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Future  作者: 浅咲夏茶
2nd Chapter;Student council and childhood friend.
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Target:Ren/episode01

 今年、例年よりも早いと思った夏は、一瞬で終りを迎え、八月の後半は例年に増して涼しい気候だった。とはいえ、平気で二五度は超えていたし、春や秋に比べれば、涼しくはなかった。

 暑い暑い夏が過ぎて、体育祭が終わって。そんな日々が続くと思っていた。けれど、今年は何かが違った。そう、何かが違ったのだ。


 僕は今年、高校三年生になった。ライトノベルの主人公たちのように『ハーレムハーレム』叫ぶわけでもない。僕はそんな修羅場を経験したいわけではないし、痛い出来事に振り回されることも嫌いだ。

 人は皆、僕を天才扱いする。それはそれでやめて欲しいが、成績が学年一位なので、「やめろ」と言えば、「お前俺ら見下してるだろ」と言われかねないので、中々言い出せない。

 僕にはそれといった彼女は居ない。幼馴染がいるとはいえ、男の幼馴染が二人、女の幼馴染が一人だ。まあ、小さい頃からバカやっていた連中なので、付き合う時があれば、ほとんどがゲームセンターへ出かける時だとか、くだらない理由ばかりだ。

 勉強会を開いても、僕のいうことが上手く伝わらないらしく、結果的に、僕の努力虚しく幼馴染達は赤点ギリギリの点数を取る。

 そしてまた今日も幼馴染達との会話が始まる。

「高校生なら彼女くらい作れよ。お前テストで学年一位なんだろ? それでそのイケメンスタイルとか……。マジぱねえっす、凛さん」

「はぁ……。うん、それは嬉しいんだけどね……。こう見えても僕、忙しくて……」

 そうそう。僕は学年一位の成績をとっているため学年のまとめ役、つまり『学年委員長』をしている。生徒会長選挙には立候補しなかったため、『生徒会役員として』生徒会に顔を出すことは無いに等しい。が、『学年のまとめ役』として生徒会に出ることはありまくりだ。だから、『副会長』という座についてしまった。お陰で、バイトは行けないことが多いし、金も少ない。貯金していた金は有るとはいえ、十万円程度だ。パソコンを買ったら直ぐになくなる。自分の使うスマフォの月額費を見れば、どれだけ金が引かれていくかがわかる。

「だよなぁ。お前凄いわ、マジで。国のお役所で働けばいいんじゃねえの?」

「いやいや、そういうわけにもいかなくて……。僕公務員志望じゃないし……」

「じゃ何志望なんだよ? ―――まさかAV男優か? お前はそれを志望なのか?」

「いきなり話飛びすぎでしょ! なんで一気にアダルト方面に飛ぶんだよ! 雰囲気ぶち壊しだよ! 梨人の話には超展開多すぎなんだよ!」

 途端に周りの目がこちらに向いてきた。と同時に、僕の髪を引っ張る感触が伝わる。

「へぇ。AV男優……ねぇ?」

「うぐっ……」

「腐れ縁の幼馴染(女)が登場しただけでその態度は酷くないか?」

「そうかなぁ。恋は十分怖い」

「んなっ! 私が恐ろしいとはどういうことだ! こ、これでも私は……」

「はいはい。テンプレセリフ乙。テンプレセリフ乙」

「違うっつの! 何がテンプレセリフ乙だこら! しかも二回言うんじゃねーよ。そこまで大切なセリフってわけじゃないだろ!」

「恋は怖いな。……つかお前将来大丈夫か? そんなんで彼氏の一人や二人出来るのか?」

 僕がそれを聞くと、梨人が話に割り込んできた。

「―――それは地雷だよ、凛君。流石にそれは恋さんにもキツイ言葉やでえ……」

 僕は唾を思い切り呑むと、閉じた口を開き、恋に話しかけた。

「すまん」

「いや、別にいいよ。ただまあ、凛に恋愛事情のことを心配されたくないだけなんで」

「そうか。なら今後とも聞いてやろうか」

「お主、余程のSなのかね……。まあ、それなら私はM……? そんなの嫌」

「いや、俺は恋がマゾっていうのは周知の事実だと思うけどな……うぐっ!」

 梨人がそういった瞬間に、閉ざされていた恋の右手の封印術が解かれ、勢いついた右手が梨人の腹にクリティカルヒットした。とても痛そうだ。恋はこれでも柔道を習ってい他ために、相当なパンチアンドキックパワーを持っている。

