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33話 捜索・疲労

 ギルドを出ると、日は傾きもうそろそろ夕刻になりそうだった。


 家に帰る前に父親たちを探すことにする。


 普通に考えれば、宿屋か教会のどちらかしかない。


 間違っても雑貨屋には行かないだろう。


 ギルドから近い順番に見ていく。


 まずは宿屋からだ。


 宿屋はいつもどおり食堂の準備に取りかかっている。


 もし連れ込まれたならば二階に居るはずなので、テーブルを拭いている店員に尋ねてみた。


「すみません。」


「あら。クロス君じゃない。どうしたの?」


「ここにギルドマスターたち来ませんでしたか?」


「来てないわよー。」


 話しながらも、テーブルを手際よく拭いていく。


「そうですか…。お邪魔しました。」


「はいはーい。またきてねー。」


 店員に見送られて宿屋を出る。


 教会は宿屋よりも気持ち遠いが、そちらへ行ったのだと思い歩き出す。


 教会に入るが、いつもと変わったようには見えない。


 入ってすぐの大ホールには誰も居なかったので、奥へ歩みを進める。


 しかし、中は静まりかえっており物音すら聞こえない。


 クロスは部屋全てを探すのも面倒なので音を聞くため、小さな音すら聞きのがさないように、聞き耳を立て神経を集中するが静かなものだ。


 そんなときに、教会の入り口の扉が開く。


 入ってきたのはシスターだった。


「あら?クロス君どうしたの?」


「シスターいいところに。ギルドマスターきませんでしたか?」


「ギルドマスターなら来てないわよ?」


 シスターの言葉に愕然とする。


 宿屋か教会以外に人を運ぶところなんて思いつかない。


「そういえば、ノーラさんを連れてどこかに走ってたみたいだけど…。」


 シスターの言葉に、父親たちの行方の検討がつかず途方にくれていたが、シスターは貴重な目撃者でもあったようだ。


「どこに向かったかわかりますか?」


「雑貨屋さんから見た限りでは、こちらの方に来ていたはずなんだけど…。ごめんなさいね。場所まではわからないの。」


 方向がわかっただけでも充分である。


「いえ、充分です。ありがとうございました。それでは失礼しますね。」


 こちらの方向に走って行ったとなると、教会以外で思い付くとなれば、実家だろう。


 何故わざわざ実家に運んだのか不明だが、母親に用があったことを考えれば、なんとなく推察は出来る。


 実家に着くと、見るからに変わり果てた玄関に遭遇した。


 扉の取っ手は取れていて、扉が吹き飛んでいる。


 扉の飛んだ先を見ると、家の中の家具にぶち当たったのか、家具も一部が壊れていた。


(これはひどい…。)


 家の中に入ると、父親とギルドマスターの二人が片付けをしていた。


「おぉー!丁度いいところに!」


「これで助かった!」


 二人はなにやら喜んでいるようだ。


「お断りします。」


 二人はぴたりと動きを止めると、首から上だけをゆっくりとこちらへ向けてきた。


「もし何か頼まれてもお断りします。」


 クロスはそのまま奥の部屋へと入っていく。


 シュウは元クロスの部屋に寝かされていた。


 部屋の中には母親もいて、経過を観察しているようだ。


「ただいま。」


「おかえりなさい。部屋は片付いてた?」


「部屋はまだまだだね。」


 母親は溜め息をつきつつ立ち上がる。


「クロス。少しここをお願いね。」


 言葉は優しいが、有無を言わせぬ迫力があるうえに目が笑ってない。


 父親たちの行動にかなりお怒りのようだ。


 さわらぬ神にたたり無し。


 父親たちをフォローせずに見捨てることにした。


「わかった。」


 首を縦に振り了解する。


 クロスとしても父親たちが怒られるのは確定しているので、少しだけでも和らげるべく行動に移す。


 母親が扉に手をかける前に時をとめた。


 母親をかわして部屋を出る。


 父親たちがちまちまと、掃除をしている場所以外を箒で掃いていく。


 こんな時、時間を止めていると埃が舞い散らずに便利である。


 途中で扉の状態を確認してみた。


 扉は蝶番が壊れているため、簡単に直りそうにはない。


 扉の事は諦めて、掃除の続きを行う。


 運がいいのか悪いのか、食器は無事だったが、棚が無事ではなかった。


 一通り掃き終わり、扉も外に立て掛けておく。


 これで、最初よりはまだましだと思われた。


 後は父親たちの目の前と扉・棚の修理くらいである。


 部屋へと戻り時を戻す。



クロス

ランク 1

魔法力 9756/72000

筋力 26

魔力 無10/時4

速度 28

状態 普通

金銭 0リラ



 シュウを観察すると、ここに運ばれる前よりも顔の血色は良いように見える。


 部屋の外では二人がお叱りを受けているようだ。


 母親の怒鳴り声が聞こえる。


 一刻ほどだろうか、部屋でぼーっと待っているとする母親が戻ってきた。


「おかえり。大変だね。」


「まったく!あの二人は昔からがさつ過ぎるわ!」


 未だにお怒りのようだ。


 早急に離脱しないと愚痴を延々と聞かされてしまう。


「母さん。そろそ…「聞きなさい!」…はい…。」


 そこから愚痴という名の昔話が始まった。


 クロスとしては、この時ほど周りの時間を早めたいと思ったことはない。


 最終的には昔話から出会いの話になり、段々惚気話になってきて、それに合わせて母親の怒りもおさまってきた。


 外を見ると空は赤らみ完全に夕刻を示している。


 母親の愚痴相手という精神力を削る出来事で、こちらも思考力が落ちているようだった。


 母親は機嫌が良くなったことで、周りが見えてきたのかこちらの状態を見て、家に帰って休むように言ってくる。


(疲れた…。眠たい…。)


 家に帰るため部屋を出ると、父親たちが扉の修理をしていた。


 父親の顔には紅葉の手形がくっきりと残っており、ギルドマスターは渋い顔をしている。


 自業自得なので気にせずに素通りした。


 二人はかなり何か言いたそうではあったが…。


 家に帰り着くと、メイが夜食の準備をして待っていた。


「お疲れさまでした。」


「精神的に疲れたよ。」


 言ってから席につく。


 そこで、メイからおしぼりを貰い、手を拭き食事にする。


 昨日も食べたが、メイの作る料理はおいしかった。


 食べ終わり、メイが食器を片付けている間に最近疎かになっていた魔法の練習を行うことにした。


「ちょっと外で魔法の練習してくるよ。」


「だいぶ暗くなっておりますので、お気をつけください。」


「わかってる。」


 外に出て、残った魔法力で無属性の強化を行う。


 無属性魔法で自分の体を早くし、父親から習った剣術や体術を相手を意識しながら練習する。


 かなり集中していたせいか、眠気にも負けずに練習していると、途中で体中の力が抜けていく。


(あ…カードで魔法力の確認するの忘れてた…。)


 カードを確認しようとカードに触れたところで意識が途切れた。


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