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Future  作者: 浅咲夏茶
3rd Chapter;Genie Cheats.
21/127

Target:Elisa -At the cinema/episode20

「……さてと。早く見てしまわないと、閉店時間が来るぞ」

「……ご、ごめんね。ダーリン嫌なら別に見なくても……」

「お前が見るのが嫌って言うなら僕も取りやめるけど、まあチケット貰っちゃったわけだし。それこそ、家の中で気まずい雰囲気作っていたら『あっ……』って、何か良くないことを連想されそうだろう?」

「ダーリンって、なんで変な方向に考えを持っていくの……」

「へ、変とはなんだ!」

「いや、だって『気まずい』とかさ。別に私はダーリンと変な距離をもってるわけじゃないよ? ……どちらかというと、もっと近づきたいかなあ……なんて」

「なんだよ。寒いのか?」

 さり気なく僕はエリザの手を引き、僕の身体に近づけた。あくまでさり気なくだ。そう、さり気なく。さり気なく……。

「いや、寒くなんか無いよ。さ、ほらほら、行こうか」

「照れ隠しか?」

「んなわけねえだろ。照れ隠しなんかしてないから」

「エリザは茶髪だから『ツンデレ』は正直に合わない気がするんだよね……」

「どういう意味だ」

「それとした意味はねえよ。やっぱりお前はちょこっと男勝りな方がいいかなあ、なんてさ。男みたいなしゃべり口調のほうが、似合ってる気がするんだよね」

 男みたいなしゃべり口調でも問題はない。しかし、やっぱり乙女心を持っていて欲しい、と僕は心の中で思った。なにせ、エロ本を恋に渡してエリザにバレないようにとしていたのに、エロゲを見ても全然無反応だし。意外と男っぽいのかもしれない。いや、僕の周りの女子は皆そういう人ばかりか。

「そうかなあ。じゃ、男口調で過ごしてみるか。……って思い出した。ダーリン、今日『俺』って言ってないよね?」

「い、いやそれは……」

「私を散々傷つけておいて、自分の言いたいことばかり口走るのか……?」

「ち、違うんだエリザ。それは誤解だ!」

「何が誤解なのかな? ……仕方ないなあ。キャラクター演じるの辛いんだよねえ。男っぽい女キャラとか、私無理かもしれないわ。……まあやってみる。だから、ダーリンもやれ。いいからやれ。『俺』と言え」

「今日言った……」

「だからどうした。じゃあ、聞く。何時言うか?」

「今じゃないでしょ……」

「今だよ!」

「ちょ、ちょ、エリザ……」

 抱き寄せられた。僕がさっきエリザをさり気なく抱き寄せたというか、僕の体熱で温めてあげたわけだが、それをエリザにされたわけだ。僕の場合は、エリザの右肩は触れておらず、左肩のみ触れていたわけだが、エリザは左まで触れていた。そして、自身のクルクルとカール状になっている髪を僕の顔とかに付けて、匂いを嗅がせてくる。

「な、何してんだ……」

「何にもしてないよ。……ただちょっと、私のいう事聞いてくれないから辱めてやろうかなって感じで。ダーリンは寒くない?」

「お前の体温伝わってきてるから大丈夫だ。寒くない」

「そっか。じゃ、これ」

「こ、これって……」

 エリザは突然僕を引き連れて、マフラーの売っているコーナーへ向かった。そのコーナーには、一つのマフラーが置かれていた。映画館なのにマフラーっていうのは一体……。

「これください」

「おいこら」

「お金有るでしょ?」

「な、なんで……。お金なんかな……」

 無いはずだった。だって、家から出てくるときに財布を持ってきた覚えはないからな。だが、僕がポケットを触った時には財布の感触があった。

「嘘……だろ?」

「あ、それ私のお金だからね?」

「え」

 エリザの話によると、僕がエリザを連れて飛行していた時に、エリザは自分のポケットから財布を取り出して、その財布を僕のポケットに入れたそうだ。しかし、よく僕も気づかなかったものだ。というか、それだけ聞いているとどう聞いても『ご都合主義』にしか見えないのはご愛嬌というわけか。