「梨人か。ああ、梨人はいいやつだったよ……」

「殺すなてめぇっ!」

「ふっ。お前こそ、自分で人怒らせて蹴られて嬉しがってるドMじゃねえか。変態が」

「やめてくれえ! その呼び方だけは許してやってくれえ!」

 梨人は必死に僕にねだってきた。が、僕はそれを許さない。それなりに付き合いも長いので、僕は梨人の扱い方を知っている。――言い方悪いし誤解招きそうな発言だなそれ。

「ふっ。残念だね。僕は君の主人ではないからね。謝るなら恋に謝りなよ」

 そう僕が言うと、右肩に手があたった。誰だろうかと振り返ると、幼馴染の愁だった。

「なんて最低な少年なんだ君は。ただ、男の子が男の子を虐めるのは良くないと思うよ」

「どんなアドバイスだおいこら!」

「いや、男の子が男の子を虐めるのは、どう考えても腐女子向けの展開でしょう」

「一々そういう発言すんなこら! てか抱きつくのやめてくれ」

 僕は、いつの間にか愁に抱きつかれていた。前々から分かっていた。こいつ、僕を好きなんじゃないかと。まあ、僕は全力で拒否しますが。

「ふぇぇ。酷いよぉ。愁くん大誤算だよぉ……」

「うわきめえ……」

「悪かった……。俺はこういう人間じゃないんだ! 皆誤解をしないでくれ!」

「無理だと思うよ? ほら、皆の方見て見なよ」

 僕は、周りの皆の方を向かせた。皆はこちらを白い目で見ていた。可哀想な目で。まるで、残念な人を見るような目で。

「君は実にかわいそうな人間だ。恋、お前もそう思うだろ?」

「そうだね。うーん、愁ってなんかド変態さんな感じするしね。それに比べ梨人は只のドMって感じがするんだよね。どっちもマゾなんだけどさ」

「そうかそうか。ちなみに恋はサゾか? マゾか? ……ツンデレマゾか?」

「―――なんでツンデレマゾっていう第三の選択肢が浮上しているんだ……」

「いや、何か恋にはそれが似合いそうだなぁ、と」

「私はサゾです。サゾです。……大事なことなので二回言いました」

「嘘だッ!」

 僕は、声を張り上げて、できる限り臨場感を演出した。何時もの声とは裏腹にとても怖い声で。周りも怖がって、カキカキと自分の目の前のノートに何かを書き始めるもの、オドオドして震えながら会話を再開する者。色んな対応を見れた。

「ちょ、ここでネタを使うのか。てか皆怖がってるぞ?」

「そうかな? そこまで怖いか?」

「わ、私は怖くないけどね」

 僕は前から察していた。恋はツンデレだということ、明らかにこいつはサゾを演じているマゾだと。いっそこいつを調教して、僕好みの幼馴染にしてしまおうかと思ったが、周りに二人のMが居るため、僕が手を出した瞬間、何をしてくるか分からずやめておいた。

 それ以前に、恋は柔道を習っており、僕の力では到底倒すことが出来ない。要は、こいつの弱みを握って調教していくしか無いのである。

 だが「流石にそれはどうか」という優等生特有の脳が働き、その方法は諦めた。まあ、最終手段程度に残しておくのが一番か。

「怖がってるだろ実際。ツンデレ乙」

「乙乙言うな! 私は『乙』って名前じゃないっ! 『恋』っていう名前が有るんだ!」

「『れん』なんて普通読まないでしょ。普通、『こい』って読むと思うよ。お前そんなに恋得意じゃないくせに。ビッチ臭ゼロだもんなお前」

「―――お前は私のハートをフルボッコにして楽しいのか……?」

「ふっ。何をまた。恋愛が下手なお前には『ふれん』っていう名前が似合うんだよ!」

「『恋』っていう名前に込められた理由も知らないくせに調子のんな!」

「うぐっ! ぐあ……っ! おま、ちょ……金的はなしなはず……っ!」

 金的。男子諸君なら分かるはずだ。この痛みが。どれだけ痛いか。その痛みを僕は今味わっている。痛い。痛い。破裂してしまうんじゃないかと思ってしまう。まあ、もともとこの器官は内臓の一部だし、痛いのは仕方がない。とはいえ、この痛さは尋常ではない。

