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93話 下山・町到着

 クロスが動き出すと共に、魔法では効果が無いと見たのか、盗賊たちがこちらへと向かってきた。


 クロスとしても、向こうからわざわざ来てくれるのだから待てばいいかと思い足を止める。


 盗賊たちは、頭に血が上っているのか、クロスのそんな態度を気にもせずに襲いかかってきた。


 そして、盗賊たちが数メルまで近付いたところで時を止める。


(さて、また見える範囲のやつらを殲滅しますかね。)


 第一陣と同じように首をはねて、カードを取っていく。


 時を戻した時には、ホース車の周りには血にて染まったオブジェが幾つも出来上がっていた。


 カードにて先ほど魔法を詠唱した者(魔力から推測)が居たので、とりあえず移動することを考える。


 そして、ホース車に戻りパルヒムに声を掛ける。


「とりあえず、襲撃者については大体始末した。あまり長居したくもないしそろそろ移動したいんだが?」


「もう…大丈夫なのか?」


「それは分からんな。」


 若干突き放すように答えるが、実際どれくらいの数が居るのか、不明な以上不確かなことは言えないので、そのまま伝えただけだった。


「あんたの問いに答えるには、この場に留まればいいだろうが、あいにくこんな場所に長居したいとは思わないな。」


 クロスの続けて放った言葉にパルヒムは、はっ!としてすぐに御者へと移動の指示を出す。


「ホースに乗る練習をしたいから、一頭借りるぞ。」


 そう言い放ち、積み荷の後ろに括り付けられていた手綱を外してアリスを呼ぶ。


「あまりこういった機会は無いからな。今の内に練習しておくことだ。」


 アリスをホースへと乗せて、クロスが手綱を引く形を取る。


 それから、夜間の登山が始まった。


 途中、呻き声がずっと聞こえると思い、そちらを見やると片腕の無いスワードと片足の無い冒険者が苦しむ声だった。


 おそらく御者が水風の属性を持っていたので、回復魔法を掛けてもらったのだろう。


 傷口は肉が盛り上がり、失血は止まっていた。


 しかし、そこまでだったようで、顔からは血の気が無くなり白く見える。


(あまり長くは持ちそうにないな…。)


 そのまま進むと、真夜中あたりに山の頂上へと辿り着いた。


 パルヒムに後どれくらいで町に着くのかを確認するべく、手綱をアリスに投げ渡し、パルヒムの横に移動する。


「後どれくらい掛かりそうなんだ?」


「後は山をくだるだけなんだが…、登りと同じように石が置かれていたら、時間は掛かるだろう。」


「ある程度悪条件を想定すると、昼前くらいと言ったところか?」


 アルテンまで2日掛かると言われていたので、大体の予想のもとに尋ねてみる。


「おそらくそれくらいになると思うが…。」


 パルヒムは積み荷の上に乗せられた二人を見て言葉の尻がすぼむ。


 パルヒムも気付いているのだろう。


 このまま行けば二人が助かりそうにないことを…。


(よく考えたら、積み荷ひとつ護れないとなると、積み荷の賠償金払わんと駄目なのか?)


