表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Future  作者: 浅咲夏茶
2nd Chapter;Student council and childhood friend.
12/127

Target:Elisa+α/episode11

 姉ちゃんは、作った料理を皿に持って、僕と美来、そして自分の席の前に置いた。帰ってこない父と母の椅子の前のところにも置く。

 妹を呼んだ時、妹は泣きながらリビングへ降りてきた。

「お父さん、お母さんはもう帰ってこないかもしれないかもしれない。けれど、望みを……持とう……」

 姉ちゃんはそう言った。

 涙があふれる僕。今まで育ててきてくれた父さんと母さんが、消えていく気がした。遠ざかって、やがて見えなくなって、そのまま消えていく。……自然と今までの記憶が僕の脳内をよぎる。

 僕は瞳に涙を抱えていた。鼻水を呑む。ずずず、という音が気持ち悪いし、五月蝿い。嫌な音だったが、そうしないと垂れてしまうので仕方ない。

「……カレー、美味しい?」

 夕飯はカレーだった。姉ちゃんは、落ち込んでいた僕らを励まそうと笑顔で居てくれた。そう言えば、前に雷で両親不在の時も支えてくれたのは姉ちゃんだったけか。その時も、姉ちゃんは笑顔だった。

 姉ちゃんは、指を切ったのだろうか。指に絆創膏を貼っていた。きっと姉ちゃんも、自分を産んで育ててくれた両親に感謝していて、そこから自然と僕みたいに過去の記憶が蘇って脳内をよぎったのだろう。

「ごちそう、さまでした」

「り、凛? もう、食べれない……かな? 不味かった?」

「ううん。不味くない。けど、今はこれしか食えない」

「……まあ無理して食えとは私も言わない。ただ、全部食べてもいいんだぞ。今食わなくたって、残しておいてあげるから。腹が減ったらリビングに降りてきて、残ったカレーを食いな。電子レンジのもとは付けておく」

「ありがとう、姉ちゃん」

 僕は、姉ちゃんに最大限の感謝を込めて手を合わせた。夕飯で出されたカレーは、美味しい味はしなかった。かといって不味い味はしなかった。出されたカレーは、涙の味だった。


 ***


「そんなことが……」

 午後8時。それまで恋の部屋で過ごしていたエリザが僕の部屋に戻ってきた。エリザは、夕飯も恋の家で食べたらしく、僕が夕飯の時に聞いた『僕の両親が死んだかもしれない』という事を、まだ知っていないようだった。

「えと、その……」

 エリザは何を切り出せばいいのかよく分からず動揺していた。

「動揺するくらいなら無理に話す必要はない。それに僕は今、わからないかもしれないけど悲しい気分だ。必要最低限のこと以外は話さないで欲しい」

「それはでも……」

「別に馬鹿馬鹿しい会話を規制しているわけではないし、面白い話でも言えばいいさ。ただ、ちょっと今面白い話とかされると、理性が壊れて本当にやばくなりそうだから、今はやめてほしい」

「そ、そ、そっかあ……。じゃ、じゃあさ、あれ、あれやらない?」

「なんだ?」

「じ、人生ゲーム……」

「ああ、いいぞ」

 僕はあまり浮かれなかった。本来なら、「やろうぜやろうぜ」と引き立てて盛り上げる側の人間の僕なのだが、両親が死んだかもしれないという状況下では、そういった盛り上げることすら簡単にできずに居た。

 恋から貰ってきたのか定かではないが、何処かで見覚えのある人生ゲームのボードが僕の部屋の床に敷かれた。エリザは、自分のカバンからペンを二つ取り出すと、身長にボードの上に立てた。

「やけに健気なんだな」

「そ、そうかな。ペンってやっぱり立ちにくいよね……」

「確かになあ。消しゴムのほうがそりゃあ立ちやすいだろうけど、ペンはあれだ。人生ゲームのボードに、勝手に選択肢を付け足していけるからいいんだろう」

 そう。僕は確かにギャルゲやエロゲといったノベルゲーが好きだが、所詮は『プログラム』。付け足すことは専門的技術がなければ容易ではないし、それを配布すれば、違法となり逮捕されるのは目に見えている。

