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Future  作者: 浅咲夏茶
2nd Chapter;Student council and childhood friend.
10/127

Target:Rina,Elisa and Shu/episode09

 電気がつくと言われ、確かめるために僕はリビングに明かりを灯した。

「あ。電気付きますね」

 朝5時。魔族討伐から帰ってきて家に付いた。僕自身、何で『魔法少年』になっってしまったのか、と後悔をしていた。反面、僕自身元々ゲームが好きだったので、ゲームの中で起きていたこういったバトルシーンを、自分の身を持って体感できて嬉しくも有った。

 そして、今まで停電していたのが復旧し、電気がついたことに何処か感動を覚えていた。

「しっかし、凛はよくやるよ。なんでそんなに初心者のくせに強いのさ」

「い、いや、それってある意味僕が『弱けりゃよかった』みたいな事言いたいんですか?」

「うん。だって、自分の後輩にそんなこと言われたくないし」

「だから、僕は会長より生まれたの早いですってば!」

「ふふふ。ここは、いっその事ボクの弟君おとうとぎみとして、勝手に『俺の弟』認定してしまいましょうかねえ……」

「お、俺の弟って……。それに会長、女じゃないですか。なんで嫁……」

「いや、『俺の彼氏』とか言えないでしょ?」

「会長一人称『ボク』じゃないですか……。それこそ、『私』って名乗ればいいじゃないですか」

「……」

「あ……。ふ、触れてはいけない所だったかな?」

「ま、まあね。ボクの一人称については、あんまり口出ししないでほしいな……」

「ト、トラウマ……か。まあ、僕もトラウマはありますしね。こ、このことはもう、追求しないでいますね」

「その方がいい。私もこれ以上、過去のトラウマに縛られたくはない」

「結構格好良い台詞ですね、それ」

「何が格好良いだゴルアッ! ボクは格好良いとか言われても嬉しくないんだぞ!」

「そう言えば思ったんですけど。会長系キャラで『ボクっ娘』って珍しいですよね」

「べ、別に好きでやってるわけじゃないんだからねっ!」

「なんで『ボクっ娘』に『ツンデレ』を付け足すんですか……」

「でも、これ以上ボクの一人称については本当に触れないで欲しい」

「はい、分かりました。僕の妹ですからね、会長は」

「た、誕生日的にはそうだが、その発言は多くの権限を持った会長を貶しているんだぞ! 会長には逆らえない! ボクには一切逆らえないのだっ!」

「勝手に言ってろ」

「うええ……」

 丁度、パンが焼けたらしくチーン、と焼き上がった音が鳴る。しっかり焦げ目もついているパンだ。僕が食べようとして手を差し伸ばしたが、会長も同じことを考えていたらしく、争いが勃発した。

「うにゃああああっ!」

「うおあっ!」

 当初、会長がパンを握っており、僕はそれを奪おうと会長の近くに迫っていった。身長は僕のほうが大きいわけだが、会長は僕にパンを渡すことを許さなかった。「よし、これで勝つる」と心の中で思って、パンに釣られた魚のように手を差し伸ばした。が、簡単に取れず、そのままそこでこけて会長に衝突、そして会長を押し倒す形になってしまった。

「あ……」

「い……いや、ボクが魅力的だったってのは分かったから、こういうのは今しないで欲しいなあ……。ば、場所を考えて欲しいなあ……」

「す、すいません……。てか、パン千切れちゃいましたね……」

「んもう! 誰のせいだバカアアアっ!」

「なんで会長って変なところでツンツンしだすんですか!」

「キャラ作りは基本なんだよ。凛は『主人公』という立ち位置を十分に活用して、色んな女の子とイチャラブして、周りの男の子から反感買って、しかも周りの男の子には『俺、この女もういいわ』とか挙句の果てにいうんでしょ?」

