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25話 ギルド・説明

「今度こそ!…ゼーロー村へようこそ!」


 先ほど折角の雰囲気をぶち壊されたので村の入り口に到着してからもう一度言い直す。


「再度言う必要性をあまり感じないのですが?」


「言われたらなんか歓迎されてるって思わない?」


「クロス様以外の人をあまり必要としておりません。」


 メイは本当にどうでもいいようで、いつもの無表情なうえに口調まで冷たく感じる。


 生きるためにはある程度の人付き合いは必要であるが、メイに反論したら、証拠としてほんとに二人だけの生活にされそうで怖い。


「とりあえず、ギルドにいくよ。親もギルドにいるし。」


「ご両親に紹介していただける訳ですね。」


 メイはどこか嬉しそうだ。


 メイの言い方も何か含みを感じる。


「なにか別の意図を感じるのは気のせい?」


「気のせいです。」


 メイはピシャリと言い切る。


 ギルドに入り、受付に向かう前にギルド内を見回してから、依頼書にも目を通していく。


 中はいつも通り、テーブルに一人居るくらいでガラガラである。


 依頼書についても、この村からの依頼はほとんど無く、砦か隣の町の依頼ばかりだった。


 受付に行き、手紙を渡したことを報告する。


 受付に座っていたのはエレンで、受付越しでの対応にも関わらず、例の間延びした話し方だった。


「お疲れさま~。シュトラウスに~行ったんだよね~?」


「はい。手紙をギルドマスターに渡してきました。」


 話をしていると、エレンの後ろに母親もやってきた。


「お帰りなさい。ちゃんと渡せた?」


「心配しすぎだよ。手紙を届けるだけだなんだから。」


 母親とエレンはクロスの後ろへと視線をちらちら移している。


「はい。これシュトラウスの中央広場にある店のパンだよ。硬い方はマスターと父さんに渡してね。お土産については奥の部屋に置いておくから鍵貸して。」


 どうせ色々と聞かれると思い、先にお土産を置くことにする。


「そうね。…詳しいことを聞きたいし、奥の部屋に行きましょう。飲み物を準備するから先に行ってなさい。エレン受付お願いね。」


「わたしも~気になる~。」


「後で教えるわ。」


「絶対よ~。約束よ~。」


 エレンはかなり興味津々のようでかなり残念そうだ。


(どうせ夕方くらいしか人来ないんだし、受付は親父に任せればいいんじゃ…。そういえば親父どこいったんだ?)


 報告の窓口には誰も居なかったので、エレンの受付に行ったが、ここで父親の姿がギルド内に無いことに気づいた。


 部屋の鍵をエレンから受け取り、メイを引き連れて奥の部屋へと向かう。


 部屋の鍵を開けて中に入り、メイを中に入れて扉を閉める。


 そして母親が来る前にお土産を出して並べておくことにした。


「時よ。無よ。空間より引き入れたお土産を出したまえ。『トロイメライ』」


 床の上に陽炎が出て、消えたと見えた時には、シュトラウスで購入したお土産が現れていた。



クロス

ランク 1

魔法力 47248/72000

筋力 25

魔力 無10/時4

速度 27

状態 普通

金銭 0リラ



 さすがにメイも二度目は驚かなかった。


 クロスが土産物を出し終えると、メイは床に現れた土産物類を机の上に並べ始める。


 並び終えてから、立っておくのもなんなので、椅子に座るよう勧める。


 しかし、先に座るわけにはいかないとして、頑として座ろうとはしなかった。


 結局逆に椅子を勧められて座ると、机の椅子の配置を対面通しに分けて、一つの椅子を持つとクロスのすぐ横に置いて、その椅子に腰掛けた。


 それからすぐに母親が戻って来て、メイのことについて聞かれる。


「さて、詳しく話してもらいましょうか。」


「かくかくしかじかです。」


「「………。」」


 説明が面倒だったので言ってみたのだが、見事な沈黙で返されてしまった。


「なにか言ってくれないとボケたこちらが哀しくなります。」


「そういうことはいいから話しなさい!」


「メイ…お願い…。」


 結局説明をメイに丸投げしてしまう。


「では説明させていただきます。」


 長くなりそうなのはいやなので先に釘を刺しておく。


「簡潔な説明でいいからね。」


「わかりました。」


「とりあえず早く説明してちょうだい!」


 なかなか説明が始まらないことに、母親はイライラし始めたようだ。


 その母親に対してこの発言である。


「私はメイと申します。簡潔に説明しますと、私はクロス様に見初められ、また私自身も納得してクロス様と同伴し、今回クロス様のご両親に紹介していただけると聞いて、ここにいます。」


「えっ!?」


 母親は口を開いて唖然としていた。


「メイ!色々端折り過ぎだよ!その説明だと勘違いしちゃうだろ!」


「簡潔にとのことでしたので、要点を言ったまでです。間違いではありません。」


 あまりにも説明を端折っているため、これでは婚約者を連れてきたようである。


「確かに言った内容に間違いとは言い辛いけど…もういいよ…。僕が説明するから…。」


「左様ですか。」


 唖然としている母親を元に戻し、説明を始める。


 話した内容は、シュトラウスに行く途中で、盗賊に襲われていたメイたちを助け出したところ、助けた相手が家名持ちであったため、恩賞という名の監視役をつけられたこと、それらをカードの状態表示を交えながら話す。


「ツヴァイ家かぁ。…でもよく盗賊なんて倒せたわねー。…メイさんでしたか、私はクロスの母親で、ノーラと言います。これからはクロスのことをよろしくお願いしますね。」


 母親はメイに向き直り、今更ながら自己紹介を行う。


「はい。こちらこそよろしくお願いします。」


「で、自己紹介と説明が終わったところで相談なんだけど、メイはどこで寝泊まりしたらいいの?」


「私はクロス様の従者ですので、近くがいいです。」


 今住んでいる家は、部屋に余裕は無いはずなので聞いてみたのだが、そこにメイは更なる要求を入れたりしている…。


「そうね…。家には空いてる部屋なんてないし…。そうだ!空いてる家があるからそこに住んでみたら?」


「わかった。アイリの居た家だね。」


「そうそう。ほんとは十五歳の成人までには、新しく家を建てようとしてたんだけど早まっちゃったみたいだし。」


 アイリの居た家は、アイリが出てからしばらくして、一緒に住んでいた女性も出て行ってしまい、今はギルド管理となっていた。


「とりあえず今から住む家の片付けとかしてくるよ。…それはそうと父さんはどうしたの?」


 父親が見当たらず、少々文句も言いたかったので居場所を聞いてみる。


「昨日人が来て、ギルドマスターと一緒に出かけたわ。ギルドマスターにはそろそろマスターとしての自覚をして欲しいんだけど…。」


 母親は困った表情をし、溜め息を吐いた。


「じゃあ行くから、エレンさんへの説明お願いね。お土産は適当に分けておいて。」


 お土産を見て、今更驚いている母親を余所に、メイを伴い部屋出て、説明をして欲しそうなエレンに、今日から空いている家に住むから鍵が欲しい旨を伝え、鍵を貰い今から住む家に向かった。


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