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Future  作者: 浅咲夏茶
3rd Chapter;Genie Cheats.
18/127

Target:Flame genie-flame salamander.Ⅱ/episode17

「攻略と言っても、どういう風に出るべきだろうか……」

「ご主人様……悩むくらいなら闘えばいいのに…」

「それがなあ……。闘おうにも、やっぱり人を見ると殺すっていうのはな……」

「なんでそういう所で決意的なものが眠ってるんですか。……もういいです。早く精霊を攻略して下さい。デートするなりすればいいじゃないですか」

「なんでデートなんだよ! 流石に、見た目が天使みたいな女とデートしたら『コスプレさせてる』みたいに思われるだろ」

「……じゃあアニメショップに行けばいいんじゃ」

「今日の午前に行ったから! ……初デートが精霊とか話にならねえよ」

「ご主人様。『攻略』ってかいて『デート』って読むんじゃないんですか?」

「ふざけんな。誰がデートだ。だれがするか! 僕はそういうことには頼らん。じゃあ……媚薬でも使って僕に従順な悪魔にするかな」

「ご主人様の考えが最低過ぎて私涙目ですよ……」

「嘘だし! ……攻略か。なら口説くのが手っ取り早いのか……」

「じゃあ口説いてみて下さい、私で」

「いや、なぜお前を口説く必要が……」

 途中、ウンディーネが会話に割り込んだ。

「そうだそうだ! ご主人様は私を口説くべきなんだ!」

「それ、ちゃんとした答えになってないから……。それにまた……」

 女同士の醜い争いが始まるだろ……と言おうとした時には、もう時既に遅し、という状況だった。言わせろよ、と内心思いながら、溜息をつく。

「炎属性持ちの精霊なんで、私を口説いて下さい」

 結果的に、論争で打ち勝ったのはニュクスだった。また溜息をつく。早く、あの天使みたいな悪魔を攻略させろと。……何度言えば。

「……ったく。攻略か。どう出るべきだろうか」

「また最初はじめに戻ってるじゃないですか、ご主人様!」

「……選択肢とか無いわけ?」

「ないですよそんなの! これはゲームであって遊びではないんですよ!」

「上手くネタを詰め込むお前に脱帽だわ。……だが本気で選択肢無しはキツイだろ常考……」

 頭を抱える。耳につけていたヘッドホンを首に移動して掛けた。髪を整え、くるくると髪の毛をいじって考える。

 選択肢。非常に難しい問題だ。

 よくあるものとして、「好きだ」と直球なフレーズがある。

 ……別にそれでも構わない。だが、僕はこのニュクスという悪魔を本気で好きなのだろうか。例え攻略練習と言っても、ニュクスがその気になれば、僕は責任を取らされたりするかも知れない。……難しい選択肢だ。

 2つ目。「お前を考えると、胸が苦しくなる」

 アホか。なんだこれは。これは却下だ。こんな台詞吐きたくもない。第一、なんでこんな台詞をニュクスに言わなければいけないのか……。


 うっすらと、さっきヘッドホン越しに聞こえたニュクスのあの声が再生される。それと同時に、心臓がバクバクし始める。

 悪魔でもああいう声が出せるのだ。それは意外だった。……なにを考えている僕は。攻略練習中に妄想に花を咲かすなど言語道断。……スイッチを切り替えよう。


 3つ目。「付きあおう」。……完全に口説きに入っている。これを僕が言うのか? 悪魔に? しかし、ここで待たせっきりでは、ニュクスにも迷惑だ。早く、どのフレーズを言うか決めないと。


 僕は結局、一番初めの台詞を選択した。そしてそれをニュクスに対して行う。

「好きだ……。ちょっと、抱きついてていいか?」

 アレンジを加えて、僕はニュクスに抱きついた。……恥ずかしい。これをまさか、同じ通りにあの天使みたいな悪魔にしろというのだろうか。……それは酷い。僕になんという羞恥プレイをさせれば気が済むのだろう。

