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129話 やる気・戻り

「なぜお前までこっちに来る?」


「別にいいじゃない。それよりもなんでフードしちゃうのよ?もう見せたんだからフード取ったら?」


 ルチアは気にした様子もなく、あの後もクロスについてきたかと思えば、部屋に入るなり近くの係員を捕まえて飲み物を注文し、クロスの隣へと座る。


 クロスは椅子に座り、近くに居た係員を呼んだ。


「とりあえず試合の事で何か説明することはあるか?」


「もし今後の試合が早く終われば、続けて準決勝戦が行われます。その際にはこちらの控室にいらしてください。」


「とりあえず風呂に入って着替えたいんだが?」


「それについては何とも申せません。もし呼出し後も現れなければ不戦敗という形になります。」


「もうそれでもいい気がしてきたな…。」


「ちょっと!がんばってよ!あなたに私のお小遣いがかかってるのよ!」


「お小遣いか………。萎えてきたな………。」


 クロスはルチアの一言にて更にやる気を低下させてしまった。


 現状でも、やり方次第では、クロスを追い詰めることが可能ということが分かっただけでもクロスにとっては収穫だったため、あまりこれ以上続ける意義をあまり見つけられなかった。


 敢えて言うならばヨハンと試合をしてみたいと思うくらいだろうか。


「そうだな…。今から風呂に入ってくる。間に合わなければ不戦敗、間に合えば戦うことにしよう。」


「そんなぁ~。あいたっ。」


 いつもの癖にて、間延びした声に対して反応してしまい、ルチアの頭を叩いてしまう。


「そうと決まったら行動だな。とりあえず風呂に入り終えたら、ここに戻ってくるとしよう。」


 クロスはそう言い残すと部屋を出た。


 部屋を出てメイとシャルロッテの待つ場所へと向かう。


「クロス様お疲れさまでした。」


「あっ、お疲れさまでした。」


 クロスはメイたちの死角から近付いたはずだが、簡単に見つかってしまった。


 メイが発信機を付けているのでは?と疑ってしまう程だ。


 広場を見ると、次の試合が始まっており、ヨハンとポールが闘っているのが分かる。


(よくあんなフルアーマーを着て闘えるもんだ。)


 今回ヨハンは、前の時のような鈍重さを感じさせない軽快な動きで剣を撃ち合っている。


 よくよく見ると鎧が少し違うのだが、遠目には分からないだろう。


 実際に気づいている者はなかった。


 何が起こるか分からないとはいえ、勝負が長引きそうな感じに満足する。


「俺はこれから宿に戻るが、メイとシャルロッテはどうする?」


「次の試合には出られないのですか?」


「風呂に入って戻って来るつもりだが、間に合わなければ不戦敗になるな。」


「分かりました。では早速宿へと参りましょう。」


「クロス様が勝ってくれないと困るんです!早く行きましょう!」


 メイは特に思うところは無いようだったが、シャルロッテは慌てたように「はやく!はやく!」と煽ってくる。


 遂には背中まで押して出入り口へと移動させようとするが、如何せん筋力差がありすぎてクロスには押されているというよりも引っ付かれている感覚に近いものだった。


「なぜそんなに焦ってるんだ?」


「いいじゃないですか、そんなことは!」


「シャルロッテはクロス様に賭けているようです。」


「メイさん!」


「ん?賭けは締め切られたはず…どうやって買ったんだ?」


 賭けは最初の20人が選ばれた日のみ売られており、今の段階では売られているはずもなかった。


「今日の朝購入しました!」


 シャルロッテは元気良く答えるが、ここで購入しても利益はそれほど見込めないだろう。


 一応どれくらい使ったのか確認してみる。


「確か、シャルロッテには20万リラ渡していたと思うんだが、一体いくら使ったんだ?」


「勿論20万リラ全部です!今なら1割増えて返ってくると言われました!私もクロスさんが優勝するのは間違いないと思います!」


 シャルロッテからは聞きたくもない応えが返ってきた。


「メイ…色々と常識についても教えて上げて…。」


「それがいいようですね…。」


「何かいけなかったでしょうか?」


「まあ、俺を信じているのはいいんだが、賭けというのは少なからずリスク…買った者が損をする可能性が付きまとうんだよ。だから自分の余裕のある範囲にて行うのが一般的なんだが…シャルロッテの場合は………。」


 そこまで言ってもシャルロッテはあまり理解していないようだった。


 首を傾げながらこちらを見ている。


「えーっと結局はクロスさんが勝てばいいわけですよね?」


 どうやらクロスが優勝することが前提で買ったようだ。


 もともとクロスの人気からいって、1割どころか元値から考えると2倍程度になっていてもおかしくはない。


 売り手にいいように丸め込まれて買ったのだろう。


「とりあえず、風呂に入ってくる。メイはどうする?とりあえず宿に行くか?それともここで武闘祭をみとくか?」


「私はクロス様についていきます。」


「わかった。シャルロッテは………。」


 シャルロッテは肩をガックリと落としながら下を向いている。


「メイ……すまないがシャルロッテを見ておいてくれ。」


「わかりました。」


 シャルロッテをメイに任せて競技会場を後にする。


 競技会場から出る際にもまだ試合は続いていたので、長丁場になることに期待しながら宿へと急ぎ気味に向かった。


 宿へ到着し、早速風呂場へと向かう。


 着替えに関しては魔法にて出せばいいので楽なものである。


 とりあえず、ゆっくり浸かるのは後にして身体を洗うだけに留めた。


 多少はシャルロッテを気遣い競技会場に戻るべく着替えを行う。


 時を止めてしまえば間に合うのだろうが、そこまでの必然性を感じなかったため、若干急ぎながらの風呂場を出る。


 風呂場にて出た瞬間に待っていたのはユフィだった。


「あなた!色々と騙してくれたわね!?」


 ユフィはどうやらクロスが競技会場を出たのを確認して追ってきたようだ。


「騙した覚えはないが?」


 本当のことを言わなかっただけで別段嘘をついたつもりはクロスにはなかった。


「なぜ私と戦ったことを言わなかったの!?」


 どうやら言わなかったことに対して腹を立てているようだ。


「そんなことより競技会場に向かいたいんだが?」


「そんなことですって!?」


 ユフィはクロスの言葉に怒りが更に高まったようだ。


「俺がこのまま間に合わなければ俺よりも弱いあんたは、更に弱いということになりそうなんだが?」


「っ!早く戻りなさい!」


 ユフィはクロスの言葉に再度反応し、怒っていた表情が焦りへと変化していく。


 ユフィはどうも周りから弱いという評価を受けるのが嫌なようだ。


 クロスはユフィを連れて競技会場へと戻る。


 一応急ぎ足で戻っていたわけでが、後ろからユフィが「そんなに遅くないはずでしょう!」「もっと焦りなさい!」など言ってくるのが煩わしかったりする。


 そのまま競技会場へともどり、控室へと行くと既に他の試合は終わったようで係員および選手2名となぜかルチアが待っていた。


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