 僕は人の作ったものに付け足すというのは、昔から好きだった。そっちのほうが楽しいからだ。例え議論の主軸が逸れたとしても、面白ければ許してしまう僕がいる。時間が足りない時はイライラしてしまうことも多々あるが、普通に議論する範囲内で、所々気休め程度に入れておいてくれるといい。

 ゲームじゃなくても人生だってそういうものだと思う。幾重の選択肢を切り開いてこそ、真の自分が見えるんだと思うし。

「付け足すのはなしっ! じゃあ、人生ゲームスタート!」

 人生ゲーム、の予定だったのだが、生憎キットにはルーレットらしきものがないらしく、サイコロで代用することにした。これではどうみてもすごろくなのだが人生ゲームである。

「えいっ!」

 エリザは、最初から6の出目を出した。ペンを6マス動かし、丁度文字の書かれているマスに止まった。しかし、この人生ゲームは所々破れているところもあった。また、どうみてもその文章は手書きとしか思えない文章だった。

『右隣の人とキス』

「……っ!」

「あ、別にやらんでも……」

 結局、頬にキスされました。

 僕は止めようと入ったのだが、簡単に止めることは出来ず悪戦苦闘。いや、悪戦苦闘なんて四字熟語使う暇もないくらい短い時間でキスされた。

「エリザ、お前……」

「スキンシップなんだし、キスくらい……」

「いや、本当にスキンシップなら……。ごめんな、ちょっと僕も動揺した。こ、この人生ゲームやめない?」

「なんで?」

「手書きで書いてあることが全部『キス』とか、『頭ナデナデ』とかだし。これ結局何なんだよ。もしかして、僕が誰かと遊んだ時に書いたりして付け足した人生ゲームだったりするのかな?」

「それは私にはわからないなあ。幼馴染とはいえ、幼少期の数年かだけだったからねえ。それに、私その頃からこんなに時がきれいな女の子じゃなかったし。一番怪しいと思うのは恋だね。恋の部屋からこれを持ってきたし、怪しいよね」

「恋の部屋から、ということならこれは確実だな。恋が戦犯か」

「戦犯とか言わないであげて……」

「だって、そういう風にしか言えないだろう。ま、まさかあいつ、キスとかされたいのかな、誰かに」

「そうなのかもね。だとしたら、ダーリンが……いや、なんでも」

「その話、詳しく聞かせてもらっていいか?」

 僕はそこまで鈍感ではない。至近距離で会話しているものだし、当然「あ」と気付いてそのことを撤回しようとしても、気付いているものだから、弱みを握られたような状況になる。

「あ、あう……」

 エリザは、自分から言いたくないんだろう。相当動揺していた。そこまで恥ずかしいのだろうか。今まで、そういうキスだとかに関してはオープンだったのだが、何で言いたくないんだろうか。

「言ってよ」

「ううう……。ダ、ダーリンが、恋の好きな人じゃないかな、って。だって、恋ダーリンと居る時楽しそうだし。前に鎖で腕繋いでやった時だって、注意していたけどその時の恋は、なんていうか、私を除外しようとしていた。もしかして、『ダーリン』とか言ってるから、恋のライバル的な風に思われたのかなあ、って」

「ライバル……か。じゃ、じゃあ聞く。エリザは僕のことが……好きか?」

「ちょ、直球すぎるよダーリン……」

「どうなんだ。僕は君に聞いている」

「だ、だから本当そういうの答えるの恥ずかしい……」

「最初は『ダーリン』とか言って抱きついてきたのお前だったのにな。いつからそんな恥ずかしい、なんて気持ち持ったんだよ」

「う、うるさいな……ってちょ……っ!」

 エリザが、ボカッと僕を殴ろうとした。右手が振り上がった。が、その右手を僕は抑え、ぐいっと自分の方へ引っ張った。

 めちゃくちゃ顔が近いところにきている。吐息もあたっている。あんまり深いことを考えていると、本当に理性がぶちっと切れそうだ。

「聞いている。質問に答えてくれ」

「……すき」

「ん? 聞こえないぞ。もっと大きな声で言おうか」

 エリザは、むっと僕を睨んだ。聞こえている。僕の耳には、エリザが一体なんて言ったのか刻まれていた。

「好き」

「聞こえないんだよなあ。難聴かなあ……」

「そろそろ怒るよ?」

「ごめん。聞こえてる。ただ、できれば『大好きダーリン』だとか、前までのテンションで言って欲しかったなあ、なんて。あはは」

「だ、大好き、だよ、ダーリン……」

 至近距離で上目遣いとは、驚異的な破壊力だ。下向きでエリザの姿を見たので、エリザにも結構胸があることに気付いた。丁度、谷間が見えそうで見えないくらいのところ。「みえ……」とか僕は心中思うのだが、結局見えない。

