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3話 親・目標

 目を開けると神父?と一組の男女がこちらをのぞき込んでいた。


「黒と…灰色…か?」


「神父さまこの瞳の色は一体?」


「初めて見る瞳じゃの。…とりあえず、水晶の部屋で世界への登録を行うでの。すまんが連れてきてくれんかね。」


「わかりました。」


 女性は返事を返すと、クロスを連れて男性と共に神父の後について行く。


 続いて入った部屋には、中央に大きな黒水晶が置かれていた。


 黒水晶の表面は、磨かれて鏡のようになって、こちらを写している。


(こんな顔をしてるのか…。)


 この時初めて自分の顔を見た。


 東洋人の顔とは違い、抱かれている女性と同じような西洋系の顔立ちをしている。


「水晶の空いてるところに、その子の手を触れさせて、名前の後に『ゼーゲン』と唱えれば、世界への登録は完了じゃ。」


 神父は水晶に手を置きながら言ってきた。


「分かりました。…ではいきますね。」


 そういうと俺の手を水晶に触れさせ名前を呼ぶ。


「《クロス》『ゼーゲン』!」


 魔法に反応したのか、頭に魔法への情報が流れてくる。


 『ゼーゲン』:世界・カードへの記入を行う【記入には神父の立会が必要】


 また、名前を呼ばれたことで、水晶には文字が浮き出てきた。



???

??? ?????/?????

?? ?

?? ???/???

?? ?

?? ????? ??



 残念なことに何が書いてあるのか分からない。


 類推するに自分の名前とステータス的なものだと考えられる。


「あ~。(見えないな…。)」


「無と時…、それに時の管理者とは一体?」


(無と時って書いてあるのか…。時の管理者は、あいつの一部って言われてたから納得だな。)


「なんだ…この魔法力は…?」


 男性は絶句している。


「黒については無属性だと分かるが、灰色は時のようじゃの…。時属性についてはわしがここに勤めるようになって初めてじゃし、協会伝手にこちらで調べておくよ。」


「よろしくお願いします。」


「それでは、…『ヴォール』。幸多からんことを。」


 『ヴォール』:対象の頭にかざして詠唱することで、対象者に精神的安らぎを与える【神官専用】


 神父はクロスの頭に手をかざし、魔法を詠唱すると神父は部屋を出て行ってしまった。


「とりあえず、神父さまが調べてくれるみたいだし、家に帰るか。」


「そうね…。それにしても時属性かぁ。魔法についてどうやって教えてあげればいいんだろう?」


「それも含めて、家で今後の事を話そう。」


 それから三人で家に帰った。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 家に帰ってからは母乳を飲み、いつもの暖かい寝床に寝かしつけられた。


 これから今後のことの内容を聞くために、起きていようとしたが、努力の甲斐なく寝てしまう。


 その日以降も、特に前とあまり変わりなく、平穏な生活が続いた。


 その間に分かったことは、部屋の配置とたまに知らない女性たちが昼間に来るくらいである。


 クロスはその女性達に、散々おもちゃにされまくった。


「あーあー!あーあー!(ほっぺつつくな!手とか足ひっぱんな!)」


 そんな事が続いたある日、やっと寝返りをうつことに成功する。


(これだけのことに体力を結構つぎ込むとは…。)


 寝返りが出来るようになったので、反復練習していると母親(やっと確信が持てた)に抱きかかえられた。


「寝返りもうてるようになったのね。帰ってきたら教えてあげなくっちゃ…。そろそろお外の散歩に行きましょうね。」


「あ~あ~あ~!(やっと外を見れる!神殿からの帰り以外は見れなかったし楽しみだな!)」


「嬉しいのかな?これからは天気の良い日は散歩しましょうね~。」


「あ~!(賛成!)」


 この日から散歩も日常生活に組み込まれていった。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 ここは町というよりも村のような場所で教会を中心に家が建っている。


 村は街道沿いにあり、奥に川がありそれに沿うように畑が続いていた。


 そして川のさらに奥には森が広がっている。


 村の中の店としては、雑貨屋兼食料品や宿屋・鍛冶屋があった。


 他にも店はあるかもしれないが、行ったことが無いため分からない。


(うちの親は後からこの村に来たのかな?)


 家は街道から教会を挟んで反対側に位置しており、教会から川にかけての家が街道から教会間にある家よりも新しいように見える。


「クロス。今日はお父さんが働いている所にいこうね~。」


「あ~。(一体なんの職業だろう?)」


 母親は教会の方に向けて歩き始めた。


 そして教会に行くのかな?と思っていたが、教会を通り過ぎ、さらに雑貨屋をも通り過ぎていく。


(このままだと街道に行ってしまう。隣町とかそんな感じかな?赤ん坊を連れて行く散歩としては遠いような気がするけど…?)


 すると母親は、村の入り口横にある建物の裏に回ると、裏口から入っていく。


(初めて入るな…表の入り口は大きかったし何かの店かな?)


 中に入ると奥には、椅子と机がいくつかあり、受付のようになっていた。


 母親はそのまま受付の裏側へ近づいていく。


 ここから見ると、表の入り口の両脇には、いくつか机があり数人が座って何か話し合っている。


 どうやらここは、時の管理者がいっていたギルドのようなもののようだった。


(親父はギルド職員なのか?)


「こんにちはエレン。カインはちゃんと仕事してる?」


「こんにちは~ノ~ラ~。カインは~暇そうに~知り合いと話してるわ~。今日も~依頼が少ないから~私の方も暇なんだけどね~。お茶でも出すから~その間受け付けお願い~。」


「分かったわ。久しぶりだから忘れてなければいいけど。」


「大丈夫よ~。ついでに~あっちにも~声かけてくるから~。」


 そういうとエレンは、仕切りをいくつか超えた先に居る父親の方へ向かって行った。


(見た目はクール系美人さんなのに喋り方があれだな…。ん?…あの人少し耳が尖っているような?)


