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Future  作者: 浅咲夏茶
8th Chapter;End of the story Ⅰ/Epilogue -true root-
105/127

Target:Rina -a date with Rin@Christmas Eve. 1/episode104

「やあ、エロゲーマスター」

「……彼氏に会って最初に言う言葉が罵倒って、里奈は本当に猫被ったSだな」

「えっ、エスじゃないし……」

「そうか」

 会長、もとい里奈は僕に対して本当にデレデレした態度を取る。……前までのハイテンションキャラは一体何処へ行ったのか疑ってしまうくらいだ。

「……で、何でデートでアニメショップに来るわけ?」

「そりゃ、幼馴染に誕生日プレゼントあげないと……」

「――凛はボクより恋の事を……。やっ、やっぱり凛はボクより……」

「ちっ、違うからな!? 決して僕は会長を嫌いってわけじゃ……はっ!」

「言ったよね? デート中は『里奈』って言えって……」

「わっ、悪い……」

 12月24日。今日は恋の誕生日である。これで、僕の回りでは、殆どが18歳になったことになる。……まあ、まだ『里奈さんじゅうななさい』だが。……いや、決して里奈は顔が老けているわけじゃないし、まだピチピチだと思う。

 しかし、彼女の身体をピチピチとか言っちゃうと恥ずかしくなるな……。


 まあ、そんなわけで僕はデートの一部として、恋への誕生日プレゼントを買いに来ていた。取り敢えず里奈を愛でておけばいいだろうと、ただそう思っていたので、ここまでむっ、とかいう表情をされるとは思っていなかった。

「……凛君が『ヤンデレになれ』って言ったら、ボクはなってあげるよ?」

「……むしろツンデレのほうが好きです」

「ボクにツンデレは無理かな……」

「無理してでもしろっていう訳じゃないですから」

「……そうか。……で、凛君は結局何を恋にプレゼントする気なのさ?」

「エロゲ」

「じゃっ、じゃあ凛君への誕生日プレゼントはボクの身体でいいね」

「おっ、公の場で何いってんですかアンタは!?」

「照れんな照れんな」

「てっ、照れてなんかないし……」

「……むしろ、ボクより凛君のほうがツンデレキャラは似合うと思うんだけどなあ。……可愛い男の子、ボクすきだよ?」

「ショタコンってことですよね……」

「でも、可愛い子はぎゅっとしたいじゃん?」

「……まさか里奈がそんな女だったなんて……」

「えっ」

「まあ、僕もエロゲしてるんで大概ですけど」

「そうだぞ」

 あまりにもこうやって彼氏彼女としてアニメショップの中を歩いていると、隣を通りがかった男に「リア充氏ね」と言われるものだ。天然パーマに太った体格、それにたらこ唇、そして上縁だけの眼鏡、最後にリュックサック。……完全にキモオタだ、この人。

 ただ、あんまりにもこうやっていちゃつくのは駄目だと、その男は教えてくれた。まあ、教えてくれなければ延々としていただろうね、イチャイチャを。

「里奈」

「なに?」

「……こんなところでイチャイチャしていると、隣を通りがかった人に変なふうに……違う、バカップルだとかリア充だとかって思われるから、場所移動してからにしよう……な?」

「むう」

 顔を膨らます里奈はいつ見ても可愛い、とこの時また僕は思った。前から見ているから、里奈の一つ一つの表情を僕は知っている。エリザ同様、里奈は本当に表情の幅が広い。そして、エリザと異なるのは、二重人格の気が少し入っているため、場合によってはその気が見えてしまうということだ。

「……また考え事して。デートに考え事とかいらないよ?」

 首を傾げ、里奈はそう僕に聞いてきた。

「いや、何でもねえんだ」

「そっか。……んじゃ、早く買おうよ」

「仕方ねえなあ……」

 里奈に急かされたからか、自然と財布の紐が緩む。僕は、お目当ての商品……というかエロゲを見つけた後、そのままレジに持って行き、年齢確認を求められたので、しっかりとそれも提示した。

 今回の店員さんの規制は緩かった。だから、年齢確認を求められたのに、それ自体がザルで、出さなくてもいいんじゃないかって感じになった。でも、求められたことに応じなかったらエロゲなんて買わせてくれなかったんだろうな、きっと。

 一応誕生日プレゼントなので、中が見えないようにきっちりと店員さんに頼んで包装してもらった。


 そして、買ったエロゲを丁寧にバッグの中にしまうと、僕は里奈の手を握り、そして引き、アニメショップの外へと連れだした。が、中と外の気温差が大きく、それだけ手もかじかむ。

