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89話 散策・未熟?

「行くつもりは無いの?」


「今のところ無いな。この手紙を届け終わったら、依頼でもボチボチこなしつつ、アリスを鍛えながら世界地図でも作ろうと思っている。」


 とりあえず知っておいてもいいだろうと考え、アリスに話す。


「わかった。」


 納得したのかしてないのか、分からない表情をすると、魔法の練習を始めてしまった。


 クロスは、部屋の扉の鍵が閉まることを確認する。


 扉に鍵を掛けることは出来るが、細いかんぬきの内鍵で、簡単に壊れそうだった。


 次に、身体強化を掛けて窓に手をかける。


 部屋は二階だが、今の状態であれば軽々と上り下り出来るだろうと思い、実際に試してみる。


 降りて、ジャンプし窓際に戻るのは一瞬だった。


 宿としての信頼性がとても低いことがよくわかった。


 そこで、今度は時を止めて町の中を見て回る。


 町とは言っても、シュトラウスほど広くはなく、家自体も100軒程度と小さいものだった。


 通りを歩む人影はなく、家々の窓から明かりが漏れている。


 明かりは家々からだけではなく、町の外壁…といっても2メル程度だが…にもところどころかがり火が取り付けられている。


 王都のように壁の上を歩くようには出来ていないようで、あくまで獣・魔獣避けだった。


 ただ他と違うのは、町が四角になるように整備されており、外壁の四隅に塔が建ち、そこが物見やぐらのような役割を果たしているようで、明かりと共に人が居るのが分かる。


 それ以外は普通の町といったところで、特に特筆するような点は見受けられない。


 家々の隙間などにも足を運んだが、怪しそうな建物や人影はなかった。


 町を散策し終わり宿へと戻る。


 宿に戻り窓を閉めて鍵を掛けて時を元に戻す。


「…どこかに行ってたの?」


「分かるのか?」


 アリスの言葉に少し驚く。


 出る前との違いはほとんど出さないようにしたつもりだった。


 出る前には窓を開けて、戻ってきたときにはそれを閉じるという行為をしただけだ。


 特に不審な点はないはず…と自分の行動を省みる。


 考えていたが、答えはアリスがさらっと答えてくれた。


「開けたと思ったらすぐに閉めた。とても不自然。」


 どうやら時間的に開けてから閉めるまでの間隔が短すぎてそれが不自然だったようだ。


 たしかに傍から見ていたら不自然に映るだろう。


「今後気を付けよう。また何かに気づいたら教えてくれ。」


「どこにいってたの?」


 どうやらアリスはどこに行っていたかが気になるようだ。


「この町を一通り見てきた。特に目を見張るようなものは無いな。来る途中にも畑は無かったし、この町の人間は一体何を仕事にしているんだろうな?店が開いてないからわからないが工芸品あたりだろうか?」


 この町は一通り回って気付いたが、普通の家が多く、店といえば南北に続く通りに面した場所だけだったのである。


 店の中にまで入ったわけでは無いので、何の店なのかが分からなかったが、数えるほどしかなかったことを考えると、この町は生産に特化した場所ではなかろうかと思ったのである。


