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Future  作者: 浅咲夏茶
3rd Chapter;Genie Cheats.
19/127

Target:Elisa -the promise of childhood./episode18

 家の庭。恋と水を掛け合った『あの』庭。濡濡になったあの庭なわけだが、そこの上で魔法少年姿を解いたので、落ちた時の衝動は結構なものだった。ニュクス達は当然僕の魔法陣の中へ戻った。この姿が、恋やエリザに見られていないか心配だったが、もしバレたりでもしていたら、潔く負けを認めよう、と僕は決意した。

「ただいま」

「……おかえり」

 執事姿の恋。まだ夕方にはなっていないのだろうか。

「今何時だ?」

「……4時半」

 夕方4時半。確か、僕は『夕方まで』と言った気がするが……。あれ? 5時だったっけか。……忘れてしまった。

「じゃ、5時までその服で」

 結局、後者の『5時』の方を僕は選んだ。

「う、うん。……でもこれ……その……」

「どうした?」

「汗が……あはは……」

 汗。

 僕はその単語を聞いた瞬間に、変な意味の方を想像してしまった。いや別に『ペロペロ』と言いたいわけではないのだが、そういう意味でのことを考えてしまった。憎い。……僕自身が憎い。

 僕は右手で頭を抱えた。

「ど、どうした凛!?」

「……いや、ちょっと僕、今お前で変なこと考えた……あ」

「……そ、そうか……あはは……っておい」

「ごめん」

「いや、別に考えるのが悪いわけじゃないんだけど……」

「じゃあなんだ?」

「今日の夕飯何がいい?」

「……うーん。なんでもいいや。恋が好きな料理を自分で作ればいいんじゃないかな。つか、執事契約は5時までだし、作らなくても……」

「じゃあ、夕飯無しでOK?」

「そ、そうとは言ってないだろ?」

「……だね。じゃあ、シチューでも作ろうか」

「じゃあ、それで」

「わかった。でも、シチューのルーが無いからなあ……。それに牛乳もないし……」

 牛乳……。牛の……母乳……。恋の……。おいおい。何を考えている。何を考えている。おかしいぞ。僕の頭のなかに何があるんだ。煩悩を払おう。そうでもしなければ、このまま変なことばかり考えて恋を性的な目で見てしまいそうだ。……いや、もう見始めてしまっているのか。クソ……。

 僕は髪の毛を雑にいじった。

「また何か考えてる! シチューじゃ嫌だった?」

「……あ、そうだ。思い出した。お前、敬語使ってないじゃんか」

 全く考えていなかったことを話す。パッと出てきたその事をそのまま言った。何かさっきと違うなあ、と考えてみると、一番違うのは、やっぱり『敬語』を使っているか使っていないか、そこの差なのだろう。

「……敬語。わか、わかりました。し、シチューじゃ嫌でしたか?」

「おお。あと眼鏡は?」

 今更だ。しかし言っておいた。恋は赤い眼鏡をかけていなかったからだ。僕は眼鏡っ娘属性なのだろうか。でも、眼鏡を掛けた女の子は可愛い。

「眼鏡は熱気で曇るから……」

「熱気なんて……。そんなのどうでもいいよ! 眼鏡が至高なんだよ!」

「……たまに凛って変なこと考えるよね……ますよね」

 敬語を言い忘れて言い直した。……新たに『敬語幼馴染』に目覚めたのだろうか。それもいいかもしれない。敬語妹ならぬ敬語幼馴染。それに今は、執事コスしてくれているので、僕に逆らうことが出来ない。

「……さて。じゃあ、なに? ルー買ってくればいいわけ?」

「いや、別にルーを買う必要はない。何故なら、私の家にそれがあるから」

「ほう。じゃあ、それを取ってくればいいといいというわけか」

「……うん。でもルーはボクが取ってくるよ?」

「流石に、なんでもかんでもお前にさせる訳にはいかないだろう。エロゲを買わせたのは僕なわけだ。少しくらい、お詫びしてあげてもいい」

「じゃ、じゃあ……行ってきて?」

 恋は僕を上目遣いで目を輝かせて見つめた。僕が上目遣いされるとドキッとするのをもう知っているのだろうか。しかも、見つめられているので、僕も照れてしまって、ちょっとオドオドしてしまった。