 エリザは、上目遣いで上の方を向いているのも辛くなったらしく、下を向いた。その時のエリザは頬を真っ赤に染めて僕の背中に手を回していた。

 僕も頬が真っ赤に染まっていたのがわかった。

「……それはライクかラブか? トゥルーかフェイクか?」

「フェイクじゃないよ。フェイクなわけ無いじゃん。トゥルーだよ。『true my heart』だよ、私の本心だよ。けど……」

「ライク、なのか?」

「わからないんだよ。ライクなのかラブなのか。でも、私はダーリンを愛してる」

「お、おう……。い、良いこと言ってくれんじゃねえか」

「えへへ。ねえ、こんなことに時間割くのやめようよ。人生ゲーム、またにしよう?」

「……わかった」

 僕は、エリザが時間の割き方を疑問視してきたので、潔く見直す。これ以上人生ゲームを続けていても、後々飽きてやめるだけだろう。

「でも、何すれば……。エロゲとか、ダーリンやりそう」

「エロゲなんかするわけねえだろ。普通に僕はもう、寝たい……。それに明日は土曜日だ。それなりに課題貰ってきたわけだし、終わらせておかない訳にはいかないだろう。あと今僕は鬱状態だ。……何度も言うが、必要最低限のこと以外は話さないほうが望ましい。面白い話などは除いてだが」

「……じゃあ、一緒に寝ようか?」

「そ、それは流石に問題が有るだろう……」

「ええ。ダーリンそういうところでドキドキし過ぎだよ。た、確かに私が可愛いから襲いたくなっちゃうっていう気分もわかるけど、それは本能……」

「本能とかそういう問題じゃない。確かに僕の部屋とエリザの部屋は同じだ。だが、『同じ屋根の下、血縁関係すら無い男女が、同じ部屋で、寝る』ということがあってもいいというのか」

「それが本能なんだよ」

「うっ……」

「だから、本能に従順でいようよ。ダーリンになら、何されてもいいよ?」

 上目遣いで見られる。本当にその顔だけはやめてほしい。本当に理性が効かなくなる。この状況を何とか脱出したい。……が、この問題はそう簡単に解決することはなかった。なにせ、この部屋は僕とエリザの部屋だ。空き部屋を貸せばいいものを、僕のことを従順な犬だと思ってこき使いやがって。

「恋の部屋に行けば?」

「ダーリンは恋の方が……好きなの?」

「いや、そういう訳じゃない。でも、嫌いって訳じゃない。ただ、本当エリザみたいな女の子が僕みたいな人間と寝ていいのかなあ、って」

「……小さいころ、一緒に寝たじゃないか。私とダーリンは夫婦である前に幼馴染であるっ! ダーリンなら私は一緒に寝てもいい。他は嫌だけど」

 他、が一体誰を表すのかはだいたい見当がつくが、やっぱりエリザは僕が『夫』だと思っているらしい。『嫁』と思われていないだけマシと思うべきだろうか。僕はこれでも、たまに女顔と言われる。姉ちゃんが前に僕に『凛は私の嫁』と言っていたことが有り、冗談半分だったんだろうけど、相当ひいた。

 そんなこともあって、男が『嫁』と言われるのには抵抗がある。女装しているわけでもないんだし。元が女ってわけでもない。

 だから、寝ることには少々抵抗感が残る。

「……本当に寝なければいけないのか?」

「……嫌なら、いいよ。でも寝ない訳にはいかないし……」

「くっ……。じゃあ、寝ようか一緒に。仕方ないもんな。毛布だからすこしあついぞ。まあ、エリザは大丈夫か。ドイツって一応日本より北にあるんだよな。確か。神戸より北だろ?」

