悪だからな。今回は徹夜した訳じゃないけど、日頃ゲーマーとして目を酷使しているから、目の回復もしてやりたい。


 そう考えると、やっぱり早く寝たほうがいいなじゃないか、ということになり、僕は心に聞かせた後に寝た。

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