7話 適性・魔法
「では最後にリューイかの。それでは土で家を作ってご覧。」
「はい。」
「…土よ。集まりて家を作りたまえ。『ザント』」
『ザント』:土を動かす【土属性20】
リューイの周りの土が集まりだし、目の前に小さな山が出来ていく。
そこに出来たのは、子供が膝を折れば入ることが出来、雨宿りも出来そうなかまくらのようなものだった。
「小山じゃの。リューイは何が作りたかったんじゃ?」
「家~。」
神父は小さな山を一周ぐるっと見て回る。
「ふむ。リューイはもっと物の形をしっかりと意識することが大事じゃよ。」
「は~い。」
「それでは、一通り終わったことじゃし、シスターとギルドで魔法力を見ておいで。」
「「「「は~い。」」」」
(魔法力をギルドで見ることが出来るのか?)
教会の黒水晶で見るしかないと思っていたため、ギルドで魔法力が見れると聞いて驚く。
「では教会内に戻ろうかの。」
その後は、シスターと共にギルドへ向かった。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
ギルドへは、表口からではなく裏口から入り、以前のベアクローの時にも入った裏口近くの部屋に入った。
部屋へ入ると、シスターにここで大人しく待つように言われる。
当のシスターは子供たちを部屋に待たせて、部屋を出て行ってしまった。
(いい機会だし本を読むか、ギルドは基本鍵が掛かってるし。)
魔法の練習の時に本を読もうと入り込んだが、鍵が掛かっており見ることが出来なかった。
「時よ。とまれ。『ツァイト』」
周りを確認し、全てが停まっていることを確認した上で、本棚をざっと流し読みする。
(植物や動物図鑑…地図!)
今まで地図を見たことがなかったので、この世界には地図がないと諦めていた。
(地図としてはかなり曖昧だけど、大体の位置関係が分かればいいしこんなもので十分かな。)
綴り紐で閉じただけの本を広げてみる。
始めの方に記載されていた地図は、この辺りの町や村が書かれていた。
その後ページをめくると同じ地図に今度はコメントが入っており、その次にコメントに従って修正された地図、という順で最後にこのゼーロー村と隣町シュトラウスや王都ベルンが記載された地図があった。
(これが最新かな?それにしても最初から見ると随分変わってるな、七年前はこの地域に二つ村があって一つが戦争に巻き込まれ廃村になり合併したとはね…合併して出来た村の名前がゼーローと…。)
自分の住んでいた村の名前を初めて知る。
(ゼーロー村からさらにこっちにいくと砦か…砦も廃村になってから造られたみたいだし、それまで平和だったのか?戦争の勝敗とかが詳しく記載されてないから気になるけど、村は平和っぽいし勝ったのかな?)
本棚へ歴史書がないか見てみたが、本の数が多く、時間がかかるため見つけること諦めた。
(またの機会に探そう。)
本を探すのを諦め時を戻す。
「時を戻したまえ。『ツァイト』」
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
(そう言えば魔法力を見るとかいってたか。)
時を止めて行動していると止める前の目的を忘れて終いがちになってしまう。
「魔法力ってどうやって見るんだろうね?」
「ん~魔法で見るのかな~?」
「私は教会みたいな水晶で見ると思うな~。」
アイリと話していると、シスターが丸い水晶を持ってきた。
「では皆さんの魔法力を見ますね。誰から行きますか?」
「「はい!」」
「はい!」
アイリとエドが手を上げ、つられるようにリューイも手をあげる。
「ではこのサイコロで決めましょう。大きい人が一番ですよ。アイリさんからどうぞ。」
「えいっ!」
数字は3が出た。
「次投げる!…こいっ!」
投げたサイコロは机から落ち床に転がる。
「2かぁ。残念。」
「はい、リューイさん。」
「は~い。」
止まった数字は6と出た。
「リリーさんとクロスさんはどちらが先に見ますか?」
「僕最後でいいよ。」
「それなら私が4番目。」
「はい。ではリューイさんから見ていきましょう。このカードを持ってどちらの手でもいいので、水晶に手を当ててくださいね。」
リューイが手を水晶に当てる。
「それでは、魔法力表示と言って見てください。」
「魔法力表示。」
リューイの持っていたカードに文字と数字が現れる。
リューイ
魔法力 280/300
(こんな風に表示されるのか。)
その後、アイリから順に見ていく。
アイリ・ドライ
魔法力 4980/5000
エド
魔法力 285/300
リリー
魔法力 490/500
アイリの魔法量も大きいことにも驚いたが、エドやリリーの魔法力消費量が少ないことにも驚いた。
(それにしてもアイリの後ろのドライってなんだ?)
「では最後にクロスさんの魔法力を見てみましょう。」
「はい。」
片手にカードを持ち、水晶に手を当てる。
「魔法力表示。」
クロス
魔法力 21630/72000
(結構本探しに時間をかけてしまったから、魔法力を結構消費してるな~。)
「!」
シスターは驚いた顔をしている。
「クロス数字多いな~。」
「なんでこんなに減ってるの?」
「クロスにぃ大きい?」
「…。」
「クロスさんは今日これ以上魔法を使わないでね。」
「はい。」
「少し待ってて。」
シスターは水晶を持ってまた外に出てしまう。
「魔法って面白いね。」
シスターが戻ってから、みんなで教会へ戻っていく。
教会に戻ってから黒水晶の部屋へいくと神父が待っていた。
「今日、みなの魔法力を見てもらったのは、一日に使える回数を見てもらう為じゃ。最低でも数回は使えるように残すんじゃよ。」
「アイリさんの風は第一階位だから切りのいいところで200回、エドさんの火は第二階位だから切りのいいところで15回、リリーさんは…水が第三階位でしたので切りのいいところで45回、クロスさんの無は…たぶん第一階位になるのかな?といううわけで1回だけそれ以上はだめよ、リューイさんの土は第一階位なので切りのいいところで10回。これがそれぞれの一日に使える目安だから覚えておいてね。」
「まぁ毎日使うと消費量が減ってくるから、ご両親に見てもらって練習することじゃな。」
「クロス!毎日練習しようね!」
「そうだね。」
(減ってるのは時魔法使ったからなんだけどなぁ…。)
アイリに励まされ、本日の魔法練習は終わった。
この日はシスターと家に帰り母親に今日の報告をすると、「一日一回しか魔法を使わないこと!」と念押しされた。
水晶はギルドの受付にあり、冒険者には例のカードが配られるので、それを登録すれば自分のステータスが分かるとのこと。
他にも5項目表示がある。5項目はそれぞれ筋力表示・魔力表示・速度表示・状態表示・全体表示であり、内容は次の通り。
・筋力表示は全体の筋力量で多い程力が力が強く耐久性が高い。
・魔力表示は魔法の消費量を表しており、低い程よい。
・速度表示は筋力の質で変わり最大速度が出る。
・状態表示は毒や麻痺などの状態が分かる。
・全体表示はそのままでギルドランク、所持金なども含めて全てが表示される。
(全体表示や魔力表示をされてたらこの勘違いも無かったかも。)
この日から教会での魔法の練習が始まった。