「ラノベなんてハーレムご都合主義かバトル主人公チートだからなあ、今は。昔は良かったのになあ……」

「ダーリン。なんか言った?」

「あ、ごめんごめん。つかこれ、お前の金なんだろ? 使っていいのかよ」

「いいよ。というか、書いてあるじゃんか」

「ん?」

 吹き出しが会計のディスプレイの下に貼ってあった。そしてそこにはこんなことが書かれていた。その値段は目を疑う値段だった。


『カップル様のみ0円販売中です。』


 思わず息を呑む。そしてちらりと隣のエリザを見る。僕は本当に思いに決めた人じゃない限り彼女にはしない。それは僕の信念だ。たとえ精霊を攻略しようと、それは『攻略』であり、『デート』でも『恋愛』でもない。

 そういうことなはずだ。それであっているはずなんだ。

 だがそれは悪魔と僕でのカップリングの場合だ。人間がもし悪魔だったら。精霊になってしまったら。一体僕はどうするのか。間違いなく自体の収束は遅くなるだろう。顔見知りの人間じゃなければ大丈夫かもしれない。しかし、人間は記憶が残る。……それは人間以外も同じかもしれない。けれど、人間と悪魔の決定的な違いは『主人に逆らうかどうか』だ。

 僕は攻略した相手を放ったらかしにしておくことはない。一度好意を持たせてしまった以上、その相手を満足させなければ真の主人公とはいえない。


 また隣を見る。買って勝手とせがむようなその瞳。エリザは別に可愛くないわけじゃない。けど、僕にエリザが似合うのだろうか。それこそ、僕もエリザもさっき言ったはずだ。『1ランク上の幼馴染』でいいと。それなのになぜ『彼氏彼女』の関係になろうとしているのだろうか。

 強引にしても、一方的にこちらが避けても、片方が悲しむのは目に見えている。ならどうすればいいのだろうか……。


 そんなことを考えていると、何も喋らくなって僕に対してエリザが聞いてきた。

「マフラー買えや」

「なんでや! つか、本当にいいの……」

「同じことを二度聞くな! いいって言っただろ!」

「そこまで強く言う必要はないんじゃ……」

「ご、ごめん……」

「別にいいよ。ま、0円だし。カップル様ってことは一組二人分ってことか」

「そうなんじゃない? でも、暖房効いてるし別にいいんじゃない?」

「いや、お前が買うって言ったんだろ。僕は0円だからどっちでもいいやもう」

「じゃ、買おうよ。そして日本の経済を明るくしていこうよ!」

「0円なんだから金のサイクルが動くわけ無いだろうよ……」

「あ」

「……ったく。じゃ、これ一つください」

 店員さんはおばちゃんだった。いい年したおばちゃんは、年齢が50歳くらいだろうか。映画館の従業員なのになぜマフラーを売っているのか気になるし、これが0円だと外国産だと疑ってしまうがまあいい。

「毎度あり。……お嬢ちゃん、可愛いね。茶髪にクルクル毛なんて外人さんかい?」

「あ、はい。こいつはドイツから来ているんすよ」

「だ、ダーリン、それくらい言わせてよもう……」

「あらあら。ダーリンなんてまあ。今日は初夜かな? ホテルはここから数分だからね。おばちゃんが教えてあげようか?」

「店員さん何言ってるんですか……」

「でも君もそういうことがしたいお年頃でしょう?」

「ぼ、僕はですね、そういうことはやっぱ……ああもう、行くぞエリザ」

「あ、ちょ……」

 おばちゃんからマフラーをもらうと、僕は耐えられなくなってその場を後にした。やっぱり僕が会う人っていうのはなんでこう、そういうことに関して何の羞恥心も持たないのだろうか。

「さてと。ポップコーンでも買うか」

「……ダーリン、おばちゃんにあんな事言われて恥ずかしがってるのかな?」

「ないから。僕が恥ずかしがるなんて……」

「やっぱり俺口調じゃないんだ。……絶対似合うのに」

「うるさいな! ほ、ほらポップコーン買うぞ!」

「話題を逸らすなっ! 話題を逸らす男の子は嫌いだ!」

「な、何を言っているんだ。僕は話題を逸らしているわけではなくて……」

「その口調がおかしいからね。話題を逸らしているんだろうね」

「ちっ。……早く行くぞエリザ。俺についてこい」

「お、『俺』って言ってくれた……じゃあ私も男口調で」

「ご勝手にどうぞ」

「わかった。おい、凛」

「待ってくれ。お前がその口調ですると、姉ちゃんの口調にめちゃくちゃ似てくるんだけど。……お前は男口調は駄目だな。よし、チャラだ」

「えー。似合わなかったかー」

「似合わん。ほら、ポップコーン買うぞ。何度も言わせんな」

「わかった」

 僕はポップコーンの売り場にエリザを連れて向かった。エリザは一切の抵抗を見せなかった。抵抗を見せないエリザを見ていると、どこかこう、何かをしてしまおうとしてしまう、悪の欲望が浮かび上がってきた。

