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114話 介抱・二日酔い

 シャルロッテは夕刻頃に気が付いた。


「えーっと~私は~?」


「いきなり倒れたから寝かせているところだ。」


「そうですか~。ありがとうございます~。」


 クロスは扇ぐのをやめてソファーに寝そべり身体を伸ばす。


「日が沈んだら起こせ。それまで仮眠する。」


 夕刻まで扇いでいたから疲れたわけでは無く、ある思惑のもと仮眠をとることにした。


「わかりました~。」


 シャルロッテの声を聴くと共に眠りへとついた。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「はあ…。訓練がこんなにきついなんて思ってもなかったわ…メイドの真似事よりもきついじゃない…。」


「仕方ありません。現状では私たちはあの方の足手まといなのです。せめて自分の身は自分で守れるようにならなくては。」


 私たちは本日の訓練改め修業を終えました。


 私が起きれるようになってから少し動き回ろうと外に出たのですが、随分長い間ベッドに居たせいで身体が大分鈍ってしまったようです。


 すぐに力尽きてしまい家へと戻るのにナタリアの肩を貸してもらうことになりました。


 家へと戻るとクロス様のお母様が待っておられました。


 そこで私に言われたことは、まずは力を付けること…と言われてお願いしますと私も返事をしました。


 力…つまり能力を付けるということは、それだけ自身の出来る幅が広がるので、確かに賛成ではあるのですが、個人的にはすぐにでもクロス様の後を追いたいところです。


 しかし、そんな私の思いが分かったのか、力を付けるまではこの村を出ることは許さないと釘を刺されてしまいました。


 ナタリアとクロス様のお母様…もうお母様でいいですね。


 お母様にはかなりの御恩があるので、認めていただかなくては行けません…。


 それにお願いした手前、途中で投げ出すのもあまり好きではありません。


 ナタリアも興味半分で私にも稽古をつけてと言ったのですが、それが今の状況へと来ています。


 私は前の体力くらいには戻ったように思います。


 始めの方は身体に無理をかけるのは良くないと言われ、魔法の訓練ばかり行い、その間ナタリアは体力面の訓練を受けていました。


 なんというか、カードを見せていただいたのですが、私とそんなに速度や筋力にそう違いはありませんでした。


 体力が戻ってきた頃に、体術の訓練を行ったのですが、私の行動が先読みされているかのように私の攻撃を余裕をもって躱し、更には伸びた腕を取って投げられてしまったのです。


 その後も、同じように躱して隙が出来たところに一撃を貰うということが続きました。


 お母様に言わせると、私の攻撃は単調で読みやすいとのことです。


 それなりに工夫して分かりにくくしているはずなのですが、なぜ分かるのかがこちらにはわかりません。


 その後は体力を限界近くまで使うために畑を耕したり、街道近くの石を取り除いたりということをしました。


 これって体のいい雑用なんじゃ…とは思いません。


 ええ、思いませんとも。


「この訓練はいつまで続くのかしら?」


「わかりません。もしかしたら体術でノーラ様に勝つまでかもしれません。」


 恐ろしいことです。


 もしそれが実現したら私はこの村を出られる気がしません。


「それは無いでしょ。いくらなんでも、そんな簡単にあの人並みに強くならないわよ。」


「そうですよね…。」


 しかし終わりが見えない訓練というのもつらいものがあります。


 もしかして精神的にも強くなれということなのでしょうか?


 早く後を追えるように頑張らなくては!


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 日が沈んで夜になり、シャルロッテから起こされてクロスは目覚めた。


「起きてください~。起きてください~。」


「起きている。そんなに大きな声を出すな…。」


 シャルロッテは起こす際に、耳元で手をメガホンのようにして起こしてきた。


 さすがにそこまでしなくともクロスとしては起きれるわけで、目覚めが少々悪くなるのは仕方がないだろう。


 とりあえず食事を取るべく呼び紐にて注文を行う。


 その後、持ってこられた食事の量を見てシャルロッテは驚いている。


「クロスさん食べすぎではないですか~?」


「何を言ってるんだ?これは半分ずつ食べるんだよ。」


「え~………。」


 テーブルに皿を並べてもらい食事をする。


 シャルロッテは料理よりも果実酒の方を気に入ったようで、料理はそっちのけで果実酒ばかり飲んでいた。


「そんなに飲んで大丈夫なのか?」


「へいきれす~。」


 声を聴く限り全く平気ではなさそうだった。


「もうやめておけ。」


「まらまらのめます~。」


 従業員にそれ以上飲ませるなとジェスチャーで合図を送り、料理を引きあげさせた。


 見ていたから分かるが、果実酒一本分くらいしか飲んでいないにも関わらず、潰れてしまいテーブルに突っ伏している。


 そんなシャルロッテをベッドへと寝かせて、クロスは夜の町へと姿を消した。


 翌朝になりクロスはすっきりとした顔で朝日を受ける。


(いい朝だ…。)


 クロスはすがすがしい気持ちと共に朝日を身体に受けていた。


 昨日の夜は前回行けなかった店へと行くことが出来たので、なかなかに気分がよかったりする。


(さて、今日から鍛えますかね。)


 本日からシャルロッテを鍛えるべく動き出すのだった。


 未だに本人は寝ているが…。


 そんなシャルロッテをベッドを起こすべく、声を掛けてみたが起きる気配はない。


 身体を軽くゆすってみるが、「うへうへ」と言って笑っていたかと思うと、「う~う~」と苦しみ出した。


 全く起きそうになかったので強制的に起こすことにした。


 ベッドの脇を持ち斜めに傾ける。


 シャルロッテはゴロゴロと転がりベッドから落ちてやっと目が覚めたようだ。


「いたいれす~。」


「まだ酔っぱらっているのか?」


 呂律が未だにおかしいようだ。


 しかし、シャルロッテはそんなこちらの言葉は聞こえなかったようで、口を押えるとトイレへと駆けこんでしまった。


 その間に朝食と水を多めに注文して準備を依頼し、軽く身体を動かして柔軟しておく。


 朝食が準備されると、のそのそとトイレの方からこちらへとシャルロッテは移動してきた。


「とりあえず今後酒は禁止だな。」


「はい~。」


 そんなシャルロッテと朝食を取り、ギルドへと向かった。


 苦しんでいたからだろう、ギルドへと向かう途中案の定スリに狙われた。


 朝なので人が少ないというのにこれでは、この先が思いやられてしまう。


 ギルドへと到着しギルドカードを作成してもらった。


(これでやっと始められるな。)


 この日からシャルロッテの訓練が始まったのだった。


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