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80話 新訓練・王城

 従業員がスーツなどを替えてからアリスの魔法の練習を行った。


 アリスは大体の物を作れるようになっている。


 後は色が一緒であればパッと見わからないだろう。


 何回も思うが本当に魔法の才は素晴らしいものを持っているようだ。


 というよりもイメージ力だろうか?


 その後は魔法をしっかりと使わせてからゆっくりと寝かせることにした。


 ここからはクロスは自分の鍛錬を始める。


 時を止めた中で無属性魔法にて強化し、体術にて体をほぐし、剣術にて集中していく。


 一通り終えてから無属性魔法を解き気付いた。


(よし。これを試してみよう。)


 その後、時を戻してアリスと共に眠る。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 翌日。


 目が覚めてからアリスが起きるまで筋トレを行う。


 筋トレをしていると、アリスが目を覚ました。


「とりあえず朝食でも食べるか。」


「……わかった。」


 まだ痛むのだろう。


 椅子へと移動させてから呼び紐にて呼んだ従業員に朝食を頼む。


 運ばれてきた朝食を食べ終えてから本日の予定をアリスに話した。


「アリス。今日は剣術の訓練を行うが、昨日とは違い、おそらく幾ら訓練しても痛みや疲れはないだろう。しかも筋力も上がるはずだ。」


「そんなことできるの?」


「あぁ。昨日思いついたんだがな。とりあえずやってみるか。」


 練習前にとりあえず剣術で使用する剣を取り出す。


 少し重いかもしれないが大丈夫だろう。


「これを持てるか?」


 アリスへと剣を渡して持たせてみる。


 アリスは少しフラフラになりながらも持つことが出来た。


「持てるみたいだな。では行こうか。」


 アリスから剣を受け取り、アリスを連れて宿を出る。


 そして人の少なそうな通路へと入り時を止めた。


 アリスの髪を口に咥えてアリスに剣を持たせる。


「アリフ。ひょっとひゃへりふらいは…、このほうふぁいへへんをふっへひほ。(アリス。ちょっと喋りづらいな…、この状態で剣を振ってみろ。)」


 口で言っても伝わっていなさそうだったので、身振り手振りで剣を振らせる。


 しばらく振ってから驚いたようにこちらを見てきた。


「ほれはらあえるあろう?(それならやれるだろう?)」


 意思が伝わったのかわからないが、アリスは少しフラフラしつつも剣を振り回す。


 確かに、アリスは疲れずに、また筋肉痛を感じないまま思うように剣を振り回すことが出来ているが、ひとつだけ問題があった。


 クロスはアリスの動きを阻害しないように、髪を咥えながら動くという非常に面倒な作業をしなければならないのである。


(これはアリスの動きを先読みしないといけないから結構集中力が居るな…。)


 力や速度はこちらが圧倒的に高いため、こちらが怪我をすることはないと思われるが、こちらが動きを間違えると、アリスが髪を引っ張られてしまうので、その際にアリスが怪我をしてしまう恐れもある。


 どれくらい動いていたかわからないが、アリスは満足したのか剣を下してこちらを振り向いた。


「もういい。」


 アリスの髪を口から離して時を戻す。


「戻るか…。」


 アリスは頷く。


 よく見ると、忘れていた痛みがまた襲ってきたようである。


(まあ、時の止まった中で訓練するのはいいかもしれないけど、それ以外でも訓練しとかないと、もしもの時に対応できないからな。こっちも訓練だと思ってこれからも続けるか…。)


 宿の部屋へと戻り、アリスにマッサージを施す。


 その後に余裕があれば魔法の練習をすることを言い渡してクロスは部屋を出た。 


 今回は教会へと赴き、天井付近に有った覗き場のような場所に行ってみることにする。


 前と同じように時を止めてから、開けれる扉を調べてゆく。


 扉を開けて中を調べていると、久しぶり?な人物がいた。


(ペルか…。こんな所で何をしてるんだ?)


 ペルは個室にて祈りを捧げていた。


 普通の人は教会の最初にある大広間にて祈るので、個室になど用は無いはずである。


(家名持ちのとこのメイドはそういう風にする決まりでもあるのかね…。)


 自分なりに解釈して、その部屋を後にする。


 幾つか開かない部屋はあったものの、部屋を探すという行動は全くの無駄だった。


 一部屋ずつ調べていたが、普通に階段があったのである。


(よく考えたら部屋の中に階段はないよな。)


 競技会場のように、扉の先に階段というイメージがついてしまっていた。


 上がれるところまで階段で上がり、階段が無くなってから部屋を捜索する。


(高さ的に後1~2階くらいだと思うんだが…。)


 ある部屋を開けると、中は司教の部屋のようで、数人の神父と明らかに1番豪華そうな服を着た司教と思われる人が居た。


 そんな部屋の中に、今まではなかった奥の扉を発見したので中を確かめる。


 思った通りではあったが、そこには上へと通じる階段があった。


 その階段を通り上へと向かう。


 通路には仄かに光る石がところどころに設置してあり、視界は確保できていた。


 競技会場との違いを考えると、こちらの方は使用頻度が高いからだろう。


 階段を上がり終わると通路は二股に分かれていた。


 右手方向からまずは確認してみることにする。


 少し進むと扉があり、そこを開けると、下から見ることの出来るテラスへと出た。


 上からの景色は、下のフロア全体が見えるようになっている。


 しかし、この空間は他に行けそうな場所もない。


 他に飛び移ろうにもその飛び移る先が無いのだ。


 敢えて行くのであれば柱に向けて飛びつくくらいだろうか。


 そんなことを考えつつ、元来た道を戻り、今度は来た道から左手側の探索を行う。


 しばらくまっすぐに進むと競技会場と同じように中央に入口のついた柱があり、その周りを螺旋階段が付いていた。


 柱の中に入っても何もないので、今回も仕方なく階段にて上へと向かう。


 しばらく行くと扉があり、その先には少し豪華な客室となっていた。


 しかも来た道からは扉だったが、開けた先の反対側は本棚になっていた。


(これはなかなかわからないな。)


 部屋から外に出ると、一本の通路に出た。


 その通路を進んだ先には大きな通路があり、来た通路の両脇には見張りが二人立っている。


(この通路はどこかで見たな…。)


 来た道の目印として見張りが立っているので、前回と同じような目印を置く必要が無かったことにありがたく思い、今度こそと王を見るために部屋を散策する。


 玉座の間をまずは確認し、その周辺から見て回る。


 そんなことをしていると、客間にて、どこかで見た人が座っている。


(どっちの影響なんだろうな………あの喧しさは………。そういえばこいつらの名前を聞くのを忘れたな。)


 その部屋に居たのは、城の奥に居た恐らくヌル家の姫と今いる宿屋の従業員でいきなり喋りだしたかと思うと凝視してくる女だった。


(まあ、ヌル王家の知り合いでもなければ、普通はああいった宿では働けないよな…。もし家名持ちに対して粗相をしたとしても姫の友達となれば何も言えないし…。一般人には関係ないか…。)

 

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