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5話 勉強・遭遇

 目が覚めると、いつもの家の天井が目に入ってきた。


 横を見ると心配そうに母親がこっちを見ている。


「おかちゃん。(母さん)」


「目が覚めたみたいね。…びっくりしたのよ。体が冷たくなってたから。」


「ごめんちゃい。(ごめんなさい)」


「神父さまがいうには、魔法の使い過ぎの症状だっていうけど…魔法を使ってもいないのに、体が冷たくなるなんて聞いたことがないし…。とりあえず今日は温かくして寝ましょうね。」


「あい。(はい)」


(時を停められるのは大体四時間くらいかな?体の中の何かが抜けると、急に眠くなって時間停止は強制的に解除されるみたいだ。今後は無理しない程度にやっていこう。)


 帰ってきた父親と一緒に夜食を食べつつ、今日の事を話されまた怒られた。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 三歳になると、教会のあの部屋の集まりは卒業のようで、来る前にいた子供は居なくなった。


(折角アイリがいなくなったと思ったのにこれか…。)


 クロスの後に入ってきていたリューイという子供が、アイリの代わりといわんばかりに懐いてくる。


 親の手前邪険にするわけにはいかず、構ってやる。


(ここの本も大体覚えたし、親同士の会話から情報収集くらいしかやれることがないな…まあいいか。)


 やっと言葉も普通に言えるようになり、時属性も思うよう調整出来るようになった。


 時間をとめた時の弱点は、自分の力が及ぶ範囲でしか行動出来ないことである。


 具体的には、鍵の掛かった部屋を開けることは出来ないし、他にも水の上を歩けるか試してみたが、水が横に押し出されて、最終的には底に足がついてしまい、足を退かすと足跡が出来るといった感じである。


(使い勝手がいいのか悪いのか分からないな…。)


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 それから時は経ち三歳になった。


 やっとあの部屋から卒業かと思ったら、今度は午前中に教会の黒水晶の部屋で、神父からの教義を聞くこととなった。


(いろいろ知りたかったからいいが、教義って勉強みたいなものだよな…あんまり好きじゃないな~。)


 教義の参加者には、アイリを始め卒業した子供たちがいた。


 子供たちは意外にも騒がずに、大人しく聞いているようだ。


 アイリはクロスが来るようになってからは、いつもクロスを自分の隣に座らせ神父の話を聞いている。


 教えて貰えた内容は、始めに神についてから始まり精霊・人の誕生へと繋がっていく。


 一通り流れを話し終わると、部屋の掃除をしてから解散となるのがいつもの流れである。


(魔法はいつ教えて貰えるのかな…親に聞いてみよう。)


 家に帰って昼食を済ませ、早速聞いてみることにする。


「お母さん、魔法ってどうやって使うの?」


 クロスは聞いてみたが、母親は教える気がないようで…。


「ん~。まだクロスには早いかな。神父さまの話をよく聞けたら教えてあげるからね。」


 と言ってはぐらかされた。


(何故教えてくれないんだ?自分で試すしかないか?)


「わかった。神父さまの話をよく聞くよ。」


「クロスはお利口さんだね~。夜ご飯はクロスの好きな物にしようね。」


「お肉!」


「お肉ね。ちょうどミルの肉が入ったって言ってたし買いに行こうか。」


「は~い。(野菜ばっかりだと流石に肉が恋しくなる。)」


 絵本を読んで分かったが、ミルというのは牛のような動物で、ミルクを飲んでよし、食べてよしと結構大事に扱われている。


「今からお肉に添える香草を取りにいこうね。」


「は~い。」


 村を出て街道の反対側にある森の中に入っていく。


 森の中を数分歩いていると、森の木が開き湖に出た。


「この湖の周りによく生えてるからね。」


 湖の水は澄んでいて、背景に山を掲げ周りには森と、絵に出来そうな風景が広がっていた。


 母親はクロスの手を引き湖の周りを歩き始める。


「あっ!これこれ。」


 そこには、しそのような形の葉をつけた草があった。


「生えてる時は匂いはしないけど、葉っぱを採ると匂いがするよ。クロスが取ってみて。」


「は~い。」


 葉っぱの根元を指で挟むように掴み、葉の根元で折るようにして採った。


 そして採った葉っぱの匂いを嗅いでみる。


「少ししかにおいしないよ?」


 匂いは微かにするがいいとも悪いとも言えない。


「今日の料理に入れる香草はこれくらいでいいのよ。ここにある分だけで十分だから、ここの葉っぱを採ったら帰ろうね。」


「全部採っていいの?」


 頻繁に採ってしまうとすぐに湖の周りの香草などなくなってしまいそうだ。


「全部採っても、数日したらまた生えてくるから大丈夫。ただ葉っぱ以外を採ってしまうと、そこから先はなかなか生えなくなるから注意してね。」


「は~い。」


 葉っぱを採り終わり帰ろうとした時、森の奥の方から何かの鳴き声が聞こえてきた。


「!!クロス急いで帰ろうね。」


 母親は鳴き声を聞くと慌てだした。


「風よ。暫く我が身を軽くしたまえ。『ラーゼン』」


 『ラーゼン』:周囲を含めた人に風を纏わせ軽くする【風属性5】


 母親が詠唱すると、母親を中心に周りの空気が圧縮されていくように感じる。


(他の人が魔法を使うのをまともに見るのは初めてだな。)


「クロスおいで!」


 クロスは母親に抱き付く。


 母親は小走りで移動を開始した。


 抱かれていると振動はほとんどなく、歩いているような感じであるのに、移動速度は早い。


 また、移動自体も静かで、全く大地を踏みしめる音がしなかった。


(さっきの鳴き声の主が危険なのかな?)


