23話 買物・準備
店を出てすぐに身体強化を行う。
「無よ。刹那の間強化したまえ。『ケヴァルト』」
『ケヴァルト』:自分の力が少し上がる【無属性10】
体に力が漲る感覚を感じると、有無を言わさずにメイを抱き上げ中央広場へと向かう。
酒場から一気に広場まで駆け抜ける。
途中すれ違う人が驚いていたが気にしない。
広場についてから、メイを降ろすと魔法は解けた。
クロス
ランク 1
魔法力 49248/72000
筋力 25
魔力 無10/時4
速度 27
状態 普通
金銭 0リラ
メイに見えないように、こっそりとカードで魔法力を確認する。
ふと視線を感じて前を見ると、メイがこちらをじっと見ていた。
「何かな…?」
「急いで酒場から離れたければ先におっしゃってください。(いきなりはビックリします!)」
何やら少し残念な感じを醸し出している。
「面倒ごとを見るのは好きなんだけど…、巻き込まれるのは嫌いなんだ。だからすぐに離れたくて…ごめん。」
確かに何も言わずに抱きかかえて走り出したら、いくらメイでも驚くかもしれないと思い直し謝る。
それを見たメイは、何も言わずにクロスを抱きしめて言い放つ。
「構いません!(クロス様可愛いです!)」
クロスは頭をメイの胸に押し付けられ、非常に苦しい思いをする。
しばらくもがいていると、メイは満足しまのか解放してくれた。
「とりあえず周りの店も開き始めたし買い物をしよう。」
「そうですね。どこまでもついて行きますが、手始めにどちらの店舗から回りましょうか?」
「いや…何処までもは…困る…んだけど…。」
メイはこちらの応えを待たず、また返答を気にせずにクロスの手握ると、昨日下見した店へと歩いていく。
入った店は結局一番近いところから回って行くことになり、各店で下見した際に選んでいた土産を購入した。
(これ…土産いっぱい買ってるけど、武器と防具買ったとしたら、貰ったお金じゃまともに何も買えないなぁ…。)
元々親としても宿の心配はほとんどしておらず、土産としてもパン程度を考えていたので十分足りると考えていたのだが、クロスの購入したものは全て合わせると十万リラ程度にはなってしまう。
土産物を購入し終わり、最後の店を出る。
土産物は、メイにも持って貰ったが、意外に多かったので魔法で収納することにした。
通行人から見えないよう人通りのない路地に入る。
(メイだけなら見せても問題ないかな?一応口止めしとくか…。)
「メイ。今から魔法を使うけど他の人には内緒だよ。」
「他言いたしません。」
「破ったら…この従者も無しだ。(むしろ話してくれたほうがカードの記載を消したことに対する言い訳しやすいかな?)」
「…分かりました。」
口約束ではあるが、メイが頷いたのでとりあえず先に進める。
「では始めるよ…。」
「時よ。無よ。空間へ土産物を吸い込みたまえ。『トロイメライ』」
『トロイメライ』:空間へ物を出し入れする【無属性10、時属性10】
土産物は陽炎へと吸い込まれる。
それを見ていたメイはいつもの表情だが、目だけを大きく見開いて固まっている。
クロス
ランク 1
魔法力 48248/72000
筋力 25
魔力 無10/時4
速度 27
状態 普通
金銭 0リラ
カード情報を確認する。
時の魔力が減ってから初めて合成魔法を使うが必要魔法力の減り具合も変わっているため算出式が分からない。
(いまいち分からないな…魔法力の減る量はある程度の固定値みたいなものがあるのかな?)
合成魔法のことを考えていると、メイが質問してきた。
「今のは初めて見ましたが何でしょうか?」
「魔法だよ。」
「それはわかるのですが…。」
メイにしては珍しく、言いたいことがまとまっていないようで、言いよどんでいる。
わざわざ説明する気も無いので、さっさとその場を後にし大通りへと戻った。
その後をメイも遅れずについてくる。
土産物を購入し、残りの買い物は昼食だけになったので、中央広場にあるパンを買うことにした。
「昼はパンでいいかな?」
「はい。中央広場に行かれるのですか?」
「そのつもりだけど?」
なぜメイが確認してくるのか分からない。
「もし裏通りに行かれるおつもりでしたら、スリに注意して頂こうと考えただけです。中央広場でしたら問題ありません。」
「ああ。そんなこともあったね。」
メイは、昨日行ったような裏通りに行くと考えていたようで、スリの心配をしていただけだった。
中央広場のパン屋は開店したてのようで、店の前の戸板を取り外しているところだった。
時を同じくして飲み物屋?も開店する。
開いたばかりの店に、既に並んでいた冒険者たちがパンを購入し、その流れで飲み物屋で飲み物を購入している。
(結構朝から待ってる人いるんだな。)
購入している人たちを眺めていたら、自分たちの順番が回ってきた。
メイには好きな物を注文するように言って、こちらは前回買ったパンを三つずつ購入する。
会計でまた高額要求されるかと思っていたが、店員が例の女性ではなかったせいか、普通に800リラ要求されただけだった。
(残りのお金は2,000リラちょいか…。)
飲み物がそんなに高くないことを願いつつ飲み物屋に向かう。
飲み物屋は表の受付のようなところの横に扉があり、奥は酒場になっていた。
飲み物の単価を見てみると、十分に買える値段だったが、ここで問題が発生した。
(まさか飲み物を入れる容器が持参とは…。)
飲み物のメニュー表の横に容器の代金が書かれている。
一個千リラとなかなかの値段だ。
容器は陶器で作られており、木の蓋も出きるようになっている。
大きさは1リル(リットル)のペットボトル程度で、造りが陶器と言うことを考えると中に入る量はそれ以下だと思われる。
(メイもいるから二つ買うとなると予算オーバー…。一つを二人で分けたとしてもヘルパンを食べるとすると飲み物一つては足りないような気がする…。どうすれば…。)
クロスが悩んでいると、メイが注文して代金を払ってしまった。
「えーっと…。」
「金額について悩んでいたようですので、私の方で購入いたしました。」
このままいても、後ろの客の邪魔になりそうだったので店から離れる。
「助かったよ。二つ買おうと思ったんだけどお金足りなくて困ってたんだ。」
「視線の動きと顔色からわかりました。今後はご相談くださいますようお願いいたします。」
「気をつけるよ。」
人の顔色から思考を読みとられるとは思わなかったので気をつけることにする。
一通り準備は完了したので、町の入ってきた入り口へと向かう。




