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Future  作者: 浅咲夏茶
3rd Chapter;Genie Cheats.
24/127

Target:Wind and forest fairy sylph, Ariel and Rina/episode23

 僕もエリザも落胆し始めた。誰一人として、ちゃんと諦めた者はいなかった。しかし、皆諦めの表情を浮かばせ、いかにももう見つけられないんじゃないか、そういう風に感じてしまうような雰囲気に包まれていた。

 僕は、皆が落胆しているのを見て、ニュクスに聞いた。

「……なあ、ニュクス。悪魔を、魔族を探しだすものは無いのか?」

「――ないわけじゃないんですが。けれど、この結界の中だけでしか使えないですからね。何しろ、この結界から出てしまっていては見つけることなど出来ません」

「……そうか。しかし、それしか方法がないというのなら、止むを得ない。それを使うしか無いだろう。……地道に見つけ出すよりはいいんだろう?」

「はい。しかしながら、見つけ出せなければもう結界の外にいるということになるので、更に先行き不透明という状況になるのではないでしょうか……」

「先行き不透明……か。仕方がない。会長を回復させる力を持つ者はシルフしかいないのなら、それに頼るしか無いか。仕方ないな」

「わかりました。それじゃあ使いますね。……スイッチオン!」

 ニュクスの目が赤色になった。そして、右目を被すように黒色の眼帯を付け、自身のイヤホンを被すように手をおいた。そして、目をつぶってニュクスは顔を下に向けた。

 デビルマシンの通知センターに一通のメールが届いた。それはニュクスからのお知らせのようなもので、内容は『喋らないで下さい』とのことだった。何時もであれば、ニュクスを僕はイジるところだが、今はそういう場面ではない。それこそ『空気読めていない』と言われてしまうだろう。だから、イジることはない。


 ***


 それから1分、いや5分が経っただろうか。ニュクスから連絡が届いた。

「……奴はこの付近にいます。……位置情報把握。……南方方向。……公園付近。把握」

「わ、わかったのか?」

「わかりました。この神戸大橋から南の方向に行ったところにある『南公園』です。シルフはそこにいるそうです。ご主人様、向かいましょう」

「やけに今のニュクスは積極的だな。いつもその調子で居ればいいのに」

「折角の情報です。無駄にする気ですか?」

「んなわけあるか。無駄になんかするわけ無いだろう。僕の悪魔のしてくれたことだ。やられたら、その恩をちゃんと貰わんとな」

「ご主人様。……それじゃあ、公園へ行きましょうか」

「ああ」

 僕はニュクスを連れて飛び立った。エリザ、ウンディーネはこちらを向いていたのだが、エリザは眠気に撃ち勝てないらしく、ここでリタイアした。少しくらい頑張れよ、と声をかけようと思ったのだが、その頃にはもう遅く、エリザを連れて行く事は断念した。

 ウンディーネとサラマンダーは、一応は行くと言っていたのだが、僕がニュクスとともに飛び上がった時に、二人は断念した。彼女等曰く、『攻略に女は1人で大丈夫。というか、女を攻略するのに何故女がいるのか』とのこと。まあ、確かに間違ってはいない気がする。シルフが同性愛者だったりすれば、女一人連れて行った時にそれをしっかりと受け入れられ、僕に対しても従順な奴の方がいい。そう考えると、彼女等の選択は間違ってはいない。

 ニュクスとはそれなりの関係を築いているんだということは、我ながら少々感じている。ニュクスは僕が一番初めにゲットした悪魔で有り、当然従順さ、要は愛情度的なものは彼女等より多いはずだ。

 ニュクスは眼帯をつけたまま飛び上がったため、そこに赤い色の髪があたってまるで眼帯から日が燃えているかのような感じがした。

「さあ、ご主人様。行きましょうよ」

「ああ」

 そうして南公園に向け、僕とニュクスは飛び立った。


 ***


 海は見えないが、流石は四方を海に囲まれた島。潮風が心地いい。神戸が港町であるということを再確認させてくれる。

 上空から見下ろす景色は、本当に綺麗だった。六甲山から見ればもっときれいなのだろうけれど、ここからでも十分綺麗だった。とはいえ、夜の初めである19時頃とは違い、この時間帯では、やはり夜にきらめくビルなどが発するライトは少ないように感じる。それでも、左手に大阪湾、右手の果てに瀬戸内海が広がるその光景は、非常に綺麗だった。

