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13話 移動・町入

 抱いたことにより、メイは満足したのか寝てしまった。


 クロスとしても疲れはしたが満足だったので、メイに毛布を掛けなおして時が来るのを待つ。


 星の位置から三刻になったことを確認し、メイを抱きかかえて荷車にて寝ている二人を起こした。


 二人と交代し、代わりに荷車にてメイを横たえると、その隣にて横になる。


 魔法力をだいぶ消費してしまったのか、睡魔が襲ってくる。



クロス

ランク 1

魔法力 5055/72000

筋力 25

魔力 無10/時5

速度 27

状態 【時の管理者】 普通

金銭 0リラ



 寝る前に見てみると元の魔法力の十分の一以下になってしまっている。


 とりあえず魔法力を回復させるべく寝ることにした。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 さすがに三刻だとすぐに過ぎてしまうようで、クロスの感覚としてはすぐに起こされてしまった。


 ベルに起こされて目をこすりつつ辺りを見回すと、一緒に寝ていたメイは既に起きて待っている。


 メイは何事もなかったように振る舞っているようだ。



クロス

ランク 1

魔法力 42800/72000

筋力 25

魔力 無10/時5

速度 27

状態 【時の管理者】 普通

金銭 0リラ



 魔法力については全快ではないものの、十分に回復していた。


 ホース車に戻った時の周りの惨状については、メイがベルに聞いたところ、ベアクローが出たらしく、あのようになっていたらしい。


「未倒伐のベアクローがベルを襲わなくて助かりました。クロウ様がベルを襲っていた者を、あそこにおいておかねば襲われたのはベルだったでしょう。」


「いや、あのベアクローは特別で、多人数の大人がいる場合だと襲ってこない。」


「…ベアクローは通常相手が多人数でも襲ってくるはずでは?」


 元からの表情と焚き火の翳りで感情が読み取れないが、言葉から訝しんでいるのがわかる。


「近くの村で聞いた。」


「クロウ様はどちらから来られたのですか?」


「適当に放浪してる。」


「この地方へは長いのですか?」


「ぼちぼちだ。」


 こちらのことを探るようなことを聞いてくる。


 そのうちボロが出かねないのでこちらから質問してみる。


「ところで、お嬢様とやらの名前はなんというんだ?」


「ツヴァイ家第三位家督継、セリーヌ・ツヴァイといいます。」


 メイは若干誇らしげにいう。


「やはり家名持ちか…。」


 報酬の話の時に、メイがツヴァイ家にてメイドをしていると聞いていたため納得する。


「何かあるのですか?」


 メイはこちらの反応を見ると確認してきた。


「いや…、少し家名持ちの知り合いを思い出してな。」


「知り合い…ですか。家名を伺っても構いませんか?」


「確かドライ家だったな。」


「なるほど…。」


 メイは何かを考えるように目を閉じた。


(言ってはまずかったかな?)


 それからは、次の交代まで静かに過ぎていく。


 交代の時間になりメイにマリーたちを起こすようにいってから、クロスは追加の枝を取りに森へ行った。


 枝を持って戻ってくると、メイド三人が待っていた。


「じゃあ交代ね。」


「ああ、最後だからといって気を抜くなよ。後二刻もすれば日が出るはずだ。」


 マリーとベルは驚いた顔をするが何も言わず頷く。


 ホース車に入り横になるとメイが添い寝してきた。


「…報酬はすでに貰ったはずだが?」


「少々寒いのでご一緒させていただこうかと。」


「セリーヌ嬢と温まったらどうだ?」


「私がお嬢様となど畏れおおいことです。」


「まあいいが…。」


 女性に抱かれて寝るのは気持ち的にも嬉しいため、そのまま寝ることにする。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「寝たかな?」