「僕はどんな人間だ!」

「ドンマイ。そういうこともあるさ」

 会長は、笑顔で僕を励ました。しかしながら、その笑顔の裏に何かが隠されているのではないかと僕は更に深く疑いたくなってしまった。

「うぐぐ。その笑顔の裏に隠されているものを知りたい……」

「ふっ。大人の女は怖いぞ?」

「僕より年齢下なくせに」

「だ、だからと言ってボクは貧相な女じゃないぞ!」

「特に胸も大きくないのに頑張りますね」

「ぬ、脱げば……」

「残念だったな。僕は会長と同じ学年であり、生徒会というくっだらねえ時間を共に過ごしている『凛』っていう男。僕は、会長を隅から隅まで知っている!」

 僕は、眼鏡を掛けていないものの、キリッとした表情でエア眼鏡を整えた。

「僕、思ったんですけどこの調子で行くと、完全に『幼馴染たちとの関係を描く』じゃなくて、『会長とのゆるーい会話を描く』に変わりません?」

「メタ発言はNGです!」

 パンの焼き上がった音。そして、夜に付いた明かり。二階から階段の音がしてきた。闇夜に照らされた光で起きたのだろうか。

「お、おっはー……ってなんで里奈会長が……」

「き、君はいっつもエロい話で凛君と会話をしてるド変態の……誰?」

「ど、ド変態じゃないですよ! 俺は『愁』って名前がありますってば!」

「ああ。愁君か。君が」

「……はい。それで、なんで里奈会長が凛の家に?」

「凛君が夜に私を呼び出して色んなことをしたんです……」

「凛……お前ってやつは……。俺の苦しみも分からんくせに、色んな女の子を一気に押し倒して……。エロゲーマーはそんなクズだったのか!」

「ちょ……」

「ふうん……。凛君、エロゲーマーなんだ……」

 会長は、ニヤニヤしながら、ふうん、と5秒おきくらいに言っていた。まるでドSのようにみえた。しかし、身長が低いので、中々ドSにみえない。言うなれば『キャラ作りに失敗した女の子』だ。

「さて。凛に殺意がわいたんだが……」

「殺さないであげて、愁君! 凛くんは、私にとってもう……居なくちゃいけない男の子なの……。凛君無しじゃ、もう……」

「貴様あああああっ!」

「会長、なんでそうやって僕を貶めるんですかっ!」

「貶めてあげると面白いし。やっぱり凛君はドMなんだよ」

「僕はノーマルです。両刀派です。まあ愁君は……超ドMだけどね」

「んなっ!」

「そっかあ。じゃあ、お姉さんが……うふふ」

「まあでも会長。今は朝ですし、夜のテンションで話するのはやめて下さい」

 しかし、会長はそのニヤニヤした表情を変えることはなかった。


 ***


 明かりに影響されて、愁に続いてエリザも降りてきた。

「おはよう。……って貴方は?」

「凛君は外国人にまで手を出したんだ……」

「ダ、ダーリンが一体何かしましたか。……あ、貴方はどちら様ですか?」

「私は、生徒会長の『里奈』。よろしく」

「あ、貴方が……会長様……」

「さ、様なんか付けなくていいよ! 私はそんなに目上の人じゃないよ?」

「目上の人じゃなくても、日本では『様』を付けるのが……」

「む、昔の発想過ぎないかそれ……。少なくとも、私は君と同級生だ。三年生なんだろう? なら、私は目上ではないぞ」

「それに、会長は僕より年下だしね」

「うるさいっ!」

「へえ。じゃあ『様』はいらないんですね」

「ああ。いらんぞ。『会長様』と呼ばれるのも悪い気はしないが、同じ学年だ。変な距離感があっては、他の人達から『変な関係』と思われてしまうかもしれない」

「会長ってそういうところには敏感なんですね」

「どういう意味だ凛。空気を読むのが上手いということを言っているのか?」

「うん」

「それは私をバカにしているわけではないんだな?」

「そうですよ。誰が会長を馬鹿にするんですか。僕は人を馬鹿にしません」

 そう言ったとき、なんだか僕の背中に強い力が加わった。きっと、誰かが僕の背中をぐりぐりしているんだろう。これくらいの力なら別に痛いわけでもない……と、「まだまだいけるぜ」的な雰囲気を醸し出していたのだが、その力はどんどん強まっていく一方だった。