「……お、おう」

 凄い照れてる僕。恋に色々と僕の弱点を見つけられてしまっているのだろうか。……いつの間にそんな僕の弱点を見つけているのだろうか。

 そんなことを考えながら、僕は恋の家へ進む。ルーを持ってくるために。


 ***


 恋の家に入るためには、裏玄関と僕の部屋から飛ぶパターン、そして正面玄関から入るパターンが有る。しかし、正面玄関も裏玄関も開いていない。そりゃあ、今日は僕の家に来ているわけだから、恋は家を閉めている。

「……僕の部屋を経由するか」

 しかし、僕の部屋にはエリザが居る。エリザを除け者みたいにするのは嫌だが、今回限りは除け者になってしまう。何故なら、僕の部屋から恋の部屋まで行こうとすると、バレた時になにか聞かれそうだからだ。

「仕方ない。覚悟を決めよう」

 ゴクリと唾を呑んで、何時もなら軽々しく開けている僕の部屋のドアを今は重々しくそれを開けた。

 中を見渡す。掛け布団に入っているエリザの姿があった。やっぱり彼女は寝ているらしい。「くー」と鼻から呼吸する音が聞こえる。僕の部屋は、女の匂いが漂っていた。言い方が悪いが無理もない。今日は、昼間一切この部屋に僕は立ち入っていないからな。しかしながら、一日立ち入っていないだけでよくもまあ、匂いが変わるものだ。

「……エリザも寝てるし急ぐか」

「私は寝てないよ、ダーリン?」

「え。……って、は、は、裸!?」

 上と下を手で隠す。自身の谷間にスマートフォンを突っ込んで、自身のプライベートゾーンを両手で隠しながら、僕の方に近づいてきた。

「おい……ちょ……」

 あれはフラグだったらしい。なんであんなフラグを立てたのだろう。馬鹿馬鹿しい。たかがシチューのルーを取ってくる、それだけの話なのにここまで疲れるなんて予想外だ。予想外過ぎて笑うことも出来ない。

「と、と、とにかく服を着ろ!」

「いいじゃんか。自分の家なんだし」

「正確には僕の家だけどね。……じゃなくて、本当に服を着ろ」

「『鼻血プシャー』ですか?」

「あのさ、『梨汁プシャー』みたいに言わないでくれないかな。それとも、『えりっしー』とか、そういうゆるキャラになりたいわけ?」

「ゆ、ゆるキャラ……私が?」

「真に受けるんじゃない。……とにかく、僕は用事があるんだ。先を急ぐ」

「それって、恋と執事コスチュームでえっちなことする……の?」

「……しない。少なくとも、そのプレイは高度だからしない」

「高度な……プレイ?」

 裸で言われたくないというのも僕の本心なわけだが、これ以上説得してもエリザは聞いてはくれないだろう。日本人なら、『裸』だとかはタブー視されるが、外国人の場合は、そこまでタブー視されないことが多い。やっぱり大きい心を持っているんだろうな。たまに、キレやすい人も居るから、心の器の大きさなら日本人のほうが大きいんだろうけど、性的なことにオープンなのはやっぱり外国人に多い気がする。

 まあ、エリザにももちろん、それなりに『これ以上は』というのもあるんだろうが。

「……じゃ、ちょっとやらなくちゃいけないことがあるからね」

「ダーリンのバーカ……。恋とばっかイチャイチャして……ふんだっ!」

 完全に彼女気取りだ。別にエリザが彼女でも悪くはない。悪くはない。……けど、本当に僕なんかがエリザを彼女に貰っていいのか、と不安になることが有る。ドイツ人のエリザに、日本の文化のすべてを知っているか、と聞いても「うん」とは答えないかもしれない。もしかしたら、僕と昔会っていたというのなら、日本の文化を以外にも僕より知っているかもしれない。

