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133話 提案・思考

「まあ償いに関しては俺の責任だから俺が償うさ。……その償いに関してだが提案がある。」


「言ってみるといい。」


「俺がアンドラ王国へ行って、王族の誰かをここへ連れてくるっていうのはどうだ?」


「そんなことが可能だと思ってるのか?」


 アインスが口を挟んでくるが、王は沈黙したままこちらを見ている。


「この部屋まで来れたことを考えると行けるとしか言いようがないな。」


「………。」


 その言葉にてアインスも沈黙してしまう。


「出来るものならやってもらおうか。」


 しばらく続いた沈黙を破ったのは王だった。


「そうと決まればアンドラ王国の地図を貰えないか?」


「まあそうだな。用意させよう。他に何かあるか?」


「そうだな。王族の特徴を軽く教えておいてくれ。一応はそれっぽい恰好のやつを連れてくるつもりだが、特徴があるのならば知っておいた方がいい。」


「違いか…。特に我々との違いは無いな。アンドラ王国は多少肌の色が濃いくらいか?幼少期に何度かあったことはあるが、違いといって思い出せるのはそのくらいだな。」


「あったことがある?それはいつのことですか?」


 ここで今まで沈黙していたフィーアが王に尋ねてきた。


「君が生まれる前ではあるが、おおよそ30年ほど前になるか?」


「そうですな。あの頃はまだどの国とも和平を結んでおりましたからな。」


 アインスの言葉にクロスとアイリとフィーアは呆気にとられる。


「そういえば戦争が起こったのは王が結婚された頃からだが、それからとなると約20年ほどになりますかな。」


 ツヴァイがアインスの言葉に補足してきた。


「あれからは大変だったな。数年アンドラ王国と諍いを起こして疲弊した所へ、それを狙ったかのようにワルシャワ王国が戦争を仕掛けてきた………。あの時にかなりの散財をしたな。」


「アンドラ王国とのやりあいで学んだものをそのまま使用しただけで勝てましたからな。経験はチカラなりとはよく言ったものです。」


 そこから年寄り連中の昔話が始まった。


 途中まではある程度真剣に聞いていたのだが、途中から明らかに個人の武勇伝や失敗談などどうでもいいことに話がそれ始めたので、さっさと隣国に行くことにした。


「話が長くなりそうなので俺は行くことにする。一応相手にも確認はするつもりだが、間違えてたら言ってくれ。取り替えてくる。」


「もう少し待て。」


 王がそういったのでクロスが待つと、通路の方から足音が近づいてくるのが分かった。


(待っているのは今来ているやつか?)


 クロスの想像通り、足音の人物は扉をノックして中へと入ってくる。


「お待たせしました。こちらがご所望の物になります。」


 そういって入ってきた男はクロスに一瞥を向けたが、気にせずに王へと進み紙を一枚手渡す。


「おう。これだこれだ。クロス。これを持って行け。」


 クロスは王から貰ったものを見てみると、それはどうやら世界地図のようだった。


「かなり古いものだから色々と変わっているかもしれんが、一応ここにあるもので、サンドラ王国まで載っている物はそれだけだ。」


「これがあれば十分だ。王都はサンドラ王国の中心…と考えていいんだな?」


「ああ。ここから西へと真っ直ぐに街道沿いに進めば辿り着くはずだ。拠点を変えたという話も上がってきていないからそのままだろう。」


「そうか。これがあれば十分だ。」


 クロスはそういうと部屋を後にした。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 クロスが出てしばらくすると部屋の外が少々騒がしくなってきた。


 クロスが衛兵にでも見つかったのだろう。


「なぜ来るときには見つからず出る時に見つかるのだ?不思議でならん。」


「それよりもアイリよ。クロスとやらはどれほど信用が置けるのだ?」


「そうね。その辺を詳しく聞きたいわね…。あの子はアイリちゃんのなんなのかしら?」


「いえ…。あの…。ですから…。」


「正直に言ってもらわねば困るんだが?」


 王の言葉が後押しとなりいうことになる。


「幼馴染です………。」


「そういえばあなたは数年前まで東の村に居たわね。その村の子かしら?」


「東の村でクロス?なにか聞き覚えがあったような………?」


 王が何かを思い出すように考え込む。


「クロスは多大な魔法力があったんですが、小さいころは少し使っただけで半分以上も消費してしまい、まともに魔法を使えなかったんです。」


「それにしては無属性魔法を使っていたように見えたわよ?」


「そうだな。オスカーに僅かに及ばないようではあったが、かなりの腕なのは間違いないな。」


(王都から東の村………クロス………かなりの腕?……!!)


「報告にあったゼーロー村の者か!」


「ゼーロー村の者ですか……。そういえば、家に連なる者がそういった名前の者に従者を付けたと報告にあった気がしますな。」


「恐らくそのクロスかと…。」


「ふむ。アインス家とフィーア家にはこういった方が伝わりやすいかもしれんな。」


 王はアインスとフィーアが分からないといったような顔をしたため、分かりやすいたとえを使うことにした。


「約10年前のワルシャワ王国との戦争は覚えているな?」


「もちろんですとも。」


「はい。」


「その時に活躍したギルドチームがある。あの時はランク5ということで始め名は売れていなかったが、戦争が終わるころには我が国の貴重な戦力となってくれたチームだ。」


「そういえば5名?でしたかな?男女混合のチームが居りましたな。」


「もしやあのチーム内の方の!?」


 フィーアは驚きを隠せないようだ。


「ああ。そのチーム内のカインとノーラとの子だな。年齢はアイリと一緒で12だったか?」


「…はい。」


 その言葉に他の3人は固まってしまう。


 あれだけの技量と外見を見るとどうしても12歳とは見えなかったからだ。


「生まれた時に、珍しい瞳を持つ者が現れたので城でも調査をしてほしいと、ゼーロー村にいる爺さんが言ってきてな。その内容は時属性だったか………結構調べたんだが全く分からなかった。そのままの意味を考えるのならば時を操ることが出来ることになるんだがな………」


 その言葉でアイリまで固まってしまう。


 これまでクロスの魔力などを気にしたこともなく、武闘祭にて無属性を頑張って鍛えたのだと考えていたためだ。


「というわけでここからが本題だが。アイリよ。」


「はい。なんでしょう。」


「クロスの血をヌル家に入れたいのだが、どうだ?」


「どうだと申されましても………。」


 王が言っているのはクロスを娘と結婚させるという内容だった。


 現状ではヌル家には子は一人しかいないため、外に出すこともあり得ないだろう。


「今回の事が終われば話を進めるとしよう。では続きを行う。」


 王は、アイリが何かを言ってくる前に話を打ち切り、クロスが来る前に話していた内容について進め始めた。


(どうしたら………。)


 それからの会議に身が入らず、思考の海に入ってしまうアイリだった。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


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