「えへへ……ご主人様あっ♪♪」

 デレた。

 こいつ、デレたぞ。

 完全に夜のモードに突入しやがった。

「ご主人様、あの、そろそろ攻略を……」

 ウンディーネは今回に限って、的確な指示を僕にくれた。もしかしたら、ウンディーネはこういう時に、真の力を発揮するのかもしれない。

 僕はニュクスを振り切ろうとした。しかし、ニュクスは『だいしゅきホールド』みたいに僕に抱きついてきており、そう簡単に抜けることは不可能となっていた。更に、僕の耳に自身の吐息をあて、僕は身体をビクビクさせていた。

 ちょうどそれを見たウンディーネは、怒りを顕にして、ニュクスに水を掛けた。

「冷たっ!」

「冷静になれこの発情牝犬が! 攻略練習なのにお前がデレてどうする?」

「……まあまあ。所詮、攻略なんてエロゲじゃ過程にしかすぎないし。ヒロインとの性交渉シーンさえ見れればエロゲなんか用済みなんだよ」

 我ながら酷いことを言っている僕。……あたかもエロゲマスターみたいな風格で。死にたいとは思わないが、何処かこう、『言わなきゃよかった』という後悔が僕の中にはあった。

「……ま、指示したウンディーネもありがとな」

「いや、ご主人様のためなら。お叱りなければ、何事にもお仕えします」

 『ん? 今なんでもするって』と、コメントで書かれそうだ。だが僕はそんなことはしない。なにせ、僕の悪魔だからな。悪魔には悪魔として、僕の攻略の手伝いをしてもらわなければ困る。もしかすると、悪魔はこの作品の中ではモブキャラに近いのではないだろうか。

「さて。ここからが真骨頂。攻略開始のお知らせだ」

「ご主人様、頑張ってください」

「えへへー。最後にもう一回ぎゅうってして♪♪」

「黙れ。……ったく。ニュクスの面倒はウンディーネが見てやってくれ」

「分かりました」

 僕は上空から下降し、地上に降りた。上を見上げると、ウンディーネがニュクスにバケツで水をかけていた。バケツも魔法陣から出したんだろうが、炎属性持ち悪魔に水掛けって結構なダメージを食らわせられそうだ。それこそ、『効果は抜群だ』との表記が成される某全年齢対象ゲームのように。

「……君の名前はなんだ?」

「私は『サラマンダー』です」

「この天使の輪は飾りなんだろう? 取れよ」

「嫌です。取りたく有りません」

「取れ。さもなければ、この至近距離から攻撃を再開する」

「やめてくださいです。……私を、殺さないで……です……」

 我ながら言っていることは鬼畜だった。しかし、これも一部分の手順だ。ここからが重要なのだ。今回の攻略は以下のとおりである。


 ① 精霊サラマンダーを虐める

 ② 精霊サラマンダーを慰め、出来る限りのことを尽くす

 ③ 精霊サラマンダーの好感度が最大になった所で、再び虐める

 ④ 涙目になったサラマンダーから、トラウマ等を聞く

 ⑤ そのトラウマに対しても出来る限りを尽くす

 ⑥ 二度の好感度上昇で、サラマンダーをデレさせる

 ⑦ 従順な悪魔として僕が育ての親的なものになる


 手順はそれだけ。……7つも手順が有るだけ、相当難しい攻略になりそうだが、デレさせる目的のためには手段を選ばない。……バトル無しで悪魔を順々な悪魔にさせるのは、やっぱり辛いかもしれない。しかし、HPが結構減っている今の状態なら、おのずとサラマンダーも僕に助けを求めるだろう。

 鬼畜なのは分かっている。しかし、目的のためには手段を選ばない。

「……殺すわけ……あるだろ?」

「や、やめてくださいです! 私はなにも悪いことしてな……」

「は? お前が居る事自体が、悪いことなんだよ。……そんなんも知らないのか? とんだ低能な精霊だな。精霊ってそんなもんか?」

 表面の表情は恐ろしい。でも、僕の内心はそうじゃない。何度も何度も僕はサラマンダーに謝り続けた。心の中で。口に出さないで。表情に出さないで。そして僕は、その後に剣を抜いて、サラマンダーの首の前に持っていった。

「悪かったら謝ります……。だから、だから、だから、私をどう……」

「謝ってすむ話だけなら警察はいらないんだよッ!」

 僕はサラマンダーをギロっと睨んだ。サラマンダーの目には、うるうると涙があった。その涙は、今にも零れそうで。「なんて酷いことをしているんだ僕は」と、自分の顔面を殴りたい気分だ。

