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138話 出発・会談

 明け方少し前頃に昨日の従者…セリスが起こしに来た。


「クロス様。起きてください。」


 カーテンを開けると、外はまだ薄暗い。


 そこへ窓を開けたことで少し冷たい空気が入ってきたことにより、頭がすっきりする。


「起きてるよ。」


 そういってから、部屋へと入る際に一緒に持ってこられた桶にて顔を洗い寝癖などを整える。


「おはようございます。早速ですが、既にアイリ様は食堂にてお待ちです。」


「わかった。」


 結局昨日はドライ家に泊まることになり、メイたちについては手紙を頼むことにしていた。


 手紙の内容を読んだのであれば大人しく王都で待っていることだろう。


 クロスは着替えるべく衣装棚へと向かうが、そこで傍と気付く。


 返事をしたにも関わらず、セリスは出ていこうとはしないのだ。


「着替えたいんだが?」


 衣装棚の横にて立っているセリスにそう言ってみるものの、セリスが出ていく気配はない、それどころか、手伝うと言ってくる始末だ。


 従者についてはメイで慣れているとはいえ、人に着替えさせてもらうのには未だに気恥ずかしさが残ってしまう。


「着替えくらい一人で出来るから気にしないでくれ。」


「そうはまいりません。着付けは従者の役目です。」


 このままでは押し問答が続きそうなので、クロスが譲ることにして着付けをしてもらう。


 着替え後にはセリスに案内されて食堂へと移動した。


「おはよう。」


「ああ。おはよう。」


 長テーブルの上には、皿やフォークが並べられているが料理は載っていない。


 クロスが勧められるまま椅子へと座ると、奥の部屋から料理が運ばれてきた。


 運ばれてきた料理に手を付けていると、食べ終わったアイリが話しかけてきた。


「ご飯を食べたら早速出発しましょう。既にフィーア家については出発したらしいから少し急いで。…あなたの言った通りであれば戦うことにはならないから、これ以上の武器なんかはあまり必要ないかもしれないけどね。」


「(モグモグ)」


 食べながら首を縦に振る。


「アリスは戻ってくるまでここに居てもらうから。その後アリスについては話し合いましょう。…では先に玄関で待ってるわ。」


 そういうとアイリは先に部屋を出ていった。


 クロスも少し急いでご飯を食べる。


 食事を取り終わると、セリスに連れられて玄関へと移動する。


 そこには指示を出しているアイリが居た。


「では最終確認を。……それと………の準備は出来てるの?」


「はい。既に確認は出来ております。それと例の物についてはホース車に載せております。」


「わかったわ。では私が居ない間の取りまとめをしておいて頂戴。」


「かしこまりました。」


 そういってからクロスは、アイリと共にホース車へと乗り込む。


 それからすぐに出発する。


 乗り込む際に見ていたが、通りは規制されているようで、朝も早いというのに出ている人たちは通りの端へと追いやられていた。


 通りにはホース車が列を作っており、かなりの長さであることが分かる。


 その中央付近のホース車へと乗り込んだ。


 ホース車へと揺られることしばし、それまで沈黙していたアイリがそわそわとしだす。


 黙って見ていると、アイリは意を決したのか箱を取り出してきた。


「これを付けて!」


「ん?」


 アイリは箱から指輪を取り出してクロスに突きだしてくる。


「指輪を付ければいいのか?」


「私が付けるからじっとしてね。」


 アイリは震える車内にて落とさないように、慎重にクロスの指へと指輪を取り付ける。


 取り付け終わるとアイリは、ほっとしたのか大きく息を吐いた。


「指輪を付けるだけで大げさだな。」


「あなたの分も準備してるから私に付けて。」


 工程がかなり後先逆になっているような気がしたが、クロスもアイリの指へと指輪を取り付ける。


「これで私はあなたのものだし、あなたは私のものよ。」


「かなり今更感があるんだが…。」


「雰囲気が大事なの!壊さないであわせてよ!」


 アイリはその後もしばらく怒っていたようだが、ひとしきり文句をいったり愚痴を言ったりしたあとは大人しくなった。


 そこからの旅程は、クロスの今までの事を聞かれた。


 アイリと別れてからの出来事などを話していく。


「みんなどんな感じになってるんだろう。」


「みんなそれなりに変わってるな。中身は変わってないかもしれないが………。」


 そんなこんなで、5日後国境へと辿り着く。


 そこでは、戦闘は停止しており、どうやら国境付近にて既に会談が行われているようだった。


 青空の元、長テーブルと椅子が準備されているようだ。


 双方ともに人数は2人ずつのようで、何やら話し込んでいるようだ。


「この調子なら私たちの物資は必要なかったかな?」


「まあそうなるだろうな。たぶんだが。」


 現状がどうなっているかを確認するべく、アイリとクロスは会談場所へと近づいた。


 しかし、双方にて警備している兵に立ち入り禁止を喰らってしまう。


「ここから先は王族以外立ち入り禁止です。」


「私はドライ家の者よ?」


「それでも通すなと言われております。他の各家についてはあちらの天幕にておられますので、そちらへと移動してください。」


「………わかったわ。」


 アイリとクロスは天幕へと向けて歩き出そうとした。


 その時に、会談場所の方から兵士がこちらへ向けて兵士がやってくる。


「お待ちください。」


 兵士がこちらへと向けて話しかけてくる。


「何かしら?」


「恐れ入りますが、用件があるのはアイリ様ではなくそちらの男になります。王族の方双方から、そちらの男を連れてくるように申されまして………。」


 アイリとクロスは双方の顔を見る。


「あなたこの会談に関係あるの?あの説明を受けた限りではなさそうに思うのだけど?」


「まああまり関係はないな。したことといえばこの席を設けたことくらいだ。俺が行ったところでどうにかなるとは思えないんだが………。」


 クロスも悩みながら考えたことを言ってみるが、クロスが呼ばれた理由が全く分からなかった。


「まあ行ってみれば分かるだろう。では行ってくる。」


「ええ。後で教えてちょうだい。」


 クロスは兵士に連れられて、会談の席へと向かった。


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