表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Future  作者: 浅咲夏茶
2nd Chapter;Student council and childhood friend.
15/127

Target:Elisa and Ren+α/episode14

「い、今更なんだけど……」

「どうしたエリザ?」

「な、なんでダーリンは空飛べるの?」

「それは僕が魔法少年だからだ」

「魔法少年……?」

「ああ。魔法が使える男の事。未成年だから『少年』って呼んでる」

 それは予想にすぎない。17歳(あと少しで18歳)の僕が『少年』って言われるのも何かこう、ムカつく。せめて『青年』と言って欲しいのだが、それでもなお、やっぱり僕ら中高生は大人扱いされたいと何処かで思っているらしく、反論したくなってくる。

「す、凄いね、ダーリン。そ、そういえばダーリン。男の人って、童貞のまま30歳迎えると『童帝』の称号を手に入れられるんだよね?」

「いや、僕まだ17歳だし。そんなん知らねえし」

「だよね。……あと、思ったんだけど日本の男の子って何か、女々しい気がする」

「め、女々しいかっ!? ……つか、話題変わりすぎだろ!」

「ご、ごめん。超展開過ぎたね……アハハ。あ、今の忘れて」

「お、おう。ただ、僕自身女々しいと思うことは多いかもしれないな」

「そうかもね。じゃあ、その『僕』っていう一人称を止めようか?」

「そ、それは無理……」

「じゃ、『俺』って言ってみてよ?」

 柔らかな膨らみが僕の脳を刺激する。煩悩を振り払おうとするのだが、思春期の僕にそれはできない。エロゲーマーとして、若干三次元の外国人も攻略しがたい、と思い始めている僕だったが、どちらかというと、僕のほうが攻略されている気がしてきた。

「既読スルーするな。返信しろ。既読スルーは犯罪だ!」

「嘘つけ!」

「お、反応した。じゃあ、『俺』って言ってみてよ?」

「うぐ……ひゃうっ!?」

 冷たい風。そこに紛れ込む温かな吐息。そして耳を指でなぞられる。背中をゾクゾクと震えさせながら、僕は自分の理性と闘う。

「次、やってくれないとこちょこちょ」

「……こちょこちょなんか、されてたま……あははははは……っ!?」

「やっぱりダーリンって女の子みたいだよね」

「姉ちゃんに言われて結構傷ついた台詞を笑顔で言うな!」

「ごめんね。悪気は有るんだ。じゃあ、一人称を変えようか?」

「くっ。や、やればいいんだろ。じゃ、じゃあそれはいつまですればいい?」

「今日の夕方ぐらいまで」

「なんてこった……」

「その代わり、私はダーリンの言うことなんでも聞く」

「……じゃ、じゃあ条件を呑むよ」

「ダーリン流石! 早く女々しい所捨てちまいな!」

「うぐっ……。お、俺は……。こ、こんな感じでいいのか?」

「うんうん! ジャストミート、ジャストミートだよ!」

「ちくしょう……」

 僕は一人称を変更したことに、若干の悲しみのようなもの、従わされている屈辱が浮かんだ。ただ、今度エリザを僕の好きなようにできる権利へのあふれんばかりの欲望が湧いてきて、どうでもよくなってきた。

「さて。俺らは今、恋を追っているわけだが……」

「だね。ただ、恋は一体何処に……」

 下を見る。ここはアニメイトの直ぐ上だった。早すぎないか? ここまで来る時間が。いや、恋は電車を使っているわけだし、早いのは当然か。

「お、アニメイト入っていったぞ。俺らも下に降りるぞ」

「はい、ダーリン」

 僕は、背中にエリザを乗せて下降していった。


 ***


 三宮駅前。

 少々薄暗い場所に、僕らは降り立った。

「さて。ここまでニュクス、サンクスな」

「いえ、ご主人様のお役に立てて光栄です」

 ニュクスは本当に優しい。悪魔なのに、僕に尽くしてくれる娘である。ただきっと、ニュクスも何処か嫌なことが前にあったんだろうと思うと、あまりニュクスに嫌な思いばかりさせないように、というふうに思えてくる。

 魔法陣にニュクスを戻す。上空でやっておけばいいものを、今になって思い出してやる。所詮、学年トップの成績とはいえ、常識的なものが身についていないのなら、その成績は消してもいいものかもしれない。

