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98話 出発・バルトの森

 朝、いつもの通り夜明け前に目覚めた。


 横ではサラが気持ちよさそうに眠っている。


 真夜中だったので夜明けまでの時間が足りなさそうだと思ったクロスは、時間を止めた中で行為に及んでいた。


 ただし、サラの髪を咥えたままである。


 恐らく止めていた時間的には1日分は止めていたように感じる。


 その後、時を戻して寝たわけなので、サラについてもいつも通り目覚めるだろう。


 時を止めた中では痛みなどに関しては感じないようなので、そこだけはかなり良いことだと思っている。


 軽く服を着て水を探すべく部屋を出てギルドを出ようとすると、受付に居たギルド職員が不審な目でこちらを見ている。


 クロスがギルドマスターの許可を経て泊まっていたことを聞いていないのだろうか?と思う。


「どうも。」


 手を上げて軽く挨拶をしてみると、怪しんだ目でこちらを見つつ、それなりの返事は帰ってきた。


「あなたは誰ですか?なぜ奥の部屋から出てきたのです?」


「聞いてないのか?ギルドマスターの許可を得て泊まっているつもりだったんだが?」


「もしかしてクロス様ですか?」


 どうやら話はきちんと通っていたようで、表情を軟化させた。


 それならばなぜ疑われたのかと疑問に思っていると次の言葉にて理由が分かった。


「申し訳ありません。名前と年齢とフード付きマントをしているとのことでしたので………一目でクロス様とわかりませんでした。」


 確かにフードにて風貌も分からない上に、12歳でこの背丈とは思わないだろう。


「いや、構わない。それよりも聞きたいんだが、水はどこに行けばあるか教えてもらえるか?」


 丁度いいのでこの場にて水場を聞いておく。


「それでしたら数か所あります。ここから一番近いところですと、このギルドの裏手にもありますし、入口に近いところだと宿屋の裏にもあります。」


「わかった。とりあえずギルドマスターが起きてきたらクロスは出立した旨伝えてくれ。」


「かしこまりました。それではお預かりしていたカードをお返しいたします。」


 カードを預けっぱなしにしていたことを忘れていたのでその言葉には助かった。


「そういえば昨日のあれから預けっぱなしにしていたな。結局いくら入ったんだ?」


「返却いたしますのでそちらの水晶に手をかざしてください。」


 その後返却されたカードにて久しぶりに内容を確認する。



 クロス

ランク 7

魔法力 -/-

筋力 75

魔力 無2/時1

速度 80

状態 普通

金銭 18,890,000リラ



 約1800万リラが振り込まれていた。


「結構な額になったな。」


 ただ、変化があったのは金額に対してだけでそれ以外に変化はなかった。


「また盗賊が出た際にはよろしくお願いいたします。」


「気が向いたらな。」


 手を上げてギルド職員へ別れを告げる。


 夜明け前ということで薄暗くはあったが、空の端が明るくなってきているところから見ると、もうすぐ日が出るころだろう。


 少し急ぎつつ裏手に回り服を脱ぐ。


 そこで井戸から汲んだ水を数回被り布で拭いた後に着替える。


 その後、数回水を汲んで魔法にて収納しておく。


(これくらい準備しておけばいいだろう。後はこの肉体がどのあたりまで行けるか確認が必要だな。)


 町の北門に向けて駆け足で向かうと、門兵に止められた。


「このような夜明け前にどこに行く!?」


「まだ厳戒態勢を解いていないのか…。」


 確かに盗賊たちが殲滅されたと分かるまでは油断できないとはいえ、実際にやった人間まで止めるというのはどうなのかと思う。


 クロスのつぶやきが聞こえたのか、門兵は少し機嫌が悪くなってきたようだ。


「貴様!何を言っている!………怪しい奴だ!こっちに来てもらうぞ!」


 門兵はこちらの腕を掴もうとしてきたのでそれを躱して門の方へと向かう。


(めんどくさいな。)


「詳細についてはギルドマスターに聞け。クロスが通ったと言えば伝わるだろう。」


 ギルドマスターに説明を押し付けてさっさと行くことにした。


 門兵は何かを言い続けていたが、追いかけてくることもなかった。


 追いかけてきたら一撃入れて転がしておこうと思ったが、そうならなくてホッとしたものである。


 町から離れていき、しばらくしてから走る速度を上げていった。


 自分の限界がどの程度なのかいまいち掴めていなかったのでよい機会である。


 北にはバルドの森しかないと言っていた割には、道は歩ける程度には綺麗にしてある。


 バルドに手紙の配達を依頼されたので、そこに誰かが居るのは間違いないはずだが、なぜ誰もバルトに人が居ると思っていないのかが不明だった。


(とりあえずこのままの速度だと、どれくらいかかるか分からないし少し速度を上げるか。)


 魔法にて速度を上げることにする。


「無よ。我が速度を上げたまえ。『マハト』」


『マハト』:自分の動きがかなり早くなる【無属性4】


 さらに速度を上げて自分の限界近くまで速度を上げる。


 風が顔に当たり痛く感じる。


 しかし、それ以外はほとんど疲れることなくサクサクと進むことが出来た。


 そのまま走り続けていると、視界の端にワイルドボアを見つけたので食料として確保しておくことにする。


 走った速度をそのままワイルドボアの方へと向ける。


 ワイルドボアもこちらに気付いたようで逃げようとするが、こちらの速度の方が遥かに早いためすぐに追いついてしまう。


 追い抜きざまに短剣を首へ振りぬく。


 ワイルドボアはそこから勢いを無くして倒れる。


 クロスはそれを捌いていく。


(とりあえず昼にするか。)


 捕獲した段階で昼ごろになっていたのと、朝食を食べていたかったので、捌いているときに腹がかなりなっていたのである。


 そのままいくつかの肉を焼いて食べた。


 食べていると、血の匂いを嗅ぎつけたのか、ジャンクハイエナが周囲をウロウロしているのが分かる。


 こいつらはランク2で、基本的に相手が弱っていない限りは襲ったりしてこないので無視することにした。


 こいつらはどうやってかは分からないが、弱っているものとそうでないものが分かるようだ。


 やはり野生の勘かなにかなのだろう。


 そのまま歩いて道まで戻る。


 クロスが離れたことで、クロスの居た場所にジャンクハイエナたちが群がっていた。


 食べられる箇所については、合成魔法にて収納したので、残りの内臓や皮などの部分に食いついているのだろう。


 そんなことを考えつつ、再度身体強化魔法を施して最高速度で道を駆け抜けた。


 それから夕刻近くまで走っただろうか…。


 そろそろ疲れてきたなと思ったあたりで、道は森の中へと続いて行った。


(ここがバルトの森か?)


 クロスは身体強化を切って道に沿って森の中へと入っていった。


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