 ただ、僕は右手、里奈は左手が暖かかった。手をつないでいたからだ。

「さて、何処に一体行くんですかね? あと、デートプランは考えているんですかね?」

 そんなに迫られても何も出ないんだけどね、里奈。……まあいい。一応決まっているんだし、決まっていないと嘘を言うのもどうかって話だろ。

「里奈はお嬢様なんだよな」

「うーん、一応はそうだけど、あんまりお嬢様って立ち振舞いじゃないでしょ。……まあ、権力と金銭程度はしっかりとあるから」

「だから、そういうリアルな話を恋愛話に持ち込むな」

「凛君こそ、ボクを『お金』の面で判断したくせに……」

「そっ、それは……」

「まあ、将来的な事を考えれば……って、人をお金で判断するなバカ!」

「お金で判断して何が悪いんだよ?」

「だっ、だってお金だけじゃ、あっ、愛がわからないし……」

「ふっ」

 僕は会長がそう言ってもじもじしているのを鼻で笑って、そして言ってやった。

「愛くらい、普通にキスすりゃいいじゃん」

「ばっ、きっ、キッ……」

「したくない?」

「ちっ、違っ……」

「ホント、里奈は反応が可愛いなあ。……もっと胸大きければ僕好みなんだが」

「うっ、うっせえエロゲーマー!」

「男がエロゲやって何が悪い」

「なんでじゃあ、女の子にエロゲをバースデープレゼントとして渡すの!? 馬鹿なの? 阿呆なの? 死ぬの!?」

「もっとゆっくり喋りなさい」

「元ネタわかってるんかい」

「そりゃそうだろ。これでもマイパソコンは結構ハイスペ……」

「そしてその中のエクスプローラーの中の『Windows_XP』というエロ画像貯蔵庫があるらしいね。……早く凛君のお家に行きたいなあ……へへ」

 怖い。一気に里奈の顔が豹変し、今までの愛でてあげたいようなキャラから、完全にヤンデレ化した、主人公かヒロインを殺傷する手前の段階に見える。まあ仮に、里奈が黒髪じゃない髪の毛(ピンクとか青とか金など)の巨乳のボクっ娘美少女だったとしたら、それはそれで新しいジャンルになっていたに違いない。

 まあ、結局は僕だって殺されたくないので、極力ヤンデレ化してほしくないんだけどね。……というかまず、告白したの僕だし、僕から里奈を振ったら、里奈が可哀想だ。何しろ、里奈の両親だって微笑ましい表情で僕と里奈を見ていた。だから、一度告白した相手を簡単に手放すわけには行かないと、僕は強く思った。


 女の子が悲しんでる顔を見るのはもう嫌だしな。エリザの件でもそうだ。エリザはレイプされたりいじめを受けたり、散々な事をされた。だから、アイドルになることは難しいかもしれないし、何処かで精神を崩壊させてくれるかもしれない。ただ、あいつから学んだことが有る。

 それが、人の泣き顔って強力なものなんだなって言うこと、特にそれが女性のものである場合、それは幾倍にもなるのだということを。

「……里奈」

「なに?」

「ちょっと、疲れてないか?」

「疲れてなんかないよ。……何? どっか連れて行こうとしているの?」

「まあね。……突然なんだが」

「なに?」

「里奈が好きな食べ物って何?」

「ボクの好きな食べ物か……。何か、こう聞かれることが初々しいことだと、英語の授業みたいに思っちゃうなあ。……ほら、英語って最初自分の名前を言ったりするじゃんか。『Nice to meet you.』とか使ったりして……」

「ああ、確かにそれはそうだね。英語の授業は初対面の人に合うところから始まるよね。……つうか、小学校時代授業の始まりの挨拶『Hello』じゃなくて『Nice to meet you.』だったからさ、何となく笑えるんだよね、今となっては」

「ある意味洗脳じゃん、それ」

「洗脳っていっても、それなりに知識付いたんだし、決してすべてが悪かった訳じゃないっしょ。ていうか、個人的には一番英語の時間が楽しかった。小学校時代の授業だと」

「男の子って、体育とか図画工作とか、そういう系が好きそうなイメージだなあ。……うーん、ボクが思う『男の子』と凛君は少々違うというか……」

「そうか?」

「いやっ、そのっ、嫌いって訳じゃないからな!?」

「わかってるっつの」

「よっ、よかった……」

「まあ、僕は昔から結構運動系嫌いでね。だから、その反動で体育とかもう論外って感じだったんだよ。まあ、マラソン大会とか有ったからしなきゃいけなかったんだけどね。ただまあ、なんつうかそこは信念で持ち越して、大体10位台だったなあ。……今じゃ本当懐かしいや」

