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76話 豪商・どじ

 ギルド職員に言われた店に行くと通りの中央付近に大きな店があるのが分かる。


 王都でこれだけ大きな店を出せるということは豪商で間違いないのだろう。


 どのような人物か会って確かめるべく店へと入る。


 売っているものは雑貨を中心にいろいろと幅広く売られており、客もかなり入っている。


 店員に店主はいるかと確認すると、


「ご用件はなんでしょうか?」


「護衛の依頼の事で聞きたいことがあるんだが会えないか?」


 店員はかなり怪しそうな顔でこちらを見ている。


 何かおかしいだろうかと顔を触るがおかしいところなど、何もないように思う。


「なにか顔についているか?」


「カードを確認させていただいて構いませんか?」


「ああ。構わないが。」


 名前とランク・状態だけの表示にして店員に見せると急に態度が変わってしまった。


「すぐにお呼びしますのでしばらくお待ちください。」


 そういって店員は奥へと行ってしまった。


 店員はすぐに戻ってきた。


「お待たせしました。この奥に居られます。ついてきてください。」


 店員の後について奥の部屋へと向かう。


 店員がノックをし、中から返事が返ってきたところで扉を開ける。


「お連れいたしました。」


「よくきてくれたな。早速だが、依頼について確認したいとのことだったが?」


 店員の事は既に眼中にないのか、パルヒムこちらを見ながら話しかけてくる。


 まるでこちらのことをじっと観察しているようである。


 商人に駆け引きで勝とうとは思わないので素直に来た理由を話してみる。


「忙しいところすまない。護衛の依頼が貼ってあったので受ける前にどのような人物か見ておきたくてな。」


「どのような評価か興味があるな。」


「別に評価しようなんておこがましいことは思ってない。なかなか生真面目そうだと思っただけだ。」


 部屋の中は整理整頓がされていて、机の上も書類で山は出来ているが、きちんと整理された山というよりもタワーの方が適切かもしれないが…。


「受ける気になってくれたらうれしいね。ランク3以上を募集したとはいえ、ランク5の人物が来るとは思わなかったよ。ランク5を雇おうと思ったら今の3人分で1人雇えたらいいくらいだからね。」


「こっちにもあっちに行く用事があったしついでみたいなものさ。それにランクについてはこれから結構な人数が上がるかもしれない。」


「どういうことだい?」


 パルヒムに新しい制度の概要を説明する。


「なるほどね。盗賊のランクによって討伐した者に報酬以外にもメリットを与えて討伐の推奨をするわけか…。ということはそれほど盗賊の数が増えたということでもあるな…。もう少し増やすべきか…?コストを考えるとこれ以上は無理だ。しかしゼロになるよりは…。」


 パルヒムは考え込んでしまい、自分の世界に没頭してしまったようだ。


「それではこれで失礼させてもらおう。」


「ん?ああ。悪かったな。出来れば君には受けてもらいたいのでよろしく頼むよ。」


「では失礼する。」


 クロスは店を出てギルドへと向かった。


 その途中でパルヒムについて思い起こす。


 太っても痩せてもおらず、見た目は平凡としか言えない。


 着ているものも、清潔感のあるものではあったが高そうには見えなかった。


 瞳の色は青と黄で水属性と木属性である。


(確か合成魔法に温度変化を防ぐものがあったな…。)


 その温度変化の魔法があれば長距離を移動する荷物を運ぶには最適だろう。


 しかもその温度変化防止の魔法も一時的なものではなく一定時間継続する上に魔法力は一回分だけとお得な魔法だった。


 まぁそれほど悪い奴ではあるまいと思い、ギルドに到着してから護衛の依頼書を持って受付にて処理してもらう。


 その後宿へと戻った。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 日は真上を通り過ぎてもう少しで夕刻にに差し掛かろうとしている。


