表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/139

60話 報告・夕食

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


-クロスが去った後-


「逃げられた?」


「はい。申し訳ありません。」


「あなたの魔法と体術をもってしても無理でしたか。」


 相手が剣術だけと思い込んでいた上に、家具の多い部屋を通過するときであれば、後れを取ることなど無いと思っていただけに、この結果には驚いた。


「そのことで、報告する事があります。」


「なにかしら?」


 ユフィは、気を取り直してメイドに聞き返す。


「先ほどの男は、魔法を唱え終えた瞬間に、目の前から姿を消しました。」


「姿を消した?」


「はい。気付いたときには、既に入り口の扉が開いていたので、扉から出たのは間違いないと思われます。」


 メイドも話しながら、自分の言っていることが信じられないようだ。


「隠蔽の魔法を使う者が仲間に居たのではないの?」


「ありえません。魔法を使う瞬間まで、扉は開いていませんでした。この者は網で捕獲するべく、窓から扉を確認していたので間違いありません。」


「確かにおかしいわね…。彼の名前はなんと言ったかしら?」


「クロスと申していました。」


「彼について調べて頂戴。出来れば手元に置いておきたいわ。」


「かしこまりました。」


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 クロスはギルドに行き報告受付へと並んだ。


 他の冒険者も数人いたが、スムーズに流れていく。


 ターニャも手伝ってはいるが、ナンパがいるせいか、今並んでいるマードックのところよりも、明らかに処理が遅れていた。


 というよりもほとんど進んでいない。


 並んでいる人は何故不満の声を出さないのかが、かなり不明だ…。


 自分の順番になったので、依頼書をマードックに渡す。


「お疲れ様。…おや?これを受けたの君だったのか。」


「ええ。内容の詳細を知っていたら受けませんよ。はめられたと思う気持ちでいっぱいです。」


 じと目でマードックを見据えるが、向こうも慣れたもので悪びれもせずに言ってのける。


「それが依頼者からのお願いだったからね。そもそも受付の時に確認しなかったのかい?」


「確かに油断して確認を怠りましたよ…。もっと警戒しておくべきでした。以後こんな事が無いように注意しますね。」


 マードックが言ったように、最初の段階で確認しなかったのは自分のミスだが、一言でも受付の際に言うべきではないだろうか。


 カードを返却してもらい、明日受ける依頼を物色する。


 また滋養草の依頼が出ていたので、受けておく。


 他には何かあるか見ていると、錯乱キノコの採取依頼が貼ってあった。


(確か南のケーニヒス山の洞窟内に生えてたはず…。それにしても何に使うんだ?)


 錯乱キノコは、その名の通り混乱を与えるもので、通常使う用途が思い付かない。


(まあ報酬もそこそこいいし、受けとこう。ついでに、洞窟内で採れそうなのを採集すればいいかな。)


 報酬は一個1万リラで10個まで買い取ると書いてある。


 採集依頼の二枚を持って受付へと向かう。


「これお願いします。」


「はい。(ふぅ)…まぁいまさらだけどこの依頼受けても平気?」


 受付を行っているサーシャが問いかけてくる。


「滋養草と錯乱キノコですよね?」 


「そうよ。特に錯乱キノコは、このあたりだと南のケーニヒス山の洞窟にしか自生してないわ。洞窟内は今ウィングバットの巣になってるから、採集も含めるとかなり大変よ?」


 読んだ本には、そのような情報が載ってなかったと考えると、最近の話なのだろう。


 ウィングバットは、魔法は使いはしないが、超音波のようなものを発して対象の方向感覚を狂わせ、動けなくなったところを襲うという厄介な相手である。


「洞窟内にそんなのが住んでるんですか…。ギルドとして討伐依頼は出さないんですか?」


「今のところあの洞窟に用事はないし、ウィングバットの被害も聞かないから今のところは動くことは無いわね。もしあなたが行って帰ってこなくても、自業自得ってことになるわ。」