 ちょっと話がそれた気がするが。それでも、僕はエリザが嫌いというわけではない。もう少し、そういう破廉恥なことに女の子としての自覚として、羞恥心を持ってもらいたいのだが、オープンな人っていうのは、そう簡単に治らない。僕の姉ちゃんもその一例だ。あの姉は本当にヤバイ。

「い、いや、別にイチャイチャしているわけじゃ……」

「どうせ、私なんてただのお邪魔虫なんだ……」

「そういう、自分を否定するの、良くないと思うぞ」

「嘘だね」

「そういうのがいけないんだよ。……お前、今までそういうキャラクターじゃなかったのに。どこで、どこでそんなキャラクターになっちゃったんだ?」

「知らない。知らない。そんなの……知らない!」

「それは嘘だ。……答えろ。どうして、そんなこと言うんだ」

「そんなの……言えない」

「言えよッ! ……あ」

 キツく叱ってしまった。悪かった。これは僕が悪い。叱り方に問題が有る。いや、人は誰もそういうトラウマ的なものを持っているはずなのに。僕は、そんなことも知らずにエリザを……。エリザにキツくあたってしまった。

 僕は反省した。エリザは、自身が悪かったとの一点張りで、一切僕のことを責めはしなかった。怖いのだ、僕が。きっと僕を見るだけで恐怖心が湧いてくるんだろう。僕の心は強く締め付けられた。痛い締め付けられた。そして、胸の中の衝動すらも締め付けられて痛く感じた。

 後悔してからでは遅い、そのことを僕は今、改めて痛感した。

「僕、行くから……」

 エリザは何も返さなかった。


 ***


 ルーを取って、恋の部屋から僕の部屋へ渡ろうとした時、エリザの姿はなかった。台所にいる恋に聞くと、エリザは何処かへ出かけてしまったらしい。こういう時に限って、姉の部屋は鍵がかかっていて入れなかった。それに、妹だって帰ってきていなかった。……恋は料理を作らなければならないし、これ以上恋に嫌な思いをさせるのも嫌だ。こうなった以上、自体の収束を測るのも、僕に必要なスキルなはずだ。攻略失敗時、それを戻すための技術も今身につけておくべきなのだ。

「恋。僕もちょっと出かけてくる。執事服は脱いでいい。……出かけてくる」

「ちょ、凛……」

「エリザは何処に行った?」

「だから、それはわからない……」

「畜生……。なら、僕が行くしか無いか、やっぱり」

「り、凛、まさか……エリザを探しに行く気?」

「そうだ。家の事はお前に任せる。執事服も脱いでいい。僕がエリザを連れ戻してきてやる。……絶対に、絶対にエリザに言わなければならないことが有るからな」

 僕はそう言って、外へ駆け出していった。


 ***


 見慣れた神戸の街。そして、この住宅街。登校するときに通る通学路とほぼ同じ道を通ってどこかへ行ったはずだ。エリザは道もよくわからないはずだからな。

 しかし、それは違った。

 居ない。居ない。居ない。居ない……。何処を探しても、360°僕の家の前の道路から見回して、何処にも居ないのだ。

「仕方ない。自転車で追いかけるか」

 家の自転車を力強く持ち出し、それに乗った。幸い、パンクもしておらず、直ぐにギアを6にして駆け出していった。この自転車意外の自転車が持ち運ばれた形跡はなく、これによってエリザが歩いて、又は走って何処かへ行ったと推測できる。

「5時か。日も落ちたな。早く探さないと……」

 夕陽が照らす住宅。こぐに連れて僕の家は遠く、遠くなっていく。目の前の信号機が変わらないことにイライラしたり。交通量の多い場所に出た時にイライラしたり。この街の風情を見ながら、僕は何処かにイライラをつのらせていた。

 しかし、何時までたってもエリザは見つからなかった。スマフォの時計は夜6時を指す。日もすっかり落ち、もはや『夕方』なんていう言い方は出来ない。風も冷たく感じる。今どんな天気かなんて当然わからない。

 

 ***


 冷たい風が頬を突き刺すようにあたってきた。午後6時50分くらい。僕は自転車で神戸大橋の下まで来ていた。レヴィアタンと戦ったあの決戦の場所。そして、某アニメでよく登場する赤い橋。その場所に、港を見つめる女がいた。それは……。

