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136話 会談・まさか

「まあいい。では国境付近に向かっておけ、すぐにベルン王国の王族もそちらへと向かわせる。」


「では国境に15日後辺りかしら?」


「いや。5日後で構わない。」


 ベルン王国から国境までと、国境からこのサンドラ城までは同じくらいの距離だった。


 クロスの走りで1日ならば、ホース車で5日もあれば到着するだろう。


 女の言葉からも、ベルン王国に戻って国境までくる時間を15日と見ていることからも間違いない。


 ただ、女は最初の頃の可哀想な者を見る目でこちらを見てきた。


「計算が苦手なようだから教えてあげるわ。5日ではここからだと国境に到着するくらいよ?あなたはそこから更に王都ベルンへ行って戻ってこなければならない。それだけでも往復10日はかかるはず。合わせて15日なの。分かったかしら?」


「十分に分かったうえで言っているんだがな。」


 それでもクロスの考えは変わらない。


 クロスとしては王族を連れて行くとは言ったが、さすがに2日も人を担いでいくのは、面倒だと考えたので方法を変えることにしたのだ。


「では、5日後に。」


 クロスは部屋を出てから時を止めて来た道を戻り始めた。


(地図についてはゆっくり作るか…。)


 身体強化を掛けてベルンへと走り始める。


 来た時と同じように、感覚的に2日ほど走り続けると、王都が見えてくる。


 出た時と同じように建物の上を走り城へと向かう。


 城内は出た時と人の配置はほぼ変わっておらず、その合間を縫って会議が行われていた場所を目指す。


 扉の前で時を戻し、ノックをしてから中の返事を碌に確認せずに中へと入る。


「なかなかきつい旅立った。」


「「「「「……………。」」」」」


 中に居た5人は、入ってきたクロスを見て黙したままだ。


 それも長くは続かず、王が口を開く。


「向こうの王族を連れてくるのではなかったのか?」


「ああ。それについては説明する。」


「出来なかったのではないのだな?」


「ああ。…まずこの戦争の理由についてだが………。」


 クロスは部屋の中に居たメンバーに、サンドラ王国にて聞いた話を説明する。


「………というわけで今回の戦争が起こったようなんだが、自覚とかってあるか?」


「そんな………。」


 話を聞いているうちにみんなの視線は王へと集中していた。


 女性二人については非難がましい目を向け、男性二人についてはしょうがない奴だと言わんばかりの顔だ。


「というわけで会談を設けることにした。今から5日後に国境だ。とりあえず話し合うことだな。」


「そうですね。まずは話し合うことが大切だと思います。」


 フィーアが始めに賛同してくる。


「これで戦争が終わればいうことは特にないな。」


「過去の過ちは清算しましょう。」


 ツヴァイとドライ…アイリが続いて賛同した。


「今の話の信憑性はどれくらいあるのだ?」


 しかし、アインスだけは賛同ではなく確認をしてくる。


「信憑性というと言われるが、この話の内容に王が心当たりがあることで信憑性があるとは言えないか?」


 アインスは王を見る。


「確かに幼いころ向こうの国との交流があった際に、王族同士での話し合いがあったと思われますが、その時のことを覚えておいでですかな?」


「………確かに会ったのは覚えているが…………なにやらそのようなことを言ったような言ってないような………。あの頃は誰にでも言っていたような気がしなくもないな………。」


「………結婚してからは大人しくしていたかと思えば、その前の時点で駄目でしたか………。」


 アインスも昔を思い出して溜息をついている。


 どうやら信じてもらえたようだ。


「とりあえず、国境に向かうぞ。」


「しかし、その話が本当だとしても現状では向こうが来るかもわからん。」


「ああもう!面倒くさいやつだ。ぐちぐち言ってないでさっさと行く準備をしろ!」


「王よ。とりあえず、王の遠征という形で部隊を早急に整えて出発しましょう。先ほど言っていた5日後となるとあまり日がありません。」


「そうだな。先ほど言った通りでアインス家とツヴァイ家にて兵を。ドライ家にて武器やホースなどの物資を。フィーア家にてその他食料などの物資を準備。アインス家は準備が出来次第私と共に出発だ。ツヴァイ家はドライ家とフィーア家の物資を定刻を決めて受け取りアインス家の部隊を追う。その後ドライ家とフィーア家が物資が整い次第出発だ。」


 王がそういうと各自頷き部屋を出ていく。


 クロスもアイリに連れられて部屋を出た。


「クロス。相手の戦力はどれくらいだったか分かる?」


「報告は受けてないのか?」


「受けてるんだけど、1日経ったら変わってるかもしれないじゃない。」


「会談だよな?」


「ええ。でも保険は必要よ。王が会談の場で怒り狂った向こうの女王にやられないとも限らないし………。」


「むしろそれで万事解決じゃないか………?」


 王をサンドラ王国にやることで全てが解決してしまうような気がしてならない。


「それだと確実に戦争が長引くわ。………とりあえず人数を教えて。」


「俺の見た感じでは数千人くらいの部隊がいくつかあったような感じだったな。最初の部隊が思ったよりも小規模だったが、その後から連なる感じで部隊が向かっていたから、もう少ししたら更に増えるだろうな。」


「ちょっと!それをあの場で言っておきなさいよ!戦争を回避しようにも3~4日は、前線では戦うことになっちゃうじゃない!」


「いや。それは俺には関係がなさそうというかなんというか。」


「もう許せない!とりあえず行くわよ!」


 クロスはアイリに連れられてドライ家の屋敷へと戻っていく。


「おかえり。」


「ただいま。」


「久しぶりだなアリス。」


「武闘祭終わった?」


「ああ。一応終わったな。それよりも決めたか?」


「………うん。私は…「クロスこっちの部屋に来なさい。」………。」


 隣の部屋に入っていたアイリは、こちらの部屋に戻ってくると、クロスを手招きして呼び寄せる。


「なんだ?」


「いいから!こっちにくるの!」


 アイリに言われて部屋に入ると、そこには水晶とどこかで見たような男が立っていた。


「こっちよ。」


 アイリはクロスの手を握り水晶の前にて止まる。


「何をするんだ?」


「黙って立ってて。」


 アイリは真剣な表情をしていたので、クロスも倣って水晶の方を向く。


「本当に構わないのですかな?」


「ええ。お願い。」


「このようなことはあまりしたくは無いのですが………。再度確認ですが脅されているなどということもないのですな?」


「ええ。全くこれっぽっちもないから早くして!」


「わかりました。では水晶に手を置いて下さい。」


 クロスは成り行きを見守っていたが、アイリは握っていたクロスの手をそのまま持ち上げ水晶へと乗せる。


「では。神よ。この者たちに祝福を『ゼーゲン』」


「………なに?」


 神父が発した言葉が未だに信じられずしばしクロスは固まっていたが、もしやと思い自分のカードの覗き込んだ。


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