「どうよどうよ? 私にそういう暴言吐いたら痛い目にあうんだよ……。ふっ。ざまあ」

「ふっ。金的は甘えんだよ! そういった卑怯な手を使わない方法は……これだ!」

 僕は、恋に抱きついた。まあ、深い意味は無い。特に恋愛感情が有るわけではない。素直に謝ろうとしたわけでもない。まあ、謝れば万事解決なのだが、プライドが高いと中々それをしようとする気にはならない。

「すまない。僕が悪かった、恋。さっきの事は全部チャラにしてほしい。お前が恋愛苦手だってことは周知の事実だ。だから、僕と付き合おう……な?」

 そう。『デレさせる』ということだ。

 何度も言うが、恋も梨人も愁も、皆長年の付き合いのある幼馴染である。それなりに扱い方を知っている。恋がツンデレだとすれば、こういった場面でツンツンした発言をするはずだし、ツンデレでなければ僕を力強く倒し逃げるか、デレているだろう。

「―――そ、そんな冗談に騙されるわけ無いでしょ……」

「でも僕は、僕はお前が……恋が……。昔から僕は……恋と……」

「ふぇ?」

 僕の方を上目遣いで恋は見てきたが、僕はお構いなしに言ってやった。

「最高の幼馴染以上の関係にはなれないと思っていました」

 が、入った瞬間に炎が着いたらしい。ピキピキと顔に青筋を立てている。

「さてと……金的以上の痛みを味わってもらうためにはどうすればいいんだろうねえ?」

「ふっ。残念! 僕は逃げる! 屋上へ!」

「こら待て! 生徒会役員が廊下を走るなっ!」

 こうして今日も一日が始まっていく。


 ***


 昼飯を食おうと屋上へ向かった僕は、腹が減ったので弁当箱を開けた。

「な、なんだこれ」

 パカ、と弁当箱を開けると中にはドッグフードが少量。そして、ハートマークのおにぎりが一つ。この仕業はあいつだろうな、と察し、僕はそのターゲットにちょっかいを仕掛けに向かった。

「おい恋」

「ん?」

「飯一緒に食おうぜ。なんか腹減って話にならないから」

「そうかそうか」

 満面の笑みでこちらを見ている恋。これは高度な対戦が求められそうな予感がする。

「どうだ、飯の味は?」

「―――分かってるんだぞ、恋。こんな小汚い細工しやがって……」

「ふっ。ドッグフード、食べた?」

「誰が食べるかってんだ!」

「食べろ」

「食べない」

「ちっ。まあいいよ、もう。どうせ私のせいにされるのは目に見えているんだし」

「馬鹿め。甘いな」

「ふぇ?」

 僕は、恋の持っていた弁当を一式僕に与えられた弁当にすり替えておいた。そしてドヤ顔で僕は恋に語りかけた。

「ふっ。どうよ」

「ちっ……。なんてこった……。大誤算だった……」

「やめろ。大誤算って言葉で愁の台詞を思い出すから」

「それはお前の思い込みだろ」

「そうかなぁ? んじゃこの卵焼き頂きっ!」

「ちょ、凛お前……っ!」

 僕は今気づいた。僕が手にした卵焼きは恋が食べたものだったことを。まったく意識していなかったとはいえ、こうなってしまっては大変だ。

 すぐに僕は恋に謝る。

「―――ごめん」

「食いたければ好きなだけ食え。卵焼きとか一つ残しておけばいいから……」

「おお。サンクスな。つか割と真面目に今日は弁当忘れたんだわ。箱は有るんだけどな。中身ないっていう」

「バカじゃねえの。購買行けよ」

「いや、お前に謝りたくてさ。それに、お前と居ると楽しいし」

「んなっ……」

「あー食った食った。んじゃ明日奢ってやるよ昼飯。金忘れたら悲惨だが大丈夫だ。一応貯蓄はあるし、学食なんて普通に奢ってやんよ」

「……お、おう」

 弁当箱と箸を恋に返した。まあ、こいつが僕に何かと恋愛感情を抱いているんじゃないか、とは思っていたがやはりこいつは素直に思いを伝えられないツンデレだ。ドMかどうかは別として。