「ここから結構時間が有るな……。よし、エリザ。そう言えばお前、エプロン……」

「何時のこと考えてんのダーリンは。私はちゃんと着替えてます!」

「そ、そうだったか……。睡眠不足かな。脳の回転が良くないや……」

「大丈夫! ……心配なら病院に行く?」

「いや、睡眠不足程度で病院に行くのもあれだ。別に行かなくてもいい。てか、結構寒いな今日。晴れていないからかな」

「だね。11月も最終の週だよ。早いもんだよねえ、時の流れってのは」

「……老人みたいな言い方はやめて」

「ろ、老人って酷いなおい。つか、早くアニメイト行こうよ。三宮なんでしょ?」

「ああ。こっからあと少しだ。だが走る必要はない。行くぞ」

「うん!」


 ***


 午前11時すぎ。アニメイト店内。暖房が効いていた。スマホを取り出し、現在の神戸市の気温を確認する。気温は10℃。少々肌寒いのはこのせいか。

「エリザ。店内で絶対に恋に見つかるんじゃないぞ」

「それは私だけじゃなくて、ダーリンにも言えるでしょ……」

「確かに。人のことを言える立場ではないね」

「うんうん。分かってるじゃないか」

「お、あれは恋か。よし、ちょっとこっちに……ん?」

 くるっと右の方向を向いた時、見た覚えの有る顔が僕の視線に入った。あの男は愁……? いや、本当に愁なのか? ……ならなぜ女と?

「凛……なのか?」

「愁……なのか?」

 確かめる。互いに頷く。こいこい、と手招きする愁。僕はその方向に向かう。そして、互いに何故女を連れているのか話す。

「なんで愁が女と一緒に歩いてんだよ」

「いや、この娘はオフ会で知り合った娘だ。オフ会では『飛華あすか』と自分の名前を言っていた。僕も会って直ぐだしよくわからないんだが、話しによれば、この飛華ちゃんは神戸の街に住んでいるらしい」

「ということは、僕らと同じ学校に来ている可能性が微レびれぞん

「おいおい。アニメイトでネットスラングはないだろう」

「バカだな。『微レ存』はネットスラングではない。元々淫夢ネタだ」

「ということは、凛がゲイである可能性が微レ存……?」

「ないない。僕はゲイじゃない。ノーマルだ」

「ほお。じゃあ、俺からも聞こうか。なんでエリザちゃんと一緒に居るんだ?」

「い、いや、住んでるところが同じで神戸の街を紹介しようと……」

「嘘だね。普通の幼馴染なら、そこまでぎゅう、とかすることはないだろう。くっそ、羨ましいなお前等。リア充どもは爆ぜろ」

「だ、だから僕は……」

「ふっ。つかもう、お前等見てると殺意湧いてくるから行こうぜ飛華ちゃん?」

 飛華、と愁に呼ばれていた彼女はコクリと頭を下げ、二人はアニメイトから出て行った。もしかして、今丁度帰りだったのかと思うと、もう少し話したかったなあ、なんていう思いもこみ上げてくる。

「さてと。じゃあ、恋を探しますか。探されないように」

「だね。でも、執事服だから見つけやすいかもね。……それと」

「ん?」

「ダーリン、さっき『僕』って言ったよね?」

「う……ぐ……」

「答えられないなら問答無用だね。夕方まで守れなかったダーリンには、お仕置きを与えます。それは……」

「そ、それは……?」

「これです!」

 その時、僕は視界が真っ暗になった。そして、その黒い視界が解けた時、僕のスマホのインカメラで、僕の顔が映された。

「こ、これは……」

 それを見た時は絶句した。僕の額に『肉』と書かれていたのだ。なんとか、髪を下ろして隠せる大きさだったのだが、もしも額をあけていたりしたのなら、非常に大変だったに違いないだろう。

「なんて酷い奴なんだエリザは。これが欧米人の悪ノリみたいなやつか」

「言い方酷いなあ。じゃ、気持ち切り替えてメイトの内部に行くよ」

「だから、お前に額に文字書かれたんだからそう簡単に切り替え……」

 強引に引っ張られ、僕は店内へと入っていった。この強引さは、どことなく恋の強引さに似ている。昔の記憶が鮮明に残っていない為、僕はエリザとの思い出を思い返すことが出来ないのだが、きと僕はエリザと昔、色々なことをしたんだろう。どんなガキだったのかは知らないが。

「お、お兄ちゃん!?」

「な、なんで美来がここに……?」

「いや、部活の遠征が急遽取りやめになっちゃって……」

「えええっ!? マジで!?」

「うん。マジマジ。今、丁度雨降ってるんだってさ」

「美来。どこだっけ、お前の遠征先」

「あ、福岡だよ。今丁度、福岡の方で雨降っているらしくてさ…‥。それがまた結構洪水みたいなことになりそうらしいんだよね……。だから、明日」

「明日か。……じゃあ、今日はあれか? 家で過ごすみたいなもんか?」

「うん。でも、家にいても今日土曜日で暇だから友達とアニメイトで雑談」

「いや、雑談くらい学校でしろよ。なんで店でするんだよ」

「いや、別に迷惑かけてないしいいんじゃないかな……なんて」

「そうかなあ。ま、迷惑かけない程度にしろよ? ……ったく。じゃあ行こうぜ」

「待ってよ。お兄ちゃん。なんでエリザさんと一緒に行動してるの?」

「ごめん、それは今話せないわ。じゃ……」

「ちょ……」

 僕はエリザを連れ、早足でエロゲの売っているコーナーへ向かった。後ろから聞こえていた妹とその友達の会話の中には、恋バナらしきものも聞こえた。女子の恋話っていうのは、結構話すときの声が大きくなるものだろう。今もそういう風に、相当大きな声で話していたし。

