Target:Elisa -Photos of small time./episode25
「なあ、エリザ。ご飯、頼んでいいか?」
「別に大丈夫だけど……。あ、ご飯ってインスタントでしょ?」
「まあそれはお前の好きだ。適当に作らなければいい。飯食って腹壊して攻略失敗なんていうエンド、あってたまるかって話だ」
「そっか。ダーリンは男でも女でも、攻略対象を狙いつんだね」
「まあ、決めてしまったことだからな。会長をその気にさせ、僕の悪魔たちもその気にさせたのだ。そりゃあ、攻略対象を変えたり、攻略せずに終わらすなんて、そりゃあもう自ら『負けました』って降伏しているようなものだ」
僕もついさっき降伏したのだが、別に僕の心の中で思ったこと。何処の誰にもそれは伝わっていないはずだ。それこそ、エリザが心を読める超能力者な訳がないし。……100%とは断言できないけど。
***
目を覚ましたソファの上。時計の短針は7を指す。少々眠ってしまったようだ。60分程度の仮眠のような眠りでは、当然疲れも取れない。むしろ疲れが増しているようにも思える。もう少し寝たい。朝の日差しが僕の「二度寝したい」という気分をかきたて、もうこの後の攻略が台無しになりそうな勢いだ。それくらい眠い。
「……ふああ。……ん?」
僕の膝にぐっすりと寝ているエリザが居た。僕のズボンの裾をぎゅっと握って、ソファの端から自分の体を伸ばし、うつ伏せで寝ていた。
「エリザも寝たのか」
エリザの肩に触れてみる。少しからかいたくなったのだ。僕にエリザ自身が体を密着させてきてくれたおかげで、僕の心臓がどれほどのありがた迷惑を受けたものか。……いや、別にありがた迷惑という程でもないか。ところどころ僕も燃え上がってきていたところもあったし。
男というのは、なぜこうも性欲に翻弄されなければならないのだろうか。
「写真とかあればいいのにな……お?」
ふと近くのガラステーブルに置かれていた朝ごはんだと思われるものを見つけた。そして、その近くに一枚の写真を見つけた。手の届く距離だったので、僕は手を伸ばしてそれを自分の目に刻む。
「こ、これは……」
僕の母と父、そして茶色と金髪の中間くらいの女性と茶髪の男性、そして小さな少女と少年が笑顔で写真に写っていた。おそらく、この黒髪の少年は僕だと思われる。小さいころの自分の写真程度は普通に覚えているし、むしろ小さな頃の写真を覚えていないというのは、自分の顔を覚えていないというのは、ちょっとばかしおかしいような気さえしてくる。
しかしながら、僕の隣で微笑んでいるこの少女が今僕の膝で寝ているエリザだと思うと、凄く魅力的に成長したんだなあ、と親が思うような気持ちになってしまう。出てるところは出て、髪もクルッとなってていかにも欧米人っぽい。でも、この茶髪だとドイツ人、という感じはしてこない。オーストラリア人のような気がしてくるのは僕だけだろうか。けれど、ドイツ人は金髪のほうが多いイメージなので、茶髪というのは意外や意外だ。
エリザの寝ている姿を見ていると、『女子高生は最高だぜ!』と、口走りそうで怖い。僕はロリコンではないから『小学生』ではなく『女子高生』だ。実妹、義妹、小学生、中学生、年下には僕は興味ない。……女子高生なら許せるけどな。
考えてみると、もう僕はエロゲーに脳内を侵略されてしまっているようだ。
普通にころっと転がる軽さで、エリザをいじっていると自然と僕の顔にもほほえみが生まれる。が、やり過ぎたのだろうか。エリザが起きてしまった。
「だ、ダーリン!? も、もしかして寝ている間に私を犯したり……」
「ばっ、そんなはしたない事お前にはしないってば!」
「魅力ないから?」
「違うよ! ……お前には乳という、とてつもないお宝が有るだろ!」
