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64話 貧民街・報復

 町へと戻り、南東区の貧民街へと向かう。


 貧民街は静かだが、あちこちから人の気配が漏れ出していた。


 貧民街に居る人を捕まえるべく時を止めてから探す。


 出来れば今通っている通路を監視しているように見ているやつがいいと思い、視線を感じた家の中へと入り、二階へと上がる。


 部屋へと入り男の後ろに立って時を戻した。


「聞きたいことがある。」


 後ろから話しかけられたせいだろう。


 男はびっくりしたようにこちらを振り返ろうとした。


 しかし、自分の背に短剣を当てられていることを悟り、それ以上は動かない。


「朝から夕刻までの間に、女が二人この通りを通らなかったか?」


 男は知っているといわんばかりに頷いている。


「どこに行った。」


 さらに男の背へと短剣を突き刺す。


「この区画の一番デカいあそこの家に入った。」


「お前は裏ギルドの者か?」


「違う。カードもある。命は助けてくれ…。」


 男は首から下げていたカードを後ろへと見せる。


 星明りで照らされたそれには確かに状態欄が「普通」となっている。


「その調子で長生きすることだ。『ツァイト』」


 時を止めて男の指した大きな家へと入っていく。


 最初に広間があり、その広間の壁にいくつか扉が付いていた。


 扉を順に開けていく。


 中には男たちが酒盛りしている部屋だったり、厨房だったりとあまり貧民街らしくない状態であった。


(あたりのようだな。)


 一番右にある扉は地下へと続いているようで、そこを降りて行き地下の扉を開けると牢屋になっていた。


 手前の牢の中を確認すると、感情のないアリスが隅に座っているのが見える。


(外傷は見当たらない。メイは…。)


 その隣の牢屋を見てみると、衣服をぼろぼろにされ明らかに乱暴された跡と分かるメイがいた。


 メイの姿を見た瞬間に、今まで感じなかった怒りや悲しみといった感情が一気に溢れ出す。


 その時に頭に浮かんだ言葉を、クロスは無意識に口に出す。


「『ウトーピッシュ』」


『ウトーピッシュ』:時を加速させて精神と肉体を成長させる【時属性1】


 言葉を発すると、体から光が溢れ出してくる。


 その溢れ出した光は、次の瞬間クロスは包んでしまった…。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 光に包まれている間、クロスの体の節々に激痛がはしる。


「がぁぁぁああああああ!」


 そして次に節々だけではなく体中あちこちに激痛がはしり始めた。


「っ!?っ!?」


 叫ぶ声すら出すことが出来ずにのた打ち回る。


 そのまま意識を無くすことが出来たら楽だっただろうが、あまりの痛みに気絶することすらできない。


 どれくらいの時間続いただろうか…。


 激痛から解放されてクロスは息も絶え絶えに仰向けに倒れて気絶してしまった。


 クロスが気絶すると共に体に纏わりついていた光も消え去った…。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 クロスは意識を取り戻し体を起こすと、辺り一面に血が飛び散っていた。


 自分の体を見ると、体中に血が付いているのが分かる。


 しかし、どこを触っても傷痕など全くなかった。


 それどころか、光に包まれる前と明らかに違うことがある。


 体の大きさが遥かに大きく変わっていた。


(いったい何が起こったんだ。なぜこんなところで寝ている…?)


 少し混乱していたので、整理することにした。


(ここはまずどこだ?確か…気絶して…その前は…思い出せん。とりあえず。ここを見て回るか…。)


 部屋の入口の扉から中を見渡し、部屋を探索するべく歩き出す。


(ここは牢屋か…。あれは!)


 牢の中に囚われているアリスを見つける。


「アリス!大丈夫か!?」


 しかし無表情で返事がないので、クロスは牢の扉に手をかけて開けようとするが、扉には鍵がかかっており開けることが出来なかった。


 周囲を確認すると、扉の横に鍵がかかっているのが見える。


 その鍵を取り扉を開けてアリスの状態を見るべく近づいたときに気付いた。


(もしや時が止まっている?)