 ただ、大きすぎても迷惑なわけだが。

「さてエリザ。エロゲコーナーに入るぞ」

「え!? もういっちゃうの?」

「ああ。とはいえ、お前も恥ずかしいだろ? 女がエロゲコーナーなんて。まあ、それを俺は恋に『男装』させてやらせているわけだが」

「そんなんが面白いのか?」

「幼馴染を虐めてやるのも大切な幼馴染の仕事だと思うが」

「絶対それ間違ってるよ……。でもじゃあ、なんで私は虐めないの?」

「お前ドMなのか? 『虐めないの』って、そりゃあお前が可愛いから虐められないみたいなもんだ。だがまあ、なんていうんだろうな……。俺も、過剰なことはしたくないし。それに、俺はまだ、お前と昔本当に幼馴染だったのか、それが知りたい。本当にそうなら、お前も虐めてやろうかな」

「な、なんだその言い方は!」

「うるせえな。自分から『私は虐めないの?』って聞いてきたくせに」

「うるさい! と、とにかくもう行くよ! 私はもう激おこプンプン丸なんだからね! ……あ、そうだ。じゃあさ、昔のことを思い出していくために、昔記していた交換日記を元に、それと同じことしようよ」

「……そんなエロゲあった気がするけど、まさか?」

「ないない。そんなエロゲあるんだ、って状況だよ今。じゃあ、それで決定だね。ま、えっちいことはダメだよ! それはまだ早い!」

「なんでお前っていっつも身体密着させてきたりするくせに、そういうところだけは守ろうとするんだよ?」

「女の子にとって、そういうのは大切なモノなんです!」

「男だってそれは大切なモノだと思うけどね……」

「そうかな? でも私、男の子じゃないから分からないや。ちょっと前置き長くなりすぎたけど、入りますか」

「ああ」

 僕らはゴクリと唾を呑み、覚悟を決める。ここから自分自身との闘いになるわけだ。そう、エロゲを買う恋を見るためだけに闘うのだ。

「さて。エロゲっていっぱいあるんだねえ……」

「そりゃあここは日本だからね。変態紳士の国だから仕方ないね」

「紳士の国って英国イギリスじゃないの?」

「うーん……。『変態紳士』は日本でしょ。日本には『MOE』があるから」

「『萌え』を英語風に発音して格好つけるんじゃない」

「別にいいだろう」

「……。じゃ、恋を探しますか」

 恋を探す。単純な作業だ。だが、非常に困難を極めるのもこの作業なんだ。なぜなら、見つかれば即終了だからだ。普通の姿でいる今、バレたらタダ事では済まされないかもしれない。僕の『恋をいじめたい』という、その欲望を満たすために恋をいじめた、と言えば確実に何かされるのは目に見えている。

「あ。あれ恋じゃ……」

 まだ探していた僕。見つけた知らせはエリザから届いた。「ああ。あれは恋だ」と、僕らはアイコンタクトで確認した。そして、恋を見ながら。僕らはニヤニヤと笑ってしまっていた。

 エロゲを手に取る恋。パッケージのイラストで、僕が頼んだエロゲだと直ぐに分かった。もう末期症状であることは分かっていたのだが、パッケージだけで分かる男ってのもどうなんだろうか。まあ、ひとつ言えるのは、世間一般的に尊敬はされないだろうな、ということだ。

 恋は顔を真っ赤に染め上げた。じっとパッケージのイラストを見つめる。当然、隠したいという思いは強いはずだ。しかし、その思いは叶えられない。なぜなら、それをすれば『万引き』と思われるからだ。

「ううう……」

 普段の僕なら、ここで助けに行くのだが、今日の僕は違う。Sのスイッチが入っているので、助けには行かない。本当に大変な状況に陥れば、どんな時でも助けるが、今はそこまで大変じゃない。だから、軽い気持ちで遠くからニヤニヤしていた。


 ***


 レジに並んでいる時、恋の顔は真っ赤だった。店員さんに、その商品を見せた時には、相当真っ赤にしていた。後ろに並んでいた客から見ても、恋が相当顔を真赤にしていたのはわかっただろう。こんなに遠くからでも僕の目で見て取れたくらいなのだから。

 そして、アニメイトの店舗の外へ出た。

「おかえり」

「エリザ! 凛!」

「おかえり。いやあ、お前も可愛い所あるんだな。めっちゃ顔真っ赤にしてて、結構ドキッと来たぞわりと本気で」

「うるさいな! あれは……」

「はいはい。でもまあ、僕のために買ってくれてありがと、執事」

 ナデナデ。頭を撫でると、また顔を真赤にして、僕の服の右側を引っ張った。しかし、それを見ていたエリザが今度は服の左側を引っ張った。

「おまえら……」

 帰りの列車では、二人から炎のように熱く燃え盛るオーラが出ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