 耐え切れなくなり、クルッと後ろに回って叫ぶ。

「痛いよ!」

「悪い悪い。だって凛は男はバカにするくせに、男は馬鹿にしないんだから」

「いや、別に僕はバカにしているじゃ……」

「じゃあなんだ? 俺をバカにしていないんであれば一体どうしていると言いたいんだい? あれか? 『ねぇねぇ今どんな気持ち?』とか言いたいのか? 『m9(^Д^)プギャー』とでも言いたいのかお前は」

「ち、違っ……」

「お前はいいよなあ。生徒会に行けば会長に会えるし、家に来れば姉も妹もいる。嫁である恋、そしてハーレムメンバーに追加されたエリザ。裏山氏うらやましね」

 論争の最中、誤解を招く発言を連発する愁を止めようとするが、僕の方に人差し指を差し、「自分は非リアだからお前死ね」という旨のことを言う。

 わからない単語が有ったらしく、エリザが僕の服を引っ張った。

「ハーレムって何、ダーリン?」

 僕が「それはな……」から答えようとした瞬間だった。愁は、超高速の速さで喋った。「こいつロボットだろ」と思ってしまうくらい滑舌がいい。

「元々はイスラム教における女性が住んでいる場所という意味を持った言葉であったが一つの女性の権利としてそのハーレムの中に入れる男を選べるということがあった故に女が好みの男を連れ入れてウハウハ的な事を妄想した輩が居たその輩はキリスト教徒らしくそのキリスト教徒は他国にその誤解のままそれを広めた現在では誤用の方を日本では使用することが多く使用例としてハーレムアニメが存在するまたこの中でハーレムを作っているのは凛であり即座に凛は本命ではない女の子をひとり僕に分けることを要求する」

 「はあ、はあ」と言い終わった後に息を上げる。早口で呂律の回転もいいと、こういう事になるのだろうか。僕自身思うが、何故パソコンなどを使っている者は、少々口の中に言葉がこもったり、それこそ早口に鳴ったりするのか。結構僕自身も話すのは早いほうだと思うが、今まで特に気にしてこなかった。

 愁の努力をちょっと誂おうと、僕は問題風にして出題する。

「さあ問題です。この文章は幾つの文章、文節になるでしょう?」

「おい凛! 勝手に問題に変えるな! しかも凛なら軽く解ける問題じゃねえか!」

「だから、早口で言ってもいいことはないんだよ。人に何かを伝える時は、『出来る限り伝わりやすい速度』ってのがあんだよバーカ」

「そ、そんなの分かってる! はあ、はあ……疲れた」

「お前アホだろ。なんで自分で早口で言って人に助け求めてんだよ」

「つ、疲れたものは疲れたんだ。他に意味はねえよ」

「わかったよ。何か褒美をやろうか。親しい幼馴染のため」

「俺は……凛じゃなくて恋様から貰いたかったなあ……」

「今恋は居ないぞ」

「じゃあエリザちゃん! 俺に褒美をっ!」

 愁は凄くキラキラしているように思えた。まるでオーラが出ているでもあった。凄く嬉しそうな顔で、まさに『ドM犬』。舌を出してハアハアしているわけではなかった。が、横から見るとその光景はとっても吐き気が出そうなくらい耐え切れないようなそんな光景だった。

 エリザも苦笑いを浮かべる。「あはは……」と笑っているが、なんかこっちからみると本当に可哀想である。

 溜息をつくと会長が寄ってきて、僕の耳元で囁いた。

「結構良い光景だよね。ボクはこういう光景が大好きなんだよ」

「会長ってドSですよね、本当。可哀想な犬だとは思わないんですか?」

「いや、全然。可哀想な犬だとは一切思ってないよ。むしろ、『もっと虐めてあげようか』くらいに脳内は回っているね」

「く、狂ってやがる……」

「ま、いいじゃないか。そういうこともあるさ。人間なんて今じゃ地球上に70億以上いるんだし、ボクみたいな人他にも居ると思うけどなあ」

「でもいそうですよね」

「うん」

 ニヤけた後、会長は僕の肩をポンと叩いてパンを焼くことを再開した。

「ねえダーリン。怖い……」

 ぎゅっと僕の右手にエリザは自分の体を密着させる。もちろん、出ている部分は当たる。当然、愁からは嫉妬されるわけだ。「なんで自分だけ凛みたいなことをしてくれる女の子が居ないんだッ!」と叫ぶように言う訳である。