「エリザか?」

「……なんでわかったの?」

 クルッとこちらを向く。展開が速すぎる気もする。けれど、その時のエリザは頬に丁度、神戸大橋のライトと街路灯のライトが当たっていた。その姿を見た時、キツくあたってしまった僕が本当に憎らしくなってきた。たかがあれくらいのことでキツくあたってしまった僕。それがとっても憎かった。

「安い展開だよね。それこそ、こんなところまで逃げられたのが奇跡だよ」

「鬼ごっこじゃないんだから。つか、お前足速すぎだろ……」

「足は全然早くない。私、本当この場所まで来るのは勘だけが頼りだった。直感を信じて。そしたら、見たことのある場所に来て。……でもさ、渡り終えてここから神戸の街を見るとさ、切なくなったんだよ……」

「エリザ……どうし……」

「ねえ、凛。私、胸が凄く痛いんだ……それでね、おでこも熱いんだ」

「どうしたんだよ突然。熱でも出したか?」

「そうかもね。……私が答えられなかったこと、話していいかな?」

「ああ。いいぞ。お前が嫌じゃなければ。悔しんで、自分を憎んで、お前を追いかけた。お前が話すのが苦じゃなければそれを聞きたい」

「じゃあ……話す。

 私は、ドイツで凛と一緒に過ごした。6歳までの短い間だったけど。それでも私は、凛と、君と居れて楽しかったんだ。覚えていないかもしれないけど、私が神戸まで付いてきたとき、この橋の、ここらへんで言ったんだ。

『18になったら神戸の街で再会しよう』って」

「そんなこと、あったっけか?」

「あったよ。頭のなかがくるくるして、過去の記憶が呼び戻せなくなったんじゃないかな。あはは。でも、ちゃんとその頃記したものもあるから、記憶だけじゃないと思う。本当にあったことなんだと思うよ」

「でも、神戸の街にお前が本当に……」

「うん。でも、すぐに帰ったけどね」

 今思うと、うっすらと僕の記憶の残っている一番古い所で、小さな女の子と遊んでいるシーンが思い出された。神戸の街で12年前に約束したらしい。そんな記憶が、うっすらと蘇ってくる。鮮やかだったあの頃の記憶が。

「今日は、何日かな?」

「11月……22日……」

「私の……」

「誕生日……なのか?」

「うん。だから今日、私は凛に想いを伝えた。答えは無くてもいい。だって、今のダーリンの本命は恋ちゃんだもんね。ダーリンの言うことをなんでも聞いてくれる恋ちゃんに、私は叶うはずがないよ」

 笑顔でそう言いながらも、エリザは泣いていた。瞳の奥から、少しの涙が、エリザの頬を伝って落ちていく。そんな感じだ。

「……私は、それを伝えたかった。ダーリンっていう言い方だって、嫌でしょ?」

「嫌じゃ……ない。それがお前のキャラクターってもんだ」

「……そっか。じゃあ、ダーリンっていう名前は、恋ちゃんにダーリンが思いを伝えるまでの期間限定で呼ぶことにする。だから一つ……」

「どうした?」

「お願いを聞いて欲しい」

「……え?」

「キス、してください」

「……ん? なんだって?」

「キスを……して下さい。そしたら、私もダーリンへの恋愛を止めれるから」

「本当にそれでいいのかよ」

「え?」

「……自分は犠牲になるから友達は幸せになって下さい。ああ、良い話だ。それがお前の望むハッピーエンドルートか。……違う。僕はそんなのハッピーエンドじゃない。けど、ハーレムエンドなんか嫌だ。……人を想う気持ちってのは、誰にだって有る。お前にも有るんだろ。じゃあ……その気持ちを僕は受け取るよ」