「お、お宝って……。ま、まあ、なんで私がダーリンの膝で寝てるのか気になるけど、変なことされてないようならいいや。で、でもダーリンなら、断りさえあればなんでもいうこと聞いてあげるよ?」
「だから……」
「ごめんごめん。ダーリンはやっぱり私に魅力を感じてるんだもんね。よーし、朝ごはん食べようか! ……って、それはなんだ!」
「あ」
「そ、それは……」
「あ、ごめん。見ちゃったけど……悪い」
「別にいいよ。紙がなかったから、仕方なくその裏に鉛筆で書いたんだ。えと、その写真見ちゃったらわかると思うけど……その写真は、ね」
エリザは、すっと起き上がって、僕の膝を離れようとした。が、僕はそれを止める。エリザが自分自身で起きようとするのは阻止し、僕がエリザを起こすようにした。そうすることで、支配することへの喜びが生まれてきたのだ。なんてゲスな人間なのか、僕にはわかりきっていた。けれどこれは仕方がないのだ。
「バーカ。……で、これは私とダーリンが神戸大橋で撮影した写真」
「6歳の……時、だったっけか?」
「昨日の話、聞いてくれていたんだね」
「ああ。昨日の今日の話、忘れるわけにはいかないだろう」
「そっか。流石学年一位の学力の持ち主だね、ダーリンは」
「はっ、凄いだろ。……なんてことは置いておいて。この頃のお前と今のお前じゃ、本当に明らかに違うよなあ。特に出てる部分とか」
「やっぱりダーリンは変態さんだ!」
「お、男は皆野獣なんだぞ! 理性で抑えてるだけで、本能的なもんだ」
「私女だから男の気持ちわからないけど、大変なんだね。化粧みたい」
「今の僕の文を改変すると、『お、女は皆化けてるんだぞ! 化粧で綺麗にしているだけで、実はブスなのもいる』って感じか」
「……私もブスだからそういうの言わないで欲しいな」
「ぶ、ブスじゃねーよ! エリザは十分可愛い。てか、ドイツ人ってだけでお前は優遇されるぞ。それに胸大きいし、日本語話せるし」
「さっきから全部、何処かに私の胸が大きいことが入ってるんだけど」
「いいのいいの。じゃあほら。飯、食うぞ」
僕は、持っていた写真をエリザに返し、朝飯を摂り始めた。誰も来ない、二人だけの朝飯。つい先日ぐらいに、恋とこんなことした思い出があるな。その時に水掛けあって、よく風邪を引かなかったものだ。
「へっくしゅん!」
「ちょ、ダーリン!?」
噂をすれば。神様は何処からか僕を見ているのか。うう、寒い。くしゃみをしてしまった。直ぐにエリザが近くにあったティッシュボックスから、一枚ティッシュ取り出して僕に渡してくれた。空気の読める順応性の高い人は、好感度が上がるというのは周知の事実。当然僕も、今のエリザのような人の方がいい。なんにでも「あ、そう」としか返さない人より、感情豊かな人のほうが好きだ。
その考えていると、ふとエリザの方をじーっと見つめてしまっていて、エリザには「エッチな事考えてる?」と、また疑われてしまった。違うよ、と首を横に振ると「ふーん」と、何処か許していないような感じを醸し出していた。
***
朝8時。エリザと雑談をしたりして何とか20分くらい持たせたのだが、どうしても話が続かなかった。だから、結局トランプでもしようということになり、僕は精霊3体と悪魔1体の計4体を召喚した。それと僕、エリザ、そして忘れてはならないのがそう、サマエルだ。僕がガチャでゲットした悪魔だが、エリザに受渡した悪魔。その悪魔も、今回は僕と一緒に遊ぶことになる。
「召喚!」
計5体の悪魔が召喚され、僕の家には8人の女、そして男は僕1人と、まるでハーレムのような感じなった。悪魔を含めないなら3人だが。しかし、悪魔って性別はどっちなんだろうか。やっぱり、性別未確認っていう部類に分類されるのか? でも、シルフはノームは男の子って言ったいたし、性別未確認というのは魔族と分類した時にあるのか。