「じゃあお前をこれから処刑する。サラマンダー。お前の持っている剣を、盾を、全て地面に置け。そして、両手を上げろ」

 サラマンダーは、泣きながら剣と盾を共に地面に置き、手を上げた。

「さて。処刑だな。……せいぜい、地獄にでも言って泣いて喚いてろ」

「……うわ、うわ、うわあああああああああん!」

 今までうるうるとしていた目には大粒の涙があった。その涙は今、勢い良く流れた。結界の中だから市街地の方には聞こえていないだろうが、結構大きな声でサラマンダーは泣いた。3対1。勝ち目など無い。そんななかでサラマンダーは戦ってきた。それにウンディーネは暴走して、理性を失い、ただでさえ弱点である水からも多くの攻撃を受けた。泣くのも仕方ないだろう。

「泣いても……無駄……じゃない」

「ふぇ?」

「……今まで、虐めてて御免。だから、お詫びに何か奉仕させてくれないか? 僕に出来る範囲の事なら、なんだっていい」

「じゃあ、回復薬頂戴」

「回復薬か。結構高価だけど。仕方ない。ほらよ」

 僕は魔法陣から回復薬を取り出した。悪魔を召喚するときと同じようにして。今回は悪魔じゃなくて薬だから少々異なる点は合ったが、概ね同じだ。

「あ、ありがと……」

「他に、何かしてほしいことは有るか? あるならガンガン言えよ?」

「……鬼ごっこ」

「鬼ごっことか小学生かよ。……ま、いいや」

 僕は笑顔で答えた後、ヘッドホンを耳にあてて、マイクでニュクスとウンディーネを呼んだ。


 ***


 今回の鬼ごっこは、鬼が増える鬼ごっこだ。要は『増え鬼』。僕自身、小学校でやって以来懐かしいなあ、なんて思いながら昔を思い返す。よくやった。愁や梨人と、学校に残ってやったなあ。力では僕が強かったのに、足の速さではビリで。……懐かしい。

「ご主人様。で、その『増え鬼』とは一体?」

「ああ。増え鬼っていうのは、鬼に捕まえられたら、その人も鬼になって、結果的に一人が残るから、その一人が残った時点で、その一人が勝ち」

「……よく分からないや」

「ま、やっているうちにわかるさ」

「そうかな?」

「そうだよ」

 (便乗)とは付ける必要がない。……あっ(察し)と言われそうだな。……なんでここで僕はネタを大量に詰め込んでいるんだ。この小説はそんな小説なのか……。増え鬼に集中しろ、僕よ。

「じゃあサラマンダー、ニュクス、ウンディーネ。お前等は10秒間以内に、好きなところに逃げろ。この結界の中なら何処にいても大丈夫だ」

「分かりました。じゃあ、10秒間数えてくださいね」

「ああ。それじゃーいくぞー」

 10秒数える。10、9、8……。みんなやっぱりできる限り遠くに逃げていった。しかし、そんなことをしてもサラマンダーが必ず勝つ。何故なら……。

『ニュクス、ウンディーネ。僕の近くに戻れ』

『ご主人様、今はゲーム中……』

『ご主人様の言うことなら♪♪』

『……なんなんですかあのニュクスとか言う夜の女神は……ああもう、分かりました。折角勝てると思ったのにぃっ! ご主人様めぇっ!』

 ウンディーネは少々涙ぐんでいた。

 ウンディーネ、ニュクスは僕の目の前に現れた。ウンディーネはやっぱり泣いていた。今度ウンディーネには奉仕してあげるか。……変な意味じゃない奉仕を。


 僕は、ニュクスとウンディーネが来たのを確認した後、サラマンダーの方向へ向かった。デビルマシンは、悪魔のいる方向なども分かるらしい。確かに、煙があると見えにくいし。まあ、さっきまでの煙は無くなってきていたし、全然さっきよりマシだったのだが、どうしても見えなかった。