「そ、それはどういう……」

「僕とエリザは『彼氏彼女』の関係ではない。けれど、『幼馴染』っていう枠じゃない。名付けるなら……『1ランク上の幼馴染』みたいな感じか?」

「それって幼馴染と同じじゃん」

「殆ど同じだ。けど、親密度が違う」

「ほへー」

「棒顔で答えるな。……ネーミングセンスが悪すぎてすまない」

「謝るんだ」

「ネーミングセンスが悪いのは僕の重々承知の上だからね」

「そっか。じゃあ、その『1ランク上の幼馴染』っていうものの契約をお願いします」

「それが……キスっていいたいのか?」

「夜景の見える港で潮風にあたりながらキスって結構ロマンチックじゃん? それに神戸の街は100万ドルの夜景、1000万ドルの夜景じゃん。そんな場所でするとか、結構ロマンチックじゃない?」

「自分でいうものか、そういうのって……」

「うん」

「……じゃ、じゃあやれば、いいんだな? 一応、僕もやってしまったことがあるから、それの反省の弁も含めて……い、いきます……」

 近づく口と口。このシーンだけみると、横から見ると、カップルに見えるだろうが、そうではない。話は変わるが、昔僕は赤ちゃんはキスすれば出来るものだと思っていた。しかしながら、それは嘘だった。……誰にだって初めてを経験するのは一度きりなわけだ。そう、ぶっちゃけこのキスもファーストキスだ。まあ、エロゲネタとして『幼稚園時代にキス済ましてました』っていうどんでん返しが来るかもしれないが、来たら来たでツッコミをいれればいいだけだ。


 何もかもがロマンチックに見えた時だった。突如として、この付近に魔族が現れたのだ。それも結構大きい。今までこの場所に雨など降っていなかったのに、今この場所は大雨だ。いや、神戸全体が大雨なのだろう。夜だから天気がどうだか見えなくて結構大変だ。

 そして、僕とエリザの着ていた服にも水はあたってきた。11月後半の雨は寒いとしか言いようがなく、本当に寒くて手も足も出なかった。

 だが、丁度のその時に、会長がこの神戸大橋の近くに降り立った。つまりこれは、魔族であるあの魔族との闘いが始まる合図なのだ。

「君は、エリザ……さんだったけ?」

「はい。エリザです。でもなんで生徒会長さんがここに……」

「凛。エリザにも君のしていることを話すが……それでもいいか?」

「わかりました」

 僕はコクリとそう言って首を上から下に振った。


 ***


 説明が終わった。僕のやっていること、会長のやっていることを理解したエリザは、その場から直ぐ帰ると思った。しかし、出てきた答えは予想とは真逆の考えだった。

「会長さん。私にも、魔法少女をやらせてください」

「エリザ。本当にいいのかい? 凛君が夜に中々戻らないのはこの仕事のせいなのに。……君も夜にばかりこんな仕事があるのに、いいのかい?」

「いいんです。夜には強いタイプですから」

「……ならわかった。……エリザ。今日から君も魔法少女だ」

「はい、会長っ!」

 超展開すぎる。話の流れるスピードが速すぎる。こんな速さで決めていいのか。もっとじっくり時間を掛けて決めればいいのに。

 しかし、そんなことを考えるまもなく、僕と会長は闘いをスタートした。エリザは、『見習い』みたいな立ち位置で、今日はバトル不参加らしい。無理もない。悪魔を持っていないのだから。

「さて。あの竜を倒すぞ」

 上空には巨大な龍が居た。その竜を倒すべく、僕は闘いを始めた。まずは結界を張って、そして……。

 いつもどおりにしようとしたが、僕は思うように力が出せなかった。

「力が……」

「水だから水が掛かってるからね……。今日は、ニュクスちゃんじゃなくてウンディーネちゃんのほうがいいと思うよ。草と水の複合属性は強い」

 そうか。水の弱点は草。ならば、草で攻めればいい。水は水に対してはイマイチしか食らわせられないからな。

「さて……。やられたらやりかえすっていうのが僕の信念……」

「またパロディネタ使うのか……。まあ、言えばいいなじゃない、凛君の熱意を」

「わかりました。じゃあ……」

 僕は深呼吸して目を一旦閉じてまた開いて言った。

「やられたらやり返す。……倍返しだッ! ウンディーネ、召喚ッ!」

 僕は魔法陣を描いて、ウンディーネを召喚した。だが、僕の炎の力はやっぱり弱まったままで、召喚するのにも一苦労だった。

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