「……あれがシルフか」

 僕の視力では到底見ることの出来ないような距離があるのだが、悪魔のニュクスからは見えているようだった。そして、僕のデビルマシンのディスプレイに、シルフが一体何処に居るのか、ネットから地図を引っ張りだしてそこにペンで印を付けた。

「ご主人様、行きますよ」

「おう」

 僕はしっかりとした心構えをして、ニュクスについていく。少々当たる風が強く、所々痛い。けれど、これが終われば今度は攻略が待っているということを考えると、更にまた心が締め付けられる。

「――噴水前。あれがシルフです」

「シルフ……」

 噴水前で立つ一人の女。彼女こそがシルフである。彼女は、その場所から公園の街路灯に照らされた噴水を見ていた。しかし、その噴水は水を上げてはおらず、その場所にはもうすぐ来る冬を感じさせるように、枯れ葉が吹いていた。

「あとは、ご主人様がやってください。私は上空から見ています。万一のことが有りましたらいつでもどうぞ。直ぐに駆けつけるので」

「おう」

 ニュクスは、右目を被すようにつけていた眼帯を外し、イヤホンも外し、代わりに首にヘッドホンをかけ、髪を少々手入れした後に笑顔で僕にいった。

「頑張ってください」

 その一言は、僕の心に、思いに、大きな変化を与えてくれた。それまでの攻略に対する気持ちが変わった。色々な心配事が、成功してしまった時のうれしさで包み込まれて消えるはずだと。そんな事を僕は感じたのだ。


 自分を信じる。テストでの常識じゃないか。学年一位常連の僕がそんなことで躓くわけがない。……大丈夫だ。そう、心を落ち着かせて一歩、また一歩、シルフへ近づく。

「おはようございます」

「まだ朝じゃないだろう」

「そうですか。……やはり、私の居場所は直ぐに分かってしまいますか」

「ああ。分かってしまうんだよ」

「……私、貴方みたいな攻略してくる人なんて初めてなんですよ。今までの魔法少年や魔法少女は皆、精霊を見つけては『経験値』という言葉を乱用して、私達を狩っていた。だから、彼女ら、彼らを、私は許さない……」

「なあ、僕を殺すとか言わないんだろう?」

「殺すわけ無いじゃないですか」

「じゃあ何を……」

「もう一人、いやもう一体精霊がいるんです。その精霊の名は『ノーム』。四精霊の中の精霊です。私から、一つミッションを与えます」

「なんだ?」

「ノームを攻略してきて下さい。そして、私を殺して下さい」

「だから……殺さないと言っているだろう!」

「けれど……」

「ああもう、お前は攻略とかどうこうの問題じゃない。まず、そのネガティブ過ぎる思考をどうにかしろ。そんな思考で要られても僕は困る。ただそれだけだ。……攻略ってのはな、人の心を動かしたら成功なんだよ。なのに、お前の心を動かさないでどう済んだ。僕の手を動かしてどうする?」

「……」

「大丈夫だ。攻略が嫌なら大丈夫だ。僕は嫌なことを共用する人間ではない」

 その言葉に、しっかりとした根拠は無い。あったとしても、昨日の恋の件で確実に何か言われるに違いない。……それでも僕はいい。気づかれたら気づかれたで対応すればいい。それくらい、普通にできるだろう。

「――じゃあ、ノームを攻略してきて下さい」

「残念だがそれは無理だ。今の僕にはシルフしか眼中にない」

「それは一体、何を言っているんですか?」

「言わせるんじゃない。シルフ以外を攻略する気はないということだ」

「そうですか。所詮は私を攻略して会長さんのHP回復の養分にするだけのくせに。いい気になって言いやがって。……私は風の精霊です。だから、耳が強いです。前に言いましたが、少々の圏内の声全ては耳の中に入るんですよ」

「……」

「だから、貴方の事は全てお見通しなんです」

 僕はその時、気の迷いなのだろうか知らないが、風のような速さでシルフに抱きついた。何故そうしたのかはわからない。けれど、気づいた時にはシルフの腰下あたりに右手を回し、唇がくっつくかくっつかないかくらいの位置にお互いの視線が通い合っていたのだ。

