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121話 観戦・生存

 シャルロッテのいる場所へ行くと、未だに試合は行われていた。


「お疲れさまでした。」


「ああ。」


 シャルロッテの立っているところへと向かう途中で、シャルロッテは気付いたようで声を掛けてきた。


 クロスは大人しく試合を観戦する。


 かなりの力の差がある場合は、実力が分からないかもしれないが、運良く見れることがあるかもしれない。


 試合自体は半分が既に消化されていたので、もう半分しか見ることが出来ないが、もし試合をするのであれば、この後半で勝ち抜いた者が相手になるだろう。


 そう思いつつ見ていたが、予想通り早く終わった試合については実力を見ることも出来なかった。


 観戦しているうちに、誰かに見られているような気がしたので周囲を見ていると、シャルロッテの頭に小石が落ちてきた。


「いたっ。」


 シャルロッテは頭を掻きながら、上を見ると、そこには手を振っているアイリがいた。


 フードを外して手を振り返すと微笑み、今度は紙を落としてきた。


 紙を掴み取り開いてみると、手紙のようで、昨日は何故来なかったのかなど、殴り書きされていた。


 クロスを見つけてすぐに書いたのだろう。


 溜め息を漏らし炭ペンにて返事を書き、先ほど落ちてきた小石を重りにして投げ返す。


 アイリは返事に満足したのか、奥へと戻っていった。


 続いて観戦していると、今度はユフィが顔を出す。


 ユフィは下を探し始めたので、クロスは慌ててフードをかぶり直した。


 今の状況で見られては宿にて何をされるか分かったものではない。


「シャルロッテ。後は一人で好きな時に宿へと戻れ。」


「?………分かりました。」


 シャルロッテは首を傾げるも割り切って返事をする。


「腹が減ったなら宿で注文するといい。じゃあな。」


 クロスはそう言ってからその場を後にした。


 結局クロスは、試合観戦を諦めてわけではなく、違う場所に移動しただけだった。


 ただ、シャルロッテと移動すると、何かしらの関連性を持たれてしまうと感じたために一人で行ったのである。


 VIP席とシャルロッテを視界に収められる位置へと移動して観戦を行う。


 後5戦ほどだが、ここまでで強そうだと思ったのは数名いた。


 その者たちは特に魔法を使うわけでもなく、作業のように対戦相手を倒しており、実力を見ることは叶わなかった。


 その後も試合は続き、最後に派手な試合が行われた。


 今までは武器を使った応酬ばかりだったが、最後の試合は魔法の打ち合いによるものだったのである。


 魔法の詠唱から、対戦相手は二人とも魔力2以上であることは間違いがなかった。


(これはもし魔力1だった場合、無属性魔法の魔法無効化が効かないかもしれないな…。)


 試合中の二人は移動しながら魔法を唱えている。


 魔法を打ち込み、それを防ぐ…というような状況がしばらく続いた。


 相手の火属性魔法『ニーダー・ブレンネン』を同魔力の水属性魔法である『シュプリング・フルート』にて迎え撃った時には、広場全体が熱帯霧に覆われて視界が取れなくなったりもした。


 観客席に被害が出ないのは、受付の際に確認すると、広場の壁に魔力水晶が埋め込まれており、それをVIP席にいる王家や家名持ちが魔力を送ることで、魔力障壁が出来るためらしかった。


 魔力水晶は魔力を受け取ると、一定以上の魔法や衝撃が近づいた際に自動で障壁を張る優れものである。


 ただ、王家や家名持ちしか使えないため、それにて身分確認にもしようされることがあり、これがこの競技会場と城とをつなぐ階段部屋の真ん中にある装置だった。


 クロスの調査の結果、あの装置は王家や家名持ちにしか使用できないということが分かっている。


 無駄に夜の街をブラブラしていたわけでは無く、情報収集をしていたのである。


 ただ、情報を聞いた相手がドライ家の者であるということを知らなかったりするわけだが…。


 熱帯霧による視界が晴れた時に立っていたのは、風属性と水属性の使い手である女性だった。


 この世界では、不思議と女性の方が高い魔力を持っていることが多い。


 家名持ちに関しては全員が高いようで、特にヌル王家は、家名持ちよりも更に多いとのことだった。


 試合を制した女性はVIP席にたいして腕を振っている。


 その時に腕輪が確認できた。


 おそらくこの女性もどこかの家名の者なのだろう。


 女性が勝ったからなのか、それとも最後の試合だったためか、割れんばかりの拍手が送られる。


 そして女性は、拍手の中勝者用の扉へと歩いて行った。


 係員が終了の知らせを伝えると、観戦していた人たちは競技会場を後にしている。


 クロスは一足先に宿へと戻った。


(今の時間帯であれば風呂にも入ってこないだろう。)


 クロスの予想通り、家名持ちが入ってくることはなく、ゆっくりと浸かることが出来た。


 風呂から上がるとシャルッテが戻ってきていた。


「おかえりなさい。今から食事を注文しようと思うんですが、クロスさんもいかがですか?」


「そうだな。一緒に頼んでくれ。」


 それからは、遅めの昼食を取り、王都の依頼をいくつかこなしてからこの日は終わった。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「メイ!お知らせがあるわ!」


 そう言ってナタリアが駆け込んできました。


 最近は訓練も激しいものになってきており、筋肉痛も激しくなってきているのに元気なものです。


 夕食の仕込みをしているのにナタリアは一体どこに行っていたのでしょうか?


 ギルドから帰る際に、ノーラ様に呼び止められていましたがそれと関係があるのかもしれません。


「どのような内容ですか?」


「やっぱりクロスは生きてたのよ!今王都に居るらしいわ!」


「そうですか。」


 メイは久しぶりに笑みをこぼす。


 今までは、クロスが生きているかもしれない…という漠然としたものだったが、このナタリアの言葉により自然と笑みがこぼれてしまったのである。


 しかしここで疑問が浮かんできた。


「ところでその情報はどなたから聞いたのですか?」


「えーっと~。」


 ナタリアは興奮気味に話しかけてきたのにもかかわらず、いきなり気まずそうにしだしてしまった。


「言えないのですか?」


「ん~。まあいいか…。手紙は王都にいる家名持ちの人からよ。」


 ナタリアに家名持ちの知り合いが居たことに驚きつつ、情報の信頼度を探ります。


「その方はクロス様のことをご存じなのですか?クロス様は王都に出られたことが無いはずですが…。」


「そこは大丈夫よ!なんたって幼馴染だし!………あっ。」


「幼馴染………幼馴染ですか………ドライ家の方ですね。」


 どうやらクロス様の身に魔の手がかかりつつあるようです。


 なんとしてもそれだけは防がねばなりません。


「いや…。あの…。ちょっと聞いてね?」


「私はとても冷静です。その情報が本当であれば、この訓練を早急に終わらせねばならないようですね。」


 もう少しすればノーラ様も帰ってきます。


 その時に事情を話…通じるでしょうか?


「今は王都で武闘祭に参加するつもりみたいよ。…と言うか今が4月2日だから武闘祭2日目ね。」


 今から昼夜問わずに行けば最終日には間に合いそうではありますが…。


 とりあえずノーラ様に報告・連絡・相談です!


「ではナタリア、夕食の準備を交代してください。」


「え?…ちょっと!どこにいくのよ!」


 急いでギルドに向かわねば…。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

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