「へえ」

「あっ……」

 丁度その時、僕は昔書いたある物の存在を思い出した。思えば、小学校の卒業式の日、その存在を近くの公園に埋めたっけなあ……。

「どうかしたの?」

「いや……ま、昔の話だし、里奈はなんにも知らないだろうし」

「彼女に話さないんだ。……そ、それってその、『幼馴染同士の秘密』的なやつ?」

「まあ、早く話せばそうなるな。……ただ、無理して話さないままにしておくってこともないだろ。……話した方がいいか?」

「別にいいよ」

「そうか。……まあ、どうせそのうち話すことになるんだとは思うんだけどね」

「ふーん」

「なんだその『ふーん』って。……しっかし、話がないよな」

「作者が悪いだろ」

「『ボクのセリフがなくなるのは作者が悪い!』ってか。ま、会長はモテなかったし、お前らといえるような人も、知り合いにいなかったしな」

「だーかーら……」

「あっ、悪いね会長。……あっ、里奈」

「狙ってんだろ? ああ?」

 眉間にしわを寄せて、不良じみた態度をとる里奈だったが、僕が里奈の頭を撫でると、直ぐにそんな表情も和らぎ、直ぐに笑顔に戻った。

「ひっ、卑怯だよ……」

 里奈はそう言うと、ジト目でこちらを見てくる。

「……わっ、悪いな」

「チーター」

「チート使いだからってか。……アニメネタだよね?」

「うん」

「よかった。まあ、それしかないか」

「そうなんじゃね?」

「……よし、んじゃ行くかね」

「だから何処行くんだっての」

「腹減ったし、適当にご飯食べれば?」

「まだ昼12時回ってないじゃん」

「まあそうだけど……」

「……んで、何処行くんですか?」

「アニメショップで1日過ごすのはあり得ないだろ?」

「そりゃ複合施設じゃないし、大型ショッピングモールでもないし、アニメショップで1日過ごすなんてどこのヲタクだって話でしょ」

「まあ、立ちっぱなしでも足疲れるしね」

「クリスマスくらいのんびりしていたいってのは確かにあるかもね」

「んじゃあ、思い切って僕の家に来ればいいじゃんか」

「それいいね。……よーし、恋から凛君の秘蔵のフォルダの事を色々と聞かないとね。……ふふ」

 怖い。……この人怖いよ。

「まあ、そんなことしたら凛君が傷つくからしないけど」

「やっさしい!!」

「そりゃどうも。……つうわけで、早くデートの案内してください」

 どうすりゃいいんだよ。決めてねえよ、デートプランなんざ。やっぱり男より女は勘が鋭いとよく言うが、本当に鋭いもんだな。……つうかさ、なんで里奈が僕のパソコンの中の秘蔵フォルダの件について知っているんだ? まあ、恐らく恋がその件について色々と話してくれたおかげなんでしょうけど。

「……じゃっ、じゃあ、僕の家に行こう」

「うん、それで行こうか。……あ」

「なっ、なに?」

「ちゃんと、『Windows_XP』っていうファイル調べさせてもらうからね?」

「なっ……」

「だっ、だからその、もっとくっつけ……」

 なるほどな。僕を拘束して、自分が拘束したところから離れられないようにしたってわけか。……ゲスいな。流石にゲスくないのか、西條里奈よ。男の子にも秘密は有るんだ。頼むから、僕の秘蔵フォルダだけは見ないでくれ。

 

 ――正直な所、隠しファイルに設定してあるので大丈夫なんだが、昨日使用したので、仮にファイル設定を変更し忘れていた場合、大変なことになってしまうに違いない。……そうなれば、僕はたちまち大変な目に遭ってしまう。


 そういう自分の愚かさを感じながらも、少し諦めを感じながらも、僕は里奈にがっちりと腕を組まれて自宅まで戻った。


 ***


 そして家に戻るなり、会長という、里奈という乱入者が僕の部屋に登場し、人のパソコンを勝手に操作しだした。更に、パスワードを分からないという最高の状況に持っていたのにもかかわらず、恋という最強の敵が登場し、彼女に僕は抑えられて、パスワードを知られてしまった。

 定期的に変えてはいるのだが、分かっちゃうもんなんだ。というかもう、僕涙目だよ……。

「こっ、これ……」

「もう嫌だ……死にたい」

 二次元のエロ画像がザックザックディスプレイに表示される。更に悲しいことに、里奈の写真が入った「お気に入り」というファイルも見られ、僕は本当に酷い目に遭ってしまった。

「えっ、こっ、これ……わっ、私の……」

 ようやく恋からの拘束が解かれ、恋が僕の部屋から出て行って、鍵を閉めて二人きりの状況にした上で、僕は事情を詳しく説明することにした。

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