 そして、自分でも思ったことを止めようとしたのだが、結局それは上手いこと行くこともなく、口に出してしまった。

「……心は、読み取れるのか?」

 左手をシルフの顎の下へ導き、そしてシルフの顎を上の方にあげて僕の方にさらに近づかせた。後々、ニュクスからなんて言われるかわからないけれど、これも攻略だ。攻略の一つなんだ。そう思わなければいけないんだ。

「……読み、とれない」

 とっさに口に出た質問。それにシルフは真剣に答えてくれた。いままでのクールなシルフとは打って変わって、まさにデレてきている様子だった。「もう落ちたか」と思うのは早いと知っていながらも、そう思ってしまう僕が居た。そう思う僕がとっても気持ち悪い。

「じゃあ、それなら僕の思っていることはわからないんだな?」

「聞こえていないからわかりません」

「そうか。それじゃあ……」

「え……」

 僕は手を差し伸ばした。丁度後ろから風が吹いてきて、その風が僕の身体に冷たい感触を与えてくれた。その風が過ぎ去った時、シルフはその美しい髪を風になびかせていた。そして、僕は笑顔で言った。

「ノームを、攻略しに行こうか」

「……私を、殺しに行くんですよね?」

「……違う。ノームを攻略しに行くだけだ」

「ノームを……ですか。貴方、本当に以外な男の方ですね」

「どうした、突然」

「……何故貴方が色々な方に好かれているのかわかった気がします」

「お?」

「貴方は、本当に友達思いの男の方なんですね」

「いや、僕は元からこういう人間というか……。決めたものは何が何でもやりぬき通す性格だからというか。でもまあ、好かれていないわけではないか。自分で言うと、なんか僕がナルシストっぽくなるけどな」

「そうですね。……ニュクスさんが何故貴方にあれほど懐いているか、私は分からなかったんです。ニュクス、いやヘスティアは元々人とは会話しないで、一人孤独で陰ながら生きていく悪魔ですから。それなのに、何故ニュクスさんがあれほどまでに貴方に懐いているのか。不思議でした。でも、わかった気がします。きっと貴方は、攻略のためには何でもするんでしょう?」

「出来る限りのことは尽くす。だから『何でも』とは言い切れない」

「それでも出来る限りのことは尽くすんじゃないですか。……それなら、私の言い分はあっているわけですね。貴方は本当に『友達思いのバカ』です」

「うるさい」

「……あれ。風で聞こえませんね」

「シルフって、もしかしてサディストキャラか?」

「……魔族を攻略していたから、貴方は自分に言葉がきつく刺さったら、その言葉を発した相手を『サディスト』と言っているだけなんじゃないですか?」

「そうかもな。詳しくは分からない」

「流石、ゲーム脳ですね」

「ゲーム脳言うな。僕はヲタクじゃないぞ」

「ゲームしているから『廃人』とか『ゲーム脳』とか『ゲーム馬鹿』くらいしか私の言語単語帳、いえ『IME』には記載されていないんですが……」

「じゃあ一つ単語追加しておけ」

「なんでしょう?」

「僕の名前を『ヲタク』とか『ゲームバカ』とか読まないでくれ。読むんであれば、『りん』とよんでくれ。それでまた単語が追加される」

「あはは。馬鹿馬鹿しい。けど、貴方の名前を初めて知りました。……私がもし、貴方の悪魔になったとしたら、私はなんと呼べばいいですか?」

「普通に『凛』でいい」

「私は悪魔なのにいいんですか? ニュクスさんみたいに『ご主人様』とかでもいいんですよ。……まあ、貴方がどう言うべきか決めるだけですが」

「だからいいと言っているだろう。僕のことは『凛』と呼べ」

「はい、わかりました。様、は要らないですか?」

「それは好きにしていい」

「じゃあ『凛様』って呼びますね」

「把握した。それじゃあ、ニュクス連れてノーム倒しに行くのか」

「お、流石は魔法少年。分かっていらっしゃいますね。ノームは『草』と『鋼』。ニュクスさんは一番あってますね。……まあ、凛様は『倒さないで』ノームを『攻略して』頑張るんだと思いますが。……これまでとは一味違うと思いますけど」

