Target:Elisa+α Ⅱ/episode24
「男を攻略するようなホモじゃないぞ僕は!」
叫び声を上げる。しかし、悪魔の力は非常に強力であり、魔法少年だとしてもその力に打ち勝つには相当な労力等を有する。だから、無駄に抵抗するよりも、抵抗せずそのまま降伏してしまうほうが使う労力は減る。
だから僕はその場で抵抗をやめ、潔く悪魔の力に従うことにした。
「……凛様。それでは、向かいましょう。けれど、まだ時間的に無理です。ノームは夜行性では有りませんからね。私も夜行性ではないですが」
「シルフ、じゃあなんで徹夜したんだ?」
「も、もうそんな時間ですか?」
「ああ。なあ、ニュクス。スマホの時計で確認してみてくれ」
「はい。……朝4時35分、ですね。この時間帯はレヴィアタンが出現しますけど、ご主人様は、そんなのお構いなしですよね」
「まあな。面倒くさいし」
「面倒くさいんですか。……私のご主人様は本当、酷いお方です」
「でも従うんだよな」
「酷いって言っても、ご主人様は悪いほうじゃないです。なにせ、本当に悪いお方なら『伝説の不採用通知』が受け渡されて、解雇されますから」
「さり気なくアニメネタを入れるの止めようか?」
「すいません。けど、こうでもすればご主人様がツッコんでくれると思ってですね……」
「そか。まあ、お前の思うどおりになったわけだが」
抵抗せず、僕はニュクスやシルフに導かれてノームの居ると言われるところへ向かう。その場所は神戸市内ではなく、海を超えた淡路島の南部の方であった。海を渡ればすぐそこに鳴門の渦潮。そんなところまで飛んできたのだ。いつの間にここまで来たのか、少し疑問になる。寝不足が原因か、本当に前までの記憶が無いようで困る。
「で、淡路島にノームが居るのか?」
曖昧な記憶と、徹夜明けの独特のテンション。今が何時なのかすら把握できていないし。目をかいてみるも、それが余計に眠気を再発させ、危うくクラっと倒れそうになる。
「ご、ご主人様!」
「ちょっと、ダーリン。大丈夫?」
「だ、大丈夫だ。……けど、ちょっと休ませてほしいというか……」
「そうか。それなら一旦ご主人様の言うとおりにしてあげましょう」
「あ、ありがとう。じゃあ、神戸に戻ろう」
「そうですね。別に淡路島で待っているってのも何か変ですし。それこそ、恋さんが居ますしね。帰りましょうか、ご主人様!」
「ああ。帰ろう。僕は帰ったら寝る。……あ、そうだ。お前等魔法陣にもどれ。お前等も休んでおけ。お前等がしっかりと戦ってくれないと、僕も指示ができん。だから、しっかりと休んでくれよ」
「はーい」
「それじゃあ、戻れ、ニュクス、サラマンダー、ウンディーネ、シルフ!」
皆それぞれ、赤と黒、紅、青、緑の光とともに僕の魔法陣の中に戻っていく。魔法陣の中に入り終わった時、エリザが僕にくっついてきた。会長は空気を読み、先に帰っていた。……と思ったのだが、それは誤解だったらしく、会長自身が淡路島の上空から見る景色に感動してしまったらしい。だから、会長の姿が見つけられなかったのだ。そりゃあ、感動してしまっていれば、自らどの位置から見れば一番きれいか探しに行くし、そういうのは仕方ないか。
「ねーねー。なんで会長しか見てないのさ。ダーリンのバーカ」
「い、痛。ほっぺ抓るんじゃねえ。痛い。本当痛いから!」
「えーいえーい」
「痛い痛い……」
「どう? 眠気冷めた? アンインストールした?」
「眠気はアンインストールできないよ! まあでも、眠気は冷めたかな。……しっかしお前、強く引っ張り過ぎなんだよバーカ」
「バーカいうなバーカ」
「バーカって言う方がバカなんだバーカ」
「が、学力はダーリンが上だけど、私にはこういう魅力があるんだぞ!」
「むっ!?」
背中にふにゅっ、と柔らかい感触を感じる。そして、右手をすーっとエリザに導かれ、自分の口を塞いでしまった。そして、左手を腹の近くに持って行かれ、僕の左手の上にエリザの左手を被せられた。そして、ぎゅう、とその左手もエリザの体の方に密着させられ、その背中に当たる感触が大きくなっていく。
「んむむむ……」
「ダーリンって意外とこういう所で抵抗しないよね」
「むまめ(だまれ)!」
「ふふふ。さあて、私がダーリンにあんなことやこんなことをしてあげる」
僕は手を動かし、足を動かし、抜けだそうと藻掻く。しかしながら、一切の抵抗はエリザに効かない。エリザのその強い力に、まるで後ろにいるのが恋のように感じてしまう。しかしながら、いつの間に恋、いやエリザはこんな凄まじい威力の力(身体も含めて)を持ったのだろうか。僕が12年前、エリザとあったとされる、その時の写真とかが残っていればいいのだが、生憎そうも行かないだろうし。それこそ、僕の両親は居ないから、写真だって探すに一苦労だ。
