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50話 報告・調査

 署名を貰った伝票を持ち、ギルドへと向かう。


 後数刻もすれば、夕刻となり冒険者が多くなってくるだろう。


 ギルドに入り、マードックのところへと報告に行く。


「お疲れ様。伝票は預かるよ。カードも一緒にいいかい?」


 伝票をマードックに渡して水晶板にカードをかざす。


「依頼5件連続達成だから、ランク2に上げることが出来るけどどうする?」


「上げてください。」


「わかった。」


 マードックは依頼達成とランクアップの手続きを行う。


「これでクロス君はランク2だ。おめでとう。」


 受け取ったカードを見てみる。



クロス

ランク 2

魔法力 55315/72000

筋力 29

魔力 無5/時4

速度 30

状態 普通

金銭 6.000.000リラ



 少々疲れたが、ランクだけではなく、筋力も上がっていたので良しとする。


 カードを仕舞い、再度依頼を見直すことにした。


 ランク2になったので、上の依頼も確認しておくことにした。


 確認が済んだら、地域の詳細が記載された本を見せて貰うことにする。


 本来ならば、ランク6以上でなければならないが、ギルド職員もしくはギルドお抱えの証である腕輪があれば話は別なはずだ。


 ギルド職員の手伝いでも、見ることが出来たくらいだから、証であるこの腕輪があればいけるだろう。


 もし駄目な場合は、酒場などで聞き込みをしなければならないが、欲しい情報が手に入らない可能性もあるし、何かとお金がかかりそうなので、出来れば避けたかった。


 マードックに話を聞いてみる。


「マードックさん。」


「なんだい?」


「この地域の情報が記載された本を、見せていただけませんか?」


「すまないが、基本的にギルドにある本は、ギルド職員しか見ることが出来ないんだ。」


「それは勿論分かっています。僕も一応見習いとはいえゼーロー村のギルド職員だったので。でもこれがあればいけませんか?」


 袖を捲り上げて、マードックに腕輪を見せる。


「…少し確認させてくれないか?」


「はい。」


 クロスは腕から腕輪を抜き取り、マードックへと渡す。


「別に付けたままでも良かったんだが…。とりあえず、その腕輪をこの水晶板に当ててみてくれないか。」


 クロスは、マードックに言われた通り、水晶板に腕輪を押し付けてみた。


 すると、水晶板に文字が浮かび上がる。



ギルド職員証

場 ゼーロー村

名 クロス

級 銅



「この腕輪なら、奥の部屋の本であれば見ても構わないよ。鍵はターニャ…分かるかな?あそこの依頼受付にいる女性から借りてくるといい。」


「わかりました。」


 無事本を見れることに安堵する。


 クロスは後ろを振り返って、メイとナタリアに向き直った。


「メイとナタリアは、宿をとってきて。とりあえず一泊で、部屋は三つね。とれたら夕刻に迎えに来て。それまで自由時間ということで、…付いて来ると言っても、この奥には基本ギルド職員しか入れないから二人は駄目だよ。」


 メイに3万リラを渡す。


「これで十分足りると思う。」


「クロス様はずっとこちらに居られるのですか?」


「夕刻まで、この辺りのことを調べておくつもりだよ。」


「そうですか…。わかりました。では行って参ります。」


「メイってなかなか堅いのが抜けないわね。んじゃ行ってくるわ。また後でね。」


 従者二人と別れて、受付カウンター内に入り、依頼受付にいたターニャに鍵を貰い、奥の部屋へと入る。


 鍵を開けて部屋に入ると、ゼーロー村の軽く5倍はあろうかと思われる部屋の中に、本棚が三つほど申し訳程度に並んでいた。


 基本的にこの部屋は、話し合いなどで使われているのだろう。


 テーブルと椅子が随所に設置されている。


 置かれている本棚を確認すると、棚ごとに項目が分かれているのでとても見やすい。


 まずは、このシュトラウスの町近辺の地理について調べてみることにした。


 ここの本は、ゼーロー村にあるものよりも情報がしっかりしており、一冊に古い順からまとめるのではなく、本ごとにまとめてあったので、とても分かりやすかった。


 シュトラウスからゼーローを経由し、砦へと続いている川の名前はフルスデン。


 そしてその川を挟むようにして南北にそびえる山がそれぞれ、北がエンバルデ、南がケーニヒス。


 今まで南の森と言っていた場所が、アイゼンの森で、シュトラウスから王都の南側に広がる森をエルク。


 シュトラウスから王都までに広がる平原をベルナウと記入してある。


 シュトラウス近辺の地理を頭に入れた後は、そこに生息する動植物である。


 隣の棚に目を移すと、そちらが動植物の棚になっている。


 その棚の本で、依頼板に貼ってあった関係のありそうな本を選び読んでいく。


 本の内容は、詳細に記されているものから、名前と特徴しかないものまで色々とあったが、流し読みをしただけでは、全ての情報を覚えることは出来ない。


 覚えようと頑張っていると、いつの間にか夕刻になっていたようで、窓から差込む光は、茜色に染まっていた。


 その時、タイミングよく扉を叩く音が聞こえてくる。


 扉を開けて入ってきたのはターニャだった。


「クロス君。もういいかな?クロス君を呼びに女性が二人きてるんだけど。」


「この本を片付けたら向かいます。(ほとんどがうろ覚えになってしまったな。)」


 最初の地図で時間を掛け過ぎてしまったようだ。


「分かったわ。早くね。」


 そういうとターニャは部屋を出て行った。


 もう時間を掛けられないので、時を止める。


「『ツァイト』」


 これで残魔法力的に後三刻は大丈夫だろう。


 言うほど時間は無いため、本の続きを読み進める。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 本を読み終わり、一通り読み終わったので、本を片付ける。


 全て覚えたとは言いがたいが、大体のことは覚えられたと思う。


 シュトルム近隣に棲む動物や魔物は、ランク4が通常であれば最大であるため、他の地域に比べればまだましなのかもしれない。


 まぁ、ゼーロー村の南にあるアイゼンの森はランク3のランバードくらいが最大ではあるのだが…。


 野草に関しては、アイゼンの森と違い、薬草や香草の他にも鎮痛草や眠り草なども生えているようだった。


(これで依頼板にあった、捕獲と採集の依頼については大体いけるかな?後は現地で見つけるだけと…。)


 本の内容に概ね満足し、時を元に戻す。



クロス

ランク 2

魔法力 7235/72000

筋力 29

魔力 無5/時4

速度 30

状態 普通

金銭 6.000.000リラ



 だいぶ時間が過ぎていたようだ。


 あと少し使っていれば、段々と眠くなり始めるところだろう。


 クロスは部屋を後にした。


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