「で、ダーリン。トランプって言っても、何で遊ぶ気なの?」
「神経衰弱だ」
「……あんなの、記憶力の強い奴が勝つゲームじゃんか! 成績がいいダーリンが有利じゃんか!」
「なんでだ? 悪魔を使ってでもすればいいだろう」
「だーかーら、悪魔なんか使っても持ってる数の多いダーリンが勝つに決まってるだろ! そんなことしてまで私をいじり倒したいっていうのか?」
「……仕方ないなあ。じゃあトランプはやめにするか?」
「やめにする! そんな低俗なゲーム、誰もしないぞ!」
「おいこら、低俗言うな! トランプメーカーとか、トランプ生んだ人達皆に謝れ!」
「ごめんなさい……」
「はあ。じゃあ、何しようか。……あ、掃除」
「げっ」
「掃除しようか」
「何処を?」
「家を」
「そ、それは今日じゃなくても……」
「ごめんな。それが、いっつも妹の部屋とかは掃除していないんだよ。あいつ、自分の部屋に異性は愚か同性も入れない女だから。だから、今日はしっかりと掃除する必要があるんだよ。……トランプしない代わりにいいだろ? 日曜だからって、3連休なんだし休んでばかりでは居られないだろう」
「ね、ねえ。なんでもするから。胸も貸してあげるから……ね?」
「僕は別にお前に『性欲発散してもらう』っていうことで働いてもらおうとはしていないんだよ。お前には『労働』してもらおうとしているんだ」
「……だから掃除?」
「ああ。家事の得意な女の人になって欲しいからね。それこそ、家事のできる女性はモテる。モテなくても、僕なら家事の出来ない人間は選ばないね」
「じゃ、じゃあダーリンは私を嫁にしてくれるの?」
「よ、嫁って認めてはないけど、ぶっちゃけた話、やってること完全に恋人同然の事だよな。……が、前にも言ったと思うけど僕は本当に心の決めた人としか彼氏彼女の関係にはならない。だから、エリザとはやっぱり彼女彼氏の関係はちょっと考えてからで……いいか?」
「知ってたから別に傷つきはしないぞー。ふっ。けど、掃除は無しでいいよね?」
「……残念だね。駄目だよ。掃除に関しては、僕の家なのだから、僕がしっかり指示を出してあげないといけないからね。仕方ないのさ。……さあ、掃除を始めよう」
「やめて……」
「戻れ、お前達!」
僕は悪魔4体を戻し、エリザに迫った。サマエルがそれを阻止するのだが、炎に炎ではどうにもならない。むしろ、僕のオーラに怯えてしまって、自ら魔法陣に戻ってしまった。我ながら酷いことをしたと思うが、これもしかたがないと思う。そうさ。エリザが悪いのだ。……勝手に人を悪として、すべての罪をなすりつける。酷い話だが、そうでもしなければ、エリザに痛い思いはさせられない。
「……な、なんで私にそんな酷いことするの?」
「酷いか?」
「酷いよ! 人が嫌がってることを、平気でやってのけないで! そこに痺れないよ! 憧れないよっ!」
「……ネタが寒すぎるのでマイナス5点」
「じょ、ジョジョを馬鹿にするな! 第4部まで読んでから言え!」
「……わ、悪いけど僕は萌えアニメ以外に興味はないから」
「だからラノベに関しては相当な頭脳が……ギャルゲー脳でエロゲー脳で……最悪じゃないか。なんてダーリンなんだ。そんな男に掃除しろって、完全に私、キモヲタにこき使われてる二次元世界の住人じゃんか」
「いやいやいやいや。なんでジョジョネタからそんなネタに?」
「ダーリンが『僕は萌えアニメしか興味ない』って断言したんじゃんか!」
「……き、記憶にございません」
「嘘だッ!」
「ジョジョ立ちで言っても怖くないぞ?」
