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27話 起床・強引

 朝目覚めると周りはまだ真っ暗だった。


 しばらくじっとして目を暗闇に慣らしていく。


 段々目が暗闇に慣れてくると、クロスが寝ている同じベッドには、メイが寝ているのが見えた。


 今回は抱き枕にはならずに済んだようだが、すぐ真横にいる。


 結局昨日は、裸のまま一緒のベッドに入り寝ようとしたが、メイに運動と称した行為を求められ、そのままの流れで寝てしまったのである。


 部屋もそれほど広くないためか、部屋には昨日の行為の残り香が充満していた。


(折角それぞれ部屋があるのにこれじゃ意味がないな…。)


 起きたのは、暗闇からもわかるように夜明け前だったのに加えて、ランプの火も消えていた。


 この時、いつもより早く起きたのは、もしかしたら何かの前兆を感じ取ったのかもしれない。


 メイを起こさないように気を付けながら、ランプに火を灯し服を着ていると、誰かが家の扉をやや乱暴にノックしてきた。


(こんな夜明け前に誰だ?)


 ノックの音で目覚めてしまったメイに、服を着て待機しておくように伝えて、ランプを持ち部屋を出て家の入り口へ向かう。


 扉に近づき、未だに続くノックへこちらが起きてることを告げると音は止み何事かを言っている。


 ランプの火があるとはいえ、外で待ち受けている人の声に聞き覚えはあるが、こんな時間に訪れることに心当たりが無く、用心のために時を止めて見てみることにする。


 鍵を外し扉の外を確認すると、扉の向こうには人が二人立っていた。


 よくみてみると、手にはランタンを持ち、背には大きな剣を背負った父親と、同じく背に大きな斧を背負い仁王立ちをしているギルドマスターだった。


(こんな夜中に迷惑な…。そういえばこの二人誰かに呼ばれて出てたはずだよな…。一体なんの用だ?)


 二人とも、どこかへ戦いに行くと言わんばかりの格好であるし、昨日から寝てないのか目は血走っている。


 よほど危急の用事なのだろうと思い直し、一旦家へと入って時を戻す。


 改めて家の扉を開ける。


 扉を開けると同時に父親とギルドマスターの二人が家に入ってきた。


「先ずは話を聞きたい。」


「なんですか?」


 二人は椅子に座らずに入ってきた勢いのまま、いきなり話を始めた。


「街道の盗賊を討伐したのは本当か?」


「ええ。(今更その話か…。三日も前のことなのに…。情報伝達速度が遅いなあ。)」


 この世界の情報伝達速度の遅さに今更ながら呆れる。


「二十数人をか…。(しかもあいつを含めてか…。)とりあえず、今からそいつらのアジトに案内してもらうぞ!」


「えっと、まさか…ほんとーーーーーに今からですか?」


 クロスは嫌そうに確認してみるが、今の二人には効果がないようで、やる気満々で返された。


「もちろん!い・ま・か・ら・だ!」


 しかもいまからの部分を強調して言われた。


「南の森は、ベアクローが出るから立ち入り禁止だったのでは?」


 仕方がないので、南の森が危険な場所であることを思い出して貰おうと、理由を述べて止めようと遠回しに言ってみても…。


「問題無い!大丈夫だ!」


 今度は根拠の無い自信で返される。


「アジトの場所なんて、正確にわかりませんよ?」


 中途半端にしか覚えていないので、行っても意味がないことを告げても…。


「近くまででも構わん!ぐだぐだ言ってないでいくぞ!支度が出来たら出て来い!」


 と、結局行くことになった。


 部屋へ戻り、着替え終わっていたメイに、盗賊のアジトを父親たちと探しに行く事を伝えて準備を始める。


 武器防具を装備し終えてから、装備している合間にメイが素早く作ったサンドイッチをかじり、ミル乳で喉を潤す。


 一通り準備が出来たので、外へ出るとやっと日が出始めたようで、空が気持ちうっすらと明るくなってきているのが見えた。


 先に外で待っていた二人はかなりイライラしているようで、クロスを今か今かと待ちかまえている。


「よし!準備出来たな?いくぞ!」


「くそ!ねむてぇ!」


「昼ご飯はどうするの?(二人とも元気だな…。)」


「なんとかなる!」


「そんなん終わってからだ!いくぞ!」


「それだと保たないから食料持っていっ………。」


 こちらの返事をろくに聞きもせず二人は走り出してしまった。


 溜め息混じりに後を追いかける。


 二人とも全力疾走に近いのか、クロスと二人との距離は離されるばかりで全く追い付けない、またこのままでは追いつける気もしない。


 あまりにも後先が見えていないようで、こちらとの距離を全く確認しない二人に呆れる。


 離されたままだと着いたときに、何を言われるか分からないため、時の流れを変えながらついて行くことにした。


「時よ。時の流れを変えたまえ。『アインスゼグンデ』」


 『アインスゼグンデ』:世界の時の流れを四分の一にする【時属性10】


 先を行く二人に無理やり追いつく。


 その後、数分で目的地に到着すると、街道を通った際に挨拶を交わした四人組が待っていた。



クロス

ランク 1

魔法力 67420/72000

筋力 25

魔力 無10/時4

速度 28

状態 普通

金銭 0リラ



「おつかれさまです。ギルドマスターにカインさん。迎えに行っていただきすいません。」


「いや構わん。こいつはうちの村のもんだからな。」


「俺の息子だしな。てか動いてないと眠たい…。」


 二人はそう言うとクロスの頭を掻き乱す。


「休憩されてはどうですか?」


「俺たちのことはいい。そっちはどうだ?」


「こちらはギルドマスターやカインさんが、森に入って捜索している間の、街道の聞き込みと墓作りだけですから交代で充分に休憩しています。」


 父親たちは体力が底無しのようなので気にしないので四人組を観察する。


 薄暗くはあるが、男が言うように、四人は疲労しているようには見えなかった。


「ならいい、いくぞ!クロス案内だ!」


(強引グマイウェイだな…。)


「途中までしかわからないので、期待しないでくださいよ?」


「盗賊二十数人もやったんだ期待してるぞ!」


「そうだぞ!謙遜はよくないぞ!」


「それは戦闘であって捜索には関係ないよ…。」


「そんな話はどうでもいいからいくぞ!」


(どうでもいいわけないけどな~。)


 ギルドマスターと父親は、更にテンションが上がっているのかこちらの言った内容をよく理解していないようだ。


 その横では、先ほど喋っていた男が憐れみの目を向け、その他の三人は罰だと言わんばかりの顔をこちらに向けている。


 クロスは、盛大に溜め息をつきながら、後ろに六人を引き連れて森の中へとはいっていった。


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