42話 旅支度・披露宴
ギルドを後にして家に帰り、旅の支度をする。
支度と言っても、必要そうなものを魔法で収納するだけなので、労力はかかっていない。
ただ、考え無しに魔法を使用したため、だいぶ魔法力が減ってしまったが…。
クロス
ランク 1
魔法力 41722/72000
筋力 27
魔力 無5/時4
速度 28
状態 普通
金銭 0リラ
支度をしていて気付いたが、ナタリアは、空いていた部屋にて寝泊まりするつもりだったのか、旅行鞄らしきものが部屋の隅に置いてあった。
中身がわからないが、メイと一緒の時には見かけなかったので、ナタリアの所持品と思われる。
一応魔法にて空間に放り込み、ギルドへと向かう。
ギルドでは、未だに女性たちが話し合っており、書記をしていたはずのメイも交ざっているようだった。
ギルドに入ってきたクロスを見て、母親が話しかけてくる。
「あら?クロスどこに行ってたの?」
「家に一旦帰ってた。それよりも、そろそろ二人は移動する時間じゃないの?」
時刻は、昼まで後一刻程しかない。
クロスの言葉で、エレンは今の時刻に気付いたようで、移動を開始する。
もう一人の主役は、クロスの言葉に絶望感を顕わにしていた。
「ギル!とりあえず手紙はいいから移動しましょ!」
「手紙は書き終わった。しかしスピーチが…。」
「その場の勢いよ!急ぐ急ぐ!」
エレンは、いつもの間延びした喋り方をせずに、ギルドマスターを追い立てる。
二人は、裏口から外へ出て行ってしまった。
「さてと、私たちも戸締まりするわよ。」
「了解。」
昨日と同じように、ギルド内の窓を閉めていき、入り口に伝言板を下げる。
ギルド内に入ると、二階から母親とメイが丁度降りてくるところだった。
「ナタリア。一階の部屋の中を確認してくれた?」
「はい。戸締まりは出来ております。」
一階はこれにて、裏口以外は戸締まり完了である。
「二階の戸締まり出来たけど、一階はいいかしら?」
「うん。出来てるよ。」
「では食堂に行きましょう。」
母親について、三人はギルドを出る。
裏口に鍵をかけて、表通りに移動すると、既に宿屋(食堂)の前には、村人たちが集まっていた。
このように集まっているところをみると、この村にもこれだけ人が居るのだと、少し感傷的になってしまう。
集まっていた村人に話を聞くと、まだ準備が出来ていないようで、女性数名で準備をしているようだ。
しかし、それも後少しのことで、今の料理運びが終われば、準備完了とのことだった。
しばらく端っこの方で待っていると、エドとリリーがこちらを見つけて近寄ってくる。
「よう。クロス!」
「こんにちは。クロス。」
「やあ。久しぶりだね。リリーは元気にしてた?」
エドには、町へ向かうときに会ったが、リリーに会うのは一年振りくらいである。
背丈はあまり変わらないが、伸ばしていた髪を切っている。
前は地味に見えていたが、今は顔がしっかりと見えているため、明るく感じる。
「私は元気。…クロスに聞きたいことある。」
リリーはクロスの後ろを気にしているようだ。
「後ろの人たち誰?」
リリーに言われて気付いたのか、エドもクロスの後ろを見る。
「色々あって、二人は僕の従者になってるんだ。」
「二人もかよ!」
「(浮気…。)」
リリーのボソッと呟いた言葉に反応してしまう。
「違うんだ!僕が望んだ訳じゃないんだ!信じて!」
「そうです。望んではいません。求めただけです。」
「そうそう求め…何言ってるのさ!」
エドは面白そうにクロスとナタリアのやりとりを見ており、リリーに至っては白い目でクロスを見ている。
「勘違いしないでね!ほぼ半強制的だったんだよ!」
「そうです。半強制的に従者にさせられただけです。」
「もう余計なことは話さないで!」
従者二人は嘘は言わないが、誤解を招く言い方をするのでたちが悪い。
「まあ、落ち着けよクロス。」