「……めみま、ふぁまめ(エリザ離せ)!」
「嫌。でもダーリンに嫌な思いもさせたくないから口の方は開放。じゃあ、逆にもっと私に密着してもらうぞ。えーい!」
「ちょ……」
やっぱり出ているところは出ているわけだ。羞恥心、そういうものを持ってほしいと常日頃から思っているわけだが、エリザに羞恥心は付きそうにない。……期待するだけ時間の無駄だろうか。いや、そんなことはないはずだ。さっきも言ったが、エリザだって出てるところは出ている。確認していないが、僕の周りの女子のうちで一番大きな胸のサイズを持っているのはエリザな気がする。……外国人はやはり大きくなる傾向にあるのだろうか。
そしてふと、僕は思い出した。
口が開放されて自由に喋れるようになったのでエリザに思ったことをそのまま話してみた。
「ドイツ出身のキャラクターって、貧乳が多いイメージだけど、エリザって何カップなの?」
「ダーリン、いくらなんでもそれは酷すぎるよ……。てか、もう朝5時回ってるのに深夜テンションってどういうことさ」
「24時間テ●ビでも、27時間テ●ビでも、朝5時台は『早朝』とも呼べるけど、一応『深夜』の枠の中なんだよ。だから大丈夫」
「そうかな? ……まあ、ダーリンの質問に答えてもいいけど。私はGね。つい最近またブラ買えてさ。まだまだ成長途中なんだよ、きっと」
「それって、僕の姉ちゃんや妹をある意味皮肉ってるよね」
「ダーリンは私のものだもん! あんな姉妹に盗られる訳にはいかない! 私は近親相姦なんて、ヨスガるなんて、絶対に認めないんだからな!」
「お、おい! なんで僕がヨスガるんだ!」
「そんなに実妹としたいなら、ヨスガでもソラってろ! 近親相姦バカ!」
「へ、変なコト言うなってば!」
そんなところに会長が割り込んできた。
「ははーん? 凛君、姉妹丼をしたいと言っているのかな?」
「か、会長? 何言って……」
「言葉の通りだ。しかし、近親相姦というのは私も許されないことだと思うがなあ。……で、話によるとエリザさんはGカップらしいが……くっ」
「か、会長!?」
「ごめん、ちょっと泣いていい?」
「あ……」
「その沈黙はなんだ!」
「ダーリンは、胸の大きい女の子が好きなんですよ。エロゲーも全部そういうのばっかだったし。んで、私みたいにじゃれあってくれる人のほうが好きらしいです。でも、会長さんも全然悪くないと思いますよ!」
僕への言葉の精神攻撃。そして、会長への皮肉とも取れる言動。最悪だ。会長は少々切れそうな感じがするほど、表情を顔に出していた。そして、右手の拳を握り、一度深呼吸をした。そして、会長はエリザに対して自らの負けているところを、もういっそさらけ出した。
「ま、まあ私はどうせDだし。巨乳じゃないし。並乳だし。つか、Gとか爆乳じゃんか。……くそ。エリザちゃんが羨ましい! くそう、くそう!」
「会長、泣かないで下さい」
「お前は黙ってろ! 胸のない女の子の気持ちがわかるのか!」
「わ、分かるわけ無いじゃな……」
「……黙ってろってば。女の子にはね、触れていいところと悪いところがあるの! ああもう、お前等付き合っちゃえばーか! 会長が祝福するから早くお前等結婚しろ! 末永く爆発しろおおおおおっ!」
「会長、暴れないで!」
暴れる会長を止めに入る。その時だけはエリザの力も弱まっていて、エリザも何が起こっているのか察してくれたんだろう。
「バーカ。私なんか助けても何も出ないぞ。……ちょ、やめっ!」
「どうだ、こちょこちょだ!」
「な、何して……」
馬鹿馬鹿言われた気晴らし的な意味で僕は会長の脇の下を中心に、こちょこちょしていく。あはは、と笑う会長を見ていると自然に心が和む。下心がないわけではなかった。しかし、ここではそれを見せないように精一杯の努力は尽くした。が、それは実現不可能なことで、やっぱりハプニングのようなものは起こるのだ。
「ひゃあっ!」
「あ、すいませ……」
「ダーリン、やっぱり……」
「エリザ、これは違う!」
「本当、エリザちゃんって正妻だよね。凛君とエリザちゃんはお似合いだ」
「お、お似合いって……。あ、会長すいません」
「どうせ下心があったんだろうけど。今後しないならいいよ。……そ、それでも私にそんなことするよりエリザちゃんにしなさい! 嫉妬しちゃうよ?」
「え、エリザは嫉妬しないでしょ」
「……し、嫉妬なんかしません!」