「んじゃ、ドリンク買ってくるわ。お前何飲む?」

「え」

「僕炭酸飲むけど、お前何飲む? 俺の白いの飲むか?」

「―――死ね」

「いや冗談だっつの。まったくもう、マジになるな」

「凛は強引だから中々冗談かどうか判断しにくい」

「僕を信用していないってことじゃないか! こんなのってあんまりだよ!」

「またアニメネタか。私はコーヒーでいいよ」

「おう」

 僕は自販機へと向かった。

 自販機は、僕と恋が飯を食っている屋上から下におりてすぐの場所にある。校則で、勝手悪い時間、なんていう概念はほぼ無い。基本的に授業中にしなければ、好きなように購入できる。

 自販機前に来て、財布を広げると、中には一〇〇円玉が一つ、五〇円玉が一つしか入っていなかった。つまり、一つしか買えないというわけだ。

「なんてこった……」

 頭を抱えている僕。まあ、屋上近辺に来る人はほとんどコミュ障なので、僕に金を貸す者は居ない。借りても後々返すのが面倒だし、何かとする気も起きない。

「はぁ。事情はあとで説明するか……」

 諦めが効いたところで、僕は冷たいコーヒーを一つ買った。


 屋上へ戻ると、恋はうとうとしていた。

「おやすみ」

 そういったあとに、僕はコーヒー缶を恋の頬に付けた。

「冷たっ!」

「おはよう。何うとうとしてんだ。そんなに秋の風は気持いいか?」

「まあね。てか、冷たいからマジでそれはやめてくれ」

「そう言われると余計にしたくなるのが男ってもんです」

 と、一言僕は断った上でもう一度、恋の頬にコーヒー缶を付ける。

「だっ、だから冷たいっての!」

「バーカ。同じ手に二回くらってるアホがそんなことほざくな」

「いいよもう。で、それは何? 間接キスしなきゃいけないの?」

「いや違う。その、金が足りなくてだな……」

「バーカ」

「お前に言われる筋合いはない! 学力は僕のほうが上だしな!」

「うぐっ……。とりあえずそれをよこせ」

「いいよ。はい」

 僕は今まで以上に軽々しくコーヒーを渡した。

「ありがと」

 コーヒー缶を開け、ゴクゴクと恋はコーヒーを飲む。これが牛乳だったら……なんていう淡い欲望が僕の中にもあるが、いっそぶっかけをしてもらうか。

 そんな変な思いは消し去った上で、僕は恋に話しかけた。

「美味いか?」

「慣れてるからね。てか、よく微糖選んだね」

「まあお前昔から微糖飲んでたろ。なんでブラック嫌いなんだよ」

「ブラックとか胃壊す」

「そういう問題かよ。甘いもん摂り過ぎると糖尿病になるぞ」

「こ、コーヒーは別だし!」

「自己主張乙」

「で、これ後飲んでいいよ」

「は? お前の分だぞこれ。飲めよ。いいよ僕の分は」

「お前昼飯で飲料飲んでないだろ。せめて一〇〇ミリリットルくらい飲め」

「一〇〇って五分の一の量じゃないか! いいのか、そんなに……」

「―――お前の元気がなくなると面白味もなくなるしな」

「そうかそうか。僕はお笑い芸人か」

「ああ」

 恋からコーヒーを受け取ると、僕は一気に喉に流しこんだ。隣で恋は照れて顔を真赤に染め上げていたが、そんなのお構いなしに僕は飲み進めた。

 とはいえ、一〇〇ミリリットル。少量だったのですぐに飲み終わった。


 教室に戻ろうとする時、愁が僕と恋を迎えに来た。

「お、夫婦漫才やってんのか。幸せそうに」

「違うってば」

「嘘つけ。で、もうすぐ五限始まるぞ」

「いっけね。恋、急ぐぞ!」

「お、おう!」

 僕は恋の手をぎゅっと握りながら屋上のドアを閉めて、階段を駆けていった。

連載小説書いて初めて一話五〇〇〇文字超しました。

一話でこのボリュームとか……。すげえ。

一日一話か二話ずつ書いていきたいと思います。応援よろしくお願いします。

まあ、僕も一応学生なもんで、テストとか来ると話しにならないので更新ペース落ちるかもしれませんが、出来る限り更新するつもりなのでお願いします。


略称はどうしようか。

マイエヴァ、がカタカナの略称としては一番いいかもしれないです。

etaf(イータフ/エタフ)やMetaf(メタフ/ミータフ)あたりが英字略称かな。


今後共Renonsをどうか宜しくお願いします。

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