 試しに落ちていた小石を投げてみると、予想通り小石は宙に止まってしまった。


 カードを確認すると明らかに変わっていた。



クロス

ランク 2

魔法力 -/-

筋力 75

魔力 無2/時1

速度 80

状態 【時の管理者】【時属性の極み】普通

金銭 6,030,000リラ



 カードを見ると知らない言葉が浮かんでいる。


(時の魔力が1になったから出てきたのか………あれ?そういえばメイとナタリアは?…メイ!?)


 ここでここまでの事が頭にフラッシュバックしてくる。


 急ぎ隣の牢の扉を開けて中へと入る。


 そこには先ほど浮かんだ光景と同じ状態だった。


(メイ…すまない…。)


 メイの指を口に入れることで、メイの時間を戻し状態を確認する。


 服はぼろぼろで男どもに犯されたようだが、胸は規則正しく動いており、外傷は擦り傷や内出血がところどころにあるくらいだった。


「メイ…。メイ…。」


 メイは気絶したままで動こうとはしなかった。


 一旦口からメイの指を抜き、ボロボロになった服でメイの体を拭いてから、外套をメイに巻いて抱きかかえギルドへと戻る。


 ギルドマスターの部屋へと入ると、未だにナタリアが居たのでメイをソファーへと横たわらせた。


 部屋にあった紙にペンで書置きをしてギルドを出る。


 再度貧民街の大きな家へと入り、家の中にいる人数を把握する。


(十人も居ないな…。一部屋に集めるか。)


 家の中に居た男たちを全て地下の牢屋へと運ぶ。


 今までのクロスの筋力では信じられないようなことだが、男たちを軽いとさえ思ってしまった。


 男たち8人を全て集め終えてから扉に鍵を掛けて時を戻す。


「いてぇ!なんだ?」


「おい!ここはどこだ?」


「うぉ!いつの間にお前、目の前に現れたんだ?」


 男たちは景色が一瞬で変わったことで混乱したのかうるさいことこの上ない。


 しばらく好きなように喋らせて大人しくなるのを待つ。


「お前は何者だ?」


「なぜおれたちはこんなところにいる!?」


「俺からの問い以外には答える必要はない。」


「なんだ「『ツァイト』」」


 牢の中に入り喋ろうとしていた男の喉と胸を貫き再び牢の外へと出て鍵を掛け時を戻す。


 戻した瞬間、男の胸と喉から血が吹き出し周りを赤に染めてゆく。


「うぉ!?」


「なんだ!?」


 男たちは急に近くの男が血を吹き出し始めたことに驚き、またもや騒ぎ始める。


 静かになったことを見計らい問いかける。


「お前たちに依頼をしたのは誰だ?」


「何のことだ!?」


「牢屋に二人女を捕まえていただろう?」


「誰が話すか!お前はおしまいだ!俺たちは裏ギルドの人間だぞ!それを「『ツァイト』」」


 先ほどと同じようにして時を戻すと、今度は男たちは騒ぐことなく血を吹き出した男を一瞥し、こちらを見つめていた。


「誰の依頼だ?」


「俺たちは裏ギルドに登録してるだけで斡旋してるわけじゃねぇからしらねぇ。」


「俺たちは依頼をこなしてるだけだ!」


「ではその依頼はどこで受けた?」


「それは…」


 男たちは口ごもってしまい何も言わなくなった。


「そうか…では現世に別れを告げるといい。」


「待ってくれ!」


 違う男が言おうとするのを言い淀んだ男が止めようとしたので、同じように息の根を止める。


「さて…どこだ?」


「南西区の貧民街だ!ここと同じような家が建っている!」


「この町には裏ギルドメンバーは大体何人ぐらいいる?」


「わからねぇ!少なくともここ以外で最低でも数十人は居るはずだ!」


 他の男たちは何も言わずに二人のやり取りを見ていた。


「この町の裏ギルドの責任者はなんという?」


「それもわからねぇ…。俺たちはただ依頼を受けて報酬を貰うだけだ。」


「ご苦労だった。もう眠っていいぞ。」


「そんな待ってく「『ツァイト』」」


 男たちを全て処理し、カードを持っていく。


(北西区か…。)


 クロスは時を戻し隣の部屋にいたアリスに声を掛ける。


「アリス行くぞ。」


「…あなたは誰?」


「クロスだ。」


 クロスはそう言ってから牢屋を後にする。


 アリスは不思議そうにしながらも言われた通りについてきた。


 クロスはそのままアリスを連れて建物を後にする。


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