 心を落ち着かせ、エリザの財布からポップコーンの値段分のお金を差し引いてそれで購入した。後々エリザに、購入分の何かを買ってやろうかといったのだが、エリザは顔を横に振って僕の提案を否定した。

「ポップコーンとマフラーを買ったわけだが、一体何の映画を見るんだ?」

「……れ、恋愛映画」

 恋愛映画、と言ってエリザは顔を真赤に染めていた。可愛い。とっても可愛い。さっきはエリザが僕を抱き寄せていたにもかかわらず、今のエリザはそれを起こす気すらないくらいに照れていた。自分でも、こうも照れられると反応しがたい。

「恋愛映画か……。さて、チケット買いに行かないとな」

「うん。じゃ、行こう」

 僕は、二人分の恋愛映画のチケットを購入して、一つをエリザに渡した。そして、僕らはその上映される番号の書かれたところへ進んだ。

「どんな恋愛映画なんだろうね」

「さあ。90分くらいだってさ。今何時……」

「20時20分。上映まで10分だね」

「上映開始って20時半なの? うわ、確認してなかったわ。トイレ行っておけばよかったな。……まいいや。ポップコーンでも食べるか」

「そうだね。ポリポリ食いそうな勢いだけど」

「それは俺じゃなくてお前だろう」

「あ、別に無理して『俺』っていう必要はないよ」

「そうか。じゃあ『僕』に戻すことにするよ。つか、僕はそっちのほうが言いやすい。昔からそっちで通してきたからね」

「凄いね。小学校とかだと、皆『俺』って言い始めるんじゃないの?」

「ドイツ出身なのによくもまあ日本の事情を知っているようで。まあ、そうなんだけど、『俺』って言いづらいんだよね。なんか『僕』って言う方が楽で」

「まあ、一人称なんて気にすることもないっていうのが一番あってる答えなんだと思うけどね」

「どんでん返しじゃないか。……まだ時間有るな。どうする?」

「……携帯電話ってマナーモードにしないといけないんじゃないっけ?」

「あ、忘れてた。ついでにバイブレーションも切っておくよ」

 僕はスマホのマナーモード切替スイッチを入れ、バイブレーションをOFFにした。そして、それを自分のポケットに入れて再び話し始めた。

「それで安心だね。……さて、何について話そうか」

「そうだなあ。僕ら以外に、お客さんなんて数えるほどしか居ないし、ヒソヒソ話しても、小声で話しても聞こえちゃうんじゃないかな」

「そんなんだったら何話しても無駄じゃないのか?」

「無駄だね」

「うん。じゃあ、手でも繋いでもう前向いてるか、話さないで」

「ええ。楽しくなさそうな気がするけど……。ま、ダーリンがそう言うならそうするよ。……でも、話さないままだと恥ずかしいなあ……」

「は、恥ずかしいとか言うなっての。考えちゃうだろ……」

「意外とダーリンってそういうところにドキドキしちゃうのか。……いい情報ゲットしたぜ。ふふふ、これから一杯虐めてあげる……」

「エリザ、やめてくれ。僕をからかうな」

「嫌だねー」

「おい、これが大きいぞ。人が居ないとはいえ、入ってきたらどうするんだ」

「そっか。じゃあ、静かにする」

「ああ、そっちのほうがいい」

 それから、僕もエリザも一言も喋らなかった。映画も始まるし。ふとあたりを見回して時計を見ても、もう残りは1分程度だったからだ。とはいえ、1分というのは意外と長く、待っている時には結構長い時間のように感じるものだ。感じ方によっては2分にも10分にも30秒にもなるわけだ。