「私も見てみたい。」


 どうやらアリスも興味があるようで、魔法の練習をやめてこちらに向き直っている。


「そうだな。今度は二人で行ってみるか。」


 再度窓を開けてアリスを連れて宿の一階へと飛び降りる。


 強化魔法を掛けたままだったので楽なものである。


 アリスを先頭にして行きたい場所へと行かせる。


「アリス。…何もないだろう?」


「…………。」


 アリスはクロスの言葉には答えずに、色々と見て回っているようだ。


 アリスの見る方を見てみるが家があるだけで特に真新しいものがあるわけでは無く不思議に思ってしまう。


 町の外壁の一角…見張り台がある辺りに近づいたときに声を掛けられた。


「おい!お前たち!そこで何をしてるんだ!ちょっとまってろ!」


 声を掛けられたというよりも不審人物として見られているようだ。


 まぁそれも仕方ないかもしれない。


 確かにこの町は、この時間に外に出ている人はおらず、しかもこっちはフードで顔を隠しているのだから。


 ここで勝手に去っては後で色々と面倒そうだったので、見張りをしていた人物を待つことにした。


 見張りがちょっと、と言ったように本当にちょっとでこちらへと見張りは来た。


「お前たち顔を見せろ。」


「面倒だが仕方ないな。アリスもフードを取れ。」


 自分のフードを取ると共に、アリスにもフードを取らせる。


「顔を拝むことが出来てよかったな。では又な。」


 踵を返して去ろうとしたが、そう簡単には許してはくれないようだった。


「そうはいくか!次は名前となぜこんな夜更けに歩いていたかの目的を話してもらうぞ!」


 見張りはこちらの態度に少し怒り始めてしまったようだ。


 口調が少し荒い………始めからのような気もするが……。


「名前はクロスとこっちがアリスだ。目的はアリスがこの町を見て回りたいと言うので回っているところだ。まあ、俺は散歩がてらついて行っているだけだ。」


「こんな時間に散歩だなんて嘘をつくな!本当の目的はなんだ!」


「だから町を散策しているだけだと言ってるだろうが。」


 見張りは全く取り合わずに嘘を付くなの一点張りである。


 さすがにイライラしてきたクロスは見張りの後ろに回り込み、首に手刀を叩き込み意識を刈り取る。


 意識を失った見張りを元いたやぐらの上まで連れて行き、やぐらの上にて横にする。


 そしてアリスの元へと戻った。


「良かったの?」


「ああ。あーいうやつには何を言っても無駄だからな。一瞬で刈り取ってやったから自分の居眠りとでも思うだろう。それともう散策はいいか?これ以上の面倒事はさすがにごめんだぞ。」


「うん。もういい。ここじゃなかった。」


 どうやらアリスは何かを探していたようだ。


「何か探してるのか?」


「…内緒。」


「そうか。」


 少し気にはなったが、別に無理して聞く必要もないため、この話題は放っておいて宿に戻ることにした。


 宿の部屋へと戻ると、アリスは再度魔法の練習へと入ってしまう。


 クロスとしては特にすることが無かったので、部屋の中にて型の練習をすることにした。


 密室の中でも剣を振れるようにするためだ。


 合成魔法にて木剣を取り出す。


 戦闘など、時を止めたらそれまでだが、それはその場の人間が死んでもいいのであればである。


 極力生かしておくような人間の前では、時を止めるような戦い方はしたくない為、いろいろな状況を想定しながら剣を振るっていく。


 剣を振ることに慣れてきたら今度は目を瞑ってゆっくりと体を動かしていく。


 自身の四感から周りの状況を把握する。


 そのなかでゆっくりと剣を古い、どこにも当たらず、またどこにもぶつからないようにゆっくりと剣と体を移動させてゆく。


 アリスがどうやらこちらに気付いたようで、近づいてきたので剣を振る手を止めてアリスへと向き直る。


「どうしたアリス?」


 目を閉じたままアリスへと尋ねると、アリスからは驚いたような気配が伝わってきた。


「なぜ?見えてるの?」


「いや。特に目は開けてないな。慣れればアリスにも出来るようになるだろう。」


「どうやって?」


 アリスは興味津々なようだ。


「どうやって…と言われてもな……。まずは体を強くすることからだな。」


 現状では体が出来上がってはいないので、魔法に重点を置いて鍛えている。


 そこに気配察知の方法などを詰め込んで行ってもいいものかと悩んでしまったので、仕方なく体が出来上がったら……と遠回しな言い方で拒否してしまった。


「わかった。」


 どうやら興味津々だった気配が、即引っ込んだところを見るに、今出来ないことにはあまり興味が無いようだ。


「そろそろ寝るぞ。」


「わかった。」


 強化魔法をそのままに、体を軽く拭いてベッドへと潜り込む。


 アリスもその横に潜り込むと、すぐに寝てしまった。


 クロスも枕元のランタンの火を落として就寝した。


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