11話 追跡・確認
時間も夕方になるまで四刻程はあった。
父親の話では二刻程走れば着くそうなので、途中まで歩きながら向かうことにした。
村を出て街道沿いに町へと向かう。
街道は村側に柵が設けてあり、柵から川に辺りに畑が広がっている。
畑では作業をしている人が数名おり、その中に見知った顔を見つけた。
(エドはこんなとこまで仕事に来てるのか。)
エドを見つけたのは柵の切れ目が見え始めた畑の終わり付近だった。
エドの身体は十二歳には見えず、大人と比べても遜色ないくらいに大きい。
(畑は夜の見回りもしてるらしいし大変だな。)
エドを見ながら歩いていると、向こうもこちらに気付いたのか手を上げ近付いてきた。
「よう!クロス。どこいくんだ?」
機嫌良さそうにニコニコ顔だ。
いつものことだが…。
「隣町まで手紙配達と買い物だよ。」
「お~。隣町か~。あそこは色々あっていいとこだよな~。」
エドは何かを思い浮かべるように目を空に移す。
「エドは行ったことあるんだ?」
「あぁ。村が何個も入るくらい広いぜ。」
「僕は初めてだから楽しみだよ。」
「初めてなのか!着いたらなんとかパン食べてみろよ!中に花密より甘いのが入っててかなり旨いぜ!」
味を思い出したのか興奮気味に喋る。
「なんとかっていうのが分からないけど食べてみるよ。場所はどの辺?」
エドは含み笑いをしながら答える。
「そいつはいってのお楽しみ!…てのは冗談で、たしか真ん中辺りだったはずだ。時間があるんだったら探してみろよ。」
「そうするよ。では行くね。」
「おう。またな!」
エドと別れて街道を進む。
村の南にある森はまだまだ続いており、その奥には山がそびえていた。
(あの山は越えられないだろうな~。)
山は高く、更にこちらに面した見える部分は急斜面になっていて、上から落ちると命まで落としそうであった。
(しかし歩いても歩いてもずっと景色が一緒だな~。)
先ほどから右手北側に草地、川、森、左手南側に森、山の風景が変わらない。
一刻ほど歩くと遠くにホース車(馬車)が見えた。
(砦からのホース車かな?乗せてもらえないかな?)
ホース車は方向を変え南の森へと入っていく。
(あんな所になにかあったっけ?)
前に見た地図を思い浮かべ、何も記載が無いことを思い出す。
街道でなにかしている人がいたが、すぐに森へと入っていった。
不思議に思いつつ近付いていくと、街道に人が倒れている。
走って近づいてみると、倒れている人はみんな胸と喉を鋭利な物で貫かれ、息絶えている。
しかも全員身包みがはがされて防具や武器類が盗られており、カードすら持っていない状態だった。
(五人ともみんな死んでる…。カードも無さそうだ…。さっきの人たちが持って行ったのは間違いないな。)
まだほんのりと暖かい死体を街道沿いに避けておく。
(意外に吐いたりしないもんだな。)
運び終えてから死体の手を組ませ並べた。
こちらも手を合わせて祈る。
その後ホース車が入ったあたりを見るが、通った痕跡は全くなかった。
(盗賊か…。盗賊はカードの状態欄に確か盗賊って表示されたよな。)
状態表示欄には麻痺などだけでなく称号的なものが表示される。(盗賊や兇賊など人に危害や殺人を犯すことで表示される)
車輪の跡は消え去っており、先ほどホース車が入っていった森の中を入っていくと、草木で隠しただけなのがわかった。
そこからは先はホース車が通れそうな幅があり、地面にはホース車の通った跡が残っている。
クロスは、もしもに備えて時をとめて、轍の跡を通り盗賊たちを追った。
クロス
ランク 1
魔法力 72000/72000
筋力 25
魔力 無10/時5
速度 27
状態 時の管理者 普通
金銭 0リラ
少し進むとホース車があった。
ホース車は近くで見ると、幌付きの大きく頑丈そうな外見をしていて、後ろ側が破られ開いている。
ホース車に近付き中を確認してみると、中には男が三人と女性が一人そこにいた。
一人目の男は馬車から顔を出して外を見張っているようだ。
二人目の男はズボンを半分下げてこちらに背を向けていた。
三人目の男は完全にズボンを脱いで女性を押さえている。
女性は足をロープでホース車に括られたうえに服を切り裂かれ、二人目の男に覆い被さられており、歯を食いしばって苦悶の表情をしている。
(ちょっと遅かったかな…?。時間はそれほどあけてないつもりだったけど…。)
女性が切り裂かれていた服を見ると、村で着るような服ではなく、メイドのような服を着ていた。
