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17話 スリ・解決

 屋敷を出ても腕を離そうとしないメイに、人通りの多くなってきたこともあり、流石に恥ずかしいため手を離すようにいう。


 メイは仕方ないと言わんばかりにゆっくりと解放した。


 その後は、中断されていた昼食を取ることにして、パンの入った紙袋をメイに要求する。


「すみません。パンについてはマリーに奪われてしまいました。」


 クロスは唖然とした表情でメイを見やる。


(大事な…他人より遥かに大事なパンを!)


 奪われたメイに憤りを感じる前に、マリーに対して怒りを感じる。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 この少し後に、激辛パンがあるとは知らずに食べたマリーが、もがき苦しむことになる。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 クロスの食べようとしていた昼食を中断されている腹が、一刻も早く飯を寄越せと鳴り響く。


「近場で美味い店どこ…?」


「ついて来てください。」


 クロスがかなり怒っているのを察したのか小走りで案内し始める。


 中央の広場に入る少し前で、建物の隙間の道を入っていった。


 通路自体はそんなに広くはないが、そこを抜けると先ほどの大通りとまでは行かないものの、結構な広さのある通りに出た。


 裏通りには先ほどまでと違い人が溢れており、店も多く並んでいる。


 メイは人混みに入る前に、クロスと離れないように手を掴み先導する。


 クロスは始めてみる場所のためか、周りをキョロキョロと見回しながらであるため、メイに引かれるがままになっていた。


 クロスは周りを見ながら進んでいて、前を向いていなかったので誰かとぶつかってしまう。


 相手は自分より少し背は低くローブを目深に被っており、何も言わずに去ってしまった。


 クロスが止まったことに気付いたメイが振り向き、もしやと思い、あることを指摘してくる。


「クロス様財布はどこにありますか?」


 まさかとは考えつつ腰に手を回すが、腰から下げていた財布の入った巾着袋が無くなっていた。


(さっきぶつかったのはスリか!?)


「(時よ。とまれ!『ツァイト』)」


 クロスは目の前のメイを気にせずに時間をとめる。


 数秒だったので遠くに行ってないはず、と先ほどのローブを被った人物をクロスは探し始めた。


 人混みを掻き分けて、下に潜り込んでいないかも確認する。


 半刻ほど探したときに該当の人物をやっと見つけ出すことが出来た。


 たった数秒でこの人混みの中を50メルは進んでおり、懐に入れた手には巾着袋が握られていた。


(俺の昼食の邪魔をしただけでなく、金までとるとは絶対許さん!)


 巾着袋を取り返し罰を何にしようかと考える。


(とりあえず裸にして人混みの中に放置だ!)


 ローブを外すと薄汚れた格好をした子供がいた。


 その子供を見ると体は細く、素足である。


 更に服を脱がせようとして気付いた。


(何も持ってないうえに女の子とはね…。)


 女の子を脇道に避けて考える。


(見るからに浮浪者かその類い、町から消えてもそれ程影響があるとは考えるずらい…。けどこんなガリガリで薄汚そうなのを抱いてもしょうがないし…裸で放置してもなぁ…。)


 時をとめることによりお腹の減りもとまったせいか、それに従い怒りも収まっていく。


 それから少し思案して、ツヴァイ家に戻ることにした。


 ツヴァイ家に戻ると、そこでトールを探しを始める。


(トールなら金持ってるだろ。メイド押し付けるんだからそれを養うための金を貰うのは当たり前だ!)


 クロスはツヴァイ家からお金を持って行くことに対して、自分勝手な思考で自己完結させる。


 一階の大部屋の奥へ入ると小部屋と階段があり、小部屋を覗いては見たが居なかったため階段にて二階に上がる。


 二階に上がるとちょとした広場になっていて、四面の内三面に扉が各一つずつついていた。


 まず手始めに上がってすぐ目の前の扉に入ってみることにするが、鍵がかかっているのか開かない。


 仕方なく真ん中の扉に向かう。


 真ん中の扉は開いており、一階と同じような広間に繋がっていた。


 広間は玄関から延びていた階段の上にある扉に繋がっていて、わざわざここを通って違う部屋へ行くはずがないと思い直し、残ったもう一つの部屋へ行く。


 最後の部屋も開いていて、中は執務室のようで椅子に座り執務をしているトールがいた。


 まず、一通り部屋の中を観察する。執務机の前には、座り心地の良さそうな応接ようのソファーがあり、扉以外の壁には書棚がついていた。


 部屋は入ってきた扉以外にも扉があり、書棚に挟まれた扉を開くと廊下に出る。


 次に、入って真正面にあった扉を開くと寝室に繋がっていた。


 執務室に戻り机の中を漁る。


 机の引き出しの中には書類の他に水晶の欠片らしきものやキレイな指輪が布に包まれて入っていた。


 一番広い引き出しを開けると目的の物を見つける。


(お金ってこの引き出しの中だけってことはないよな?…それにしても1万リラ硬貨が小銭扱いとは…。)


 引き出しの中には、1万リラ硬貨が散らばって入っており、それ以外はインクやペンしか入っていなかった。


 1万リラ硬貨を十枚取り、机の上にあった書類をシャッフルしておく。


(さっきの恩賞という名の嫌がらせに対する天罰!改めて俺からの罰だ!)