「本当、二人共照れてさ。本当、リア充ってのは悪だわ」
「会長、そういうこと言わないで下さい」
「リア充って言葉が何か分からないですが……ダーリンをイジメないで下さい!」
「お、それは嫉妬か? 私に対する嫉妬か?」
「会長さん!」
エリザはギロリと会長を睨んだ。やっぱりエリザはこうしてみると、幼馴染とはいえ、どこか彼女のように見えてくるのだ。どうせまた、ゲームとリアルを混合してしまっているようだから仕方ないのだろうけど。けれど、混合してしまうくらいなら、やっぱりリアルで作ったほうがいいのだろう。けれど、僕は屑な主人公になりたくない。だから、彼女は慎重に、慎重に作りたい。でも、作りたくないわけじゃない。何時かは僕も結婚したい。
男は女に比べ、本当はロマンチストだ。意外と取り上げられないけれど男は女が思ってるよりロマンチストだと思う。僕も、プロポーズするときのことなんかたまに考えるけれど、やっぱり神戸の港でやりたいなあ、なんて思う。
「……さてと。帰るか」
「そうだね。淡路島にいつまで居る気なのさ。早くうちに帰って恋に心配掛けさせないようにしようよ。……じゃあ、会長さんも一緒に」
「いや、私は別に……」
「いいから会長さんも一緒に行きますよ!」
「ええ……」
エリザの強い説得で会長が折れ、会長は僕の家に来ることになった。久しぶりに会長が僕の家を訪れるわけだが、恋にはどう言うべきか。……いや、それは心配する必要はないか。前にそれは経験済みだし。
そして、僕は会長、エリザと共に自分の家に向かった。
***
朝6時前。時計の秒針の音が静かなリビングに響く。カチカチという音。ソファでぐったりとしている恋。昨日の夜と変わらない姿。冷えているか心配になり、手を触ってみるが大丈夫だった。
ひと安心したところで、僕は恋を肩に乗せて僕のベッドに寝かせることにした。そして、上から布団をかけて僕は部屋を去った。
戻ると、今度は会長が寝ていた。また溜息をつく。「起きたら会長が隣で寝ていた」なんて恋に驚かれるわけにもいかないので、会長は妹の部屋に寝かせることにした。妹の部屋の前でとんとん、と音を立ててノックするも反応はなく、ドアを開けても誰も居なかったので、会長を妹の部屋に寝かせておくことにした。久しぶりに入った妹の部屋には、一杯の妹のパンツが散らかっていた。こんなところで会長を寝かせる訳にはいかない。
一旦戻り、エリザを連れて妹の部屋を掃除することにした。エリザにはこんなことさせたくはなかったのだが、これも日頃の行いが悪いのだ。
「ねえ、なんで妹のベッドに寝かせるの? いいじゃん、ダーリンのベッドで。それとも、女の子にはついつい尽くしてしまう執事的な心の持ち主?」
「うーん。確かにありえるかも知れないな」
「……え。やっぱりダーリンは私じゃ嫌?」
「おいやめろ。完全にお前、僕の彼女みたいな雰囲気じゃないか」
「私を奴隷にしたら『ペットな彼女』になるの?」
「いや、そうはならないし。ところどころネタ混ぜるのやめようぜ、な?」
「ごめんね。ストーリーも違うのに。……私がネタ使うのはダメだよね」
「――そうじゃないけどさ。ダメじゃないけどさ」
「じゃあ、出来る限り使うね!」
「使うな……ああもう、いいよ。使え!」
「な、なんだその態度は!」
「うるせえ」
「む。……じゃ、ダーリンの部屋に寝かせよう」
「はあ。そうするよもう。お前に掃除は無理だろうからな」
「わ、私はそれくらい出来るぞ!」
「もういいぞ。余計に胸を張る必要はない。デカイ胸が可哀想だ」
「……あ、そうだダーリン」
「ん?」
「会長さんを寝かせた後、私ともあれ、してほしい」
「な、何をする気だ?」
「水の掛け合い」
「却下。寒いだろ。どうせ今日も15℃くらいまでしか上がらないのだから、そんなことしたら風邪引くわ。お前に風邪なんかひいてほしくないもん」
「そ、そんなこと言っちゃって、何何? 私をデレさせようとしてるの?」
「悪魔じゃないだろお前。攻略するのも大変だと思うけどな、こうも密接な関係だと」
「み、密接……。私に変なコトした?」
「してないしてない!」
「……でも、私はダーリンとなら一線越えてみたいなあ……なんて」
「誘ってんの?」
「お察しくださいな」
「はあ。……んじゃ、運んで僕らも寝るか」
「それは……嫌だ」
「え」
「あ、あ、今の忘れて! ね、寝ないってだけでその……変な意味は」
「あ、ごめん」
それから、僕もエリザも照れてしまって、何も喋れず、結局会長を寝かせた後に、僕とエリザは寝ることはなかった。