(手遅れなのは仕方ない。とりあえずこの状況から助けよう。)
まず、自身に身体強化をかけ、男たちを外に出す。
その後全員を裸にし、首から下げていたカードを確認する。
カードの内容は、
ランク 3
魔法力 300、400、400
筋力 50、37、45
魔力 20~10
速度 25、40、30
状態 盗賊、盗賊、盗賊
となっていた。
状態表示欄は盗賊となっていて、三人とも盗賊で間違いなかったのでこれからどうするか思案する。
(とりあえず良い思いしてきただろうしサクッとやろう。)
持っていた短剣で胸と喉を中が見えるように切り裂く。
盗賊を討伐しても状態の変更は無いはずと確認のため見てみる。
クロス
ランク 1
魔法力 64800/72000
筋力 25
魔力 無10/時5
速度 27
状態 【時の管理者】 普通
金銭 0リラ
状態欄は変化しておらず、魔法力が減り続けているだけだった。
カードを確認し、男たちの処置を終えてホース車に戻る。
ホース車の中では、足をロープでホース車の柱に括られて、股を開いた状態の女性がいるのが見える。
よく見ると女性は十代後半くらいに見え、顔に少しそばかすがあるもののかわいい部類のようだ。
(この体勢って誘ってるふうにしか見えないな…。既にヤられた後っぽいしちょっとくらいいいよな?)
そう思いつつ、身体強化を解除し今度は自分が女性に覆い被さり行為に耽る。
やり始めてまさか相手が処女だったのには驚きつつも止められない。
(まさかまだヤられる前だったとはね。)
途中口で相手の一部を噛んだ際に、相手の身体が動き始めた為慌てて口を離し、適当な布で自分の口元を覆う。
行為が終わった後で、女性のロープを外して、ホース車の中に置いてあったローブを拝借する。
(わからないようにしてっと。あっ!これって状態表示どうなるんだ?)
急ぎカードを確認してみる。
クロス
ランク 1
魔法力 38985/72000
筋力 25
魔力 無10/時5
速度 27
状態 【時の管理者】 普通
金銭 0リラ
カードに変更はなかった。
一応時を戻して再度確認してみる。
クロス
ランク 1
魔法力 38950/72000
筋力 25
魔力 無10/時5
速度 27
状態 【時の管理者】 普通
金銭 0リラ
状態表示は普通のままで変化していない。
(とりあえずセーフかな。)
女性に目をやると、自分の状態が変わったことに気付き、上半身を起こしてこちらを見ていた。
「少しいいか?」
ローブを羽織ったうえに顔を布で覆うようにし、灰色の目を隠して、更に声を変えながらだったためか、女性はビクッと反応するだけで何も話さない。
(目を隠さないと一発でばれちゃうからね。)
「あんたの他に生き残りはいるか?」
女性は何かを思い出したのか叫びだした。
「お嬢様!お嬢様はどこです!」
勢いよく立ったせいかただでさえボロボロだったスカートが落ちる。
「落ち着け。あんた以外はもう一人だけなのか?」
「お嬢様とメイとマリー…お付きの者が二名居るはずです!」
女性は必死そうにこちらへ寄ってくる、かなり必死なのか自分が全裸に近い半裸なのを分かっていないようだ。
「三人だな。盗賊は何人だったか分かるか?」
「二十人は居たと思います。………どなたかはご存知ありませんが、おねがいします!お嬢様たちを助けてください!」
途中メイドは死体を盗賊たちの成れの果てを見て助力を願ってくる。
(人数よりも追うのが大変そうだ。)
メイドからの依頼を了承し、メイドに自分の状態を分からせて着替えを促す。
メイドがホース車へ入るのを見てから時を停める。
手に入れた盗賊たちのカードを持っていても仕方ないため、ホース車の中に放り投げる。
カードは手から離れたところで停まった。
(この軌跡なら当たらないだろ。)
カードの放物線を確認してから探索を開始する。
周りを見渡してみるが特に変わったようなところは何もない。
ホース車の周りを円を描くようにして探索する。
ホース車から少し離れると、足跡が続いていた。
(本来ならここまでの轍の跡なんかも、さっきの男たちの中に土と木の魔法使いがいたから、消す予定だったんだろうな。)
足跡を見失わないように後を追う。
クロス
ランク 1
魔法力 38795/72000
筋力 25
魔力 無10/時5
速度 27
状態 【時の管理者】 普通
金銭 0リラ
(魔法力的に後半分くらいか、最初よりも魔力が減って使える時間が増えたとはいえ…大丈夫かな?)
軽く走りつつ不安に思う。