47話 街道・ギルド
村を出てからシュトラウスへと向かう。
街道沿いに続く田んぼには、もう少し遅い時間ならば、仕事に出た人に会ったことだろう。
クロス達三人はシュトラウスへと歩いていく。
暫く進み、田んぼの端まで来た。
もう少しいくとあの場所だろう…。
段々と墓の盛り上がりが見えてきた。
五つの墓の前に着き、クロスは止まる。
墓に向き直り、手を合わせて五人の冥福を祈る。
メイも同じように手を合わせているが、ナタリアに至っては特に何もしていない。
「ここに眠っているのは知り合い?」
「いや。僕は知らない。」
クロスにとっては全く話したことも無い他人であり、街道から横に移動させたくらいだ。
接点があるとすればメイだが…。
クロスはメイの方を見てみる。
「数日前に、ここで盗賊によって殺害された冒険者とツヴァイ家の者です。」
メイは無表情な上に感情のこもらない声を出し答える。
「大規模な戦闘があったなんて聞いてないんだけど…?」
通常であれば、死んだ人数に更に怪我をした人数などを加えて、こういった場所に盗賊を埋葬しないことから、数十名単位の護衛が居たと思ったのだろう。
「いえ。大規模ではありません。一方的な攻撃に遭い、一緒に居た冒険者とツヴァイ家の男性は全てここにいます。」
「たったの五人に護衛をさせてたの?」
「元々シュトラウスから砦までの往復であったため、護衛の必要性を、ほとんど感じていなかったのが問題でしょうか。最初は執事とメイドのみで行く予定でしたので、まだましな考えだったといえますが、結果が今のこの状況です。」
「まぁ…砦からシュトラウス間ならそうなるかもね…。」
ナタリアはメイの説明に納得したのか、頷いた。
「手も合わせたし、シュトラウスに向かおう。昼頃には着きたいし。」
「わかりました。」
根掘り葉掘り聞かれるのも面倒なので、先に進む。
しかし、歩いていくには遠いため、結局は道すがら根掘り葉掘り聞かれた。
途中から、メイに丸投げしてしまったが…。
ネストの町には、昼頃に到着した。
道中は特に変わったこと(襲われたり)は無く、無事に到着することが出来た。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
門を通る際に、門番へカードを見せる。
(ナタリアがカードを見せた時に、門番が敬礼していたような…?)
この時に、未だにナタリアのカードを、見ていなかったことを思い出す。
「そういえば、ナタリアのカード情報見てないけど、どんな感じなの?」
「女性の情報を根掘り葉掘り聞くような男は、変態と言われても仕方ないと思わない?それとも私のことに興味津々なのかしら?」
ナタリア自身は、シュトラウスまでの道中に、こちらの事を含めて、根掘り葉掘り聞いてきたのに、クロスが聞いたらこれである。
「クロス様!私の情報でしたらいくらでも!」
ナタリアの発言に焦ったのは、何を勘違いしたのかメイだった。
「いや、メイのカード情報は、数日前に見せてもらったからいいよ。」
「私のことには、既に興味がないとおっしゃるのですか…?」
メイはクロスの発言に、ショックを隠せないようだ。
「(はあ…)あのね…。」
メイが変な思考回路をしていたようなので、修正しようと言いかけた所で、ナタリアから言われてしまう。
「門の近くで、言い争っていても仕方ないわ、ギルドに行きましょ。」
「………。それもそうだね。ギルドに行こう。」
ナタリアは先に歩き出したので、クロスもそれに続く。
メイは、とぼとぼとクロスの後をついて来ていた。
今から長い間一緒なのに、旅立ちの初っぱなからこの調子では困るので、一応フォローを入れておく。
「メイに興味が無い訳じゃないんだよ?一応(一応をかなり強調し)仲間な訳だし、ナタリアのことを知っておこうと思っただけだよ?」
「ナタリアは、火属性と土属性で、魔法力と魔力は私並みです。筋力や速度はマリーに似ています。」
いつの間に、ナタリアの情報を知ったのか、メイは平然と答える。
「えーっと…。」
「何してるのよ!早く入るわよ!」
ナタリアは、ギルド前でこちらを見て急かしてくる。
「仕方ない…行くか…。」
「はい。」
クロスはメイとナタリアを伴い、ギルドへと入っていった。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
ギルドの中には、冒険者がたむろしていた。
前回よりも少し多いように感じる。
とりあえず、依頼の報告をするために、報告受付に向かった。
報告受付にて、見知った顔を見つける。
「マードックさん、こんにちは。」
「やあ。クロス君、こんにちは。今日はどんなご用かな?」
マードックは、数日前の傷が全く無くなっており、何事も無かったように見えてしまう。
「今日も手紙の配達ですよ。はい、これです。」
クロスは、袋から手紙を取り出して、マードックへと渡した。
「これは、ギルドマスターへだね。」
マードックは、手紙に添えられた依頼書を確認して頷くと立ち上がった。
「しばらく待っててくれ。」
マードックはそういうと、ギルドマスターの居る、奥の部屋の方へと行ってしまった。
マードックは部屋に入ったが、すぐに出てきた。
「すまないが、クロス君。ギルドマスターのところへ行ってくれ。」
「わかりました。」
手紙の中身を読んだにしては早すぎるので、恐らく違うことで聞きたいことがあるのだろうと予測する。
(面倒なことじゃなければいいなぁ…。)
「従者二人連れてても大丈夫ですかね?」
「大丈夫だと思うよ。色々と聞きたいことがあるんだろうし。…まあ一人、見たことが無いけど、従者なら構わないだろう。」
マードックは、ナタリアを見つつ少し悩んだが、結局は一緒に行くことを勧めた。
受付内に入り、奥のギルドマスターの部屋へと向かう。
「クロスです。」
ノックをして、中のギルドマスターへ来たことを伝えると、声が返ってきた。
「入れ。」
前回と一緒で、渋みのある声が聞こえる。
「失礼します。」
クロスは、従者二人を従えて部屋へと入っていった。