いつの間にかエリザがジョジョ立ちしていた。そりゃあもう、完全に狙っているような立ち振舞だ。完全に「私をネタにして下さい」と言っているようなものだ。……しかしまあ、いじって欲しいのであれば、いじってあげるべきだ。それがツッコミとボケの関係のようなものだろう。幼馴染、彼氏彼女、夫婦、友達、どんな関係でも、イジられる側、イジる側の二人が存在するわけだ。だから、今のエリザと僕の関係も同じなんだ。そう、きっと。
「――じゃあ、掃除するの?」
「お、折れたか?」
「折れたも何も、いつまでもダーリンの言うことを聞いてあげないばかりで我儘言っていちゃあ駄目だろう、ッて思っただけだよ。べ、別にダーリンのためにわがまま聞いてあげてるだけなんだぞっ!」
「エリザはツンデレキャラじゃなくていい。ツンデレは恋で十分だ」
「ツンデレ暴力行使並乳幼馴染……ほう」
「お前がそんなこと言うとただただ恋を皮肉ってるようにしか聞こえないぞ」
「わ、悪いな!」
「うんうん。悪い悪い。けど、良いんだよ。恋はやっぱりイジられる側だから。愛のあるイジりがないと、面白い話は進展しないだろう」
「それが漫才やコントに通ずるんだね」
「ああ。そうだ」
「って、掃除掃除」
「お、やる気になったな」
「うるさい! 普通に見守ってればいいのに」
「ごめんごめん。あ、でも黒髪『ツンデレ』幼馴染より、茶髪『ツンデレ』幼馴染は少ない気がするんだけど……」
「それに外国人だしね。まあ、ツンデレキャラ演じてあげてもいいけど、もしそういうようなら、ダーリンが『そういうシチュエーションが好きな人』っていう風に感じちゃうかなあ。……あはは」
「ダメだ。そういう風に受け取っちゃ駄目だ」
「掃除を強要してくるんだから、これくらいされて当然だろ!」
「んなっ!」
手を出そうとするが、目の前に居るのは一応『幼馴染』である。……いや、幼馴染なら別にいいじゃないか。どんなことをしても。下心の有ること、してもいいんじゃないか? ……僕はしないけれどね。
やっぱり僕は、そういう下心たっぷりの感情は抑えきれないらしく、ついにやけてしまった。
「変態ッ!」
「ぐはっ!」
いつの間にかエリザが掃除機の先、ノズルの部分を僕の腹部に当ててきた。結構な力が入っていて痛い。にやけている顔が気持ち悪いのだろうか。それなら、下心丸出しにならないように対策を講じたいものだ。
「痛ってんだよ!」
「わ、悪かったね……」
「そこで謝れ。土下座しろ。それはまるで半●のように」
「2013年春夏期ドラマって最強だったよね、今考えると」
「確かにな。じゃあほら。謝れ」
エリザは、人柄、それとも住んでいた国の事情か、それはわからないけれど、渋々僕の前に跪いた。そして、頭を下げた。が、その表情には涙が浮かんでいた。それを見た僕は、急遽エリザの頭に僕の頭を乗っけてソファの上から優越感に浸る……という、SMプレイの一歩手前、主人と奴隷的な関係のプレイに浸ろうとしていたのだが、それはなくなった。
そして、泣いてるエリザを僕は慰めに入る。
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫なわけ無いだろ!」
「そ、そうだよな……。ごめんな、土下座なんか」
「笑いのネタにするために、私に土下座させようとしたんでしょう? それくらいで私は怒ってない。……でも一言言わせてもらうとすれば、日本に一番近い国の偉い人のお言葉を借りてこういってみよう。
――謝罪と賠償を要求するニダ!」
「おお。流石やで。今の日本に必要な能力を持っているな。本当、あの発言には呆れたものだよ」
「ドイツ人の私からすれば、2002年のワールドカップでドイツはいろいろと言われ、日本の悪口が何故かドイツに飛んできて。最悪だよ」
「まあ、お互い旧枢軸国同士頑張ろう」
以外にもこうしたことで友情って芽生えるものなんだなと、僕は久しぶりに友情というもの、絆というものについて考えさせられた。