 サラマンダーを探して数分。見つけた。天使の輪が光っていた。本当に『大天使』に相応しい。

「サラマンダー。お前がこの鬼ごっこの勝者だ」

「ふぇっ!? わ、私が?」

「ああ。撫でてやる」

「わ、私の頭熱いよ……?」

「僕は炎属性だ。炎属性が炎属性に触ることに問題はないだろう?」

「だ、だけど……」

「……いいからいいから。ほら、なでなで……」

 サラマンダーは、僕に心を開いたのだろうか。「もっと……」とかは全然言ってこないのだが、それでも僕の服をつねるサラマンダーは小さな子供のようで可愛かった。……勘違いして欲しくはないが、僕はロリコンではない。

「次に、叶えて欲しいものとかはあるか?」

「……えと、じゃあ、君の家に行っていいかな……?」

「……っ!」

 上目遣いで見つめないでくれ。ヤバイ。僕のほうが攻略されそうだ。なんてことだ。上目遣いに僕は弱いらしい。……しかし、家に連れて行くのか。ニュクス、ウンディーネは魔法陣の中に戻せるので、恋らにバレることもない。しかし、まだ僕の悪魔となっていないサラマンダーをうちに連れて行けば、恋らにどう説明するのかという、新たな問題がうまれる。

 しかし、ここで虐める? そんなことが出来るか……。上目づかいされたら、もう虐めることなんか出来ない。そして、サラマンダーはニュクスやウンディーネより背が低いため、どうしても子供っぽく見えるのだ。だから、子供を守りたい、という母性本能が男なのになぜか働く。

「わかった。なら、一つ条件がある」

「な、なにかな?」

「僕の……悪魔になれ」

「悪魔……ですか? 私が?」

 攻略の内容とは大きく外れた。しかし、夜遅くまでここでサラマンダーの相手をしていれば、結果的には恋に疑われるだけだ。姉ちゃんも美来も、僕の行動には文句を言わないし、エリザも言わないだろう。だが、恋だけは違う。12年来の『幼馴染』ということも有り、必ずと言っていいほど、疑われる。

 だから、その疑いを晴らすために、悪魔になって欲しいわけだ。そうすれば、魔法陣の中に戻せるし、それで疑われなくなる。

「どうだ?」

「……いいんですか? こんな悪魔で」

「ああ。いいんだ。お前だからいいんだ」

「……ご主人様。……言えた。やっと。私の……旦那様……」

 旦那様? あれ……。もしかして、サラマンダーは『主人』だけを聞いていたのかな? もしかして、エリザみたいな感じの『旦那様』っていう意味なのだろうか。それならいいのだが、本当に僕に好意を持たれると、嬉しいが後々始末がつかなくなるので大変だ。

「なあ、サラマンダー。聞きたいことが有るんだが……」

「なっ、なんでしょうか、旦那様……?」

「お前の言う『旦那様』って、ただ僕の名前を指しているのか? それとも、僕が好きだから僕の名前を指しているのか? どっちだ?」

「こ、後者……です……」

「ライクか? ラブか?」

「それって何ですか?」

 サラマンダーはもしかすると英語力がないのかもしれない。僕は、サラマンダーに、ライク、ラブが何を示すか説明した。

「ライク……じゃなくて、ラブ……です。旦那様は、私のこと好きですか?」

「……好きかどうかはすぐに答えられる事じゃないんだ。それはライクであってもラブであっても。だから、お前が好きな気持ちは分かった。でも僕はまだその気持ちに答えられない。……こんな男だけど、悪魔になってくれ」

「何回言えば気が済むんですか、旦那様は。……なります、ですっ!」

 サラマンダーは僕に抱きついてきた。後ろから、ニュクスやウンディーネがこちらに目を向けてぎろっと睨んでいる。妬いているのだろう。……これ以上、修羅場展開にならないことを僕は望むぞ。

「……じゃあ、これで終わりだ。最終確認いくぞ。みんな、魔法陣に戻れ!」

 僕は悪魔たちを戻した。サラマンダーも一緒に戻った。つまり、サラマンダーも僕の仲間になったのだ。これから共によろしく、と僕は心の中で思った。

 結界の解除方法を聞いていなかったのだが、僕は適当に『解除』と叫んだ。すると、結界は解除できた。意外とシンプルな作りになっているんだな。


 ***

 

 そして僕は、魔法少年姿で家まで戻っていった。周囲の目にさらされていることを考えると冷や汗が出た。しかし、家まで辿りつけてよかった。


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