「う、うん。北だけど。でも、温かいよ。温帯だもん。日本と同じように四季はあるよ。だから冬も当然有る。毛布も使ったこと有るよ。だから心配ご無用です!」

「そうかそうか。なら大丈夫だな。ただ、僕が前に愁と梨人と寝た時にも思ったが、このベッド結構狭いからな。二人分でも、背を向けあって寝たのなら使えるスペースは少ないだろうな」

「でもいいよ。た、ただその、夜だからって性欲に負けて私に嫌がらせしないでね、ダーリン。えっちいことは私が許可したらします。で、それまでダーリンは自分の性欲と理性に囚われ、戦い続けて下さい」

「結構酷い言いようだが言い返せないんだよなあ……」

「じゃあ、毛布敷いて寝よう」

「おうよ」

 僕はベッドの上に毛布を敷く。11月。昨日よりは寒くないのだが、部屋の中が少し寒い気がした。毛布では流石にあつすぎたので、ちょこっと毛布を巻き上げて足元を出した。エリザも僕と考えが同じで、足元を毛布から出していた。「お前もか」とツッコんであげると、「私もさ」と返してくれた。

 まだ午後9時30分。今までなら、愁や梨人が人の家なのに勝手に忍び込んできて大騒ぎし、寝不足の原因へと繋がるのだが、今日はそういう訳じゃなく、梨人も愁も居なかった。以外だったのは、恋が自室から僕の部屋へ来なかったことだ。きっと恋も疲れているんだろう。僕が疲れているように。

 自分のすぐ近くに女の子がいる。幼馴染だ。幼馴染だ。幼馴染だ。……そんなの分かってるんだ。でも、くるっと身体の向きを変えるのに結構手間どう。

「くうぅ……」

 鼾を上げたわけではないものの、すっかりエリザは寝ていた。

 やっぱり可愛い女の子が隣に寝ているのを見るとついついちょっかい出したくなる。これも本能的な物なのだろうか。

 止めようとすることはなく、僕はエリザの耳元で息を吹きかけた。

「ふー……」

「ひゃあっ!」

 可愛い声でエリザが反応する。面白い反応なので、暗闇をいいことに耳にもっと息を吹きかけていった。

「ダーリン……。それされると眠れない」

「いいじゃんか。別に寝なくても」

「……寝るって言ったのはダーリンじゃんか」

「僕は自分の意見を二転三転するようなコロコロ変える人間なのさ」

「日本では、『男に二言はない』という言葉があるそうじゃないか。女々しいぞ。ダーリンが女々しい人間だなんて、そんなの嫌だっ!」

「……女々しいっていうのやめて。ただでさえ顔が女々しいのに……」

「じゃあ二転三転すんなっ! てか、起こす必要なかっただろ本当……」

「ゴメンな。僕はさ、自分の両親が死んだことを隠すために、心を落ち着けようとお前を使っちゃった。それはすまない。なんでもするから許してくれ」

「ん? 今なんでもするって……」

「淫夢ネタはやめて、どうぞ。でも、申し訳ないが過激のものはNGだぞ」

「じゃ、じゃあ……。向かい合って寝よう……か?」

 一瞬。

 思考回路が停止した。

 暗闇、デレた幼馴染、そして鬱を隠そうと必死に笑顔を見せつける僕。今が人生で一番楽しい最盛期なんじゃないかって。そう思ってしまう。

 僕は恋愛に興味がなかったはずだ。しかし、そんな僕が今、デレた幼馴染にデレさせられている。どこかで精霊の力をデレさせて弱めさせていたように。僕の『鬱』を、デレさせて弱めさせようとしているのだ。

「な、なんでも聞くって言ったからな、それくらいならいいぞ……」

 恋愛経験の少ない僕は、幼馴染とはいえど、12年近く合っていないエリザにデレていた。もう、こうにまでなってくると、デレている自分が憎い。

「じゃあ、ダーリン。大人しく、私の言うことを聞いて」

「お、おう」

「好き」

 突然の告白だった。身体が密着していたので、エリザの出てる部分があたった。緊張していて、それが引き金となって告白だけではないところからも、照れてしまった。照れるな照れるな、と何度も自分に言い聞かす。しかし自分の中にいる心の神は『照れろ』とだけ。照れないことは出来なかった。