「そ、それは一体どういう意味だ」

「ひと味ちがう、そのままの意味です。……それじゃあ凛様。私は、貴方の悪魔になるべきでしょうか。それとも、悪魔にならないべきでしょうか」

「なるべきだ。いや、僕は君を僕の悪魔にしたい」

「強い意志、持ってるんですね。まあ、会長さんを回復させるためには私が必要不可欠なんでしたっけ。ウンディーネでも使えるのに。……まあ、私を攻略しに来てくれたお礼に、何か恩返ししてあげますね。……私、ぶっちゃけ途中で凛様の性格に惚れたというかですね……」

「惚れるな惚れるな」

「いや、本気ですよ?」

「そか。……でも僕には彼女居ないし。つか、本当に好きじゃない奴と彼女彼氏の関係築きたくないし」

「それじゃあ、私は凛様にとって、どういう関係ですか?」

「悪魔と主人の関係だ。けど、共に過ごしていけばその感覚も変化するはずだ。だから、少し時間を貰いたい」

「わかりました。それでは、私の力をお貸ししましょう」

 シルフは僕に抱きついてきた。そして、自らの背中に白色の美しい羽を生やして、僕をその羽で包み込んだ。そしてシルフは「契約、ありがと」と初めて敬語ではなく、タメ口で僕に言ってくれた。

 サラマンダーの時もそうだったが、契約の時は悪魔が主人となる魔法少年、魔法少女を抱く形で包むのが基本らしい。ウンディーネはガチャでゲットしたため、契約はガチャを回した時点で起こっていたんだと思われる。

 しかし、ニュクスは一体どこで契約を交わしたのだろうか。いや、魔法陣に転送された時点で契約完了なのだろうか。それも一解釈としてありだ。が、僕は正しい事を知りたい。

 ただ、そんなことを深く考えていても話は進展しない。今度聞けば良い話だ。今日はまだ聞かない方がいい。

「さて、シルフ。会長を回復させよう」

「わかりました」

 僕は会長のもとへシルフとニュクスを連れて向かった。 


 ***


 そうして、僕はシルフを気絶している会長に対面させ、回復魔法を使用して、会長を回復させた。シルフはウンディーネでもいいと言っていた。今度はシルフでもウンディーネでも、どちらかに頼めばいい、そう僕は初めて知ったことを脳裏に刻む。

「……う。ボクは一体何を……って、ひゃっ、寒っ」

「おはようございます、会長様」

「き、君はシルフ……だよね?」

「はい。私はシルフです。凛様に攻略されて、今じゃ凛様の言いなりです」

「言い方が悪いな。……まあ、彼はそんな悪い男じゃない。それに、私は君を殺そうとしたし、君の主人を殺そうともした。本当に最低な女だ」

「いいんです、私も祖父からそれが普通の魔法少年、魔法少女のやることなんだって教わっていましたから。だから精霊、悪魔、魔族、皆が反発するんです。私達は奴隷ではないのに。経験値を上げるための道具じゃないのに。だから皆、魔法少年や魔法少女に恨みなどを持っているのです。それと恐怖心も。けれど、凛様は何かが違うんです。そして、私は凛様のおかげで気付かされました。大切な事は『仲間を思いやること、平和に物事を解決していくこと』だと」

「良い話だな。……本当に私も彼を見習わないと」

「そうですよ。……それじゃあ、会長さん。貴方は私達悪魔を殺さないと誓いますか?」

「ああ。会話で解決できる魔族である悪魔は私も倒さないことにする。けど、会話で解決できなかったら、その魔族は何が何でも倒す」

「はい、その時は、ご一緒に頑張りましょう」

「おうよ」

 会長とシルフは固い握手を交わす。今まで対局関係だった人達が新たな友情を築くというシーンは非常に感動的だ。

「ほら、ノーム攻略行くぞ」

「……凛君、ノーム攻略って本当に言ってるのか? まあ、私も手伝ってやらないことはないけどさ。ひと味ちがうぞ?」

「な、何が違うんですか?」

 その違いは、会長から言われた。しかも、会長は今までに見たことのないようないい笑顔で僕に言ってきた。そして、会長は言い終わると僕の方に手を掛けてきた。言われた言葉、それは……


「ノームは 男の子 だよ?」


 衝撃の事実が僕の脳裏を焼き殺した。

昨日中に投稿するはずだったのですが、途中で寝てしまい、一応バックアップ取っておいたものに付け足しを加えた感じになっています。昨日、見れなくて不安が溜まっている方々、申し訳ございません。

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