「愁。自分がドMだからって、エリザを困らせるな。自分の印象悪くしてるのに良いのか?」

「ハッ。馬鹿め。自分の印象を悪くしている? ……笑わすんじゃないね。俺は悪くさせた覚えはない。むしろ印象はいいだろう。僕はマゾさ。それは認める。しかし、これで印象が悪くなるとは微塵も思わないねッ!」

「ダーリンのいうことを素直に受け入れられない愁さんは嫌いです」

「……」

「だってさ。ほら、右手差しのばすからさ、愁。落ち込むなよ」

 笑顔で右手を僕は差し伸ばす。涙を浮かべているのか、目の下にキラキラ輝いている水のようなものが溜まっていた。

「凛……お前ってやつは……」

「愁は僕の、大切な幼馴染なんだから」

「いいことを言うな、お前は……。くっ、こんなんで泣くなんて俺……」

「いいんだよ。泣きたいときには泣かなくて何時泣くんだよ?」

「今しか……無いな。泣きたい時ってのは今だよ……な」

「そういうこった。なあ、エリザ」

「うん。私もダーリンと同じだよ。泣きたいときに泣けばいいと思うよ」

 が、エリザが僕に更に密着した時、愁の右手はブルブル震えていた。殴りたいのかな、とふと考える。まあ、嫉妬されているわけだし殴られても仕方ないような気もする。

「羨ましいなあ……」

「なにが羨ましんだか」

「ダーリン。愁はマゾヒストで、ゲーマーのキモヲタなの?」

「お、俺を『キモヲタ』って呼ぶなああああっ!」

「君は天パーじゃないから幸せものだったね。まだ愁はヲタイケメンキャラで行けるもんな」

「俺は……イケメン?」

「そうさ。愁はイケメンだ」

 また愁が泣く。今度は泣き崩れてしまった。たかがこんなことで泣くなよ、と言いたくなってしまった。が、さっきと真逆の事を言ってしまっているのには僕も気付いていた。


 ***


 その後、恋と梨人も降りてきた。最後に僕の妹と姉ちゃんが降りてくると、僕らは朝食を摂り始めた。皆会長が居ることには驚いていた。もちろん「会長に手を出したのか?」ともRに聞かれた。HやMには「凛/お兄ちゃんは、女の子をそういう風に見ているんだ」と言われるしまいだ。


 僕の両親は帰ってこなかった。その時、僕は寒気を感じていた。今度、何かが起きること、僕はそれを心配し始めた。

「さあ、学校いこー!」

 と元気よくエリザが言って、皆「おー」と右手を上げたり上げなかったりして返事を返した。


 ***


 エリザが元気よく言ったまではよかったが、トントンと会長に肩を叩かれ、今日は金曜日で挨拶デー的な立ち位置の日だということを、僕に告げた。僕は忘れていたので、「マジかよ」と口には出さないで思ったまま、皆に告げて、会長とともに学校まで走っていった。


 急ぐと言っても、電車が来る時間は決められている。当然バスに関してもそれは言える。そういうこともあって、仕方なく走っていったのを引き返し、僕の家の僕の自転車を使って学校まで向かうことにした。

 「私は会長だから!」と変なところで自分には大きな権限があるんだということを自己主張する会長が後ろに乗った。僕の自転車は、一つがママチャリ。一つがサイクリング用のものだ。僕は、会長も乗るということを考え、ママチャリの方を選択した。