 僕は、さっきの話をもう一度再生し、『ライク』なのかどうか確かめる。

「それライクだろ?」

「うん。ラブにするのには時間がもっといるし」

「そっか」

 ライクらしい。本心を隠しているのかもしれないが、あんまり期待し過ぎると、今度本当に『ライク』ってなった時にくる衝撃が激しすぎるので、期待しすぎないように注意を払う。

 ただ、この頃の僕にエリザが何故告白したのか、その背景を知ることは出来なかった。


 ***


 午前0時。僕は空中で目を覚ました。

 目の前には、会長が居た。会長は僕の手を握り、辺りに結界を作っていた。

「か、会長っ!」

「起きたんだね。魔族の連絡が入ったから討伐に行くよ。今は生徒会メンバー勢ぞろいだ。場所は神戸の中華街付近」

「中華街……なんでまたそんなところに」

「いや、奴は精霊だ。それも究極進化を遂げ、相当な強さを誇っている。タイプは草・光。君には、ぴったりだろ」

 闇・炎の僕はぴったりだということはすぐに分かった。昨日の朝方の討伐で叩きこまれたのだから。

「じゃあ、魔力……開放!」

 魔力を開放し、結界世界の中で空中に浮く。左手に魔法陣を描き、ニュクスを召喚すると、会長が結界を維持しながら僕と会長は中華街へと向かっていく。

 中華街に到着した時、見覚えのある顔が居た。

「零奈……。英洙……。お前等も魔法少女・魔法少年なのか……」

「先輩も魔法少年になったんですね……」

「ああ。僕は『闇・光』だ。まだまだ弱小で、会長に教えこまれてる魔法少年だが、出来る限りのことはするよ」

「そうですか! 僕は『水』です。使う悪魔は、バハムートドラゴンです」

「バハムートドラゴン?」

「超魔界獣バハムート・ドラゴンです。炎、水、鋼の3つのタイプを兼ね備えた悪魔です。どう、格好良いでしょう?」

 英洙が上を向く。僕も上を向いた。

 天空には、蠢く竜が居た。あれが『バハムートドラゴン』だそうだ。めっちゃ格好良い。僕も、人型悪魔以外に、男のロマン的な意味でああいったドラゴン系の悪魔も欲しいなあ、と思う。

「零奈はどうなんだ?」

「私ですか? 私は、この娘です!」

 魔法陣から出されたのは、零奈よりちょっと背が低いくらいの銀髪少女だった。その少女は、自らの名を『オグン』と名乗り、ぺこりと頭を下げる。

「可愛いな」

 撫でたくなったが、ちらっと右のほうを向くと、ニュクスがむーっとしていた。「ご主人様、私は撫でたくないですか?」という目でこちらを見る。現実にそんなこと言っておらず、僕の勝手な妄想的なものにすぎないが。

「この娘は『炎鉄創魔えんてつそうまアースメイドオグン』っていうんだよ。鋼属性と炎属性の二つの属性を持った娘。英洙のバハムートドラゴンには勝てないけれど、鋼だから脅威の防御力が有る」

「おお」

 僕は思いのあまり拍手してしまった。白い目で見られているようで、後々恥ずかしくなってきた。そしてそれを誤魔化すかのように、会長は掛け声をかける。

「さあ。バトルスタートだ」

「うっす。じゃあニュクス。好きなようにあの魔族を始末しろ」

「わかりました」

 ニュクスは、遠距離で超魔法を何度も使う。炎、闇の技を何度も何度も繰り出していった。

 そうして、現れた魔族は4発目くらいで破壊できた。そして、初討伐の証としてオールジュエルが手に入った。プラス、ルビージュエルも一つ手に入った。僕はとても喜んだ。他の生徒会メンバーも僕の活躍を祝ってくれた。


 ***


 ガチャをすることもなく家に帰って行く時、六甲山の方はまだ燃えていた。家に帰った時、結界から飛び出し、地上に落ちた時ちょっと足を痛めた。落ちる場所が高すぎたんだろう。まあ、土曜日だし休めばいいか、という軽い気持ちで僕は休むことにした。




 午前0時35分。六甲山の炎は燃え続け、時計の針の音がしんみりとした部屋の空気をさいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