「そうですか…。とりあえず危険なところというのは分かりました。とりあえずこれは戻しておきます。」


「それが懸命だと思うわ。では、この滋養草の受付をするわね。」


 サーシャは、クロスからカードを受け取り受付処理を行う。


 クロスはカードを受け取り、ギルドを後にした。


クロス

ランク 2

魔法力 18699/72000

筋力 30

魔力 無5/時4

速度 31

状態 普通

金銭 6,030,000リラ



〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 宿屋へと入ると、食堂からいい匂いが漂ってくる。


(先に飯にするか。)


 食堂へと向かうと、カウンターにアリスとメイが座っていた。


「メイ。依頼はうまくいった?この匂いを嗅ぐ限りでは失敗ではないと思うんだけど。」


「食べてのお楽しみです。」


 どうやらメイは結構自信があるようだ。


「それは楽しみ。もう食べても大丈夫かな?」


「はい。既に料理はできておりますので問題ないかと。」


「じゃあ食事にしよう。メイはナタリアを呼んできて。」


「かしこまりました。」


 メイにナタリアを呼びに行かせてる間、アリスに聞いてみる。


「どうだった?何か参考になることあったかい?」


「野菜と肉を切る速度と精確さは参考になる。」


「それはよかった。今後もメイにアリスの世話を頼むから、メイに色々と聞いてみるといいよ。」


「分かった。」


 アリスが料理に興味を持っていることが分かっただけでも十分だろう。


 ゆっくりと今までの生活から戻せばいいとクロスは思った。


 少しして、二階からメイとナタリアが降りてくる。


「待った?」


「いや。アリスと話してたから、時間は気にしてないよ。」


「それはよかった。では注文しましょ。」


「メイお願い。」


「はい。暫くお待ちください。」


 そういうとメイは厨房の方へと入っていった。


「料理長。夕食を四つお願いします。」


「おぉ!任せとけ!」


 暫く待つと、メイと恐らく先ほどメイに料理長と呼ばれた人物が、盆を二つずつこちらへと運んできた。


「お待たせしました。こちらが本日の夕食となります。」


 少し真新しい物を期待したが、以前に出たものと代わり映えは無かった。


 あるとすれば、匂いが良くなったくらいだろうか。


 見ただけでは分からない。


「では早速頂こう。」


 四人ともそれぞれに匙を取り、食べ始めた。


 クロスは早速シチューをすくって飲んでみる。


 以前よりもミルの味を抑えて、野菜の味をさらに引き立たせているように感じる。


「以前のやつよりも美味しいかも?」


「頑張ったかいがありました。」


「確かにこれは美味しいわね。パンにも野菜のような味がするのだけどこれはなに?」


「それは、パン生地にペースト状の野菜を練りこんだものです。」


「これはシチューと合うわね。」


 今回はナタリアも満足したようだ。


「アリス。この料理の味を美味しいというんだよ。」


「これが美味しい?」


「そう。少しずつ慣れていったらいいよ。」


「わかった。」


 四人で食事を終えると、料理長が厨房からやってきた。


「今日の料理はどうだった?」


「以前のものよりも美味しく感じました。」


「前回食べたものとは比べ物にならないわ。」


「反応はいいみたいだな。譲ちゃんもおいしかったかい?」


「よく分からないけどこれが美味しいのは覚えた。」


「ん?…まぁ美味しかったのならよかった。」


 アリスの発言を不振に思いながらも、美味しいという言葉を聞いてとりあえず納得したようだ。


「アリスは宿泊の登録をしてないんだけど、代金はどうしたらいい?」


「あぁ。こちらの手伝いさんの仲間だろ?今回は構わないよ。」


 どうやら全く問題視していないようだ。


「ありがとう。ご馳走さま。」


「ごちそうさま~。」


「ありがとうございました。」


「いやいや。こっちもありがとよ。また何かあったら頼むな。では戻るわ。」


 料理長は厨房へと戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