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101話 妥協?・森脱出

 目が覚めると辺りは明るくなってきていた。


 いつもは夜明け前に目が覚める中で、久しぶりに周囲が明るいのでそんなに疲れていたのかな?と自問自答してしまう。


 確かに限界に近い速度まで出したが、少し疲れたかな?と思うくらいで、疲労は残っていなかったように思っていたが、そうではなかったようだ。


 起きると、良い香りがしていることに気付いた。


 起き上がり、扉を開けるとテーブルの上に料理が並べられていた。


「おはよう。よく眠れたかい?」


「おはよう。朝食の準備は出来てるからしっかり食べてね。」


 テーブル上にある朝食は一人分だけで、二人はどうやら既に食べてしまったようだ。


 椅子に座り朝食を頂くことにする。


 朝食を食べた後に礼を言い、帰る旨を伝えると、森の入口まで送ると申し出てくれた。


「正直助かる。出るには出れると思うが、あまりにも時間が掛かりそうだったんだ。」


「時間を掛ければ出ることが出来るという君の発言にこちらは驚くがね。」


「俺もあんたたちと一緒だからさ。」


「というと?」


 この人ならいいだろうと思い話す。


「俺も魔法をいくらでも使えるということだ。」


「奥の泉に入ったのか!?」


 この驚きようから考えるにどうやら人が泉に入るのは駄目なようだ。


「いや。この森に来る前からこういう状態だよ。」


「そうなのか…。」


 それから村の入口付近まで何かを考えていたようで無言になってしまった。


 村の入口へ近づくと、急に思い立ったのかいきなりな提案をされる。


「クロス君。この村に住まないか?」


「は?…分かるように説明してくれ。」


「我々エルフは代々泉を守ってきた。なので、ほとんどこの森周辺から離れることが無い。そんな生活に我慢できずに出ていくものも居たが、そんな者たちは誓約をさせて森の外へ出している。もし人がこの森に入り、力を手に入れた場合には、この村より出さないことも義務付けられているんだよ。」


「俺は泉には行ったことはないが?」


 泉に行ったとでも思っているのか?と思い再度言うとビスマルクは頷く。


「もちろん分かっている。だが、昔からの義務なんだ…。村に留まらないものは、誓う方の誓約ではなく、魔法に対する強力な制約を負うことになっているんだ。」


「村に留まるつもりもなければ、制約を交わすつもりもないな。」


「そうだろうね…。だから妥協案があるんだが…。」


 妥協案を示されてもクロスとしては、自分に不利益なことであれば断る気満々だった。


 元々ここには手紙を配達しただけなのである。


 既に昨日のうちに依頼書にサインは貰っているので、クロスとしてはこのまますぐに村を発っても問題はなかった。


 ただ、それなりに世話になったので付き合っているだけである。


「その妥協案というのは、一人村を出たがっている者が居てね。その子を連れて行ってもらいたいんだ。」


「あまり気は進まないな…。」


 正直アリスの育成に力を入れている状況で、他の者の世話をするなど面倒事は拒否である。


「ちょっと待っていてくれ。連れてくる。」


 こちらの気が進まないという話を碌に聞きもせずにある家へと向かっていった。


 家の中に入り、何事か話していると、中の人になにやら説明しているようだ。


 こちらを指差し何やら話している。


 しばらくして説明は終わったようで、ビスマルクはこちらへと向かってくる。


「待たせてすまないが、もうしばらく待ってくれ。」


「いや。だから連れて行くつもりはないと「お!きたようだ!」………。」


 この話している最中に割り込まれるのは久しぶりである。


 少しイライラしながら、向かってくると言われた方向へと目を移動すると、大きめのリュックを背負った一人の女性がこちらへと向かってきていた。


「おまたせ~~。しました~~。」


 この間延びした話し方もかなり久しぶりである。


「来たか…。彼女を連れて行ってほしい。」


 到着した女性は、十分に綺麗な部類に入る顔立ちとすらっとした体つきをしていた。


 クロスが少し小突いただけで折れそうなほどである。


「よろしく~おねがいします~。わたしは~シャルロッテといいます~。」


 引き受けても居ないのによろしくと言われてもただ戸惑ってしまうだけである。


「よろしくするつもりはないんだが…。」


「ええええーーーーー。とっても期待してたんですよ~~。待ってたんですよ~~。運命なんですよ~~。」


 とりあえずとても面倒が増えそうな気がしてならない。


「とりあえずシャルロッテに送らせます。…シャルロッテ…分かってるね?。」


「もちろんです~~。」


「まあいい。とりあえず入口まで案内してくれ。」


 そういうと、シャルロッテはクロスの手をを取り村を出た。


 村を出る際にまた膜のようなものを突き抜ける感覚があった。


 突き抜けると一気に視界が変わり周囲が森へと変貌する。


 そこで変わらなかったのはシャルロッテくらいだろう。


 シャルロッテは迷わずに道を突き進んでいった。


「よく迷わないな。」


「えーっと…。私には~道はまっすぐにしか見えないんですが~…。あなたにはどう見えてるんですか~?」


 どうやらエルフたちには道がきちんと見えているようだ。


 クロスからしたら道のない森の中を突き進んでいるようにしか見えない。


「俺には森の中をただ進んでいるようにしか見えないな。更に言うならば道など見えない。」


 シャルロッテは立ち止まるとこちらを見て不思議そうにしている。


「見えている風景が違うのかな~?入口まで手を離すなと言われましたが~、もし離すともしかして私も見えなくなってしまうとかでしょうか~?」


「そうかもしれないな。」


 そう言うとシャルロッテは何かを思いついたのかこちらに完全に向き直った。


「こんなところで~私に手を離されたら困りますよね~。それがいやなら~私を連れて行ってください~。」


「別に離してもいいが?俺がどうやって村についたと思ってるんだ?それにお前を連れて行くメリットが全くない。」


 でかいリュックを持って行く気満々な所に水を差すようだが、クロスにメリットが無いので連れて行く気はなかった。


「そんな~。」


 ガックリと肩を落とした拍子に手が離れると、シャルロッテも風景の一部のように霞んでいき見えなくなってしまった。


「やはり見えなくなったか。まあいい。何事も訓練だから詠唱を変えるか…。無よ。我が意図に沿いて魔法を無効化したまえ。『ラディーレン』」


 詠唱をすると、周囲15メル程の景色が変わり足元に土を踏み固めて出来た道が現れた。


 その道に沿って歩を進める。


 いじけてその場で地面に何やら書いていたシャルロッテは、こちらが移動するのに気付いたようで慌てて追いかけてきた。


「なんで迷いなく進んでるんですか~…。私の存在価値が~~。」


「もう帰ってもいいぞ。」


 ある程度歩いたので、入口までは近いだろうと思い言ったのだが、シャルロッテは諦めていないようで、なにやら色々と言いつつもついてきた。


 しばらく進むと、前方の視界が変わり、幻惑魔法の影響範囲から出たことが分かった。


 出たところで魔法を解き周囲を確認する。


 約スウメルのところで森は終わり街道が見えていた。


「やっと森を出れるか…。」


 そのまま進んでいると、後ろから声が聞こえてくる。


「待ってくださいよ~~。おいていかないで~~。話し合いましょう~~。」


 その言葉に立ち止まる。


「そうだな。話し合いは重要だ。特に分かっていないやつには効果的だろう。」


「ありがとうございます~。荷物は重いし~こんなに早く歩いたことが無かったので~すこしつかれました~。」


 どうやらたったこれだけの距離で疲れたようだ。


 荷物を下して休憩を始めた。


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