 部屋に入ると、今度もベッド脇でアリスは寝ていた。


 前と同じように土を魔法で回収し、アリスをベッドへと寝かせる。


 椅子に座って新しいランク制度について考える。


 盗賊討伐の報酬額について変更はなかったが、盗賊のランクによって依頼を達成した件数に追加が発生するとのことだった。


 ランク1は3、ランク2は5、ランク3は10、ランク4は15、ランク5は30、ランク6は50、ランク7は100でそれ以上になると協議が必要とのことだった。


 カードにて確認してみたが、達成欄に盗賊の討伐数までが載る用になっている。


 そこを見て分かったが、ランク5はひとりだけだったので、以前の盗賊の頭だとして、今回どうやらランク4についても4人程討伐したようだ。


 簡単に計算してみると、今の依頼達成分と合わせて348件分になる。


 ランク6に上がるのに必要な件数は、350件にランク5の依頼1件以上になるが、盗賊のランクも対応しているため、すでに残りは2件の依頼を達成するだけである。


(この護衛の依頼と手紙を配達し終わればランク6か…。)


 ランクが高いと店やホテルでも、国営などだと優遇してくれるところが多い。


 ただ残念なことは、盗賊たちのカードを持っていかないと報酬は貰えないというのには少し納得がいかないものがあったが、実際に誰をやったのかが分からなければ、ランクが分かったとしても意味が無いので仕方ないのかもしれない。


 カードを見ながらそんなことを考えていると、アリスが起き上がってきた。


「眠れたか?」


「少しだけ。」


 目が細くなっているところを見るに、まだ眠たくはあるようだ。


「昼は過ぎてしまったが、飯でも食べるか?」


「食べる。」


 奥の紐を引っ張って従業員を呼び昼食の準備をしてもらう。


 朝と夜だけのつもりだったのだが、昨日の晩の食事はカウントしていないらしく。一食分余ってしまったのだ。


 食事が運ばれてきたのでそれを食べ終わり片づけてもらう。


 今回はボリュームのある肉にスープがメインのようだった。


 肉を齧り、スープにスプーンを入れると中に柔らかいものが入っている。


 それは白い綿のようなものだった。


 ミルのスープをたっぷりと含んだそれを食べてみる。


 綿と思っていたものはパンだった。


 他の具は完全にスープに溶けてしまったのか、それともこしたのかわからないが見当たらない。


 満足したので最後に果実酒を飲んで一息入れる。


 アリスが食べ終わるのを待ってから片付けを頼む。


 従業員が出て行くと、アリスに再度土をねだられたので渡し、クロスはまた外に出た。


 王都を再度見て回る。


 今度は裏通りのような場所を見て行ったが、シュトラウスのように貧困街はなかった。


 どの家も綺麗にされていて、景観として美しくもある。


 そんな家々を見ながら歩いていると、どこかで見かけた女性が歩いていた。


 誰だったか思い出すべく見ていると、買い物袋を持ったその女性は石畳の隙間に足をとられてこけてしまう。


 思い出すついでに近寄り、転がった野菜を手渡した。


「ほい。」


「ありがとうございま~!!!」


 女性はこちらを見るなり固まってしまう。


 最近こちらの顔を見るなり固まる人が多いがいったいなんだというのだろうか。


「すいません!すいません!」


 女性は突如謝りだしてしまう。


 それに焦ったのはクロスの方だった。


 こんな街中で大きな声で謝られては目立ってしょうがない。


(あー。あの宿にいた子か…。)


 目の前の女性は宿屋の浴場にて出会った人だった。


「気にしてないからとりあえずでかい声を出すのをやめないか?」


「はい!私いっつもまわりから人の話をよく聞きないさと言われるんですけど。私はきちんと聞いてるつもりなんです。それ「もうしゃべらないで。」………。」


 普通のトーンに戻ったかと思うと、今度は愚痴のような物を言い始めたので先手を打って止めておく。


「で?なんでこんなところに居るんだ?今日は休暇かなにかか?」


「謹慎処分ですよ~。5日は出てくるなって言われまして、そのあいだ暇になったので家の手伝いでもとこうして買い物に行ってたんです。そしたら雑貨屋の店員さんが割引とかし「はい止まって。」………。」


 理由はとりあえず分かった。


 謹慎ということで自分のやったことを反省させると共に、恐らくクロスとの接触を避けさせようというのだろう。


 その為に5日間ということはクロスが宿を出た後である。


 勤め始めたばかりでいきなり不注意からの失敗では、あのレベルの宿だと首になってもおかしくはないが、何か理由でもあるんだろうか?と考えた時にどうでもいいことに気付いて思考を中断する。


「今度は気をつけろよ。」


 そういってからさっさと離れることにする。


 後ろで未だに何か言っているが気にせずに…。


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