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28話 森進入・溜息

 森の入り口は、ホース車が通った跡が残っていたため、とりあえず見逃さないように下を見ながら進む。


 時折顔に当たる枝や葉っぱを無視しながら進み、ホース車の置かれていた場所まで着くことが出来た。


 この時には周りは大分明るくなってきていたので、あの時の惨状がまだ残っているのがよく見えた。


 人だった肉片が少し残っており、辺りの地面や草木は血が固まりどす黒くなっている。


 また、匂いもこの辺りは風がないせいか、滞留していてずっと嗅いでいると気持ち悪くなりそうだった。


「ここまではわかったんだがな。この後がよくわからん。」


(ランタンの明かりだけでここまでこれるんなら、日が出ればこの後もわかるんじゃないの…?)


 二人の探索能力に若干呆れる。


「どっちの方向だ?クロス。」


 尋ねられたことで我を取り戻し、あの時のことを思い出していく。


「(ホース車の向きから考慮して…。)こっちの方だね。」


「よし!こっちだな!」


「よっしゃー!」


 元気いっぱいな二人は指差した方向へ爆走を始めた。


「ちょっと!途中で曲がるよ!ねぇ!聞いてるー?」


 流石に案内しろと言われて来たのに、方向を指しただけで突っ走る二人には呆れるしかなかった。


 着いてきていた四人も二人を見送り唖然としている。


「二人は疲れているようですので、このままにして…私たちだけでもアジトに向かいますか?」


「あぁ…そうだな。ここでこうして立っていても仕方がない。とりあえずその話は置いておくとして、君はアジトの場所は知らなかったんじゃないのか?」


「そうよ!あの時知らないって言ったのに今更なんなわけ!?」


 代表の男性の質問を皮切りに、今が好機と思ったのか女性の方は責め立てる。


「確かに知らないと言いましたよ。同じような森の中で道順なんて覚えられるわけがありません。」


「はあ?なら今は何しにきてるわけ?」


 女性は心底理解出来ないという風に、首を傾げている。


「しかし大体の辺りならつきます。」


「こんな森の中でどうやってあたりなんかつけるのよ?」


 最初に質問してきた男性は興味深げに、責め立ててきた女性は胡散臭げにこちらを見ている。


「まず、前提が間違っているようです。アジトは森の中ではなく、南の山の麓です。なので先ずはこのまま南下し、山まで着いたら山沿いに、先ほど二人が走って行った方向へ行けばそのうち着きます。」


「なるほどね。聞いていた情報が断片的だったために分からなかったわけか…。しかし、ツヴァイ家から聞くわけにもいかないし、あの時に情報の正誤について君に確認したほうがよかったな。」


 四人組も納得したようで、今後の話になる。


「では、このまま南下して山の麓に行こう。」


「ん~。二手に別れて、離れた二人組を追う必要があるんじゃない?」


「ここには特殊とはいえベアクローがいるんだから、団体行動するべきだと思うが?」


「それなら先ずは、全員でギルマスと合流しない?」


 代表の男性の提案で決定したと思ったが、他の三人がそれぞれの意見を言い始める。


(これをまとめてきたのか…。)


 少し男性を感心しつつしばらく様子をみる。


「揉めていても仕方在りません。みんなの意見をまとめますね。まず合流が先かアジトが先かです。合流の場合には、あの二人を探しにかなり遠くまで行かなければならないかもしれませんし、その後アジトとなると、町のギルドへの報告が遅れます。アジトを先に調べ、合流を後にした場合は二人がどこに行ったのかが恐らく完全に不明になるため、二人を置いて町へ向かうことになります。二人はランク5なので、もしベアクローと出逢っても、十分に生き残れるはずです…が、心配は残ります。」