 エレンの後ろ姿から耳が見えたが、耳の先がとがっているように見えた。


 そのエレンを見送り、受付にて母親と一緒に待っていると、父親が声をかけてきた。


「よっ!来たのか。クロスはおりこうさんにしてたか?」


 父親はクロスを抱き上げると高い高いをし始める。


(失敗して落としたりしないだろうな!?)


 一人ハラハラしていたが横からの声で助かった。


「クロスが怖がってるじゃない。もう!」


 父親からクロスを奪い取って抱きしめてくる。


(抱きしめてくれるのは嬉しいけど、苦しい…。)


 そんなことをしていたら、エレンが飲み物とお菓子を持って戻ってきた。


「誰か来た~?」


「誰も来なかったわ。」


「じゃあ~お茶しましょ~。」


「エレン、気のせいかもしれないんだが…コップが二つにしか見えないんだが?」


 机の上を確認すると、確かにコップが二つしかなかった。


「だって~誰かが~受付しなくちゃいけないし~。まさか~ノーラに受付させる気~?」


 エレン自身がしないことは確定なようで、母親を引き合いに出す。


「分かったよ…受付してるよ…昼前は基本暇だしな…。」


(親父へこむなよ…。)


 それからは、エレンと母親は談笑しながら昼くらいまで過ごした。


 昼になると階段の方から、父親並みに大きな人が降りてきた。


「そろそろ飯にしようか!おっ!ノーラ久しぶりだなっ!元気そうでなによりだ!」


「ギルドマスターもお元気そうでなによりです。」


(このでっかいのがギルドマスターか。暑苦しそうだ…。)


「オレが留守番しとくから飯でも食ってこい!」


 大きな声を出しつつ空いている受付席に座る。


 それがいつものことなのかエレンと一緒に父親と母親も席を立つ。


「行ってきま~す。」


「それではお先に失礼しますね。」


「んじゃオレも失礼して。」


「カインは早よ食って戻って来いよ!」


「オレだけかよ!」


「こっちも早く飯食いたいしな!オレが一人で受付するんだぞ…当たり前だろ?」


(職員優先か…見た目に似合わず優しいな。)


「はぁ…わかったよ。」


 四人はギルドを出て宿屋に向かった。


 宿屋は、一階が食堂になっており、二階が宿泊用の部屋となっているようだった。


 四人は空いている席に座り、カインが近くに来たおばちゃんに向けて手を振る。


「いらっしゃい。ノーラはここで食べるのは久しぶりだね。今日はなんにするんだい?」


「今までこの子がいたからなかなか外に出られなくって。注文は日替わりね。」


「同じの~。」


「オレはいつもので。」


「日替わり二つと肉盛り一つね。」


 三人が注文し終えると、おばちゃんはカウンターへ行き、奥の厨房へ向けて注文を入れた。


 注文の内容として、父親の「いつもの」が気になったが、くれば分かるか…と考え直す。


「その子が噂の子だね。それにしても珍しいねぇ。…この子にはご飯あげたのかい?まだならミル乳を出すよ?」


(ミル乳?聞いたことないな。うまいのかな?)


「ここに来る前にギルドであげたから大丈夫だと思う。食べ終わったら家であげるからね~。」


(そう言われると確かにギルドで飲んだけど…、またお腹空いてきたな…。)


 お腹は空いたが、回りに他の人も居る中でねだるわけにもいかず、家に帰るまで我慢することにする。


「それならいいさ。料理がくるまでしばらく待ってな。」


 そういうとおばちゃんはカウンターの方にいってしまう。


(宿屋の食堂って昼にも以外と人がはいるんだな。)


 食堂内を見回すと、剣や鎧を着た人が数人いた。


(あれは冒険者…でいいのかな?この世界は意外と物騒な世界なのかも…?)


 暫く観察していると、先ほどのおばちゃんが料理を持ってこちらに来た。


「はい、おまちどう。日替わり二つに肉盛ね。今日の日替わりは魚だよ。」


 テーブルの上の料理を見てみると、日替わりのほうは魚を蒸したものにパンとスープ。肉盛の方は野菜を炒めたものの上に焼いた肉のせてあり、それが山になっていた。


(肉盛かぁ…ボリュームもあっておいしそうだなぁ…早く肉食べたい…。それにしても親父は、仕事の日は毎日これを食べてるのか…?毎日食べ続けると胸焼けしそうな気がするけど…。)


 三人が食べている姿を見ていると、食べたくなる気持ちが高くなってきたため、考えないように寝ることにした。


 何かに胸を叩かれるような感覚に目を開けると、いつのまにか家の中で寝かされていた。


「あ~!(お腹すいた!)」


「あら。起きちゃったのね。ちょっと待ってね~ご飯あげるからね~。」


 乳を飲みつつこれからのことを考える。


(やっぱり楽しむとなれば世界を旅したいし、冒険者になるのがいいよな。…というか冒険者っているのかな?食堂に居た人たちが冒険者なのかな?)


 冒険者を見たときに、一人の目の色が両方とも同じであることを思い出す。


(あの人は祝福を一つしかもらえてないって事なのかな?あの時の話だと、一つしか貰えない人もいるみたいだし…。それにしても…早く大きくなりたいなぁ…自分で動けるようになったらまずは文字を覚えて…祝福や目…魔法のことについて調べよう。)


 今後やるべき方針を固めると、背中をポンポンと叩かれるうちにまた眠気に襲われ眠ってしまった。


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