 ベルはホース車の気配を探るようにいう。


「(静かに!聞こえるかもしれないわ。)」


 マリーはベルを窘める。


「(ごめんなさい。それにしても、まともに声を聞いたけど、かなり若い感じだね。)」


「(そうね。身長も私より少し低いけど、ベルとほぼ同じくらいだし、…年齢はもしかしたらお嬢様より下かもしれないわ。)」


 二人は先ほど交代の時の声を思い出す。


「(やっぱりそう思う?でもエルフかもしれないよ?)」


「(それはないわ。前の番でメイが確認してるから。)」


「(確認って…。やっぱり抱かれたんだ…。)」


 ベルは自分の体を抱きしめ涙を流す。


「(どうしたのよ?)」


 突然泣き始めたベルを見て慌てる。


「(私…私も盗賊に…汚されたんだ…。)」


「(!!)」


 今まで無事だったと思っていたベルの告白に、マリーは一瞬頭が真っ白になる。


「(メイがクロウ様と報酬の話をしているとき、私もメイと同じだったの…でも怖くて言い出せなかった。)」


「(ベルは自分を大事にしなさい!今後は屋敷仕えになるようにメイド長に頼んでみるから!)」


「(…うん。それにしてもメイはすごいね。自分を報酬にするなんて…。)」


「(メイとしては結果としてだけど、それで良かったかもしれないわ。)」


「(どういうこと?)」


 マリーの言葉に不思議に思い聞き返す。


「(メイはああ見えて年下のかわいい子好きよ。)」


「えーーーー!!」


 メイの好みを初めて聞きびっくりする。


「(ちょっと!静かに!)」


「(…ごめんなさい。)」


「(私が言ったというのは内緒だからね。)」


 マリーは人差し指を口に当てるとベルに口止めする。


「(でもよくわかったね。メイの好みなんて本人に聞いても多分答えてくれないからわからないよ…。)」


 ベルはメイの無表情を思い出す。


(あの顔からはなかなか判断出来そうにないよ…。)


「(顔じゃなくて声と目で判断するのよ。今度から注意して観てみるといいわ。それに意外と普通の表情をするときもあるし。)」


「(わかった。観てみる。)」


 ベルの気分が和らいだことを感じ、その後も雑談を続ける。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 何か柔らかいものに包まれている感覚に目覚めると、抱き枕のようにしてメイに抱きしめられていた。


 周囲を確認すると薄っらと明るくなっている。


(そろそろ朝か。)


 メイの手を退け上半身を起こし背筋を伸ばす。



クロス

ランク 1

魔法力 72000/72000

筋力 25

魔力 無10/時5

速度 27

状態 【時の管理者】 普通

金銭 0リラ



 魔法力は完全に回復していた。


 ホース車の外に出るとベルが気付いた。


「おはようございます。クロウ様」


「おはよう。少し早いんじゃない?」


「おはよう。」


 挨拶してきたマリーからは昨日のトゲトゲしさが消えていた。


 不思議に思いながらも朝食をとる。


 二人は挨拶から黙ったままこちらをじっと見ていた。


(ローブと覆面で見えないはずだけど…!しまった!覆面で口を覆ってない!)


 食事をとり終え覆面で片目だけが出るように覆い直す。


(気付かれたかな?まだ目を見られてないから大丈夫だと思うしかない…。)


「明るくなって来たし移動する。ホース車に乗れ。」


「その話し方無理してない?」


「…元からだ。」


(これはあまりよくないな。先を急ごう。)


 焚き火の後始末をし、出発する。


 出発するとメイも起きてきた。


(親父が軽く走って二刻程と言っていたし距離を考えると…ホース車でなら一刻程か?一応聞いてみるか。)


「町までどれくらいか分かるか?」


「休まずに行けば後二刻ほどかと。」


「えっ!」


 親父がいうには、軽く走って村から町まで二刻程ではなかったのか?


(まさか自分基準で話したんじゃないだろな…。あり得る…。)


「どうかしましたか?」


「いや、何でもない。」


 それから三刻程…、周りが完全に明るくなってから町に着いた。


 移動自体は平和なもので、途中休憩や諸用により止まったくらいである。


 町の入り口は、乗ってきたホース車が二台余裕で通れる広さがあり、町の周りは高さ5メルくらいの石垣が囲っていて、かなりの長さがある。


 町に入るときに、門番にカードの名前と状態欄だけを見られたが、称号にいぶかしむだけで普通という文字を見て通ることが出来た。


 門番はそのまま後ろに乗っている女性たちのカードの確認を行う。


 最初にセリーヌのカードを見ると、名前を見て敬礼し、まともに他のメイドたちのカードを見ようとはしなかった。


(もしや普通はああなるのか?今更だけど…。)


 町に無事入り、どこに向かうか聞いてみる。


「どこにいけばいい?」


「このまま真っ直ぐ行っていただき、途中広場に出ましたら、さらにまっすぐ進んでいただき、後は大きな屋敷が右手にありますのでそこまでお願いいたします。」


「わかった。」


 ホース車を走らせ道順に従い屋敷へ向かった。


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