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21話 起床・朝食

 クロスは、日が部屋をうっすらと照らす明け方に目が覚めた。


 横にはいつかのようにメイがクロスを抱き枕にしており足を絡ませている。


 あのホース車の時と違うのは双方共に裸だったことだ。


 体は気怠いが気分は晴れやかな感じがする。


 寝ていた間に一体なにが起こったのか…。


 メイにより体がホールドされているので、仕方なく寝転がったままカードを確認してみる。



クロス

ランク 1

魔法力 72000/72000

筋力 25

魔力 無10/時4

速度 27

状態 普通

金銭 0リラ



 魔法力は一晩ぐっすりと寝たことで全部回復していた。


(体が気怠かったから、もしかして全快してないかも…とか思ったけど大丈夫みたいだ。)


 この時に時属性の魔力が減っていることに気付く。


(やっと4まできた!最近変わらなかったから見逃すとこだった。)


 内心喜んでいると、隣で少し動く気配があり、横を見てみると、メイが起きてこちらを見ていた。


「おはよう。」


「おはようございます。何やら嬉しいことがあったようですが、どうされたのですか?」


「久しぶりに属性魔力が減ったんだ。これ以上減らないんじゃないかと心配してたんだけどよかったよ!」


「それはおめでとうございます。」


 クロスは嬉しくて忘れそうになっていたことを聞く。


「ところで、昨日の夜何かあった?もしくは何かした?」


 メイは慌てることなく答える。


「クロス様の召し物を取り、体を磨いてマッサージを行いました。」


 クロスが朧気だが覚えていたことと一致する。


「体が気怠いんだけど?」


「恐らくマッサージにより、日頃の疲れが抜けたせいかと思われます。」


「そっか。まぁそれは置いといて…一番の疑問を尋ねるよ?…何故二人とも裸なの!?」


「クロス様の召し物の替えが無かった事と、着用による体への余計な負担を軽減するために服は着せておりません。私が裸なのは、クロス様が裸による病気になってはいけないと思い、人肌で温めるべく脱いでおりました。」


 メイはもっともらしいことを、さも当然とばかりに言ってくる。


「まあ…いいや…。(確かに暖かったし…、柔らかくて気持ちがよかったし…。)」


 クロスは起き上がると背を伸ばし、体をほぐす為の体操を始める。


 メイは素早く着替えるとクロスの体操が終えるのを待ち、着替えを手伝い始めた。


 着替え終えてから昨日の内に買っておいたサンドイッチを食べる。


 食べ終えてミルの乳を飲もうとしたときに止められる。


「お待ちください。」


「どうかした?」


「飲み物を冷やします。」


「そういえばメイは風と水が使えるんだったね。」


「はい。合成と言っても風水は特別で二系統あり、私は治癒属性よりも氷属性に適性があります。」


(適性か…。選ぶとき風と水だから治癒属性と思ったけど…、そこまで頭が回らなかった…。)


「じゃあお願いするよ。」


「お任せください。」


 メイはコップを持つと詠唱を始める。


「風よ。水よ。飲み物を冷やしたまえ。『キュール』」


 『キュール』:対象の温度を下げる【水属性20、風属性20】


 コップに白い霧が集まる。


 中を見るとなんら変わっていないように見えた。


「出来ました。」


「何も変わってないように見えるけど?」


 メイはクロスへコップを手渡す。


 コップはひんやりとしていて、中身をよく見ると…。


「凍ってるね。」


「はい。間違いございません。」


「飲めないよね…?」


「間違いなく冷えております。」


 メイはたしかに冷やすとしか言ってはいないが、これで要求通りと思われては今後が大変になる。


「すぐに飲みたいんだけど…。」


「水でしたらすぐお出しできますがどうされますか?」


「いや…乳が飲みたいんだけど…。」


 メイは頬を赤らめる。


「すいません。まだ乳は出ないのです。」


 クロスは自分の言葉足らずに気付き言い直す。


「違うよ!乳は乳でもミル乳だよ!」


「もちろんわかっております。」


 元の無表情にもどり平然と言ってくる。


「わかってなかったから言ってるの!」


 クロスは息を荒くしながら言い募るがメイには…。


「落ち着いてください。大きな声を出されますと、周りの者を起こしてしまいます。」


「一体誰のせいで…。」


 と暖簾に腕押しのような感じを味わう。


「誰かはこの際関係ございません。」


(関係大有りなんだが…。)


 これ以上続けても疲れそうなだけなため、別の解決を図る。


「(時よ。とまれ。『ツァイト』)」


 凍ったコップを持ち、一階のギルドのキッチンに向かう。


 キッチンにて替わりのミル乳がないか探してみるが見つからない。


(水だけか!…他のとこに行くしかない!)


 一度飲みたいと思ったら止められない。


 ギルドを出て、近くの酒場に入る。


 酒場はまだ開いていて、数人まだ呑んでいるようだった。


(酒場にならあるはず!)


 酒場のカウンター奥の部屋へ入ってみる。


 部屋は厨房になっていて、誰かが料理を作っている。


(そう言えばここは二階が宿になってるんだったな。)


 作っていた料理を味見しつつ更に奥の部屋へ入る。


 部屋の中には樽が並んでおり、扉脇には鉄で出来た缶がいくつか置いてあった。


(多分これだな。)


 一つ目の缶を開き厨房にあったコップで中身をすくい、早速飲んでみる。


 そして、飲んだ瞬間吐き出した。


「ぶはっ。(まさか乳酒とは!)」


 見た目は色も白く、匂いは周りに酒のにおいが充満していたせいで、口に含むまで気付かなかった。


(騙された!なんという罠だ!)


 勝手に飲んだだけなので、騙されるもなにもあったものではないが、飲む気になっていた身には関係ない。


(一つずつ舐めて調べるか…。分かるように書いとけっていうんだ!)


 缶の蓋を開け、中身を調べる。


 結局十缶あったが、手前の五缶は酒で六缶目にミル乳が入っていた。


 飲めたことに満足し、持ってきたミル乳の凍ったものの処分を考える。


(手間を取らせてくれた分を考えて…。)


 コップから凍ったミル乳を取り出し割ってから料理の中に入れ、他のかけらをまだ呑んでいる人達のコップに入れていく。


(飲んだ分は返した!)


 意気揚々とギルドへ戻り、時を戻す。



クロス

ランク 1

魔法力 51100/72000

筋力 25

魔力 無10/時4

速度 27

状態 普通

金銭 0リラ



 戻した瞬間、一瞬酒のにおいで気持ち悪くなるが、すぐに消える。


「クロス様。失礼します。」


 時を戻すと、メイが何かを感じ取り匂いを嗅いでくる。


「何かなさいましたか?」


「ミル乳を無理やり飲んだだけだよ?」


「そう言えば…いつの間にかコップの中身もありませんね…。」


 メイが怪しみ始めたので、話題を変える。


「店ってどれくらいで開くのかな?」


「時間はバラバラですが、早いところは日の出とともに開きます。」


「昨日見たところは?」


「大体日の出から一刻程度以降でしょうか…。」


 外を見れば日が出始めたばかりで、夜が明けてからそれほど時間は経っていない。


「一刻くらいならすぐだろうし、町の探索がてら出よう。」


「わかりました。」


 出発の準備をして部屋を出る。


 宿泊の礼を言うために、ギルドマスターに挨拶をしようとカウンターにいた受付に話すが、寝ているようだったので礼を伝えてもらえるように頼みギルドを出た。


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