 クロスはトールに対する溜飲を下げ、恩賞ということでマリーのことも思い出す。


(俺の昼食を奪ったマリーにも仕返ししてやる!)


 廊下に一度出てから隣接している扉を順に見ていく。


 二階は普通トールの執務室と寝室から、廊下の中央あたりにある階段あたりまでは内装が豪華になっていて、階段から先は普通の部屋が続いていた。


 階段の両脇の部屋にはトールに近い側に執事、階段を挟んで遠い方にメイドが待機していた。


 階段を降り一階も開いて見るが、一階も同じようになっており、玄関に向けて豪華な部屋になっていた。


 目的の人物が居なかったため玄関を挟んで反対側の建物を調べてみる。


 こちら側も同じような作りだったが、音楽室や書庫などの部屋になっていた。


 二階に上がるとこちらも同じように中心から遠い方は普通の部屋で、階段を越えると豪華な部屋になった。


 目的の人物は一番中央に近い部屋、位置的に開かなかった扉に繋がってると思わしき部屋にいた。


 部屋の中には目的の人物を含めた三人がいた。


 応接用のソファーでは、ベルの胸に顔を当てて、ベルに背中を触られているセリーヌと、パンを食べて苦しんでいる表情をしているマリーがいた。


(アースヘルパンの方を食べたのか…。俺のパンを!!)


 怒りが再燃したところでとりあえずアースヘルパンをかじってみる。


(かなり辛いが美味いな。マヨネーズっぽいのにマスタードのような…。うわっ!後でくる辛さだ!)


 ポットに入っていた紅茶を空中に出しくわえる。


「!ぅあっち!」


 紅茶は熱くすぐに吐き出す。


 紅茶の熱さで辛さが和らいだところでマリーに対する罰を考える。


(まずはこの紅茶をポットに戻してっと。)


 吐き出された紅茶を含めてポットの中に戻し、元あった場所に戻す。


 戻してから罰を考え付き、一階の厨房に行き、細長い野菜を探す。


(こんだけ立派なんだ。調味料も揃ってるに違いない。)


 該当の野菜を確認し少し噛んでみる。


 予想通り先ほどと同じような辛さが口に広がる。


(少し噛んでこれならポットの中に千切って入れたら相当だろう。)


 野菜を持って三人のいた部屋へと戻り、ポットの中に刻んだ野菜を入れてスプーンでかき混ぜる。


 その後、残っていたスカイエンゼルパンを開き、中身のクリームを食べて、替わりに先ほどの野菜を詰める。


(スカイエンゼルパン甘くて美味しい。)


 スカイエンゼルパンの中身は、激甘のクリームとホイップされたクリームが合わさっており、かなりの甘さと美味しさだった。


 マリーに対する罰を終えて満足し、クロスは意気揚々と屋敷を後にする。


 メイと別れた場所に行き、なぜ時間をとめたかを思い出す。



クロス

ランク 1

魔法力 32310/72000

筋力 25

魔力 無10/時5

速度 27

状態 普通

金銭 0リラ



(そうだ!スリの女の子だ!)


 スリの女の子のところへ向かった。


 スリの女の子の服を着せてやり、手に巾着袋を持たせる。


(1万リラしか入ってないが良いもん食えよ。)


 持たせた後は居たであろう大体の場所に戻して、クロスもメイの場所へと戻る。


 メイの前に立ち時間を戻す。



クロス

ランク 1

魔法力 29310/72000

筋力 25

魔力 無10/時5

速度 27

状態 普通

金銭 0リラ



「クロス様?」


「なに?」


 メイは首を少し傾げるが気のせいと思い直し、尋ねてくる。


「財布は大丈夫だったのですか?」


「あぁ。ポケットに入ってるよ。」


「何か焦っていたように見えたのですが…。」


 メイは時間を停める前と後の違和感を感じているようだ。


「空の袋をさっきぶつかった時に盗られたみたいだ。危ないとこだね。」


「袋はだいじなものですか?」


 メイは心配なのか近付いて声を潜めて問いかける。


「いや、ただの袋だ。」


「それは良かったです。人混み混じりの窃盗はなかなか見つけられないうえ、根絶が難しいのです。今後お気をつけください。」


 見つからないと分かっていたようでそんなことをいってくる。


「わかったよ。早く飯を食べよう!お腹が空き過ぎた!」


「畏まりました。店はすぐそこです。」


 メイに案内されて民家のようなところに入っていく。


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