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125話 安否・5試合目

 男に言われたことが気になり、クロスはシャルロッテを捜すことにした。


 手始めに競技会場から捜し始める。


 時間は掛かるが、時を止めた中なので特に問題はない。


 昔だったら魔力切れだったのは間違いないだろう。


 いつもの場所から時計回りに見ていく。


 直径数百メルもある競技会場での人捜しはなかなか大変だったが、みんな席と言う名の段差に座っているだけマシだった。


 下から上を仰ぎ見るようにして捜していく。


 競技会場を一通り捜し終えて次に大通りを捜していく。


 時刻は昼過ぎなのでどこかで昼食…もしくは買い物をしている可能性は十分にある。


 しかし、結局どの店にもシャルロッテの姿はなかった。


 とりあえず宿の部屋の中を見てみるも、シャルロッテは居なかった。


 どうやらあの男の仲間か何かに攫われた可能性が高いようだ。


 これ以上闇雲に捜すと時間がかかりそうなので、もう少し情報を集めることにした。


 競技会場に戻って椅子に座り時を戻す。


 会話内容を思い出しながら独り言のように、更に相手に聞こえるように呟く。


「実力差を鑑みればあんたが速攻でやられそうだがな。」


 その言葉に反応し、男はこちらを振り返る。


「ふん。好きにすると良いさ。あんたの女が裏ギルドの手に落ちる。それだけだ。まあ、既に落ちてるかもな。」


(ここでも裏ギルドか…。)


 これ以上話す事はないとばかりに、男は試合の方へと顔を戻す。


 怒らせれば何かしら情報を漏らすと思ったが失敗したようだ。


 クロスは再度時を止めて移動を開始した。


 この男については、後で処理することにしてシャルロッテを捜すことにする。


 まずはこの王都の貧民街に当たる部分の捜索を行うことにした。


 しかし、貧民街と言ったものは王都には無く、結局は裏通り的な所を重点的に捜すことになった。


 手間が掛かるが一軒一軒の扉を開けてみていく。


 鍵が掛かっているようなところは、窓や対面に建っている建物から覗いたりして確認していった。


 ほどなくしてシャルロッテは見つかることになった。


 そこは酒場のような場所で、そこでシャルロッテは呑気にカウンターに座り食事をしていたのである。


 店内を見回してみると、明らかに普通ではないような空気を纏った者ばかりだったので手近にいた者のカードを見てみる。


 案の定カードの状態欄には、しっかりと盗賊表示がされており、この酒場のような場所が普通ではないことを示していた。


(こいつはどんな経緯でこんな場所で呑気に飯を食ってるんだ?)


 とりあえずシャルロッテを連れて宿へと戻る。


 部屋にシャルロッテを置いて、宿の受付へと向かう。


 そこにあった紙と炭ペンにて簡潔に指示を書いて、シャルロッテの目の前に置いておいた。


 それから競技会場へと戻り椅子へと座って時を戻す。


 どうやって苦しめようか思案しているうちに4試合目は終了してしまい、クロスは見ることは出来なかったが、全く気にした様子もなかった。


「ただいまの試合は6番のルチア選手の勝利です。惜しみない拍手を!」


 そのアナウンスにすら気づかずにしばらく考え込んでいたが、係員が呼びに来たことで自分の番であることにクロスは気付いた。


 広場へと歩いていき、係員に示されるまま所定の位置に移動する。


 その後すぐに試合は開始された。


 クロスは試合が開始されてもしばらく考えていたが、相手選手がこちらへ向けて走ってきたのを視界に捉えたので、意識を思考から試合へと戻す。


(さて、獲物が自分から来たな…。あの速度が全力ではないだろうが………大体速度的には50程度か?)


 相手の移動速度から素の速度を推測する。


 相手選手との距離が20メルを切った段階でクロスは、父親に貰った剣を魔法にて時空間より取り出す。


 マントが急に膨らんだせいだろう。


 相手選手の速度が目に見えて遅くなった。


 5メルまでゆっくりと近付いてくると、またしても話し出す。


「後で後悔するのが嫌なら降参するんだな。」


「そんなつもりは全くないな。」

「後で必ず後悔することになる。………なにっ!」


 男はクロスの後方…観客席を見て驚いているようだ。


 観客席に合図者でも居るのだろう。


「さて、言いたい事はそれだけでいいか?」


「待て待て。本当に後悔するかもしれないんだぞ?分かってるのか?」


 何時までも何もしようとしない2人に対して観客席から段々とヤジが飛ぶようになってきた。


 クロスとしても、これ以上長引かせる積もりは無かったのでマント内から長剣を取り出す。


「おい!今までハリセン使っていやがったのに何故変えた!いや…どこに持っていやがった!」


 クロスはそんな言葉を無視して、無属性の身体強化を行う。


(確か手足の切断までは許容されるんだったな。)


 クロスは相手が降参する前に考えていたことを実行する。


 重心を落とすと同時に相手の横を駆け抜ける。


 ダミアンは少し反応したようだが、結局は攻撃も防御も出来ずその場から動けずにいた。


 実際には動くことも出来なかったが正解かもしれない。


 クロスは駆け抜ける手前にて一閃………そして通り過ぎた一瞬後にもう一閃振り抜く。


 そして勝利者コールも聞かずに勝利者用の扉へと向かって歩いていく。


 男は何をされたのか分からなかったのだろう。


 呆然と立っていたが、クロスを探して周りをキョロキョロと見回して、クロスの方に振りむこうとした際に両手の肘から先が地面へと落ちていった。


 切れた部分から一気に血が吹き出す。


 男は叫びながら肘を腹へと当てて叫んでいた。


 痛みに対して耐性があったのか、対戦相手…ダミアンは空気が続く限り叫び続ける。


 その声で数人の係員がダミアンへ向けて走っていくのが視界の端に映るが、クロスは気にせずに勝利者用の扉を開き中へと入っていった。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「えーっと………ただいまの試合は1番であるクロス選手の勝利です………。」


 司会者の係員も少し困惑していたが、気を取り直したのか言葉を続けた。


「これにて本日の試合は終了となります。明日も同刻より行いますのでご来場ください。なお明日で試合が終わった場合は賭け金の払い戻しは明後日となりますので気を付けてください。以上です。みなさまお疲れさまでした。」


 係員の閉めの言葉にて、試合後も固まっていた観客たちは帰り始めた。


 今年は重傷者もなくここまで来ていた。


 それが、試合が始まっても何か言い合いをしているだけで戦おうともせず、観客からのヤジによりやっと始まったかに見えたら一瞬で片が付いた上に、片方の選手の両腕が斬られるという観客たちが予想もしていなかったことが起こったのだから、観客たちが試合後も何も言わずに固まっていたのは仕方がないのかもしれない。


 クロスの武器がハリセンだったためなのか、トーナメントでのは人気それほど高くはなかった。


〇 1番人気 7番ヨハン 

〇 2番人気 3番オスカー

X 3番人気 8番ニコラス

X 4番人気 4番クルツ

〇 5番人気 5番ポール

X 6番人気 10番トリスタン

〇 7番人気 6番ルチア

〇 8番人気 1番クロス

X 9番人気 2番ロータル

X10番人気 9番ダミアン


 人気的にも低く大穴狙いで買った者がほとんどだったが、既に割符は締め切られているため、今回の試合の件でクロスの裏での取引があったのは言うまでもないだろう。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


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