 権限を主張してくる会長は、ママチャリの荷物を置く後ろの部分に座った。乗っていた時、会長は言った。

「自転車が創りだす風でパンツが見えそうになる」

 僕は女装趣味の変態ではない。女装なんか誰がするかと心に決めている。まあ、一回だけ中学校の文化祭で女装をやらかしたことは有る。その時、恋や愁、姉ちゃん達は『似合ってる』と言っていた。

 あれほどバカにされたのは初めてだったので、すぐに怒った。げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームとか、そういう問題じゃない。爆発してしまうくらいの怒りだった。

 だから、僕はパンツが見えちゃう的な苦痛を味わったことはない。


 ***


 11月下旬に入った神戸の街の朝は少々肌寒かった。雨が降ったおかげなのか。まるで雪国に居るような気分である。

 男子の制服は基本長ズボンだ。めくるような人もいるが、僕はめくらない派だ。中学校時代に何回も何回も怒られたのがきっかけだ。「校則には書いていないだろ!」と何度も言ったのだが、意見は押し潰され、それ以来めくることに何かの悪を感じるのだ。だからあげることが出来ない。

「寒い」

「会長、どうしました?」

 左肩に会長は顔を乗っけて息を吐いてみせた。白い吐息というわけではない。そこまで寒くはないそうだが、手元に温度計がないので測ることが出来ない。

 科学部という、実験大好きな人間たちが集まって部活をしているのがうちの高校にはあるが、その人達が部費で百葉箱を購入したため、高校であるがうちの高校には百葉箱が有る。だから、学校に行けば現在の外の気温が分かる。

「ふにゃあああ……。はわわわわ……」

 肩で顔を乗っけられているので、耳にめちゃくちゃ近い場所でそう言われた。そのことも有り、僕は少し眠くなってきてしまった。徹夜でチャリとか人生初な僕だが、これ以上眠気を誘われるとヤバそうなので、僕は一言会長に言っておくことにした。

「眠気誘わないで下さい」

「もう、乗れないなあ凛君は」

「違うんですよ。通学中事故に遭ったらどうするんですか」

「その時はその時さ」

「そういう問題じゃないです。さあ、早く学校に行って挨拶の準備しましょう」

「凛君流石。ボクが何を言わなくても自分から行動をとってくれる……」

「何が言いたいんですか……」

「ボクなんか凛君に一歩も及ばないなあ、って」

「会長は十分凄いじゃないですか。じゅ、十分……」

「最後のほう酷いな。なんで下向きになるように言い方変えるのさ?」

「そこ深く聞こうとしないでよ!」

「はあ。ほら。凛君が言ってた学校まで来たぞ」

「ですね。ちょっと肌寒いですし、会長も寒さ対策してくださいね」

「するに決まってるだろ。ふっ。君には分からんと思うが、ボクは防寒対策としてマフラーを持っている。耳とかは髪でオーケーさ!」

「女子っていいですよねえ。髪長いと冬とかはそれなりに寒さ軽減できるんでしょうし」

「えっへん。男子にはない特権なんだぞーっ! 凛君ドンマイっ!」

「ドンマイって言われてもねえ……。男でも髪伸ばしてる人居ますけど、キモヲタみたいな顔だったら『うわあ』ってなりますよね」

「なるなる」

 学校の敷地内に入って、屋根付きの駐輪場まで会話していた。鞄の中に入っていた腕時計を見ると、時刻は6時55分だった。スマホでも良かったのだが、その時はそういうふうにはならなかった。


 生徒会役員、各部の部長、各委員会の委員長には、朝早く学校に入れるように合鍵が渡される。でも朝練とかで学校に来るような時は正面玄関から入る生徒は少ない。殆どが体育館脇の玄関か、グラウンド側の西の方にある玄関から入ってくる。だが、僕ら生徒会はそこからは入らない。だって、ここからの方が生徒会室に近いのだから。階段を三階まで上がってすぐだ。