 このまま二人に死なれては、クロス1人で賠償金を払わねばならなくなるため、極力生かすことにした。


「アリス。練習は終わりだ。次は御者を代わるんだ。」


 そう言ってから、パルヒムに説明し御者に魔法力を最後まで使わせて回復に充て、代わりにアリスを御者に据える。


 クロスは道にある石などを退ける作業に入った。


 そのお陰かは不明だが、夜明け頃に下山することが出来た。


「さて、アリス。御者を代わるから寝ておけ。」


 いしアリスと御者を代わり、アリスを膝の上に座らせる。


「パルヒムさん。あんたも寝た方がいいと思うが?」


 パルヒムも疲れているようだが、なかなか寝ようとはせず、今の今まで起きている。


「こんな状態で、寝てはおれんよ。」


 寝る気もないようだった。


 後ろにて寝ていた御者は、起きる度に怪我人二人への回復魔法の行使をしていたが、その甲斐あって生きたまま町に到着する事が出来た。


 御者自身は、未だに眠りこけたままだが…。


 町へ到着すると、門兵に町へ入ることを止められてしまったが、町に商店を構えているパルヒムと分かると、簡単な検査の後に入ることが出来た。


 どうやら、町の人達も南の山に住み着いた盗賊団に困っていたようで、物資の搬入にはかなり喜んでいた。


 町にあるギルドでも、依頼を出していたのだが、受けれるランクおよび力があるものが居らずそのままになっていたとのことだった。


「とりあえず到着した訳だが、この場合依頼の達成はどうなるんだ?」


 と、疑問をパルヒムに尋ねてみる。


「あなたが居なければ、私たちは誰も生きてここに辿り着くことは出来ませんでした。報酬については上乗せにて支払います。」


(それよりも積み荷に対する罰金の方を知りたかったんだが…。)


 聞いたらやぶ蛇になりそうだったので、依頼書にサインと追記を貰い、その場を去ろうとするとパルヒムに呼び止められた。


「クロス様。お待ちください。」


「何か?」


 もしや罰金のことか!と身構えていたが、言ってきた内容は違うものだった。


「出来れば王都へと戻る際にも護衛をお願いしたいのですが…。」


 どうやら王都に戻るのが、かなり危険であると考えているようだ。


 襲撃者は全て倒したが、盗賊団があれで終わりかどうかは分からないので、心配になっても仕方ないかもしれないが、クロスとしては護衛はこりごりであったため断った。


「これから行くところがある。護衛出来るのはここまでだ。」


「ここから行くと言いましても特に何も無いと思うのですが、どこに行かれるのでしょうか?良ければお聞かせ願えませんか?」


(聞いてどうすると言うんだ?まあいい…。)


 会話を続けてくるパルヒムに少し苛立ちながらも一応答える。


「この町からさらに北にあるバルトというところだ。」


「バルト………ですか?あそこは迷いの森があるだけのはずですが?」


 どうやらバルトというのは世間一般的にそういった認識の場所のようだ。


「依頼を受けているんでな。この護衛はそこに行くためのついでみたいなものだ。というわけでまたどこかでな。」


「わかりました。護衛していただきありがとうございました。」


 パルヒムはこちらに頭を下げてきた。


 クロスはそれに手を上げて応え、アリスを連れてギルドへと向かった。


 ギルドへと到着し受付へと向かう。


 ギルドは他の町に比べてこじんまりとしており、まるでゼーロー村のギルドのようだった。


 受付に依頼書を渡してカードに振り込んでもらう。


 その後、盗賊たちのカードを渡して報酬を貰うことにした。


「これが依頼書だ。後、南の山に居た盗賊たちのカードを報酬と引き換えたいんだが構わないか?」


「あなたが南の山を通ってきた方でしたか。盗賊の討伐にご協力ありがとうございます。他の方はどちらに居ますでしょうか?」


 どうやらギルド職員は、他にも冒険者がいると思っているようだ。


「護衛は俺一人だ。他の奴は二人生き残ってはいるが重傷だな。他は死んだ。これが南の山に居た盗賊たちのカードだ。確認してくれ。」


「かしこ……まりました。これは全てあなたが討伐されたのでしょうか?」


 クロスの出したカードの枚数が数十枚とあまりにも多かったせいだろう、ギルド職員はかなり驚くと同時に複数人でやったと思っているようだ。


「ああ。それはすべて俺がやったものだ。(一応状態が普通のやつは除いたから大丈夫だろう。)」


 クロスの取ってきたカードの中には状態が普通の者が数名居たが、時を止めた中での攻撃は、盗賊状態への変更には関わらない為クロスの状態は普通のままである。


「すいませんが、照会にお時間を頂きたいのですが、………夕刻頃にまた来ていただけますでしょうか?」


「わかった。」


「ありがとうございます。それでは確認してまいりますので失礼します。」


 ギルド職員はカードを持って、素早く奥の部屋へと入っていった。


 恐らく照会に時間がかかるという建前で、ギルドマスターに相談でもしているのだろう。


 照会自体にそんなに時間が掛かるはずは無いし、前回聞いた盗賊に対する報酬はランクで決められているので、勘定自体も単純なはず………ということで、現在昼前だが夕刻まで掛かるとは思えなかったのである。


「さて………ゆっくり昼飯でも食べるか………。」


「お腹すいた………。」


 アリスの返事と共にクロスたちはギルドを後にした。


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