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137話 契り・監視

 クロスは首から下げていたカードを取り出し記入されている文字を見る。


 そこには信じがたいことが記入されていた。



クロス

ランク 7

魔法力 -/-

筋力 80

魔力 無1/時1

速度 90

状態 【時の管理者】【時属性の極み】【無属性の極み】【アイリと契りし者】普通

金銭 20,240,000リラ



 なにやら増えている項目がある。


 一つは長く待っていた無属性の魔力が1だ。


 これは今までが非常に長かった。


 これで相手の魔力が2だったとしても、相殺されることはなく維持することが出来るだろう。


 問題はその後である。


 【アイリと契りし者】………アイリと契った覚えなど全くないのにこの文字は一体なんだろうか。


 しばらく呆然としていたが、アイリの方を見てみると、嬉しそうにカードを見ている。


 視線を男の方へと移動させると、男は部屋から出ていくところだった。


「ちょっと待て!」


「ん?」


 男は振り返りクロスの方を見てくる。


「とりあえずどういうことか説明してもらおうか。」


「アイリ嬢に聞けばよかろう?」


「アイリはあの状態だから無理だ。」


 アイリの方を見てみると、アイリはカードを見つめながら嬉しそうに微笑んでいる。


「確かに………駄目かもしれん。」


「説明はしてもらえるな?」


「説明と言ってもな。結婚したい相手が居るから契約を頼むと言われただけだの。」


「とりあえず頼まれたからって簡単にホイホイしたことについては百歩譲って置いておくとして、なぜ簡略した?しかも俺に何の確認もせずに!」


「いや。戦争にいくからその前に済ませておきたいと言われてな。急遽準備したのだよ。家が近いからと言っても限度はあると思うのは私も一緒だな。司祭の服を取りに行くのも勿体ないほど急いでいるということだったのでな。簡略化をしたわけだ。実際は、確認行為は片方だけにすればよくてな。二人ともに確認する必要はないのだ。お主がもし女性だったら確認したかもしれんが、男だしよかろう?玉の輿というやつだな。…では休みなのでこれにて失礼するよ。」


 男はそういうと部屋を出ていった。


 どこかで見たことのある男だと思ったら、教会を探索中に見かけた男だった。


 とりあえず通常の思考が停止しているアイリを元に戻すべく、額にデコピンをしてみる。


「あいたっ!」


「気が付いたか?」


 デコピンの一撃により無事?アイリは現実に帰ってきたようだ。


「あなたね!………あなたって響きいいわね………。」


「まだもう一発必要か?」


「いらないわよ!あなたは手加減というのを知った方がいいわ!」


「今のでも十分手加減しているんだが…。」


 額の痛みが治まらないのか、アイリは額を撫でながら涙目でこちらを見ていた。


「もういい。目的は果たせたしさっさと私たちの準備を終わらせましょう。」


「その前にこれについての説明をしたらどうだ?」


「説明って?そのままの意味だけど?」


「俺の合意はどうした?」


「あなたもしかして断る気だったの?」


 アイリはクロスの言葉に顔をどんどん曇らせて不安そうにしてくる。


「いや。……こちらにも心の準備というものが必要でな………。」


 こうなっては強く言うわけにもいかず語尾も弱弱しくなってしまう。


「大好き!」


 そういうとアイリはクロスに抱きついてきた。


 昔よりも少なからず体の方は成長しているようだ。


 昔の間隔でアイリの体を受け止めて背中をポンポンと叩いてやる。


 アイリはクロスの胸に顔を埋めて満足そうな顔をしていた。


「準備はいいのか?」


「指示は既に出してあるから私たちの準備だけよ。(これで王がなにを言ってきても既成事実!分かれろなんて言ってこないよね?)」


(そういえば戻った時に、屋敷の者に何か言っていたな。)


 帰ってきたときのことを思い出す。


「それなら俺たちの準備とはなんだ?」


「あなたも一緒に行くのよ?一緒に乗るからにはそれなりの服を着てもらわなくっちゃ。既に服は一通り作ってあるから着替えましょう。」


「………一体いつの間に作ったんだ?……それに、いつ俺の身体を採寸したんだ?測られた覚えはないぞ?」


「………それはヒミツよ。」


 実際には夜の街にて、一夜を共にした相手に毎回少しずつ測られていたのだが、それをクロスが知る由もない。


 クロスはアイリに連れられ衣裳部屋へと入り、着せ替え人形と化していた。


「………まだ決まらないのか?」


「これもいいけどあっちもいいのよね………。」


 アイリは自分の世界に入ってしまい、こちらの声が届いていないようだ。


 何かに熱中すると集中力はすごいのだが、周りが見えなくなるのはいかがなものかと考えてしまう。


 どれほど経っただろうか。


 部屋をノックする音が聞こえてくる。


「入っていいわよ。」


 アイリの言葉により、最初に指示を受けていた男性が入ってくる。


「失礼いたします。アイリ様、6割方準備が出来ましたので、予定通りツヴァイ家の方にお送りしておきました。残りについては少々時間はかかりますが、明朝には準備できるものと思われます。」


「それならばいいわ。後は完了または不測の事態が起きた時に連絡を頂戴。」


「かしこまりました。」


 そういうと男性は踵を返して部屋を出ようとするが、アイリによって呼び止められる。


「ああ、ちょっとまって。セリスを呼んでおいて頂戴。」


「かしこまりました。」


 今度こそ男性は部屋を出ていく。


「そろそろ決まらないのか?」


「大体絞り込んだけど、やっぱり着てみると少し合わない箇所が出てくるみたいね。もうしばらく待って。」


 そういって服以外の靴などを今度は見始める。


 クロスは溜息混じりに椅子に座って待とうとしたが、アイリに怒られ立ち尽くす羽目になる。


 その時に部屋がノックされる。


「入って。」


「失礼します。」


 アイリに言われて入ってきたのは見知った顔だった。


「セリス。少し裾の長さが足りないみたいだから調整して頂戴。調整するのはこの2着でいいわ。」


「わかりました。」


 女性はクロスに一瞥し、軽くクロスに対して会釈すると、アイリの指示に従って服を持って部屋を出ていく。


「アイリ………。さっきの女性は?」


「さっきの女性はドライ家の従者よ。あの人には乳母になってもらう予定。…だから私だけではなくあの人とも子を作ってもらうからそのつもりでね。」


 先ほど入ってきた女性は、さんざん夜の街にてクロスがお世話になった女性だった。


 クロスとしても同じ女性との方が気兼ねなく楽しめていいと思い、他へは行かなかったのでよく知った仲である。


 ここで初めてクロスは、今までアイリの監視が付いていたことを思い知ったのだった。


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