「お、始まった……」

 そうして映画の上映が始まった。


 ***


 21時42分。上映が終わった。その映画を見て、僕もエリザも瞳に汗を抱えていた。エリザも僕も、その映画の中のストーリーと何処か似ていたためだ。

 映画は、男、女、女の3人の幼馴染と、男主人公が基本で、そこから様々な人から色々なことを受けて恋愛模様が進展していくというストーリーだ。実写で二次元ではなかった。けれど、それだけ話が伝わって来やすかった。


 幼いころに交わした約束を、主人公と幼馴染三人は思い出した。そこから話は始まる。それまで何の恋愛感情もなかった主人公たちに、新しい恋愛感情が芽生えた。しかし、主人公は一人の幼馴染(女)に抱いた感情を否定し、自身の思いを捨てた。しかし、それを幼馴染(男)によって再度気付かされ、もう一度告白しようとした。

 が、時は既に遅く、その幼馴染は結婚していた。もちろん、子供もいた。

 主人公は泣いたし、その時に幼馴染(男)も、主人公を見て泣きはしなかったが、一人になった時に泣いた。もう一人の幼馴染(女)も、主人公を慰めたが、主人公は相当メンタルが壊されてしまっていて、直すのに時間がかかってしまった。

 そして、その直している間にその幼馴染(男)と幼馴染(女)は結婚してしまった。唯一の支えだった人からも見捨てられたわけだ。

 主人公はそれからも支えてもらったが、有る日、「もういい」と言って支えてもらうことを断った。そしてそれから数週間して、幼馴染(女)の、主人公が恋した方が、末期がんと診断された。

 主人公は助けに行ったけど、それでもその日、死んでしまった。

 そして主人公は……




 ―――という感じで、本当に今の僕らがこういう末路を迎えないでね、と聞かされている感じがしたのだ。

 そして、何気にBGMが非常に良い雰囲気を醸し出し、僕は久しぶりに映画でないた。ありがちな話なのに、泣いてしまった。けれど、主人公が恋した幼馴染の夫を殴ったシーンは許せなかった。そして、その後に戦いに負け、主人公は死ぬわけだ。本当にあのシーンは許せない。

「……いい映画だったけど、心残りが有るよね……」

「ああ、エリザの言うとおりだ。最後は賛否両論かもな……」

「うん。ま、もうこんなに夜遅いし、マナーモードとか解除して恋に電話しないと、流石に恋も怒るんじゃないかな?」

「恋は怒らないだろうよ。あいつの心の器は大きいからな」

「ダーリンって本当、恋をこき使ってるだけにしか見えないんだけど……」

「んなわけねえだろ。僕は恋をこき使ってなんか居ないよ」

「嘘だね」

「う、うるせえな。早く帰るぞ」

「ほ、ほらまた話題逸らして! ち、力尽くで私を引っ張るなあっ!」

「うるさい、帰るぞ」

 映画館を後にして外に出た。ピュウウ、と冷たい風が吹き付ける。港も近いこともあって、外はまだ明るいが流石は11月下旬とも有り、寒い。


 21時55分。スマホの時計で確認した時刻だ。もうこんな時間かと、ふとため息をつく。息は白くはなかったが、のちのち白くなるかもしれない。現在の気温は11℃。そりゃあ寒い。

「あ、エリザ。寒いか?」

「寒くない。……てか、ダーリンも寒くないの?」

「ああ。でも寒い」

「どっちだ。……あのさ、マフラー使わない?」

「突然だな。ま、まあいいか。じゃあ、それを使って帰るか……ってちょっと思い出した。神戸大橋の下にあれを置いてきた……」

「自転車のこと?」

「そうだよ。映画見ていて忘れそうになったじゃないか。幸い雨も降ってないし、自転車こいで帰ればいいかもな。寒いから首にマフラーかけて」

「でも神戸大橋までは結構時間が……」

「魔力……開放ッ!」

「ちょ、やっぱりそういう手か……」

「魔法少年だからね。こういうことは、ガンガン使っていかないと」

「そうかいな。って、ちょ、待ちなさ……」

「待つかバーカ!」

「うわああっ!」

 僕はエリザを連れて神戸大橋まで戻り、自転車の後ろに乗せはせず、自転車を魔法陣の中に戻して、空から帰ることにした。そっちのほうが早いからだ。


 ***


 そして家に帰ると、恋がソファにグダっとしていて、ぐーぐーと鼾は立てていなかったけれど、恋は心地いいように寝ていた。

 僕は恋の服の首元に『ただいま』と書いたメモを挟んで自室へ戻った。

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