26話 新居・掃除
ギルドから出て旧アイリの家に向かう。
家の鍵を開けて中に入ると、あれから誰も入っていないのか開けた瞬間に風が舞い込み埃が舞う。
埃の中を服で口元を覆いつつ家の中を見回ってみる。
あの頃とほとんど変わっておらず、家具類は残ってはいたが、食料は全く残ってはいないくらいだった。
(食料残してたら腐ってしまうし当然か。)
その後に家の状態を見る。
家は特に壊れたような箇所は特に見当たらなかった。
ただし、家具の上や天井付近をよくみると埃や虫の巣が見える。
(家に異常は無さそうだし、家具は一通り揃っているから、まずは家の中の掃除と食料の買い出しかな。)
メイには掃除を頼み、クロスは買い出しに出る。
(先ずは雑貨屋で食料と必要そうな物を買おう。母さんに鍵と一緒にお金も少なからず貰ったし。)
久しぶりに雑貨屋に行ったが、売っている物は昔からほとんど変わっていなかった。
肉と野菜それから、飲み物として酒とミル乳を購入し、雑貨として皿や楊枝、鍋や毛布などを購入する。
店から出て、購入したものを一旦新しく住む方の家に持って行った。
途中あまりにも持っている物が多かったので魔法で収納する。
周囲を見て、見られていないことを確認しまた歩き始める。
家に近づくと、家からは遠目からでもわかるくらいに、窓や扉が全て解放されていた。
近付いてみると窓や扉から埃が舞っているのが見える。
食料に埃が付かないように魔法で収納する。
(食べ物は余り入れて欲しく無さそうだったけど、これは仕方ないよね。)
帰ったら掃除は完了していた。
………ということを少し期待していたが、流石に無理だったようだ。
家の中は、家具も一箇所にまとめられ埃が舞っている。
その埃の中には、頭に三角巾のようなものを被り、手に箒を持って巣や埃を払っているメイがいた。
この状況では買ってきた食材を置くスペースがないうえに、置いたら埃まみれになってしまう。
しばらく成り行きを見ていると、メイはこちらに気付いた。
「クロス様戻られたのですね。すいませんが水を汲んできていただけませんか?埃を払った後に拭き掃除をしたいのです。」
「わかった。持ってくるよ。」
明るい内に掃除が終わるのか不安になりながら、水を汲みに川へ向かう。
周りに人が居ないことを確認し、魔法にて収納することにした。
しかし、川の水をほとんど吸い込むことが出来なかった。
(川だと大き過ぎるのかな?)
仕方ないのでやり方を変えてみる。
一旦桶で水を汲み上げ、それを魔法で収納する。
この方法は成功したので、それを何度も繰り返した。
十分水を収納したので、家に帰る。
家に帰ると、家具の配置は元に戻っていた。
「メイ。水は瓶の中に入れとくよ。」
「お願いします。」
瓶の中へ魔法で汲んで来た水を入れていく。
出すときは一回で済んだので余計な魔法力を使わずに助かった。
メイは瓶から早速水を桶に汲みなおすと部屋中の拭き掃除を始める。
クロス
ランク 1
魔法力 28248/72000
筋力 25
魔力 無10/時4
速度 27
状態 普通
金銭 0リラ
メイが拭き掃除をしている間に元の家から自分の物を取ってくることにする。
ギルドに戻って母親から家の鍵を貰い、今まで住んでいた家へ行く。
鍵を貰う時に、
「今日の夜はこっちの家で食べるわよ。」
と言われたので、
「わかったよ。」
と返事をした。
実家から自分の使っていた物を選り分け、必要そうな物だけを持ち、新しい家に帰る。
家は既に中がほとんど磨かれていた。
(一人でやったにしては早すぎないか?)
中では開け放たれていた窓を閉めているメイの姿がみえる。
「メイ。今日は母さんが一緒に夜ご飯食べようだってさ。」
「わかりました。」
てきぱきと掃除をこなしながら返事をする。
クロスは服などの小物類を部屋のベッドに置き、その後水瓶に再度水を満たし、食料を机の上に置いていく。
「薪を採ってくるよ。」
「お気を付けて。」
村を出て南の森から落ちた枝を拾う。
あまり奥に一人で行きすぎると、ベアクローに襲われる危険があるため街道沿いにて作業を行う。
薪になりそうな枝を十分に集めてから家に戻った。
(一回の食事分としてはこんなもんだろう。)
家に戻るとお茶の準備をして、メイが待っていた。
薪代わりの枝を釜戸横に重ねて置く。
その後メイに勧められてお茶を飲んだ。
お茶はすっきりとしていてほんのりと甘く、ツヴァイ家で少し飲んだあの熱いお茶と似ていた。
くつろいでいると辺りも大分暗くなってくる。
そんなおりに母親が荷物片手に現れた。
「クロス。今から作るから手伝ってちょうだい。あと鍵もね。」
「は~い。…メイは休んでなよ。」
鍵を母親に渡しメイに休んでいるように言う。
「いえ。お手伝いいたします。」
結局付いてくることになった。
実家に行き、三人で料理を作る。
一人がパンを焼いている時間に魚のムニエルを作り、一人がスープを作って、煮込んでいる間にサラダを作る。
そして余ったもう一人…クロスは台拭きや食器の準備をしていた。
(二人分の場所しか無いとはいえ、なんか手持ちぶたさだな。)
今日のでメイの家事能力の高さがよく分かった。
身の回りのことについては、父親と一緒で怠けがちなためメイはとても役に立ちそうだ。
そんなことを考えつつ椅子に座り待っていると、料理が出来た。
料理を食器に盛り付けてテーブルに運ぶ。
父親の分を盛ろうとしたが、遅くなるようなのでそのままにしておくように言われた。
改めて食事の際に、今後のことについて相談する。
現状でのクロスは、ギルド職員見習いのような立場の為、小遣い程度しか稼げていない。
メイを今後養うとなれば、狩りをするなり依頼を受けるなりそれなりに動かねばならない。
なので、ギルドの手伝いをしつつ、狩りや依頼を受けることになった。
食事を終えて片付けを行い、家に戻る。
結局実家を出るまで父親は帰ってこなかった。
新しい家に戻ったが、中は真っ暗だった為、少し明るいところに行き魔法でランプを出す。
さすがに魔法を何回も使っているためか、その様子を見てメイはかなり心配そうにしていたが、こちらが平気そうにしているため、何も言ってこない。
再度家に入り、寝室に向かった。
部屋に入ると、桶に水を汲んできたメイが入って来ておもむろに服を脱がしにかかる。
「えっと、何してるの?」
「体を拭くために服を脱がしているのです。」
前にもこんなことがあったが、これが普通なんだろうと思い直しされるがままになる。
脱ぎ終わるとメイも服を脱ぎ、体を隈無く洗われた。
「二人とも裸になる意味がよく分からないんだけど?」
「今日は二人とも埃まみれになっています。一人が服を着用したままでは折角洗ったのに汚れる可能性がある為脱いだのです。」
なんとなく納得できるような出来ないような理由を平然と述べる。
結局洗い終えるとそのままベッドの中へと入り二人とも裸のままで寝た。