「さあ、鍵を」

「うん」

 会長は財布から合鍵を取り出し、鍵を使ってドアを開ける。丁度通りかかった先生に挨拶して、僕らは靴を履き替えた上で生徒会室へ向かった。


 ***


 学校の校舎内の廊下は暖房が効いていた。きっと、教室とかで付けている暖房が漏れているだろう。言い方も変だが。

 生徒会室に入ると、書類がぽん、と机の上に一つ置かれていた。字を見て生徒会役員の物だと僕も会長もすぐに分かった。

「さて。挨拶作業前に着替えましょうかね」

「会長何に着替える気ですか?」

「凛君。君はボクの着替えを見たいのかい? 変態だねえ」

「何が変態ですか。僕は会長が一体何に着替えるのかを聞いただけです」

「そういうこと聞くもんじゃないぞ……」

「そ、そ、そ、そうですか」

「そ、そ、そ、そうだ。まあ、凛君も寒いだろうし、自販機で温かいコーヒー買ってきてよ。ボクのは自分で払うから心配しなくていいよ」

「じゃあ後で返してくださいね」

「うぃー」

 僕は生徒会室から出て、近くの自販機にコーヒーを買いに行った。早朝から会長は起きてるわけで、会長も眠たくいんじゃないかと思ったためだ。


 コーヒーを二本購入した。缶コーヒーなので少々持つと熱い。だが、寒日にはそれがいい。手も温められるので一石二鳥なのだ。

「会長、コーヒー買ってきましたよ」

 生徒会室に入った。しかし、会長の姿はない。どこかで着替えているのだろうか。まあ、それなら声でも掛けてくれればいいのに。

 僕は、まさか会長が倒れたんじゃないかと心配し、辺りを探した。しかし、会長の姿はない。一体何処に消えたのか心配になった。

 探していなかった場所を最後に探した。その場所は、生徒会室の隣の書籍室という部屋だ。この部屋には、生徒会の書類が多く所蔵されいる。10年以上前の生徒会の情報もここから把握することが出来る。ここは生徒会役員だけが入れるエリアだ。後は図書委員の委員長も入れる。

「会長いませんか? ……あ」

「り、凛く……。こ、これはその……」

「べ、別に僕はコーヒーを持ってきてですね、探していたらここに……」

「ううう……み、見るなあ……」

 会長の姿はさっきと打って変わって、ボクっ娘らしからぬ姿になっていた。まず、眼鏡。そしてショートだった髪をポニテにするらしい。……しかし本当に気まずい。

「わ、悪かったです。そ、それじゃ僕コーヒー置いて……」

「ど、どう……かな? ポ、ポニテとか本当初めてやったから……」

「ぜ、全然大丈夫です。い、何時もの会長と全然違うし可愛いなあって……

「それがギャップ萌え的なやつか。それと赤メガネってどうなん?」

「黒髪、ポニテ、赤メガネ。まあいいんじゃないかな?」

「似合ってるなら嬉しいなあ。じゃあ、行きますか」

「ですね、会長」

 金曜日の朝7時15分頃。木曜日の朝31時15分頃でもある。僕と会長は外に出て挨拶を始めた。生徒会の毎週金曜日の恒例の仕事である。月曜と火曜は部活動の部長とかが、水曜と木曜は委員会の委員長らが挨拶をしている。ぶっちゃけ、僕ら生徒会は挨拶系に関しては金曜日だけで、毎日していない。ただ、挨拶週間的なものをどっかの委員会に企画されると、毎日朝に仕事枠がうまれる。朝が苦手な僕にとっては本当に苦痛だ。


 会長は自身のポケットからマフラーを取り出した。折りたたんでめちゃくちゃ小さくしていた。隠しているようにも見えたが、会長に限ってそんなことはないだろうとこれ以上疑わなかった。


 ***


 そして挨拶の作業を終えて教室に戻ると、担任が大きな声で『今日はフライデー。土曜日がやあ、とこちらを向いている。さあ、頑張っていこう』と言っていた。しかし、誰一人笑うこともせず、見ているこっちが恥ずかしくなった。


 そうして今日も、平和に一日が過ぎていこうとしていた。

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