48話 確認・考察
部屋に入ると、ギルドマスターは応接用の椅子に腰掛けて、こちらを待っていた。
「とりあえず座りたまえ。」
「はい。」
クロスは、ギルドマスターの対面にある、横に長いソファーの中央へと腰掛ける。
メイとナタリアの二人は、クロスの後ろに控えて立っていた。
「…一人は見たことがないが、もしかして…新しい従者かね?」
「はい、そうです。」
ナタリアがなにが面白いのかにっこりとほほ笑んでいる
「…まあいいだろう。二人も座りたまえ。」
メイとナタリアは、クロスを挟むような形でソファーに腰掛ける。
従者二人が腰掛けたのを確認し、ギルドマスターは話を切り出した。
「先ず、君には、先日の盗賊討伐に対する報酬がある。所持しておくか、カードへ入金しておくかは君の自由にしたまえ。」
ギルドマスターはそういうと、一枚の書類を渡してきた。
クロスは、金額を確認して驚く。
「510万リラですか!」
「内容はランク5が一人で200万、ランク3が一人で50万、ランク2が二人で60万、後はランク1が二十人で200万、総数二十四名で合計が510万となる。後でその紙を報告受付に出せばいい。」
「わかりました。」
ゼーロー村では、盗賊の討伐に関わることが無かったので、知らなかったが、駆け出し冒険者としては大金である。
「後は、この手紙についてだが、どこまで本当のことだ?」
「中を読んでいませんので、何とも言えません。」
ギルドマスターは、クロスが手紙の内容を知っていると思っていたようだ。
実際手紙の内容についての予想はつくのだが、一応中身を見たわけではないので、わからないと正直に話す。
「ギルの結婚についてだ。」
ギルドマスターの言った内容は、想像通りのものだった。
「本当です。二日前に、ギルドマスターが、同じ職場にいたエレンさんに、結婚を申し込み、それをエレンさんが了承しました。」
「エルフと結婚したか…。」
ギルドマスターは、なにやら考え込んでしまった。
「聞きたいことは以上でしょうか?」
ギルドマスターの話し方は、まだ続きそうであったが、自分の世界に入られると、クロスたちにとって無駄な時間となり、このようなことは面倒であるため早く進めるべく、先を促してみた。
「まだだ。最後に一つ聞きたいことがある。」
次の質問で、最後ということに安堵する。
「なんでしょうか?」
「グレン…。君が討伐した盗賊の頭だが、どのように感じたか教えてくれ。」
盗賊の頭と言われ思い浮かぶのは、アジトで立派な椅子に座っていた、デカい男である。
「どうといわれましても…、盗賊の頭が、板についてるなあという印象しかないんですが…。」
実際会話したわけでもなく、戦闘…というか殲滅も、時を止めた中で行ったので、全くといっていいほど、盗賊たちがどういう奴らだったかなどわからない。
「知り合いなのですか?」
「昔のな…。」
「(ギルドマスターが気にするグレン………!!)…まさか昔の仲間の一人なのですか!?」
メイが驚いたように、ギルドマスターに尋ねる。
「そうだな。昔は一緒にやっていたが、ある事情で解散したのだ。それからの行方はわからず、いつの間にか、盗賊となって名が売れていた。そのカードを再び見ることになるとは思わなかったがな。」
昔一緒だったということは、父親たちとも仲間だったということだろう。
アジトを探すために、村から連れ出すときの父親たちの目は、疲労による興奮やネストの町のギルドマスターへの対抗心と思っていたが、それだけでは無かったようだ。
そういえば、村を出るときに、父親が手合わせという名の、本気混じりの撃ち込みも、自分の昔の仲間と、同等以上の実力を持っていると想定したものならば理解出来る。
「聞きたいことは以上だ。行っていいぞ。」
「それでは失礼します。」
クロスは、ソファーから立ち上がると
、礼をして扉へと向かった。
ナタリアはクロスに続き、メイも慌てたように後へと続く。
三人は、ギルドマスターの部屋を後にした。
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部屋で、ギルドマスター…ゴンドは、座っていたソファーに頭を預けて天井を見ていた。
(まさか、盗賊の中にグレンが居たとはな…。しかしカード情報を見る限り、衰えてはいなかったし、魔法力もほとんど使われてはいなかった…。死体は、ベアクローに食い散らかされていて、どういう風にやったのか不明…、監視の依頼が入っていることからも、クロスには何かがあるな。)
ギルドマスターは、溜め息をつくと、自分の執務椅子に座り直し、書類へと目を落とす。
そこには、盗賊についての報告書の他に、先ほどクロスたちが持ってきた手紙に、一緒に同封されていた書類が置かれていた。
盗賊たちの書類には、盗賊たちのカード情報や賞金額など個人のものから、アジトの場所や、どの地域から流れてきた可能性があるなど、全体的な情報や考察を踏まえた予測などが書かれている。
一緒に同封されていた書類には、クロスの個人的な身体情報の他に、性格に関するものまで様々なものが記されていた。
ただ、足りないものはいくつかある。
それは、一部のカード情報と実際の実力である。
クロスを鍛えたのは、カインなのだが…、それでもあの年と見た目では、カインを越えているとは思えない。
分かっていることはいくつかある。
魔法力は、他を寄せ付けない程のものを持っているのは間違いない。
祝福を受けた属性が、無属性と時属性で、時属性という聞き慣れない属性のせいか、幼い頃から魔法力の減りが著しく、無属性を一度使っただけでも、二度目が使えないとのことだった。
筋力と速度を含めた剣術や体術は、カインに追い付いているとは思いにくい。
そんなことがあれば、自慢の一つもしてくるだろう。
それらの事を考慮しても、一人で盗賊たちを討伐したことには、裏がありそうだ。
もし、それだけの実力をもっているのならば、依頼がきた理由も理解出来る。
引き入れるか若しくは…。
これ以上考えていても仕方ない。
本人に答える気が無いというのは、調査内容からもよくわかるので、調べるのも一苦労だろう。
(個人的には…、いや自分が考える事ではないな。それにしてもナタリアか…。)
ゴンドは、執務机の書類を、王都ギルドへ報告する分も含めてまとめ始めた。
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