「(はあはあ)ふう…。ごめん。後ろの二人は気にしないで。話は変わるんだけど、僕は、今日の披露宴が終わったら、この村を出るよ。」
「えらく急だな。」
「なにかあったの?」
「従者が二人となると、今のままじゃやっていけないから、ギルドランクを上げることにしたんだ。」
「この村の依頼じゃだめなの?」
「そうだ。この村の依頼を全部クロスがやればいいじゃないか。」
二人はギルドへは顔を出さないため、依頼についてよく知らないようだ。
「この村の依頼はね、配達や採集が殆どだから、上がっても内容的にランク3が限界だし、時間がかかるよ。」
三人で話していると、村人たちが食堂へと入っていく。
「準備終わったみたいだね。」
「行こうぜ。」
「そうね。」
入り口の前で待っていた人は、全員が中に入る。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
中では、一番手前が主役席になっていて既に座って入ってきた人たちに手を振っている。
手を振っているのはエレンだけだが…。
最後の方に入ったためか、空いている席が奥の隅の方しかない。
一番前の席には、ちゃっかり母親が座っていた。
奥の席に座ると、披露宴が始まった。
司会は女将で、二人のこれまでについて、熱く語っているが、どこまで本当なのか不明である。
語りが終わったところで、ギルドマスターからのスピーチに変わる。
しかし、ギルドマスターの歯切れは悪く…。
「あ~…、なんというか…、その…。」
流石にここまでくれば、開き直ればいいものを、未だに事態についていけていないようだ。
なかなか進まない新郎に、皆のイライラが溜まってきた頃、とうとうヤジが飛び始める。
「黙れ!もういい!お前ら俺を祝いやがれ!乾杯だ!こうなったら呑むぞ!」
吹っ切れたようだ。
司会進行も気にせずに、乾杯をしてしまった。
しかし、みんなはやっといつも通りになった、と言う感じで乾杯を行う。
そこからは、呑めや食えやの大騒ぎが始まった。
新郎新婦も最初のテーブルから、みんなのテーブルに移動し騒いでいる。
祝いの席を肴に、みんな飲み食いしたいだけではないだろうか。
子供グループは、端っこの方で固まって食事をしていた。
そこに、リューイの母親が来る。
よく見ると、母親の服を掴み、リューイが付いてきていた。
「うちのリューイもお願いね。」
そういうと、リューイを置いて飲みにいってしまう。
(未だにトラウマになってるのか…。)
リューイは、ベアクローの一件以来、未だに信頼出来る人から離れられないようだ。
リューイは少し困惑していたが、クロスの横に椅子を持ってくると、そちらに腰を降ろした。
「リューイ、家の手伝い慣れた?」
リューイの家は雑貨屋で、香草を使ったものや、荷物の管理の手伝いをしていたはずだ。
「うん。今は帳簿の付け方を習っているところ。」
雑貨屋に行くと、親の横に座っているリューイの姿を見かけることが多かったので、心配したが、手伝いはきちんとしていたようだ。
その後、周りの騒ぎが落ち着いてきた頃に、女将が声をかけてくる。
「クロスありがとね。あんたの捕ってきた鳥は大好評だよ。」
「喜んでもらえてなによりです。」
「そろそろ締めようと思うけど、あんたたちしっかり食べたかい?」
「腹一杯!」
「いただきました。」
「食べました。」
「食べた。」
エド、リリー、クロス、リューイと答えていく。
女将は満足そうに頷くと、前の方の席に移動した。
「最後に新婦のスピーチで閉めるから、聞き逃すんじゃないよ!」
「「「お~!!!」」」
「みなさん、この二日間私どものために、貴重な時間を割いていただきありがとうございます。これからは、ギルと共に歩んでいきます。その中で色々とあるでしょうが、皆さんのお力添えを、何卒よろしくお願いします。」
スピーチが終わると、みんなで盛大に拍手を行う。
それで、披露宴は終わりとなった。