「で?結局どうするのよ?」


「おれはもうなんでもいいぜ。」


「私は合流の方がいいな。もしベアクローと出逢っても安心出来るし。」


 三人とも言いたい放題である。


 女性の一人は結論が見えないので先を促し、もう一人の女性は自分の意見を曲げる気はないようだ。


 もう一人の男性は、長い説明に飽きたのか、早く決めてくれれば何でもいい、という態度になってしまった。


「私は早くアジト見つけて帰りたいわ…。ランク3以下しかこの場には居ないけど、ここにいるベアクローに関しては、集団で居れば襲って来ないみたいだし。」


 話の続きがなかなか出ないせいか、女性が更に自分の意見を言い出す。


 この調子では、男性が話をまとめようにも、他の三人の意見がまとまらなければ先へは進まない。


(このまま居ても仕方ない。話合いも進みそうにないし提案してみるか…。)


「すみません。」


「なんだい?」


 話が進みそうに無かったので提案する。


「僕が二人を追いますので、四人はアジト探しをしてはいかがですか?」


「さっきの話を聞いてなかったの!?この森にはベアクローがいるのよ!」


「その通りだ。一人でなんて行かせられない。」


 よく話す二人からは危険と注意され、もう一人の女性はその意見に頷き、もう一人の男性は探るようにこちらを見ている。


「えーっと…。盗賊を追跡したのも討伐したのも一人だったんですが…。」


 四人は黙り込んでしまい、目でアイコンタクトを交わしているようだった。


「やれるんだな?」


 探るように見ていた男性が沈黙を破って聞いてくる。


「ええ。父親たちの言い方を真似るのはあれですが…、問題在りません。」


「わかった。」


「おい!シュウそんなこと簡単に決めれないだろ!」


(シュウって言うのか…、そういえば名前聞いてないな。)


「そうよ!何かあっても責任もてないわよ!」


「せめて一人はついていくべきじゃないかな~?」


「やれると言ってるんだからやらせてみればいいじゃないか。そもそも…。」


 これ以上無駄な話を続ける気も聞く気も無かったのでさっさと行くことにする。


「足手まといは必要ありませんので行きます。それでは。」


「「「「!?」」」」


 尚も何かを言おうとしている四人を置いて、父親たちの後を追う。


(今の思考力の鈍ったうえに、考えが単純な二人ならひたすら真っ直ぐ進んでるはず。)


 後ろの人たちが完全に見えなくなってから時を止める。


 かなりの爆走だったのか、枝が折れていたり、地面に足跡が付いていたりしたが、その足跡が地面だけではなく、木などにもついていたため、あの勢いのまま進んでいることを知り、流石にすごいな…と感心する。


 時を止めて半刻程度進むと、やっと二人の姿が見えてきた。


 近くに行き時を戻す。


「止まってください!」


「む!」


「ん?」


 近くで叫んだことで止まったかに見えたが、二人は走り続けたまま後ろではなく双方を見て言った。


「相手を止めて自分だけ先に行こうとはずるいぞ!」


「そっちこそ!止まれといいながら走り続けてるじゃないか!」


 何か最初の目的からはずれ、競争をしているような感じだった。


 二人の言動を見聞きしていると脱力感が襲ってくる。


 後ろからでは効果が無いため、時の流れを変えて二人を抜き去る。


「(時よ。しばしの間、時の流れを変えたまえ。『アインスゼグンデ』)」


『アインスゼグンデ』:世界の時の流れを四分の一にする【時属性10】


 抜き去る時に驚いた顔をしていたが気にしない。


 クロスは一気に二人との距離を離し急停止すると、時の魔法も同じく解けた。


 二人もすぐに追いつくとともに止まり、辺りを探り始める。


「どこだクロス?」


「見当たらないな。」


 この暴走二人組みを見ていると溜め息が止まらない。


「(はあ~。)とっくの昔に通り過ぎましたよ。」


「「なにぃ!?」」



クロス

ランク 1

魔法力 59012/72000

筋力 25

魔力 無10/時4

速度 28

状態 普通

金銭 0リラ


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