「あっ!」


 後ろを見る形で抱かれていたため気付いたが、森の方から以前見た熊のような生き物が、湖へ出てきたのが見えた。


 母親はこちらの声に反応し、後ろを振り返る。


「やっぱり。」


 母親は後ろを少し確認するとまた前を向く。


 遠目には、その生き物は、周りをかなり警戒しているように見えた。


(ちょっとどんなのか詳しく見てみたいな。)


 街道に着くと母親は疲れたのかクロスを降ろす。


 移動が止まるとともに、母親に纏っていた風もなくなった。


「クロスギルドにいくよ。」


 母親はこちらに手を向けてくる。


(今がチャンスかな?)


「(時よ。とまれ『ツァイト』)」


 母親に聞こえないように言葉を紡ぐ。


(よし、とまってるな…。さっきの動物を見てこよう。)


 先ほどの場所へ走り出す。


(いた!)


 近づいて見てみると、体長は以前見たものより幾分小さく見えるが、同じ大型獣だったのが分かる。


(近くで見ると迫力あるなぁ…。ん?)


 森の方をよく見ると、茂みから同じ獣の子供が顔を出している。


 以前の大型獣一頭逃げた話を思い出す。


(逃げたのはメスだったのか…、あれから森に住み着いちゃったのかな?親に子供二頭か…とりあえず攻撃してみるか!)


 近くに落ちていた棒を広い思い切り振り下ろした。


 当たりはしたが、頑丈そうな体に弾かれてしまう。


(今の力ではどうにもならないか。身体強化してみたらどうだろう?)


 『ケヴァルト』:自身の力が少し上がる【無属性10】


「無よ。我が肉体に力を与えたまえ『ケヴァルト』」


 頭に浮かんだ言葉を紡ぐが、何も変わった感じはしない上に、時属性魔法のようになにかが抜けていく感覚もなかった。


(成功したのかな?初めて二つ同時に使ったけど、あんまり実感がないな…。とりあえず急いで試してみよう。)


 もう一度棒を持ち直し振り下ろす。


 しかし結果は変わらず弾かれる。


(根本的に力が足りないのかな?それとも魔法が発動してない?…親父はこれを捌いてたんだよな~。)


 自分ではどうしようも無いため仕方なく身体強化?を戻すことにする。


「無よ。戻したまえ『ケヴァルト』」


 詠唱したがやはり前と変化がない。


 とりあえず、母親の元に戻り、止めた場所で時を戻した。


 戻したときに、母親は一瞬眉をひそめいぶかしんだが、すぐにクロスの手を取ると走り出す。


(手が冷たくなってる。あの移動で力を使ったからかな?)


 それからはギルドに入り、先ほどのことを報告する。


「エレン!さっき南の湖でベアクローを見たわ!たぶんこの前の逃げたやつだと思う。」


「落ち着いて、今からギルドマスターを呼んでくるから、受付お願い。」


「分かったわ。」


 やりとりを聞いていたのか数人の冒険者が近付いてくる。


「先ほどの話は本当ですか?」


「えぇ、倒伐されるか移動したのが確認されるまで、ランク4以下は南の森には近寄らない方がいいわ。」


「なるほど、ありがとうございます。」


 冒険者の対応をしていると、ギルドマスターが降りてきた。


「ノーラ、すまんがあちらの部屋で詳細を教えてくれんか?」


「分かりました。クロス、エレンかお父さんの所に行ってなさい。」


 母親の服を掴み、首を横に振り拒否する


「クロスも一緒でも構わないでしょうか?」


「構わん。」


 ギルドマスターは奥の部屋へと歩き出す。


 入った部屋は扉と窓がある場所以外を本棚で埋め尽くされていた。


(こんなとこに大量の本があったのか!)


 母親とギルドマスターが話している中、本を眺めていく。


(何かの機会にここの本を読もう!)


 大量の本を見つけたことが嬉しくなり我を忘れていたため、気付いた時には報告が終わり、今後の方針について話していた。


(子供の事は話したのかな?それとなく聞いてみるか。)


「お母さん。一緒にいた子供はどうなるの?」


「「!!」」


「ベアクローに子供がいたのか!?」


「そこまで詳細に見ていませんが、ベアクローの近くにいたとすると間違いなく子供かと。」


「クロス。大きな生き物を見た時のことを教えてくれ。」


「大きなのの後ろに二匹子供がいたよ。大きさはこれくらい。」


 手を一杯に広げる。


「一メルくらいが二頭か…やはり確実にいくならランク6以上だろうな…。」


「今この村にランク6以上は要るんですか?」


「…冒険者はいない。隣の町でも依頼を出してもらうから、そんなに時間はかからん…とは思うが…南の森に人が近付かないように手配しよう。すまんが帰りに教会と雑貨屋と宿屋に寄って、教えといてくれ。」


「分かりました。」


 それから宿屋・雑貨屋・教会とに南の森に、ベアクローがいることを伝えて家に帰った。


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